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魔道院始末
魔法拳法研究会
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さて。
拳法に魔術を取り入れた一種の、魔法使い用の護身術。
確かに、理屈は面白そうであったが、新しく学科を立ち上げるにはあまりにも準備不足のように、ジャイロには感じられた。
また、新しい学科を設立するには、学院長の承認が必要であったが、当のウィルニアは、クローディア大公夫妻と西域に出かけたまま、後を追うように、秘書のヨウィスも旅立ってしまった。
こうなると、一介の職員であるジャイロには、手の施しようがない。
実際に、ことを進めておいて事後承認、ということができない性分なのである。
もともと、ジャイロの小心、というか生真面目なところを買っていたボルテックは、それには文句は言わなかったが、肝心なときに、ふらふら遊びまわっているウィルニアについての罵詈雑言は一通りあった。
いや、魔道院を放り出して拳法修行なんか始めたお前が言うなよ、とジャイロは思った。だいたい、ウィルニアを連れてきたのもおまえだろっ!
「そう言えば。ドロシー嬢は?」
と、聞いたのはいやがらせのつもりだった。
案の定、若作りの妖怪じじいは、顔をしかめて、「ちょうど交換留学の期間も終わったから」とか少しトーンダウンした声で答えた。
さて、新たなる学科を立ち上げる時間も金もない。実務的な立場からいえば、本当は半年ほどかけてカリキュラムを練り上げてスタートしたい。
だが、それを、していると立場上、魔道院と関係の無いボルテックとシホウを、魔道院の経費で、グランダに滞在させてやるいわれがなくなってしまう。
「サークル活動でスタートいたしましょう。」
と、ジャイロは提案した。
「お2人には顧問ということで、給金や滞在のための施設利用の便宜をはかります。」
ボルテックにとっては、拒否することもできなかった。
というわけで、「魔法拳法研究会」がスタートしたのであるが。
あまり、生徒の集まりはよくなかった。
当たり前と言えば当たり前である。
もともと、魔道院は、いろいろな学校から魔道の素養ありと、認められ、さらに高みを目指そうとするものが切磋琢磨する高等教育期間である。
ここに来て、武道をやってみよう、などというものは皆無に近かった。
それでも、そういう建前でここに滞在している以上、募集活動をしない訳にはいかない。
あれこれと、シホウに稽古をつけてもらったあと、ポルテックはシホウとともに、玄関脇にデスクを並べ、登りをたてて、研究会の会員を募集している。
退屈以外のなにものでもなかった。
「俺は若い頃はむちゃくちゃに鍛えてたもんだけどなあ。」
と、ボルテックが嘆息する。馴染みの教職員のいないところでは、伝法な口調に戻っていて、そのほうがこの野性味のある若者には似合っていた。
「なにか、師について、拳法は習わなかったのか?」
「いやあ、喧嘩だよ喧嘩。ザザリにふぶっ飛ばされるまでは毎日、喧嘩に明け暮れてたんだ。
百対一でも勝った。向こうは武装してたがな、こっちは素手。
ついたあだ名が、百人ニキだ。」
ものすごく嘘くさい自慢話に、シホウが白いめを、していると。
「す、すいません。入会希望者ですが、お話を」
「なんじゃあ、おのれは!」
「ボルテック、入会希望者だ。」
昔話をしているうちに、気分まで百人ニキ時代に戻ったのか、意味もなくオラつくボルテックをたしなめて、シホウは座るように言った。
ヒョロっとした、青年はおよそ、武術とは程遠い。
ああ、これはまず基礎体力からかな、とシホウは武門にあるものとしてある種のがっかり感は否めなかった。
「今度、ミトラに留学することになりまして、」
と青年は覇気の欠けらも無いボソボソとしたしゃべりかたで話し始めた。
「あそこは、ずいぶんと治安が悪いみたいなので、護身として習いたいのです。
ダメでしょうか。」
師匠としてはもちろんダメだったが、サークルの顧問としてはそうも言っていられない。
シホウは、快く了承した。
拳法に魔術を取り入れた一種の、魔法使い用の護身術。
確かに、理屈は面白そうであったが、新しく学科を立ち上げるにはあまりにも準備不足のように、ジャイロには感じられた。
また、新しい学科を設立するには、学院長の承認が必要であったが、当のウィルニアは、クローディア大公夫妻と西域に出かけたまま、後を追うように、秘書のヨウィスも旅立ってしまった。
こうなると、一介の職員であるジャイロには、手の施しようがない。
実際に、ことを進めておいて事後承認、ということができない性分なのである。
もともと、ジャイロの小心、というか生真面目なところを買っていたボルテックは、それには文句は言わなかったが、肝心なときに、ふらふら遊びまわっているウィルニアについての罵詈雑言は一通りあった。
いや、魔道院を放り出して拳法修行なんか始めたお前が言うなよ、とジャイロは思った。だいたい、ウィルニアを連れてきたのもおまえだろっ!
