婚約破棄で終わらない! 策謀家王子と腕力家公爵令嬢 チートな二人のそれからはじまる物語り

此寺 美津己

文字の大きさ
189 / 248
クエスト 披露宴に出席せよ

グランドマスターvs三丁目の悪夢

しおりを挟む
脳天気だな。
リアは心のなかで、ため息をつきながら、それを面には出さない。
そんな自分をゆっくり分析する。
たぶん、リアは今もこの男が好きなのだ。

彼女の愛するルトを、殺そうとした一派に属していながら。
そのルトの結婚式に、いそいそと出席しようとしているエルマートを目の前にして、クズでもシネでもなく、やっぱり変わらず脳天気なお坊ちゃんだ、と思うくらいには。

家格の問題は、男爵の養女と第二王子から、クローディア大公家の姫君と国王と、はるかにマシなものになっている。今なら、正式に妃となってもおかしくはない。
それは、例えば今後、クローディアがグランダを併呑しようとしたときにも絶好の切り札として効いてくるだろう。
一方で、愛するルトは、フィオリナといよいよ結婚するという。
リアがそこに入り込む余地はあるのだろうか。

‥これがまた、ありそうな気もするのだ。
外見的なところでは、リアはフィオリナと違って顔立ちは優しげだ。今のところは無駄なお肉はそんなについていない。ただ、戦いや狭いところに潜り込むときに、胸とお尻がじゃまになる、と思うことがある。リアは豊満な体型ではないが、そう言った部分については、彼女の姉は無頓着に育ちすぎたのだ。あるいは育たなすぎたのだ。

そして、10代にあるまじき、閨での技を呆れるほど持っている。

フィオリナ姉さんは、そういうタイプではなさそうだから、つけ込むスキはありそうなのだ。

“君の前途はなにを選んでも可能性に満ち溢れているんだ。”

リアが王立学院に復学したときに、そんなふうに励ましてくれた先生がいた。
冒険者としての未来、魔術者として上級学校へすすむ、あるいはエルマートの求愛を受け入れて、彼の成人を待って結婚する。
そのときには、どれにも決められなかったから、リアはここにいるのだ。

「前王陛下ご夫妻も?」
「うん、とくに母がすごく喜んでてね。昨夜は自ら遅くまで、招待状を配って歩いてたみたいなんだ。」

リアは、あとの列席者を尋ねてみた。
エルマートは笑顔で、知らない、と言った。

「でもあの変わり者ぞろいの『踊る道化師』は参加するんだろうなあ。グランダからの招待は、ぼくらとあとは、友人代表でミュラさんと、ヨウィスらしいよ。
行き帰りは、なんと竜が運んでくれるらしいんだ。
いやあ、楽しみだなあ。」

リアはエルマートのからの夕食の誘いを丁寧に断った。
夕食だけで終わらなせない魂胆はみえていたし、ルトとのことは、先がまったく見えない。
うっかり誘いにのらない自信は100パーセントではなかった。なにしろ、相手は若き国王で、別れたショックで生活が荒れるほど、リアを思っていて、どうも正妃の座をあけといてくれるつもりのようで、早速にもちこまれた婚約話をいくつも断り続けているのだ。
政治的な意味合いでは、クローディア大公国と斜陽のグランダ王国を結びつけるということで、双方がWinWinになるのであろう。
グランダ側に、不満があるとすれば、リアがクローディア家の実子でないことなのだが、嫡子がフィオリナしかいない以上、贅沢は言っていられない。
これからもクローディア大公国からの援助と好意をうけられればよし、機嫌を損ねたら即破滅である。

リアは、大公家からの迎えの馬車を、寮ではなく、屋敷の裏口に回すように伝えた。
クローディア大公家の屋敷の裏口は、すなわちギルド『不死鳥の冠』だった。

ドアをあけると、フィリオペがよお、と手をあげて迎えた。
「シチューを煮込んでいたところだ。食うかい?」
「ありがとう、フィリオペさん。ミュラさんは?」

ランゴバルドから舞い戻ったベテラン冒険者は、奥の扉を指差した。
その奥は、ギルドの執務室や倉庫、ギルマスの個室などがあり、そこは今はミュラが使っていた。

「さっき実家から戻った。山ほどドレスを抱えている。
ハルトとフィオリナの結婚式用なんだろうが、こういうときは新しいヤツを仕立てるもんじゃないのかい?」

貴族の儀礼、習慣には、くわしい。永年、銀級冒険者としてランゴバルドはじめ、西域での活動が長いフィリオペはもっともな疑問を口にした。

「時間がなさすぎる。2年も着る機会がなかったら、手直しも必要かもしれないし、小物をあわせるだけで、大変なんです。」

話をしているところに、ミュラがはいってきた。
リアの顔をみて、驚いたように立ち尽くしたが、手にしたドレスや様々な装身具をテーブルに投げ出した。

「ミュラさん、式の招致状は受け取った?」
「受け取ったからこのザマだ。」

ミュラは、舌打ちをした。
「そっちも出席するんだ?」

「わたしは、クローディア家の猶子ですから。そちらもよくぞまあ、ゴシュツセキされるんですか?」
「だって、ハルトといろいろあったでしょ?」
「わたしは、単純に言ってしまえば、酔いすぎたのをルトが介抱してくれただけです。」

三丁目の悪夢、と冒険者ギルドのグランドマスターは睨み合った。

「シチューと、パンだ。飯を喰いながら喧嘩しろ。」
そこは、フィリオぺの、年の功である。
色とりどりの生地の山を横目に、隣のテーブルに、どかどかと皿を並べていく。

視線を合わせたまま、リアとミュラは席に着いた。

「で、どうなの?」
「・・・」
「ミュラ先輩の姉に対してのご執心ぶりは、すでに学院の伝説になってる。
このまま、素直に結婚されてしまってもいい?」

「言いも悪いも」
ミュラは目を逸らした。
「フィオリナがそれでいいなら、しかたないわけだし。」
「まあ、あの二人を止めることは、魔王宮が総掛かりでもできないわけだし。」
リアは、ふいに笑った。
一応は淑女然とした仮面がはずれて、悪党の顔になっている。
「でも、出来ればもうちょっと後にして欲しい。例えば、二年後、とか。」
「その期間になんの意味が」
「わたしが、王立学院を卒業する。そうしたらわたしは『 踊る道化師』にはいる。」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。 《作者からのお知らせ!》 ※2025/11月中旬、  辺境領主の3巻が刊行となります。 今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。 【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん! ※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...