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異世界

取引

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「是非ともこれを私に売ってほしい」

「え!」

「アークさんや、いきなりそれは無いんじゃないかい?」

 頭の上で声がしたと思ったら、キラキラした美丈夫な男性にいきなり手を握られて懇願されている。

「これほどの腕を持つ技術者を私は見たことがない。金貨50枚…いや、80枚出す。これを私に売ってほしい」

「金貨80枚だって…!?たまげたねぇ、これはそんなに凄いものなのかい…」

 頭の上で何やら話しが進んでいるが、未だに手を握られたままの私は唖然としていて何も話す事が出来ずにいる。
 それより何より、この金髪碧眼のスーパーイケメンは何者なのでしょうか。誰か説明して下さい…。

「この腕輪には《守護の加護》が付いている。王都でもこんな素晴らしい物見た事がない」

「アークが言うなら間違いないんだろうけどねぇ。金貨80枚は…」

「ねぇ、アーク。マリーがリザおねえちゃん連れて来たの!」

「マリーが?でかしたな。明日アメを買ってきてやる」

「あ、あの…」

 完全に忘れ去られている製作者本人に漸く気が付いた三人は可笑そうに笑い出す。

「申し訳ない、リザさん。この腕輪が素晴らし過ぎてつい盛り上がってしまった」

「それは良いですけど…私、そのブレスレットは売る気ないんです」

「え!」

「金貨80枚なのにかい!?」

「マリーのアメは?」

 勝手に盛り上がっている所申し訳ないが、本当にそれだけは売る気がない。他の物は何だって手放せるけど、これだけは無理なのだ。

「両親の形見…って言うんですかね?会った事ないですけど…」

「…も、申し訳ない事をした」

「私もすまないねぇ…」

 施設の前に捨てられていた私の唯一の持ち物がこのブレスレットだった。私がハンドメイドを始めようと思ったキッカケもこのブレスレットがハンドメイドだと知ったからだった。

「いいえ、良いんです。ただ、それは大切な物なのでお譲り出来ないんです。申し訳ありません」

「いや、良いんだ。突然言い出した俺が悪い、気にしないでくれ」

「アークさん。その代わりと言ったらなんですが…これは私が作った物です。気に入ったのがあれば…」

「こ、これは…!!!」

「これマリー好き!可愛い!」

「こらマリー、辞めなさい!」

 身に付けていたネックレスに指輪、アンクレット、を外して机の上に置く。
 全く同じ表情で目を輝かせているイケメンと少女の姿に思わず笑みが溢れる。

「これ全て頂きたい」

「え!全部ですか!?」

「す、すまない…それは図々しかったな。じゃあ、この腕輪を…」

「図々しいなんてとんでもないです!寧ろ驚いてて…。これはアンクレットっと言って足につけるものなんです」

「なるほど…だからこれには《速度上昇・小》《回避率上昇・小》《身体強化・小》の付与が付いているんだな。…それと申し訳ないがそのベルトを少し見せてくれないか…?」

「ベルト…?えっと…これは…その、男性には少し可愛すぎるじゃ…?」

「し、しかしだな…これは《身体強化・中》《物理防御・中》が付与されているんだ!」

「アーク、そもそもサイズが合わないだろう?」

「うっ…」

 見た目どころか、腰に巻くことすら難しいのにそんなものが欲しいと言う。それは多分、先ほどから出てくる《付与》とか《加護》と言う言葉が関係しているのだろう。
 それと、話しを聞く限り《加護》の方が《付与》よりも珍しいが、《付与》でもかなりの効果を得られるぽい。

「あっれ?何してんの?」

「アーク、お前の声が外まで聞こえていたぞ」

「…静かにして欲しい、」

「ミャル、フィオ、シュナ、お帰り!」

「ただいまだよ~、私の愛しの可愛い可愛いマリーたん♡」

 何やらまた新しい人がぞろぞろと増えてきた。



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