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異世界
宝石
「宜しければ此方もどうぞ」
「これは?」
「昨日、ご依頼頂いました直ぐにはご用意出来なかった素材の一覧に御座います。それからこちらが市場調査結果をまとめた物になります」
「ありがとうございます」
渡されたのは何にかの名前が箇条書きでひたすら書き記されている一枚の紙と調査結果と題されている小冊子だった。
「アイルガーの喉笛…アウノレムの巻き尻尾…」
もしかしたらまたゴムの時の様に素材になる物があるかも知れない、と言う興味と未知なる素材もあるかも知れないと言う期待があった。
だが、その紙には写真もなくただひたすらに素材名だけが書き綴られている。何が何なのか、どんな物でどのように使う物なのか、さっぱり分からない物ばかり。
「あの、このアイオライトって… 青くて、見る方向によっては無色にも見える…」
「その通りです」
「じゃ、じゃあ!このパールっていうのも白くて丸くて…」
「はい、そのパールで間違いないと思います」
(知ってるのもある…!)
全てが全く分からない訳ではないことに安堵した。中にはスピネルのように元の世界と同じ名前で同じ物もある。
流石にダイアモンドやルビー、エメラルドなどは見当たらなかったが、ターコイズやトルマリン、クォーツなど私でも知っているような名前もいくつか見つけることが出来た。
ただ、やはり分かるのは宝石の名前ぐらいで他は何のことかさっぱりだった。
「其方もご用意致しましょうか?」
「そ、そのお値段は…」
「そうですね…アイオライトは少々根が張ります。大銀貨5枚といったところでしょうか。パールは安いです。キロ辺り小銀貨1枚くらいでしょうか。ただ直ぐには手に入りません」
アイオライトは海洋生物でとても泳ぎの上手な魔物で比較的出現率は高い魔物なのだそう。ただフローネには海ダンジョンがあるのでスピネルよりは安い。
そして、パールは草原エリアという場所にいる魔物で出現率もドロップ率も高く、また駆け出しの冒険者でも倒せるほど弱い魔物なので出回る量も多くとても安価だが、フローネに草原エリアも草原ダンジョンもないため、外からの輸入品になり今は手元にないのだそう。
「なら、パールだけで大丈夫です。小銀貨2枚分くらいでお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました」
パールが今直ぐではないとは言え簡単に手に入るのは有り難い。ただ、それを使うにはまだ時間がかかりそうだ。
アクセサリーを作るにしてもまずは穴を開けてビーズ加工をする必要があるし、穴を開けないにしても土台となる金属の加工は私には出来ない。それにそもそもニッパーやピンセットなどの道具が足りなさ過ぎる。
アクセサリー制作は当分お預けだ。
あとは市場調査を確認しつつ、本当に必要な物だけを揃えていこう。
「予算もあるので、取り敢えずこの辺で…。もし、ルーペリオさんのお勧めとかあるなら…」
「お勧めですね。例えばですが、こちらのポロットルの木の実なんかは如何がでしょう?木の実なのですが、木のように加工がしやすく、蒂を取ると…このように貫通した穴が開きます。リザさんの作品を見させて頂くと主に紐に通しているように見受けられたしましたのでご参考までに」
確かにこれなら木材を一から加工するよりも簡単にビーズに出来る。木の実だと言うのに木目調なのもいいし、元から丸みがあるので綺麗にヤスリをかければブレスレットのアジャスター代わりにも使えそう。
「冒険者の方に人気なのは、やはり邪魔になりにくいベルトやネックレスですね」
「男性はそうですね。武器を握る方は特に気にされると思います。ただ、魔法を扱われる方々はアクセサリーによって威力を上げたり身体能力を補ったりしますので一概には言えませんが」
「なるほど…、後この“流行”って所をもう少し詳しく…」
「市場調査の“流行”の項目に関してはお貴族様達がお作りになる物になりますので、コロコロ変わります。もしかしますと、其方に書いてあるのももう終わっているやも知れません」
「流行は…気にしない事にします…」
言葉尻を弱めていく私にルーペリオは相変わらず優しげに微笑む。
私が貴族に酷く警戒していることすら把握済みだったようだ。
「では、次になりますが…この部屋はリザ様の情報を秘匿する為に素材の倉庫として貸し出し許可は頂いておりますが、作業に関しては別で事務所を構える必要があります。候補地の選定は済んでおりますので、お時間のある時に仰って頂ければお連れします」
「宿ではダメなのですか?」
「ダメではありませんが、独自の工房を設けた方が道具や素材が増えて来た時助かります」
「私、そんなに予算は無いのですが…」
「はい。その辺も踏まえてご用意を…」
ーーーバターンッ
「リザおねえちゃん!終わった?早く行こう!」
「え、マ、マリーちゃん!?突然どうしたの…ってえ?何処に…あ!ルーペリオさん、すみませんがまた明日~!」
「おやおや…仕方がないですね」
マリーちゃんの突撃を受けて、困ったようなルーペリオさんの声を背中で受けながら私は連れ去られてしまった。
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