「そう言えば。ドロシー嬢は?」
と、聞いたのはいやがらせのつもりだった。
案の定、若作りの妖怪じじいは、顔をしかめて、「ちょうど交換留学の期間も終わったから」とか少しトーンダウンした声で答えた。
さて、新たなる学科を立ち上げる時間も金もない。実務的な立場からいえば、本当は半年ほどかけてカリキュラムを練り上げてスタートしたい。
だが、それを、していると立場上、魔道院と関係の無いボルテックとシホウを、魔道院の経費で、グランダに滞在させてやるいわれがなくなってしまう。
「サークル活動でスタートいたしましょう。」
と、ジャイロは提案した。
「お2人には顧問ということで、給金や滞在のための施設利用の便宜をはかります。」
ボルテックにとっては、拒否することもできなかった。
というわけで、「魔法拳法研究会」がスタートしたのであるが。
あまり、生徒の集まりはよくなかった。
当たり前と言えば当たり前である。
もともと、魔道院は、いろいろな学校から魔道の素養ありと、認められ、さらに高みを目指そうとするものが切磋琢磨する高等教育期間である。
ここに来て、武道をやってみよう、などというものは皆無に近かった。
それでも、そういう建前でここに滞在している以上、募集活動をしない訳にはいかない。
あれこれと、シホウに稽古をつけてもらったあと、ポルテックはシホウとともに、玄関脇にデスクを並べ、登りをたてて、研究会の会員を募集している。
退屈以外のなにものでもなかった。
「俺は若い頃はむちゃくちゃに鍛えてたもんだけどなあ。」
と、ボルテックが嘆息する。馴染みの教職員のいないところでは、伝法な口調に戻っていて、そのほうがこの野性味のある若者には似合っていた。
「なにか、師について、拳法は習わなかったのか?」
「いやあ、喧嘩だよ喧嘩。ザザリにふぶっ飛ばされるまでは毎日、喧嘩に明け暮れてたんだ。
百対一でも勝った。向こうは武装してたがな、こっちは素手。
ついたあだ名が、百人ニキだ。」
ものすごく嘘くさい自慢話に、シホウが白いめを、していると。
「す、すいません。入会希望者ですが、お話を」
「なんじゃあ、おのれは!」
「ボルテック、入会希望者だ。」
昔話をしているうちに、気分まで百人ニキ時代に戻ったのか、意味もなくオラつくボルテックをたしなめて、シホウは座るように言った。
ヒョロっとした、青年はおよそ、武術とは程遠い。
ああ、これはまず基礎体力からかな、とシホウは武門にあるものとしてある種のがっかり感は否めなかった。
「今度、ミトラに留学することになりまして、」
と青年は覇気の欠けらも無いボソボソとしたしゃべりかたで話し始めた。
「あそこは、ずいぶんと治安が悪いみたいなので、護身として習いたいのです。
ダメでしょうか。」
師匠としてはもちろんダメだったが、サークルの顧問としてはそうも言っていられない。
シホウは、快く了承した。
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