異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

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異世界

ハンカチ




 新しい素材と作業部屋が手に入ったので、本格的に商会運営のための商品を作りたい。
 と言うことで私はマーサちゃんのお店に出向いていた。

「いらっしゃいませ、リザさん」

「こ、こんにちは、マーサちゃん」

 ついでに注文していた方の糸の受け取りと、約束していたハンカチを見せる。実はこっちが本題だったりする。
 正直言ってあまり自信がない。
 未だに《付与》について何もわかってないのに商品が売れるのか不安でしかない。
 だから、商売に携わっている人(ハンカチを見せても大丈夫そうな相手)の正直な感想を貰いたかったのだ。

「糸はこのような仕上がりになっております。如何でしょうか?」

「はい。素敵です…」

 本当に注文通りの素晴らしい出来だ。彼女の腕の良さが分かる。

「では、お包みしますね」

「あ、今日は追加で購入しようと思っていて…」

「何かお探しですか?」

 やはり彼女は独特の雰囲気がある。金髪翡翠眼の可愛らしい子供なのに大人しく控えめで、でも凄く印象に残る。

「実はこの前買った布と糸は全部使い切ってしまって…それで…一応、持って来ました」

「是非お見せ頂きたいです」

 私はポケットからハンカチを一枚取り出すと様子を伺うようにマーサちゃんの手の上に恐る恐る乗せる。

「…素晴らしい技術ですね…。長くこのお店をやっておりますが、これほどの物を見たのは初めてです」

「長く…?」

 褒められたことよりも先にその言葉の方が耳に残った梨沙は思わず聞き返してしまう。

「ふふふ。マリーに聞いてませんか?私、小人族と言う種族でこの姿でもう大人なのです」

「…大人」

 マーサちゃんは年齢こそ言わないが、言われてみれば納得だと私はまたマーサちゃんを見つめていた。

「リザさんは《付与》も出来るのですね」

「あ、あの…はい」

「私はそちら方面はからっきしなのですが、実は私の母は《付与》が得意だったんです。このハンカチはそんな母よりも高度な《付与》が組み込まれてます」

「私も得意のようです…」

 何か不味いことでもあったのだろうか、と言葉を濁す私にマーサちゃんは可愛らしく笑う。

「問い質したりなんてしませんから安心してください」

「すみません…」

「いえいえ、寧ろすみませんでした。能力
を聞くのはご法度ですよね。《付与》は能力自体は然程珍しいと言うほどではありませんが、先天性の能力故にやりたいからと言って誰にでも出来る物じゃありません。能力の性質上成長にも限界があるのでリザさんほどの術師となると非常に珍しい存在なんです」

 先天性の能力、と言うことは《付与》は生まれながらにして持っている能力という事なのだろう。
 アークやフィオデナルドが言ってたように《付与》を三つ重ね掛け出来るのが多分マーサちゃんの言う珍しいの部類になるのだろう。

「リザさんは想いの力がとても強い方なんですね」

「想いの力…」

「私は《付与》が使えないので良くわかりませんが、母が良く言ってたんです。《付与》を掛けるときは強く願うんだと」

 《付与》の力の源が想いの力、と言われてある意味で私は納得した。
 ハンドメイドをする時、見た目は勿論だが使い易さや壊れにくさなどを考慮して素材やパーツの組み合わせを考えている。
 そんな中でも特に誰かを思って作った物は出来栄えが良かった。例えばシュナに売ったベルト。あれば娘にと思って作った物だった。
 本人には気に入ってもらえず結局身につけては貰えなかったが、それなりに良い素材を使ったこともあり自分で使っていた。

「リザさん、このハンカチは売り物ですか?」

「あ、その…迷ってました。一度はやめようと思ったのですが、先日すごく褒めてくださった人がいて…」

 おばあさんに褒められたのはお世辞だったかもしれない。それなら真剣に答えてくれそうなマーサちゃんに、と。
 もしマーサちゃんにも褒められたら…と情けないが自分に自信を付けるためにここに来た。

「そうなんですね。確かに《クリーン》が付与されていますし、この美しい品なら値段的にも買うのはお貴族様ですから卸す先も大変ですよね」

「その、余り貴族とは関わりたくないと言いますか…」

「関わらないに越したことはないです」

 マーサはさも当然そうに、ただ少し悲しそうにそう言うと、先日と同じようにまた布や糸の相談に乗ってくれた。







 



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