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殺人探偵ヨルヤナ
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東京某所──とある喫茶店。
三時前にもかかわらず、早く仕事を終えたのか或いは仕事が休みなのか。小喫茶の少ない座席は、談笑する人々で埋まっていた。
平日の昼下がりながら女子会を催す女性や子連れの夫婦、学校帰りの高校生らしき人々が皆一様に談笑する中、ひとり。何やら不機嫌そうに携帯端末を耳に当てる若い青年がいた。
青年は誰かと連絡を取りながら、時折辺りを見回していた。女性団体が多い中、ひとり若い青年が入ってきたのに少し、気が引かれたのだろう。
青年は白髪に翡翠色の瞳という、日本という国では些か目立つ容姿に、往来する店員や客の視線が集まる。
「だーかーら、新しい仕事はないの?もうひと月は無いの一点張りじゃんか。こちとら生活かかってるんだけど」
綺麗という言葉が似つかわしい容姿とは裏腹に、やや荒い言葉遣いで電話越しの人物に当たる。
『落ち着けってヨルヤナ。今海外の斡旋者を当たってるんだ。見つかれば、特別料金で案内するからもう少しだけ。な?』
「お前も斡旋業だろ。パイプが細ぇよ……、確りしてくれよな」
皮肉めいた口を聞きながら、ズルズルとアイスコーヒーを啜る。
『何、お前店にでも出てるの?』
「野郎一人でオシャレなカフェに。あーあー、女子会の声が刺さるなぁ」
抑揚のない声でわざとらしく返すヨルヤナは、ウエイトレスが持ってきたケーキを受け取りながらに電話越しの声を軽くあしらう。
『お前は仕事柄女が付くって感じじゃないもんな。まあまだ若いんだし──』
──ガタンッ
会話のさなか、店内の一角から一際大きな音が響く。たった一度のその音で、店内は一気に静まり返る。
『……何?どうしたの』
「さあ。……切るわ、厄介事かもね」
そう言って返答も待たずに電話を切ると、机の死角で何やら操作をした後、カウンター脇の鉢の裏に携帯を隠した。
「どうかしましたか!?」
レジに立っていた男性店員が駆けつけたらしく、近くの客がざわつき始める。
「彼が……彼が急に倒れて……!」
短髪の女性が半ばパニック状態で店員にそう伝える。店員は警察を、と言いかけると、同席していた長髪の女性が辿々しい口調で声を上げた。
「わ、わたし呼びました……!すぐ来てくださるそうで……」
長髪の女性が窓の外を伺いながらにそう言い、言い終えて振り返ると、そこには白髪の青年──ヨルヤナが居た。
「ひっ……い、いつから…」
「オネーサンが外見た時。ふーん……ショック死かね」
冷静に遺体を眺めるヨルヤナに、男性店員が制止を掛ける。
「あ、あの……お客様、あまり近寄らない方が宜しいかと。警察の──」
その言葉の末尾を待たず、ヨルヤナはパンツのポケットから紙を取り出しそれを店員に見せる。
「探偵だよ。シロートは黙ってて、集中出来ないから」
店員に一瞥もくれず、営業許可証と書かれた、コピーであろう紙をしまいながらにしゃがみ込む。
そして三分ほど無言で周囲を見渡し、時折皿や椅子、テーブルに顔を近づけて凝視すると、ふむ、と呟きながら立ち上がった。
丁度その時、外ではサイレンの音が徐々に大きく響き渡った。
「成程ね……」
そして間もなくサイレンが鳴り止むと、警察官が店内にドカドカと足音を立てて入ってきた。
「失敬、通して貰えますか。どなたか事情を詳しく──」
言いかけてヨルヤナに気が付く。一方ヨルヤナは、警察になど目もくれず、辺りをしきりに観察し続けた。
「なんだね、キミは。子供が現場に近づくんじゃない、退き給え」
「ほら、キミ。我々の仕事ですから、少年がこの様な場所に居座るのは……」
若い、茶色の短髪が印象的な青年警官が、柔らかい声でヨルヤナに声を掛けた。
そこでようやく身動きを止める。が、言葉に耳を傾けたわけではなく、ただ「子供」という単語に反応しただけであった。
「失礼な。俺は二十五歳だし、探偵なんでな。部外者じゃないね。仮にも現場に居合わせた身だしさ、何より見た目で判断するのは褒められないねぇ。田所警部と…部下の人?」
「は……?名前……それに、探偵?」
「やだなあ、六年前に世話になったでしょ?ヨルヤナ・ヨキハーラ…元殺人犯」
ぼそりと警部だけに聞こえる声で呟くと、ヨルヤナは僅かに口角を上げた。
しかし警部はふいと視線を逸らし、部下の所在を確かめる。
「谷田部巡査ァ、日下部巡査と現場──」
「必要ない」
田所警部が声を上げ部下を呼びつけようとした時、途中で言葉を遮って制する。
その場に居た田所警部、谷田部巡査、日下部巡査の三人は、ぎょっと目を見開いてヨルヤナに視線を注いだ。
「ひ、必要ない……というのは……」
日下部と呼ばれた若い青年巡査が、おもむろに尋ねる。するとヨルヤナはさも当然、と言わんばかりにサラリと答えを紡ぐ。
「は?僕がやるってば。だからキミら必要ないよ」
ひらひらと手を振るが、やはり警察には目もくれずに辺りを凝視するヨルヤナに、田所警部は怒り気味な口調で反論する。
「こちとら仕事でな……!探偵の管轄は民事だろう。これは刑事事件……!探偵屋の出番は……」
「世の中って大抵成果主義じゃん。結果が全てだよ。能力が無ければ、いくら立派な肩書きを持とうが無能」
「……つまりなんだ」
「警察は無能って、……言ってるの分からない?」
にっと笑い、後ろに立つ警部に宣戦布告にも似た言動をする。
大人にがするには悪意に満ちた。しかし、子供かと思えば、ほんのいたずらめいただけの笑みに、警部らは困惑と踏み潰されたプライドに対する虚しさと。……単なるヨルヤナへの怒りと。
「はん、強気な事言って失敗してみろ。恥を書くのはお前だぞ」
「わからない人だなあ、失敗なんてしない。仕様も無い捜査をして挙句誤認逮捕、なーんて間抜けなヘマはしない。頭の造りがね、違うんだよ」
トントンと人差し指でこめかみを叩く。
その表情から察するに、本人はまるで悪気のない様子だが、警部は爆発寸前と言わんばかりの形相だった。傍らに控えた日下部、谷田部両巡査は困惑し、焦りを隠しきれない様子だった。
「その証拠に、事件から十分。分かったことを君たちの頭でも分かるように説明してあげようか」
茶髪の谷田部巡査がぐっ、唾を飲む。肩につく長さの黒髪を揺らした日下部巡査は、谷田部に視線を送りながら、ゆっくりと現場を見渡した。
