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宴の後始末 小悪党どもの日常
本日はお日柄もよく
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王太后メアはともかく、ザザリはけっして優しくはない。
彼女は、この竜を。もう少しで知性を獲得し、古竜になれるかもしれない竜を救おうとは思ったもは事実だが、その方法は決して「優しい」ものではなかった。
床から、土の槍が形成され、いっせいに空に浮く竜めがけて発射される。一本一本は、柱ほども太さがあり、先端は鋭く尖っていた。
いかにこの竜が、空中機動において非凡なものをもっていても、所詮は洞窟の中。かわしてかわしきれるものではない。
鉄の硬さをもった土槍は、次々と、竜の胴体に命中し、そこで虚しくくだけた。
竜のもつ絶対防御「竜鱗」の為せる技である。
だが、それはフェイント。ザザリとて、竜鱗の硬さはよくわかっている。真なる狙いは、天井より形成された土槍。目標は、細かに振動しながら、巨体を宙に浮かせている背中の七枚の羽のほうだった。
槍は狙い違わずに、羽に向かって殺到し、そして、触れる前にくだけて、もとの土塊にかえった。
竜の羽の振動は、ただそれだけで、近づくものを破砕する力があったのだ。
舌打ちをするザザリに、竜のブレスが襲いかかった。
今度は一方からではない。角から放出されたブレスは、竜の口から発射された宝珠に、当たると屈曲し前後から、ザザリを襲ったのだ。
ザザリの「お玉」もこの攻撃を完全にすくいきることはできなかった。
かくして。
ブレスの嵐がやんだあと、ザザリのお気に入りのエプロンドレスは、あちこち穴が空き、髪は一部、こげて、実に妙な髪型になっていた。
裾もバラバラに裂かれて、日に焼けた健康そうな足が太ももまで見えている。
「やりおったな、駄竜。」
ザザリは吠えた。
竜は、次のブレス攻撃の準備にはいる。
その瞬間に、ザザリの体はジャンプ一番、空をかけて竜に接近した。
“ああ・・・これはなんの魔法攻撃だろうか”
竜の完全に形成されたいない頭脳には、それがまるで彼の数十分の一しかない人間が、拳を振りかざして彼をぶんなぐろうとしているように、見えたのだ。
そんなはずはない。これは偽装でほんとうの攻撃はどこからか来る。炎か氷か雷撃か。
まさか、そのまま拳が彼の額をぶち抜こうとは、拳が当たる瞬間まで、彼は決して思わなかった。
竜の角が砕け、額に炸裂したパンチは、魔力と振動をもって彼の脳を揺さぶった。
眼の前がまっくらになり、平衡感覚を失って、竜はおちる。
洞窟の床に放射状にヒビが走った。たんなる落下ではない。文字通り、叩き落されたのだ。
よろよろと、立ち上がった竜の目の前に、ザザリがいた。
「・・・・わたしの負けらしい。」
竜は頭を下げた。
「こんな人間もいるのだな。さすがは魔王陛下の母上だ。約束通り、主として使えよう。運良く知性を獲得できたならば我に名を与えてくれ。」
ザザリはそんな竜を鼻でわらった。
「名前はつけてやる。尖閣竜ザウロと名乗るがいい。それと、お主は」
ぽんぽんとザザリは、竜の額を叩いた。砕けた角が再生される。
「とっくに知性は獲得できている。自分で気が付かなかっただけだ。」
竜・・・・ザウロは呆然と目の前の女を見つめた。
「あとはきっかけだけだな。わたしがそれを与えてやった。感謝しろ。」
竜の体が輝いた。その光は急速に収束し、ひとりの男の体を形成した。
なかなかハンサムな男である。年は30代になったばかりのところか。最初は裸体だったが、ふわっと影につつまれたかと思うと、華麗なマントを羽織った剣士の姿となった。
「はじめての人化にしては上出来だ。」
ザザリは褒めた。
「己の角を武具に変化させて、装備したか。なかなか非凡だ。」
