第三帝国再建物語

帝国再建編

５．

毎日のように、ヒトラーは言葉の勉強をしていたある日の事だった。

その日の昼頃、事件は起きた。

ワイマル帝国軍のドラゴンに、座乗した竜騎兵の襲撃を受けたのだった。

たまたま最高司令部から出ていた一個大隊が村に駐留して、最近村で襲撃が絶えない盗賊の警戒に当たっていた時の事だった。

最近盗賊の襲撃が頻繁ひんぱんに行われているからか、ワイマル帝国軍の将軍も警戒に当たらせるべく竜騎兵に出動要請をしたものらしかった。

だが、運が悪い事にワイマル帝国軍の竜騎兵とドイツ国防軍の一個大隊がばったりとあってしまったので、竜騎兵はドイツ国防軍の異様な格好を盗賊だとうっかり誤認した。

こうして、両者は村での戦闘に突入してしまったのであった。

国防軍の兵士は、すぐさま民家などの建物に駆け込んで窓からMG42などで速射を加えていた。

半装軌車に偶然居合せた国防軍のマイントフェルト大佐は、すぐさま最高司令部にこの事を打電した。

そうしている間にも、竜騎兵は空から滑空して来ようとしているのをかろうじてMP40などを撃ちまくりながら避ける兵士も居た。

そんなこんなで、両者は戦闘に突入してはや一時間がたった時の事だった。

竜騎兵は、何とか三騎を葬ほうむる事に成功したものの国防軍の兵士も負傷者が出始めていた。

そんな中、現れたのがドイツ空軍の戦闘機であるフォッケウルフFw190だった。

四機が、シュバルム(四機で組む編隊)を組んで現れたかと思うと急にロッテ(二機で組む編隊)になってそれぞれが、竜騎兵をバッサバッサ薙なぎ払う様にしてものの五分で方がついた。

それを見た国防軍の兵士は、歓声をあげて戦闘機を見送っていた。

この日の事が起こってから、対空警戒の一環として機銃砲を五機ほど村の広場と竜騎兵が来たであろう方向に配置してサーチライトも設置した。

大隊はというと、機銃砲の周りに更に塹壕を掘って機関銃を銃座に備え付けたり、村で起こった犯罪などを専門に治安維持などをしたりした。

その頃、最高司令部ではこんな情報が寄せれていた。

元々この辺りにあった小国がワイマル帝国に滅ぼされた時に、小国の高貴な身分の女性がお付きの者と共に監禁されているというのだった。

この情報に始めは、誰も聞く耳を持たなかったがヒトラーは違った。

ヒトラーは、その話しを真剣そうに聞いて
「直ぐに会議を行う」
と言ったのであった。

会議が催もよおされると、早速将軍達がヒトラーに質問をした。

「何故なぜ、たかだか小国の高貴な身分の女性だけにここまでするんですか？」
と言うと、ヒトラーは睨ねめつける様な視線を将軍に送った。

それから、
「君達は、最後まで話を真面目まじめに聞いていないからそういう事が言える！」
とちょっとキレ気味に言うと、その場が一気に静まりかえったのだった。

更に、ヒトラーはこんな事を言った。

「この辺りを統括していた小国は、元々各村の代表が五年に一度ある選挙の様な事をして国をまとめる民主主義政治が行われていたのだ。その時の小国を最終的に統治していたのは、その高貴な身分の女性である可能性が村人の噂で一番高いと判断したのだ。だから救出して、選挙を行ってもらえるようにしてもらわなくてはならないのだ」
と最初は、周りに語りかけるように言った。

そして、
「だが、小国を滅ぼしたワイマル帝国は違った。何故なら王が言った事は絶対的に実行されなければならない絶対王政だったのだ」
と打って変わって徐々に顔を高潮こうちょう激昂げっこうしだした。

それから、
「現支配国であるワイマル帝国の支配地域で、もしも今私がスピーチをしても直ぐに弾圧されてまた監獄にぶち込まれる のがおちだ」

そして、ヒトラーは言った。
「それに、ワイマル帝国はもともと革命によって出来たらしいじゃないか。まるで、それじゃあレーニンやスターリンみたいな輩ではないか。私は、そういう輩が大っ嫌いだ。」
とまで言うと、近くに置いて合った水の入った杯を飲み出した。

そこで、将軍が
「では、監禁されている女性を助けずとも一気に帝国に攻め込んでしまえばよろしいのでは…」
と言うとヒトラーは、
「私は、ミュンヘンの武力による政権奪取に失敗して投獄されたその時選挙による合法な手段を出来るだけ使う事を学んだのだ」

そして、ヒトラーは歯ぎしりしながら言った。
「それと、もしも仮にワイマル帝国に一気に攻め込んだ所でどうなる。ワイマル帝国は、ソ連以上に広大で軍事力も我々の今保有する戦力と比べて格段と桁違いだ。攻め込んで始めは、いいかもしれない。だが、無計画な戦線の拡大は補給線が伸びきって補給不足で乗り捨てなくてはならなくなる戦闘車輌も出てこよう。」
とまで言うと、流石さすがに将軍達の中には口を挟む者はいなくなった。

それを見るなり、ヒトラーは
「だから、私は手始めに小国を統治していたと思われる女性の救出するのが先決だと判断したのだ」

これに、将軍達は一個旅団を送ってワイマル帝国軍若干名に監禁されている小さな古びた古城を攻略するべく、ようやく動き出したのであった。

こうして、ヒトラーは俄然がぜんむきになって会議を一方的に意のままにしたのであった。