「……っとその前に、君たちの見解でも聞いてみる?俺がパパっと解決すれば終わりだけど、凡人の見解を聞くのも悪くない。退屈しのぎにはなりそうだ」
「貴様、死人が出てるというのに退屈などと……!」
「どうせ犯人はバレないとでも高を括ってるんだよ。なら乗ってやるのが筋じゃない?実際、外での逃走者の目撃は無し、店内でも不審者の目撃も無し」
そこまで言葉を聞くと、田所は顔をしかめる。
「まだ犯人がいる……と言いたいのか?」
「気になる?」
ぴっと被った帽子を指で弾く。田所警部はその帽子を乱暴に受け取ると、納得いかないとばかりに不機嫌な顔で。しかしようやく折れたのか、やってみろ、と吐き出した。
「じゃ、外に人が出ないようにだけヨロシク。……調査開始」
ボソリと呟いて、ヨルヤナはゆっくりと現場となった席の机の下を覗き込む。
「な、なにか……下にあるん──」
被害者と同席していた長髪の女性が口を開くと、微塵も動かずに言葉で制する。
「ああ、俺がいいって言うまで何も言わないで。邪魔、鬱陶しい」
「う……なんなのこの子……」
苦手、と呟いて座席に座り直す。他のふたりも同様に、座席から立ち歩くことを禁止され、落ち着かない様子で座っていた。
透き通るような白髪をひとつに束ねた清楚な容姿からは、そんな毒を含んだ言葉が飛び出すとは思いもしないだろう。
深い翡翠色の瞳は暫し一点を凝視していたが、何も無かったのか、はぁと溜め息ひとつで立ち上がった。
「じゃあ一人一人聞いていこうかね。そこのジャケットのおにーさん、まず……そうだな、どういう集まり?関係は?」
気弱そうな若い青年は、ヨルヤナに指を差されるとビクリと肩を震わせた。
「えっ、は、はい。友人……です。同じ大学の…高校から仲が良くて……。その、今日は…開校記念日で休みだったので、少し遅いランチに……」
「へぇ。ところで……お向かいのおねーさんのその時計、カッコイイね。キミ、彼氏?」
サラッと話題を逸らし、向かいに座った長髪の女性に声をかけ、更に青年に尋ねる。
しかし青年は大きく手を振って、必死にそれを否定した。
「やっ、ちっ、違いますっ……!ね、ね……!優……」
「昭善慌てすぎよ。これは彼から貰ったんです。でも武本、忙しいから…ずっと会ってないんです」
「武本?彼氏のこと苗字呼びなの?」
「私、秋山優。名前同じなのよね。だからわざとよ」
ふぅん、と軽く流すも、手元の時計を凝視する。少しして視線を逸らすと、今度は虚空を見つめ、しばし硬直した。
「なんだ、お手上げとは言わんな?」
「うるさいなぁ、黙っててってば──……あ」
「どうした、探偵」
するとヨルヤナは店の壁掛け時計に視線を送った。
「ねぇ、田所警部。日下部くんと谷田部くん……全員一緒に来たなんてこと、無いよね?警察車両は原則、二人乗り……だもんね」
「あ?おぉ……俺は谷田部を連れてきた。日下部は近くにいるというから応援に……」
田所の言葉をぼんやりと聞きながら、店の入口を見つめる。そしてすぐに時計に視線を戻すと、顎に当てていた手をそっと口元にずらして呟いた。
「なぁるほど……」
「それが何かあるのか?」
「後で教えてあげるよ。……で、君たちのアリバイだけど……」
パッと顔を上げ、考え事をしていたのが嘘であるかのように、すぐさま切り替え声を上げる。そして短髪の女性に話を振る。
「キミ。名前と事件当時の自分の状況、説明して」
「はい……、本所由美子です。聡が倒れる前、わたしはお手洗いに……。多分レジの方が見てらっしゃったかと……。あ、あと、お手洗いの前の席にいるお子さん連れのご家族。男の子とぶつかった時に、顔を合わせてますので……」
若い夫婦に視線を送り尋ねると、女性の証言を肯定する返答があった。
「成程、それで事件直前だけはアリバイ有り……ね。まあいいや。次、時計のおねーさん」
素っ気なく話を次に運ぶと、先程それとなく名乗った長髪の女性に話を移す。
「秋山優よ。わたしは昭善と話をしてたわ。他には特に何も」
「キミは?」
昭善と呼ばれた青年にも、顎でついと返答を促す。
「え……あ。佐竹昭善です。僕も優と話していただけなので……アリバイとしては弱いと思いますけど……」
「うん、あんまり意味無いね。グルの可能性もあるし」
ズバリどストレートに言い切ると、三人は肩をすくめて硬直した。その表情は完全に反論の余地を奪われたソレで、警部らは彼らを憐れむ他なかった。
そしてテーブルに視線を送ると、被害者の座っていた席に並ぶ皿を見つめ、再び口を開いた。
「で、被害者は?デザートに手をつけようとして倒れた……かな?減ってない……よね」
「なんで分かるの?」
「なんでって、メニュー見ればわかるデショ」
さも当然のように言い切ると、レジに立っていた従業員が驚いたように声を上げた。
「メ、メニューを覚えてらっしゃるんですか?百近くあるメニューから……」
「抜粋して覚えたって?おバカ、全部覚えてるに決まってるじゃん。何時間いたと思ってんの」
何時間いたからといって、百近くあるというメニュー全てを覚えるのは難しいだろう。しかし、それがさも当然と言わんばかりの態度を見るに、ヨルヤナにとっては当たり前なのだろう。
「凄い記憶力……」
思わず、見ていた谷田部巡査がそう零す。
「足元にさくらんぼとキウイが二切れ。それとクッキーみたいなのがひとつに、アイスが二種類皿にある。それから生クリームね。皿のサイズから見積もって、これ以上盛られることは無さそうだけど……それはいいや。それより被害者は……?……本所聡くんね。由美子さんの?」
「旦那……です、一応」
短髪の女性が静かに頷く。流石に現場の光景にあてられ堪えたのか、気分が悪そうだった。
しかしヨルヤナは女性に構っている暇はないとばかりに、次々に話題を変える。その様子は全く脈絡の無いように見えるが、彼の考えがわからない以上は誰も口を出せずにいた。──かえって煩い、と反撃すらされかねない。
「ふんふん……じゃあ次。この中で植物、育ててる人いる?あ、俺と警察、それとホールの従業員全員参加してね。手、挙げて」
すると十人程度の関係者のうち、三名が手を挙げた。
「従業員のお姉さんと、日下部くんと、秋山さん?」
従業員の女性を座席のそばに寄るように催促すると、続けざまに質問を繰り出す。
「じゃあこの中で、非食用の植物を育ててる人は手を下げて」
