第三帝国再建物語

帝国再建編

１．

時は、第二次世界大戦末期の西はアメリカやイギリス、カナダで東はスターリン率いるソ連によって徐々にドイツ第三帝国が崩壊している時の事だった。

アドルフ・ヒトラーと彼を慕う部下達は、自決をするか戦死するか捕虜になるかしていた。







(そのはずだったのだが…実は、違ったのだった。)








「総統」
「総統閣下」
と言われて彼は、やっと目をゆっくりと開いた。

そこは、あまりに静かなだだっ広い草原でさっきまで居たソ連軍の砲撃や銃撃音などが聞こえてきた地下壕とは、打って変わって違っていた。
だから、てっきり天国か何かかと思っていた。

そこでやっと意識がはっとした所で、スッと立ち上がって周りを見渡した。

そこで、(私は、さっき確かに自殺したはずだったがな)と一人考えていた。
「総統閣下…大丈夫ですか」
という声が聞こえて、そちらを見ると一人のSS(武装親衛隊)の将校と隊員四人がヒトラー流の敬礼をして目の前に立って居た。

ヒトラーは、ただ漠然ばくぜんと
「ああ…」
と頷うなずいて暫しばらく考えこんでいるようだった。

そして、
「此処ここは、何処どこだ」
と言って尋たずねた。

暫く沈黙ちんもくした後で、SSの将校が、それに答えた。
「此処は、我々が居た世界とは別の世界だと思われます」
とそのSS将校が言うとヒトラーは、周りをぐるりと見回した。

周りを見ると、ぱっと見それと気が付かないのだがようく見ると見た事のない馬が遠くで草を食はんでいた。

その馬は、空想上にしか存在しないとされていたユニコーンであった。

それから、また考えこんでからまた尋ねた。
「近くに町やなんかはないのか」
その質問に対してSS将校は今現在わかっている情報を伝えた。
「村と思われる所が五箇所と、城と思われる建造物が一つありました」
それを聞くと、ヒトラーはまた尋ねた。
「我々の人員は、これだけか」
「地上戦力三個軍団と、空軍の戦闘機と急降下爆撃機と爆撃機が一個艦隊、それと主にUボートで編成された海軍の戦力が二個航空艦隊あります」
「どうしてそんな戦力が此処にあると、わかったのかね」
「無線が何とか通じたので…」
ヒトラーは、暫く考えこんだうえでこう言った。
「部隊の集結地点に案内せよ」
案内せよと言ったので、SS将校は直ぐに二人の兵士を最高司令部に向かわせた。
それから、ものの十分経つか経たぬかしてキューベルワーゲンが森から姿をあらわした。
来ると、早速集結地点に向かって来て走って行った。

そして、最高司令部に着くとSS中将と国防軍の中将と海軍の少将、空軍の中将、がそれぞれ天幕から小走りに出迎えに来た。

そしてヒトラー流の敬礼を手慣れた手つきでした。「ハイル・ヒトラー！」
ヒトラーもキューベルワーゲンから降りてそれに応えた。

ヒトラーは、早速こんな事を提案した。

「今よりこの異世界をヴァルハラとして呼称こしょうする。そして、此処にドイツ第三帝国を新たに築く！」
とあっさり言ってしまったのであった。

その宣言には、連合軍に負けてドイツは事実上第一、第二次世界大戦に敗北して味わった屈辱くつじょくをもう二度と味わってたまるかと、堅く決心したのであった。


こうして、アドルフ・ヒトラー率いるドイツ第三帝国が再び最強の軍隊として動き出したのであった。