ザウロは跪いた。
「服のセンスもよい。どこで覚えた。」
「見たもの、聞いたもの。」
ザウロは付して答えた。
「記憶だけはしておりましたが、いまやっとその内容が統合されました。
あなたさまは魔王陛下の御母上。闇森の魔女ザザリ様。正確にはその転生体でグランダの王妃メア陛下。」
「正確には、我が伴侶はすでに退位しているので、王妃ではないが。」
使い魔として連れ帰るつもりでいたのだが、ザウロの人化した姿はちょっと二枚目すぎた。これでは庭の手入れなど頼めそうもないし、離宮とか名ばかり、使用人もおいていない隠遁所では浮いてしまってしょうがない。
まあ、それはあとで考えるとして。
「古竜ども・・・・お主以外の先達たちを呼んでもらいたい。実は、『駅』のある街まで、運んでもらいたい者がいるのだ。古竜になったばかりのお主には酷な任務だろう。
ラスティでも誰でもよい。呼び出してはもらえぬか。」
ザウロは戸惑った。ただの「竜」だったころの記憶を探って賢明に答えを探す。
「・・・全員が出払っております。陛下。」
「全部が!? いったいなにごとだ?」
「それが・・・」
ザウロは言い淀んだ。
「わたしの記憶では、ラスティ殿がこんなふうに言っておりました。『結婚式に出席するんだってさ、全員だよ!』」
「は?」
ザザリの目が点になった。
「聞き違いではないだろうな。」
「いえ、知性獲得前の、わたしの記憶は単なる音の集合体です。改変する力はありません。ラスティ殿はたしかにそのように・・・・」
「だれの結婚式だ!?」
ふわり、と空間が歪んでかわいらしい少年があらわれた。
転移魔法だ。だが、これほど見事な転移を行えるのは。
「ギムリウスの義体か!」
「魔王陛下の御母上。」
ギムリウスは丁寧にあたまをさげた・・・・魔女ザザリとは、つい最近やりあったばかりであり、なんとなく直接名を呼ぶのが憚られたからである。
「ここにいらっしゃいましたか。リウ殿より前王とともに、結婚式へのご招待に参りました。」
「おまえまで・・・結婚っていったい誰の」
「我らのパーティ『踊る道化師』のリーダー、ルトとフィオリナの、です。」
彼女は、この竜を。もう少しで知性を獲得し、古竜になれるかもしれない竜を救おうとは思ったもは事実だが、その方法は決して「優しい」ものではなかった。
床から、土の槍が形成され、いっせいに空に浮く竜めがけて発射される。一本一本は、柱ほども太さがあり、先端は鋭く尖っていた。
いかにこの竜が、空中機動において非凡なものをもっていても、所詮は洞窟の中。かわしてかわしきれるものではない。
鉄の硬さをもった土槍は、次々と、竜の胴体に命中し、そこで虚しくくだけた。
竜のもつ絶対防御「竜鱗」の為せる技である。
だが、それはフェイント。ザザリとて、竜鱗の硬さはよくわかっている。真なる狙いは、天井より形成された土槍。目標は、細かに振動しながら、巨体を宙に浮かせている背中の七枚の羽のほうだった。
槍は狙い違わずに、羽に向かって殺到し、そして、触れる前にくだけて、もとの土塊にかえった。
竜の羽の振動は、ただそれだけで、近づくものを破砕する力があったのだ。
舌打ちをするザザリに、竜のブレスが襲いかかった。
今度は一方からではない。角から放出されたブレスは、竜の口から発射された宝珠に、当たると屈曲し前後から、ザザリを襲ったのだ。
ザザリの「お玉」もこの攻撃を完全にすくいきることはできなかった。
かくして。
ブレスの嵐がやんだあと、ザザリのお気に入りのエプロンドレスは、あちこち穴が空き、髪は一部、こげて、実に妙な髪型になっていた。
裾もバラバラに裂かれて、日に焼けた健康そうな足が太ももまで見えている。
「やりおったな、駄竜。」
ザザリは吠えた。
竜は、次のブレス攻撃の準備にはいる。
その瞬間に、ザザリの体はジャンプ一番、空をかけて竜に接近した。
“ああ・・・これはなんの魔法攻撃だろうか”