すると従業員の女性だけが手を挙げた状況に、女性は困惑する。
「え、あの。わ、わたし……」
「あ、大丈夫。キミには特に何も無いから。ただちょっと気になったから。ごめんね」
警部らにとった態度とは裏腹に優しくそう声をかけると、女性従業員は安心したのか、ほっと胸を撫で下ろした。
「んー……」
「どうした……というか、お前のやり方は順序が滅茶苦茶だな……」
「もう、うるさいなぁ。犯人の目星ついたんだから邪魔しないでよ」
「今更邪魔してどうなるって──犯人の目星がついたって?」
「そう言ったでしょ、何度も言わせないでよ」
ぎょっとする田所警部に自慢げにニッと笑ってみせると、今度はレジに立っていた男性従業員に声をかける。
「ねえ、厨房って手、止まってる?」
「え?あ、はい。お客様が倒れたことに気付き、あれこれ物を動かしてしまうのは宜しくないかと思いまして」
「上出来じゃん。由美子さん、聡くんはデザートの前に何食べてた?」
きょとんとする由美子は、まっすぐ見つめるヨルヤナの圧に気圧され、慌てて口を開く。
「あっ、はい、えっと……パスタですけど……」
「食べ物が運ばれてきた順とか覚えてない?」
「えっ……多分、ですけど……パスタ、ドリンク、デザート……かな。パスタを食べ終わる前にドリンク。食べ終わる直前にデザートを持ってきてもらうように声を掛けていたような…」
頷きながらんー、と小さく唸り声を上げ、頭をフル回転させる。
そして今度は男性の所作について問いかける。
「じゃあ旦那さんの癖とか」
「癖……なんだろう……?」
「あ、あの。聡くん、飲み物を飲む時は、縁をお猪口を持つように指で持つ……と思いますよ」
「縁の近くを指でつまむように、ってこと?」
「はい」
昭善青年の言葉を受け、ヨルヤナは田所に声をかける。
「田所くん、帽子の中の手袋取ってちょうだい」
「はいはい」
もはや反論のひとつもせずに白い手袋を取り出し放ると、受け取ったヨルヤナは素早く手袋に手を通し、テーブルに腰をかける。
そして面前にある食器類を触り始めた。
「皿の裏……はリスクがあるな。なら……」
ぶつぶつと独り言を延々零しながらに、皿を触っては持つを繰り返す。
フォークを手に持ち、次にコップを被害者の癖の通りに持ち、デザートスプーンを手に取る。
「……ははぁ、なぁるほど。わかったわかった」
その一言で店内が刹那、ざわつく。
田所警部は真っ先に声を上げ、傍らに控えた谷田部巡査が目を見開く。
「分かったのか!?探偵!」
「わかったよ。けど、探偵じゃなくてヨルヤナって呼んでくれる?名前があるんデスケド」
不服そうに口を尖らせて反論するヨルヤナに、込み上げる苛立ちを飲み込む。
「……ヨルヤナ、詳しく説明してくれよ」
「はいはい。キミらじゃ頼りないからね、ちゃんと仕事しますよ」
そう言って立ち上がると、楽しげにニヤニヤと笑みを零しながら口を開く。その姿はタネ明かしをするマジシャンのようであった。
「まず死因は間違いなく経口摂取による毒殺。植物性の毒……栽培のしやすさから見ても恐らくトウゴマとかだろうね、リシンを使った可能性が高い」
「リシン……?」
由美子が首を傾げる。
「トウゴマの種から圧搾することで抽出されるタンパク質の一種。手に入れやすくかつ毒性が強いから、まず間違いないだろうね」
「で、その犯行の詳細は。経口摂取なら皿やらコップの口にでも塗ったか?混ぜたか?」
「そんなんじゃバレるか即死でしょ。それに発見されやすい。……フォークの柄の上面にでも塗ったか……と思ったけど、恐らくおしぼりに馴染ませたんだろうね。そして彼のコップの縁を持つ癖。由美子さんはドリンクはパスタを食べ終える前に受け取った、と言っていた。一気にドリンクを飲んだと考えれば、デザートに手をつける前に効いても可笑しくはない」
ヨルヤナは親指の腹を強調し、フォークの上面に押し当てるように持つ。そしてコップを持ち、デザートスプーンを再び手に取る。
「あ……!」
それを見ていた谷田部巡査が口を開く。
「わかった?」
「は、はい。被害者男性の癖を見る限り、コップの口の当たる箇所に親指が……ということは」
「その通り」
コップの親指が当たった箇所、すなわち口の当たる部分。おしぼりでたっぷり手に染み付いたリシンがコップに付着。これでは流石に気づけないだろう。
そしてドリンクはアイスコーヒー。砂糖ならばホットでなくともよく溶けるものだから、ソーサーに添えられたものを指で落とせばさらに濃度が上がるだろう。
「そしてそれを仕込んだのは──おそらくキミじゃない?ねえ、お姉さん」
視線を送ったのは、先程ヨルヤナの問いに挙手した女性従業員だった。
「え、だってあの時は……!」
「ああ、質問の意図には関係ないよって意味ね。ボロ出すわけないでしょ。それに名札、隠してるつもりだろうけど見えてるよ。秋山優さんのお姉さんかな?」
最後の一言で明らかに表情が強ばる。
現場が静まり返るのをよそに、ヨルヤナは更に続ける。
「キミが厨房と行き来してるのは見てたからね。ああ、あと……優さん。キミもグルだよね?あと……日下部くん?」
「なっ……!?」
田所警部が驚いて飛び上がる。
傍らに控えていた日下部は、あからさまに目を泳がせていた。
「田所くんが日下部くんとは一緒に来ていない、と。そして優さんの的確すぎる通報と、そのあと窓の外を眺めた素振り。あれは合図だよね。差し詰め、今通報したよ、ってところかな」
「な、なぜ自分が……警官たる私が……!?」
「警官だから、だよ。誰も疑わない」
冷めた目付きで日下部巡査を睨む。その目は警部に向けたいたずらを含む不満の目などではなく、殺意にも似た眼差し。
「殺人探偵……ッ」
「人聞きが悪いな。元、だってば」
「人殺しの目だ……私にはわかる……!」
「……だから?今は俺がクロを炙り出してるんだけど、邪魔しないでって」
ダンッ、と思い切り床を踏み付けて威嚇するヨルヤナに、日下部巡査は反論の語を失う。
「し、しかしだな……ヨルヤナ。何故日下部がグルだと……」
「阿呆だなぁ、部下の装飾品くらい把握してなよ。……大抵の警官が地味な防水時計なのに対して、彼は?そこそこ高級なものだろうね。そして彼女……秋山優、お揃いの時計を身につけている」
「では忙しくてというのは……」
「本当でしょーね。そして苗字、キミは元々武本……警察学校時代に旧姓である『日下部』に戻ったのでは?そして巡査として配属されたばかりの新人。……違う?」
「……ッ」
「警察学校時代に入寮していれば、会っていないことも納得できるし、旧姓に戻ったことを黙っていれば伝わらない」
ね、と念押しをすると、今度は別件の話を続けた。
「そして、ドリンクが運ばれてきたタイミング。あれはウエイターの彼女と優さんがあらかじめ打ち合わせていたもの。そして、コップの絵が可愛いよ、とでも言って気を引き持ち替えさせでもしたんだろうね。そうすれば回して見ようとする彼の口元に当たる部分に、高確率で指が付く」
優が口を噤む。しかし強く睨み返すと、いきり立ったように声を上げた。
「じゃあ……っ、昭善はどうなのっ!?この子だってアリバイとしては弱いって……」
「いや、あるよ。ちゃんとしたアリバイ」
「……は?」
「だってキミ、聡くんが倒れる少し前に店に来たでしょ?俺そこのカウンターに居たから、見てたし。キミたち三人が最初二時過ぎに入ってきたのに対して、昭善クンは三時すぎた頃に来たでしょ」
「あ……はい」
丁度ヨルヤナが友人であろう人物と連絡を取っていた頃のことだ。ふと視線が止まった、珍しい一人きりで店内に入ってきた若い青年は昭善青年だったのだ。
これで昭善青年と本所女史のアリバイが、仮にも成立したことになる。
「おそらく首謀者の秋山優、そのお姉さん、そして優さんの彼氏の日下部くん。……ここまで聞いて、弁明は?」
清々しいほどよく透る声が、店内に響く。その声に圧され、三人が遂に口を噤む。
「……なさそうだね。動機は?」
「聡が悪いのよ。由美子が頼み事を拒否出来ない性格なの知ってて、ほぼ毎日のように金貸せって……。この子切羽詰まってたのよ。だから姉さんと武本に……」
「昭善クンには言わなかったの?」
ついと視線を昭善青年に送る。
「ぼ、僕は……その時は漠然と。まさか……本気だなんて……。物騒な話はやめようよって言ったら、優がそうねって……。だからまさか本当にやるなんて……」
小刻みに肩を震わせながら、優を視界の端で捉える。由美子は席をそっと離れ、ヨルヤナのそばに移動した。
「お二人さんは?彼女の供述に相違点はあるかい?」
「……ありません」
その言葉に由美子は堪えていたのか、涙を零し始めた。
「みんなが……こんな事しなくても、わたし……なんて言ったらいいか……」
「……由美子さんは、日下部くんとお姉さんとは?」
「初めて……お会いしました」
そう、と言って由美子の背を優しく叩くと、最後にありがと、と返した。
「んじゃあ、警部殿?容疑者の身柄、預けるよ。探偵の仕事はここ迄だからね」
そう言うとヨルヤナは、元居た店舗奥のカウンター席にゆっくりとした足取りで戻っていった。
「探偵さん」
応援の警察車両のサイレンが響く中、由美子がこちらにゆっくりと歩み寄ってきた。
「由美子さん、大丈夫?結構堪えるデショ」
由美子ははい、と静かに答え、少し俯いた。その視線は悲しげで、とても優しかった。
「優は、本当はとても優しいんですよ。それが……行き過ぎてしまったんですね」
「うん、分かるよ。じゃなきゃあそこまでして行動しようと思わないよ。……ただ、方法に問題があった。根は優しい人ってことは、俺も分かったから」
「……変われますよね、彼女たち」
その漠然とした問いに、ヨルヤナは刹那ポカンとする。そして優しい眼差しで虚空を眺めながら、ストローを口に咥える。
「まあ、彼女たち次第だよね。けどさ、キミは変われるんじゃない?これだけの事があったんだ。彼女の優しさが牙を向いたように、二度とそうさせてしまわないように、ね。……キミが悪いみたいな言い方になったね、ごめん」
「いえ。探偵さんの仰る通りです。……自分がしっかりしないと、ですね。私の為にも、友人の為にも」
カバンを持つ手に力がこもる。
しかしその力とは裏腹に、由美子の顔は少し晴れたような、優しい笑みを含んでいた。
「事情聴取、大変だろうけどさ。昭善クンといっちょ頑張ってきてよ」
「はい。ありがとうございました、探偵さん」
にこりと明るく笑いかけた由美子の元へ、昭善青年が歩み寄ってきた。
「探偵さん、その…僕からもありがとうございました。……素晴らしい推理でした」
「そりゃどうもね。まあ、探偵だから。……俺もさ、元殺人犯。今じゃあ逆の立場にいるけど。案外人って変われるから、頑張ってね」
少し驚いたように。しかしふっと優しく微笑むと、昭善青年はゆっくりと頭を下げた。
「ああ、あと」
「はい?」
では、と立ち去ろうとした昭善青年と由美子を引き止めると、最後にひとつ、と口を開いた。
「俺は探偵さんじゃなくて、ヨルヤナ。ヨルヤナ・ヨキハーラ。名前くらい覚えていってよね」
子供のように無邪気にニヤリと不敵に笑む。それにつられて由美子と昭善も、可笑しそうにクスリと笑う。
「ありがとう、ヨルヤナさん。今度お茶でもしましょう。奢るわ」
「そりゃあいい話だ、待ってるよ」
最後まで楽しげに返答すると、事件後の現場で交わされた別れの挨拶とは思えない清々しさが残った。
大きく手を振って見送ると、ガラス張りの窓から警察車両に乗る由美子と昭善を見つめた。
──ピピピ
「はいはい、ヨルヤナ探て……お前か。仕事は?」
『お前なぁ、掛ける度そればっかしだな。……機嫌よかったりするか?』
「まあね。けどお前の話題次第では携帯カチ割る」
電話越しの穏やかな声が、苦笑の音を奏でる。
『相変わらず過激だな、ヨルヤナは。朗報だ、お前の国の探偵から依頼が舞い込んでてな。お前の力を見てみたいって』
その言葉にヨルヤナの声のトーンが跳ね上がる。
「うっそ!どこ……ユヴァスキュラ!?行く行く!いつから!?てか飛行機チャーターしてくれるんでしょうね?」
『お前……俺は斡旋業者。専属従者じゃないぞ。……まあ安心しろって、来週の頭に迎えに来てくれるっぽいからな。あとの事はお前がやり取りしてくれよ、言葉わからないからさ』
「はいはい、どいつもこいつも俺がいないとなーんにも出来ないんだからさぁ。頼りないなぁ」
遠足前の小学生のような舞い上がったテンションに、電話越しの友人は少し呆れた様子を見せた。
「お前、向こうでそんな態度取るなよ?俺の首が飛ぶからな」
「大丈夫大丈夫。実力があれば文句言われないね」
楽しげな彼は、その後も封鎖された店に居座り続け、また人を困らせる。
しかしその正体は、若き敏腕探偵。
世界を駆け回り、世界に溶け込む彼は、明日も自由奔放に事件を追いかけて行くだろう。
──俺って天才!