竜の完全に形成されたいない頭脳には、それがまるで彼の数十分の一しかない人間が、拳を振りかざして彼をぶんなぐろうとしているように、見えたのだ。
そんなはずはない。これは偽装でほんとうの攻撃はどこからか来る。炎か氷か雷撃か。
まさか、そのまま拳が彼の額をぶち抜こうとは、拳が当たる瞬間まで、彼は決して思わなかった。
竜の角が砕け、額に炸裂したパンチは、魔力と振動をもって彼の脳を揺さぶった。
眼の前がまっくらになり、平衡感覚を失って、竜はおちる。
洞窟の床に放射状にヒビが走った。たんなる落下ではない。文字通り、叩き落されたのだ。
よろよろと、立ち上がった竜の目の前に、ザザリがいた。
「・・・・わたしの負けらしい。」
竜は頭を下げた。
「こんな人間もいるのだな。さすがは魔王陛下の母上だ。約束通り、主として使えよう。運良く知性を獲得できたならば我に名を与えてくれ。」
ザザリはそんな竜を鼻でわらった。
「名前はつけてやる。尖閣竜ザウロと名乗るがいい。それと、お主は」
ぽんぽんとザザリは、竜の額を叩いた。砕けた角が再生される。
「とっくに知性は獲得できている。自分で気が付かなかっただけだ。」
竜・・・・ザウロは呆然と目の前の女を見つめた。
「あとはきっかけだけだな。わたしがそれを与えてやった。感謝しろ。」
竜の体が輝いた。その光は急速に収束し、ひとりの男の体を形成した。
なかなかハンサムな男である。年は30代になったばかりのところか。最初は裸体だったが、ふわっと影につつまれたかと思うと、華麗なマントを羽織った剣士の姿となった。
「はじめての人化にしては上出来だ。」
ザザリは褒めた。
「己の角を武具に変化させて、装備したか。なかなか非凡だ。」
ザウロは跪いた。
「服のセンスもよい。どこで覚えた。」
「見たもの、聞いたもの。」
ザウロは付して答えた。
「記憶だけはしておりましたが、いまやっとその内容が統合されました。
あなたさまは魔王陛下の御母上。闇森の魔女ザザリ様。正確にはその転生体でグランダの王妃メア陛下。」
「正確には、我が伴侶はすでに退位しているので、王妃ではないが。」
使い魔として連れ帰るつもりでいたのだが、ザウロの人化した姿はちょっと二枚目すぎた。これでは庭の手入れなど頼めそうもないし、離宮とか名ばかり、使用人もおいていない隠遁所では浮いてしまってしょうがない。
まあ、それはあとで考えるとして。
「古竜ども・・・・お主以外の先達たちを呼んでもらいたい。実は、『駅』のある街まで、運んでもらいたい者がいるのだ。古竜になったばかりのお主には酷な任務だろう。
ラスティでも誰でもよい。呼び出してはもらえぬか。」
ザウロは戸惑った。ただの「竜」だったころの記憶を探って賢明に答えを探す。
「・・・全員が出払っております。陛下。」
「全部が!? いったいなにごとだ?」
「それが・・・」
ザウロは言い淀んだ。
「わたしの記憶では、ラスティ殿がこんなふうに言っておりました。『結婚式に出席するんだってさ、全員だよ!』」
「は?」
ザザリの目が点になった。
「聞き違いではないだろうな。」
「いえ、知性獲得前の、わたしの記憶は単なる音の集合体です。改変する力はありません。ラスティ殿はたしかにそのように・・・・」
「だれの結婚式だ!?」
ふわり、と空間が歪んでかわいらしい少年があらわれた。
転移魔法だ。だが、これほど見事な転移を行えるのは。
「ギムリウスの義体か!」
「魔王陛下の御母上。」
ギムリウスは丁寧にあたまをさげた・・・・魔女ザザリとは、つい最近やりあったばかりであり、なんとなく直接名を呼ぶのが憚られたからである。
「ここにいらっしゃいましたか。リウ殿より前王とともに、結婚式へのご招待に参りました。」
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