三時前にもかかわらず、早く仕事を終えたのか或いは仕事が休みなのか。小喫茶の少ない座席は、談笑する人々で埋まっていた。
平日の昼下がりながら女子会を催す女性や子連れの夫婦、学校帰りの高校生らしき人々が皆一様に談笑する中、ひとり。何やら不機嫌そうに携帯端末を耳に当てる若い青年がいた。
青年は誰かと連絡を取りながら、時折辺りを見回していた。女性団体が多い中、ひとり若い青年が入ってきたのに少し、気が引かれたのだろう。
青年は白髪に翡翠色の瞳という、日本という国では些か目立つ容姿に、往来する店員や客の視線が集まる。
「だーかーら、新しい仕事はないの?もうひと月は無いの一点張りじゃんか。こちとら生活かかってるんだけど」
綺麗という言葉が似つかわしい容姿とは裏腹に、やや荒い言葉遣いで電話越しの人物に当たる。
『落ち着けってヨルヤナ。今海外の斡旋者を当たってるんだ。見つかれば、特別料金で案内するからもう少しだけ。な?』
「お前も斡旋業だろ。パイプが細ぇよ……、確りしてくれよな」
皮肉めいた口を聞きながら、ズルズルとアイスコーヒーを啜る。
『何、お前店にでも出てるの?』
「野郎一人でオシャレなカフェに。あーあー、女子会の声が刺さるなぁ」
抑揚のない声でわざとらしく返すヨルヤナは、ウエイトレスが持ってきたケーキを受け取りながらに電話越しの声を軽くあしらう。
『お前は仕事柄女が付くって感じじゃないもんな。まあまだ若いんだし──』
──ガタンッ
会話のさなか、店内の一角から一際大きな音が響く。たった一度のその音で、店内は一気に静まり返る。
『……何?どうしたの』
「さあ。……切るわ、厄介事かもね」
そう言って返答も待たずに電話を切ると、机の死角で何やら操作をした後、カウンター脇の鉢の裏に携帯を隠した。
「どうかしましたか!?」
レジに立っていた男性店員が駆けつけたらしく、近くの客がざわつき始める。
「彼が……彼が急に倒れて……!」
短髪の女性が半ばパニック状態で店員にそう伝える。店員は警察を、と言いかけると、同席していた長髪の女性が辿々しい口調で声を上げた。
「わ、わたし呼びました……!すぐ来てくださるそうで……」
長髪の女性が窓の外を伺いながらにそう言い、言い終えて振り返ると、そこには白髪の青年──ヨルヤナが居た。
「ひっ……い、いつから…」
「オネーサンが外見た時。ふーん……ショック死かね」
冷静に遺体を眺めるヨルヤナに、男性店員が制止を掛ける。
「あ、あの……お客様、あまり近寄らない方が宜しいかと。警察の──」
その言葉の末尾を待たず、ヨルヤナはパンツのポケットから紙を取り出しそれを店員に見せる。
「探偵だよ。シロートは黙ってて、集中出来ないから」
店員に一瞥もくれず、営業許可証と書かれた、コピーであろう紙をしまいながらにしゃがみ込む。
そして三分ほど無言で周囲を見渡し、時折皿や椅子、テーブルに顔を近づけて凝視すると、ふむ、と呟きながら立ち上がった。
丁度その時、外ではサイレンの音が徐々に大きく響き渡った。
「成程ね……」
そして間もなくサイレンが鳴り止むと、警察官が店内にドカドカと足音を立てて入ってきた。
「失敬、通して貰えますか。どなたか事情を詳しく──」
言いかけてヨルヤナに気が付く。一方ヨルヤナは、警察になど目もくれず、辺りをしきりに観察し続けた。
「なんだね、キミは。子供が現場に近づくんじゃない、退き給え」
「ほら、キミ。我々の仕事ですから、少年がこの様な場所に居座るのは……」
若い、茶色の短髪が印象的な青年警官が、柔らかい声でヨルヤナに声を掛けた。
そこでようやく身動きを止める。が、言葉に耳を傾けたわけではなく、ただ「子供」という単語に反応しただけであった。
「失礼な。俺は二十五歳だし、探偵なんでな。部外者じゃないね。仮にも現場に居合わせた身だしさ、何より見た目で判断するのは褒められないねぇ。田所警部と…部下の人?」
「は……?名前……それに、探偵?」
「やだなあ、六年前に世話になったでしょ?ヨルヤナ・ヨキハーラ…元殺人犯」
ぼそりと警部だけに聞こえる声で呟くと、ヨルヤナは僅かに口角を上げた。
しかし警部はふいと視線を逸らし、部下の所在を確かめる。
「谷田部巡査ァ、日下部巡査と現場──」
「必要ない」
田所警部が声を上げ部下を呼びつけようとした時、途中で言葉を遮って制する。
その場に居た田所警部、谷田部巡査、日下部巡査の三人は、ぎょっと目を見開いてヨルヤナに視線を注いだ。
「ひ、必要ない……というのは……」
日下部と呼ばれた若い青年巡査が、おもむろに尋ねる。するとヨルヤナはさも当然、と言わんばかりにサラリと答えを紡ぐ。
「は?僕がやるってば。だからキミら必要ないよ」
ひらひらと手を振るが、やはり警察には目もくれずに辺りを凝視するヨルヤナに、田所警部は怒り気味な口調で反論する。
「こちとら仕事でな……!探偵の管轄は民事だろう。これは刑事事件……!探偵屋の出番は……」
「世の中って大抵成果主義じゃん。結果が全てだよ。能力が無ければ、いくら立派な肩書きを持とうが無能」
「……つまりなんだ」
「警察は無能って、……言ってるの分からない?」
にっと笑い、後ろに立つ警部に宣戦布告にも似た言動をする。
大人にがするには悪意に満ちた。しかし、子供かと思えば、ほんのいたずらめいただけの笑みに、警部らは困惑と踏み潰されたプライドに対する虚しさと。……単なるヨルヤナへの怒りと。
「はん、強気な事言って失敗してみろ。恥を書くのはお前だぞ」
「わからない人だなあ、失敗なんてしない。仕様も無い捜査をして挙句誤認逮捕、なーんて間抜けなヘマはしない。頭の造りがね、違うんだよ」
トントンと人差し指でこめかみを叩く。
その表情から察するに、本人はまるで悪気のない様子だが、警部は爆発寸前と言わんばかりの形相だった。傍らに控えた日下部、谷田部両巡査は困惑し、焦りを隠しきれない様子だった。
「その証拠に、事件から十分。分かったことを君たちの頭でも分かるように説明してあげようか」
茶髪の谷田部巡査がぐっ、唾を飲む。肩につく長さの黒髪を揺らした日下部巡査は、谷田部に視線を送りながら、ゆっくりと現場を見渡した。
「……っとその前に、君たちの見解でも聞いてみる?俺がパパっと解決すれば終わりだけど、凡人の見解を聞くのも悪くない。退屈しのぎにはなりそうだ」
「貴様、死人が出てるというのに退屈などと……!」
「どうせ犯人はバレないとでも高を括ってるんだよ。なら乗ってやるのが筋じゃない?実際、外での逃走者の目撃は無し、店内でも不審者の目撃も無し」
そこまで言葉を聞くと、田所は顔をしかめる。
「まだ犯人がいる……と言いたいのか?」
「気になる?」
ぴっと被った帽子を指で弾く。田所警部はその帽子を乱暴に受け取ると、納得いかないとばかりに不機嫌な顔で。しかしようやく折れたのか、やってみろ、と吐き出した。
「じゃ、外に人が出ないようにだけヨロシク。……調査開始」
ボソリと呟いて、ヨルヤナはゆっくりと現場となった席の机の下を覗き込む。
「な、なにか……下にあるん──」
被害者と同席していた長髪の女性が口を開くと、微塵も動かずに言葉で制する。
「ああ、俺がいいって言うまで何も言わないで。邪魔、鬱陶しい」
「う……なんなのこの子……」
苦手、と呟いて座席に座り直す。他のふたりも同様に、座席から立ち歩くことを禁止され、落ち着かない様子で座っていた。
透き通るような白髪をひとつに束ねた清楚な容姿からは、そんな毒を含んだ言葉が飛び出すとは思いもしないだろう。
深い翡翠色の瞳は暫し一点を凝視していたが、何も無かったのか、はぁと溜め息ひとつで立ち上がった。
「じゃあ一人一人聞いていこうかね。そこのジャケットのおにーさん、まず……そうだな、どういう集まり?関係は?」
気弱そうな若い青年は、ヨルヤナに指を差されるとビクリと肩を震わせた。
「えっ、は、はい。友人……です。同じ大学の…高校から仲が良くて……。その、今日は…開校記念日で休みだったので、少し遅いランチに……」
「へぇ。ところで……お向かいのおねーさんのその時計、カッコイイね。キミ、彼氏?」
サラッと話題を逸らし、向かいに座った長髪の女性に声をかけ、更に青年に尋ねる。
しかし青年は大きく手を振って、必死にそれを否定した。
「やっ、ちっ、違いますっ……!ね、ね……!優……」
「昭善慌てすぎよ。これは彼から貰ったんです。でも武本、忙しいから…ずっと会ってないんです」
「武本?彼氏のこと苗字呼びなの?」
「私、秋山優。名前同じなのよね。だからわざとよ」
ふぅん、と軽く流すも、手元の時計を凝視する。少しして視線を逸らすと、今度は虚空を見つめ、しばし硬直した。
「なんだ、お手上げとは言わんな?」
「うるさいなぁ、黙っててってば──……あ」
「どうした、探偵」
するとヨルヤナは店の壁掛け時計に視線を送った。
「ねぇ、田所警部。日下部くんと谷田部くん……全員一緒に来たなんてこと、無いよね?警察車両は原則、二人乗り……だもんね」
「あ?おぉ……俺は谷田部を連れてきた。日下部は近くにいるというから応援に……」
田所の言葉をぼんやりと聞きながら、店の入口を見つめる。そしてすぐに時計に視線を戻すと、顎に当てていた手をそっと口元にずらして呟いた。
「なぁるほど……」
「それが何かあるのか?」
「後で教えてあげるよ。……で、君たちのアリバイだけど……」
パッと顔を上げ、考え事をしていたのが嘘であるかのように、すぐさま切り替え声を上げる。そして短髪の女性に話を振る。
「キミ。名前と事件当時の自分の状況、説明して」
「はい……、本所由美子です。聡が倒れる前、わたしはお手洗いに……。多分レジの方が見てらっしゃったかと……。あ、あと、お手洗いの前の席にいるお子さん連れのご家族。男の子とぶつかった時に、顔を合わせてますので……」
若い夫婦に視線を送り尋ねると、女性の証言を肯定する返答があった。
「成程、それで事件直前だけはアリバイ有り……ね。まあいいや。次、時計のおねーさん」
素っ気なく話を次に運ぶと、先程それとなく名乗った長髪の女性に話を移す。
「秋山優よ。わたしは昭善と話をしてたわ。他には特に何も」
「キミは?」
昭善と呼ばれた青年にも、顎でついと返答を促す。
「え……あ。佐竹昭善です。僕も優と話していただけなので……アリバイとしては弱いと思いますけど……」
「うん、あんまり意味無いね。グルの可能性もあるし」
ズバリどストレートに言い切ると、三人は肩をすくめて硬直した。その表情は完全に反論の余地を奪われたソレで、警部らは彼らを憐れむ他なかった。
そしてテーブルに視線を送ると、被害者の座っていた席に並ぶ皿を見つめ、再び口を開いた。
「で、被害者は?デザートに手をつけようとして倒れた……かな?減ってない……よね」
「なんで分かるの?」
「なんでって、メニュー見ればわかるデショ」
さも当然のように言い切ると、レジに立っていた従業員が驚いたように声を上げた。
「メ、メニューを覚えてらっしゃるんですか?百近くあるメニューから……」
「抜粋して覚えたって?おバカ、全部覚えてるに決まってるじゃん。何時間いたと思ってんの」
何時間いたからといって、百近くあるというメニュー全てを覚えるのは難しいだろう。しかし、それがさも当然と言わんばかりの態度を見るに、ヨルヤナにとっては当たり前なのだろう。
「凄い記憶力……」
思わず、見ていた谷田部巡査がそう零す。
「足元にさくらんぼとキウイが二切れ。それとクッキーみたいなのがひとつに、アイスが二種類皿にある。それから生クリームね。皿のサイズから見積もって、これ以上盛られることは無さそうだけど……それはいいや。それより被害者は……?……本所聡くんね。由美子さんの?」
「旦那……です、一応」
短髪の女性が静かに頷く。流石に現場の光景にあてられ堪えたのか、気分が悪そうだった。
しかしヨルヤナは女性に構っている暇はないとばかりに、次々に話題を変える。その様子は全く脈絡の無いように見えるが、彼の考えがわからない以上は誰も口を出せずにいた。──かえって煩い、と反撃すらされかねない。
「ふんふん……じゃあ次。この中で植物、育ててる人いる?あ、俺と警察、それとホールの従業員全員参加してね。手、挙げて」
すると十人程度の関係者のうち、三名が手を挙げた。
「従業員のお姉さんと、日下部くんと、秋山さん?」
従業員の女性を座席のそばに寄るように催促すると、続けざまに質問を繰り出す。
「じゃあこの中で、非食用の植物を育ててる人は手を下げて」
すると従業員の女性だけが手を挙げた状況に、女性は困惑する。
「え、あの。わ、わたし……」
「あ、大丈夫。キミには特に何も無いから。ただちょっと気になったから。ごめんね」
警部らにとった態度とは裏腹に優しくそう声をかけると、女性従業員は安心したのか、ほっと胸を撫で下ろした。
「んー……」
「どうした……というか、お前のやり方は順序が滅茶苦茶だな……」
「もう、うるさいなぁ。犯人の目星ついたんだから邪魔しないでよ」
「今更邪魔してどうなるって──犯人の目星がついたって?」
「そう言ったでしょ、何度も言わせないでよ」
ぎょっとする田所警部に自慢げにニッと笑ってみせると、今度はレジに立っていた男性従業員に声をかける。
「ねえ、厨房って手、止まってる?」
「え?あ、はい。お客様が倒れたことに気付き、あれこれ物を動かしてしまうのは宜しくないかと思いまして」
「上出来じゃん。由美子さん、聡くんはデザートの前に何食べてた?」
きょとんとする由美子は、まっすぐ見つめるヨルヤナの圧に気圧され、慌てて口を開く。
「あっ、はい、えっと……パスタですけど……」
「食べ物が運ばれてきた順とか覚えてない?」
「えっ……多分、ですけど……パスタ、ドリンク、デザート……かな。パスタを食べ終わる前にドリンク。食べ終わる直前にデザートを持ってきてもらうように声を掛けていたような…」
頷きながらんー、と小さく唸り声を上げ、頭をフル回転させる。
そして今度は男性の所作について問いかける。
「じゃあ旦那さんの癖とか」
「癖……なんだろう……?」
「あ、あの。聡くん、飲み物を飲む時は、縁をお猪口を持つように指で持つ……と思いますよ」
「縁の近くを指でつまむように、ってこと?」
「はい」
昭善青年の言葉を受け、ヨルヤナは田所に声をかける。
「田所くん、帽子の中の手袋取ってちょうだい」
「はいはい」
もはや反論のひとつもせずに白い手袋を取り出し放ると、受け取ったヨルヤナは素早く手袋に手を通し、テーブルに腰をかける。
そして面前にある食器類を触り始めた。
「皿の裏……はリスクがあるな。なら……」
ぶつぶつと独り言を延々零しながらに、皿を触っては持つを繰り返す。
フォークを手に持ち、次にコップを被害者の癖の通りに持ち、デザートスプーンを手に取る。
「……ははぁ、なぁるほど。わかったわかった」
その一言で店内が刹那、ざわつく。
田所警部は真っ先に声を上げ、傍らに控えた谷田部巡査が目を見開く。
「分かったのか!?探偵!」
「わかったよ。けど、探偵じゃなくてヨルヤナって呼んでくれる?名前があるんデスケド」
不服そうに口を尖らせて反論するヨルヤナに、込み上げる苛立ちを飲み込む。
「……ヨルヤナ、詳しく説明してくれよ」
「はいはい。キミらじゃ頼りないからね、ちゃんと仕事しますよ」
そう言って立ち上がると、楽しげにニヤニヤと笑みを零しながら口を開く。その姿はタネ明かしをするマジシャンのようであった。
「まず死因は間違いなく経口摂取による毒殺。植物性の毒……栽培のしやすさから見ても恐らくトウゴマとかだろうね、リシンを使った可能性が高い」
「リシン……?」
由美子が首を傾げる。
「トウゴマの種から圧搾することで抽出されるタンパク質の一種。手に入れやすくかつ毒性が強いから、まず間違いないだろうね」
「で、その犯行の詳細は。経口摂取なら皿やらコップの口にでも塗ったか?混ぜたか?」
「そんなんじゃバレるか即死でしょ。それに発見されやすい。……フォークの柄の上面にでも塗ったか……と思ったけど、恐らくおしぼりに馴染ませたんだろうね。そして彼のコップの縁を持つ癖。由美子さんはドリンクはパスタを食べ終える前に受け取った、と言っていた。一気にドリンクを飲んだと考えれば、デザートに手をつける前に効いても可笑しくはない」
ヨルヤナは親指の腹を強調し、フォークの上面に押し当てるように持つ。そしてコップを持ち、デザートスプーンを再び手に取る。
「あ……!」
それを見ていた谷田部巡査が口を開く。
「わかった?」
「は、はい。被害者男性の癖を見る限り、コップの口の当たる箇所に親指が……ということは」
「その通り」
コップの親指が当たった箇所、すなわち口の当たる部分。おしぼりでたっぷり手に染み付いたリシンがコップに付着。これでは流石に気づけないだろう。
そしてドリンクはアイスコーヒー。砂糖ならばホットでなくともよく溶けるものだから、ソーサーに添えられたものを指で落とせばさらに濃度が上がるだろう。
「そしてそれを仕込んだのは──おそらくキミじゃない?ねえ、お姉さん」
視線を送ったのは、先程ヨルヤナの問いに挙手した女性従業員だった。
「え、だってあの時は……!」
「ああ、質問の意図には関係ないよって意味ね。ボロ出すわけないでしょ。それに名札、隠してるつもりだろうけど見えてるよ。秋山優さんのお姉さんかな?」
最後の一言で明らかに表情が強ばる。
現場が静まり返るのをよそに、ヨルヤナは更に続ける。
「キミが厨房と行き来してるのは見てたからね。ああ、あと……優さん。キミもグルだよね?あと……日下部くん?」
「なっ……!?」
田所警部が驚いて飛び上がる。
傍らに控えていた日下部は、あからさまに目を泳がせていた。
「田所くんが日下部くんとは一緒に来ていない、と。そして優さんの的確すぎる通報と、そのあと窓の外を眺めた素振り。あれは合図だよね。差し詰め、今通報したよ、ってところかな」
「な、なぜ自分が……警官たる私が……!?」
「警官だから、だよ。誰も疑わない」
冷めた目付きで日下部巡査を睨む。その目は警部に向けたいたずらを含む不満の目などではなく、殺意にも似た眼差し。
「殺人探偵……ッ」
「人聞きが悪いな。元、だってば」
「人殺しの目だ……私にはわかる……!」
「……だから?今は俺がクロを炙り出してるんだけど、邪魔しないでって」
ダンッ、と思い切り床を踏み付けて威嚇するヨルヤナに、日下部巡査は反論の語を失う。
「し、しかしだな……ヨルヤナ。何故日下部がグルだと……」
「阿呆だなぁ、部下の装飾品くらい把握してなよ。……大抵の警官が地味な防水時計なのに対して、彼は?そこそこ高級なものだろうね。そして彼女……秋山優、お揃いの時計を身につけている」
「では忙しくてというのは……」
「本当でしょーね。そして苗字、キミは元々武本……警察学校時代に旧姓である『日下部』に戻ったのでは?そして巡査として配属されたばかりの新人。……違う?」
「……ッ」
「警察学校時代に入寮していれば、会っていないことも納得できるし、旧姓に戻ったことを黙っていれば伝わらない」
ね、と念押しをすると、今度は別件の話を続けた。
「そして、ドリンクが運ばれてきたタイミング。あれはウエイターの彼女と優さんがあらかじめ打ち合わせていたもの。そして、コップの絵が可愛いよ、とでも言って気を引き持ち替えさせでもしたんだろうね。そうすれば回して見ようとする彼の口元に当たる部分に、高確率で指が付く」
優が口を噤む。しかし強く睨み返すと、いきり立ったように声を上げた。
「じゃあ……っ、昭善はどうなのっ!?この子だってアリバイとしては弱いって……」
「いや、あるよ。ちゃんとしたアリバイ」
「……は?」
「だってキミ、聡くんが倒れる少し前に店に来たでしょ?俺そこのカウンターに居たから、見てたし。キミたち三人が最初二時過ぎに入ってきたのに対して、昭善クンは三時すぎた頃に来たでしょ」
「あ……はい」
丁度ヨルヤナが友人であろう人物と連絡を取っていた頃のことだ。ふと視線が止まった、珍しい一人きりで店内に入ってきた若い青年は昭善青年だったのだ。
これで昭善青年と本所女史のアリバイが、仮にも成立したことになる。
「おそらく首謀者の秋山優、そのお姉さん、そして優さんの彼氏の日下部くん。……ここまで聞いて、弁明は?」
清々しいほどよく透る声が、店内に響く。その声に圧され、三人が遂に口を噤む。
「……なさそうだね。動機は?」
「聡が悪いのよ。由美子が頼み事を拒否出来ない性格なの知ってて、ほぼ毎日のように金貸せって……。この子切羽詰まってたのよ。だから姉さんと武本に……」
「昭善クンには言わなかったの?」
ついと視線を昭善青年に送る。
「ぼ、僕は……その時は漠然と。まさか……本気だなんて……。物騒な話はやめようよって言ったら、優がそうねって……。だからまさか本当にやるなんて……」
小刻みに肩を震わせながら、優を視界の端で捉える。由美子は席をそっと離れ、ヨルヤナのそばに移動した。
「お二人さんは?彼女の供述に相違点はあるかい?」
「……ありません」
その言葉に由美子は堪えていたのか、涙を零し始めた。
「みんなが……こんな事しなくても、わたし……なんて言ったらいいか……」
「……由美子さんは、日下部くんとお姉さんとは?」
「初めて……お会いしました」
そう、と言って由美子の背を優しく叩くと、最後にありがと、と返した。
「んじゃあ、警部殿?容疑者の身柄、預けるよ。探偵の仕事はここ迄だからね」
そう言うとヨルヤナは、元居た店舗奥のカウンター席にゆっくりとした足取りで戻っていった。
「探偵さん」
応援の警察車両のサイレンが響く中、由美子がこちらにゆっくりと歩み寄ってきた。
「由美子さん、大丈夫?結構堪えるデショ」
由美子ははい、と静かに答え、少し俯いた。その視線は悲しげで、とても優しかった。
「優は、本当はとても優しいんですよ。それが……行き過ぎてしまったんですね」
「うん、分かるよ。じゃなきゃあそこまでして行動しようと思わないよ。……ただ、方法に問題があった。根は優しい人ってことは、俺も分かったから」
「……変われますよね、彼女たち」
その漠然とした問いに、ヨルヤナは刹那ポカンとする。そして優しい眼差しで虚空を眺めながら、ストローを口に咥える。
「まあ、彼女たち次第だよね。けどさ、キミは変われるんじゃない?これだけの事があったんだ。彼女の優しさが牙を向いたように、二度とそうさせてしまわないように、ね。……キミが悪いみたいな言い方になったね、ごめん」
「いえ。探偵さんの仰る通りです。……自分がしっかりしないと、ですね。私の為にも、友人の為にも」
カバンを持つ手に力がこもる。
しかしその力とは裏腹に、由美子の顔は少し晴れたような、優しい笑みを含んでいた。
「事情聴取、大変だろうけどさ。昭善クンといっちょ頑張ってきてよ」
「はい。ありがとうございました、探偵さん」
にこりと明るく笑いかけた由美子の元へ、昭善青年が歩み寄ってきた。
「探偵さん、その…僕からもありがとうございました。……素晴らしい推理でした」
「そりゃどうもね。まあ、探偵だから。……俺もさ、元殺人犯。今じゃあ逆の立場にいるけど。案外人って変われるから、頑張ってね」
少し驚いたように。しかしふっと優しく微笑むと、昭善青年はゆっくりと頭を下げた。
「ああ、あと」
「はい?」
では、と立ち去ろうとした昭善青年と由美子を引き止めると、最後にひとつ、と口を開いた。
「俺は探偵さんじゃなくて、ヨルヤナ。ヨルヤナ・ヨキハーラ。名前くらい覚えていってよね」
子供のように無邪気にニヤリと不敵に笑む。それにつられて由美子と昭善も、可笑しそうにクスリと笑う。
「ありがとう、ヨルヤナさん。今度お茶でもしましょう。奢るわ」
「そりゃあいい話だ、待ってるよ」
最後まで楽しげに返答すると、事件後の現場で交わされた別れの挨拶とは思えない清々しさが残った。
大きく手を振って見送ると、ガラス張りの窓から警察車両に乗る由美子と昭善を見つめた。
──ピピピ
「はいはい、ヨルヤナ探て……お前か。仕事は?」
『お前なぁ、掛ける度そればっかしだな。……機嫌よかったりするか?』
「まあね。けどお前の話題次第では携帯カチ割る」
電話越しの穏やかな声が、苦笑の音を奏でる。
『相変わらず過激だな、ヨルヤナは。朗報だ、お前の国の探偵から依頼が舞い込んでてな。お前の力を見てみたいって』
その言葉にヨルヤナの声のトーンが跳ね上がる。
「うっそ!どこ……ユヴァスキュラ!?行く行く!いつから!?てか飛行機チャーターしてくれるんでしょうね?」
『お前……俺は斡旋業者。専属従者じゃないぞ。……まあ安心しろって、来週の頭に迎えに来てくれるっぽいからな。あとの事はお前がやり取りしてくれよ、言葉わからないからさ』
「はいはい、どいつもこいつも俺がいないとなーんにも出来ないんだからさぁ。頼りないなぁ」
遠足前の小学生のような舞い上がったテンションに、電話越しの友人は少し呆れた様子を見せた。
「お前、向こうでそんな態度取るなよ?俺の首が飛ぶからな」
「大丈夫大丈夫。実力があれば文句言われないね」
楽しげな彼は、その後も封鎖された店に居座り続け、また人を困らせる。
しかしその正体は、若き敏腕探偵。
世界を駆け回り、世界に溶け込む彼は、明日も自由奔放に事件を追いかけて行くだろう。
──俺って天才!
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