32 / 245
異世界
思い出
「お祖母様、お祖父様、私のお土産は何処かしら!?」
扉を開けてすぐに胸に飛び込んで来た孫娘を抱き止める。
自身の可愛さを十分に理解している彼女は持ち前の可愛らしい顔で笑顔を振りまいて出迎えてくれている。
現金なのは間違いないが、分かっていてもやはり孫娘は可愛い。
「はいはい、レミーちゃん今出しますからね…」
控えていた従者はこの展開を予見していたようにお土産のお菓子を差し出す。
「またお菓子…?」
「レミーは甘い物が好きじゃないか」
「でも、いつもお菓子ばかり。私、この前ジェーンにお祖母様にネックレスを買ってもらったって自慢されたのよ!」
頬を膨らませて友人に自慢され、その宝石がどれだけ綺麗で美しくて羨ましかったのか、そのマウントがどれだけ屈辱的だったのかを二人に力説してみせる。
「私、悔しかったのよ?お祖母様、お祖父様!私、ジェーンにだけは負けたくないの!ネックレスでいいわ!ジェーンのよりも良いものを頂戴!」
「わ、分かったわ…。レミーちゃん明日買いに行きましょ?」
「ダメよ!午後にウチでお茶会を開くの!きっとジェーンはまたあのネックレスをつけてくるのわ!お祖母様は私がジェーンなんかに負けていいの!?」
結婚適齢期を間近に控えたこの年頃の貴族の娘達にとって勝ち負けはとても大切だ。それが直接的に婚姻を左右する事もある。
着飾る事で美しさを競うのは勿論、家の力や財力、そしてそれらを購入できるツテを持っているという家紋の力を見せつける事ができる。
「うちは男爵家でジェーンの子爵家に家格では勝てないけど、私は彼女より美しいわ。絶対にジェーンより良い旦那様を捕まえなきゃ行けないの!」
「レミー。午後に…ってもう時間がないわ。お客様をお待たせする方が家を酷く言われてしまうわ。今日は諦めるしか…」
「…嫌よ。ジェーンのあの勝ち誇った顔……。ねぇ、あなた。それ何?出しなさい」
控えていた従者達が荷物を片付けているのを見てレミーは手を止めさせる。
「ハンカチかしら?とても素敵だわ…!これならあの宝石よりもみんな注目するわ!これ貰うわね!」
「…レミーちゃん、ごめんなさい。このハンカチはとても大切なものなの」
「レミー。これは私達の結婚記念日のお祝いとしてプレゼントして貰ったものなんだ」
「貰ったものなのね!なら、これは私に頂戴!お祖母様はその人にまた新しい物を貰えば良いわ!」
可愛い孫娘のお願いだが、流石にこのお願いだけは聞いてあげられなかった。
二人はこのハンカチは二度と手に入らない物なのだと理解していた。そして、社交の場に晒す気もなかった。
「レミー、それは出来ないのだよ。その方のご厚意でお祝いしてくれただけなんだ」
「じゃあ、お金を払って作らせれば良いじゃない。もっと質の良い布とか与えれば喜んでやるわ!とにかくこれは私に頂戴!」
余りの我儘に流石の二人も呆れてしまう。
「何を騒いでるのかしら」
「お母様!見て頂戴!とても素敵なハンカチなの!これがあればジェーンを見返せるわ!でも、お祖母様がくれないのよ」
「お義母様、私に似てレミーは美しい娘です。この子なら家格を上げるために良家との縁談を沢山頂けますわ。このハンカチはそんなレミーにこそ似合うと思いませんの?」
美しくないお義母様にはそのハンカチは似合わない、と貴族らしい物言いで責め立てられる。
彼女は自身が子爵家の出であることをカサに二人に散々な物言いを繰り返していて、毎年記念日には自宅でゆっくりと二人の時間を楽しんでいたのだが、彼女が来てからは折角の記念日を幸せに迎える為にと外に出ていたのだった。
「…セシリアさん。確かにあなたの言う通りこのハンカチはレミーにとても似合うと思うわ…でも、御免なさいね。これだけはどうしても譲れないの」
「私のお願い聞いてくれないの…?」
「まぁ、なんて意地汚い人なのかしら」
「…御免なさいね」
これだけ詰めても譲らない義母に二人は苛立ちを隠さない。それでも最後まで譲る事はなかった。
あなたにおすすめの小説
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】私の見る目がない?えーっと…神眼持ってるんですけど、彼の良さがわからないんですか?じゃあ、家を出ていきます。
西東友一
ファンタジー
えっ、彼との結婚がダメ?
なぜです、お父様?
彼はイケメンで、知性があって、性格もいい?のに。
「じゃあ、家を出ていきます」
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
52歳のおっさん、異世界転移したら下水道に捨てられた――下水の汚物は宝の山だった
よっしぃ
ファンタジー
【祝!3/22~25 ホットランキング第1位獲得!】
皆様の熱い応援、本当にありがとうございます!
ファンタジー部門6位獲得しました!感謝です!
【書籍化作家の本気作。まず1話、読んでください】
電車でマナー違反を注意したら、逆ギレされて殴られた。
気がついたら異世界召喚。
だが能力鑑定は「なし」。魔力適性も「なし」。
52歳のおっさんに、異世界は容赦ない。
結論――王都の地下下水道に「廃棄」。
玄湊康太郎。職業、設備管理。趣味、健康管理。
血管年齢は実年齢マイナス20歳。
そんな自慢も、汚物まみれの下水道じゃ何の役にも立たない。
だが、転んだ拍子に起きた「偶然の浄化」が、すべてを変えた。
下水には、地上の連中が気づかない「資源」が眠っている。
捨てられた魔道具。
長年魔素を吸い続けた高純度魔石。
そして、同じく捨てられた元聖女、セシリア。
チート能力なし。異能なし。魔法も使えない。
あるのは、52年分の知識と経験、そして設備屋としてのプロ意識だけ。
汚物を「資源」に変え、捨てられた者たちと共に成り上がる。
スラムから始まる、おっさんの本気の逆転劇。
この作品には、現代の「病気」と「健康」に対する、作者の本気のメッセージが込められています。
魔力は毒である。代謝こそが命である。
軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではありません。
でも、だからこそ――まず1話、読んでください。
【最新情報&著者プロフィール】
代表作『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』(オリコンライトノベル部門18位記録)の著者が贈る最新作!
◆ 2月に待望の【第2巻】刊行!
◆ 現在、怒涛の展開となる【第3巻】を鋭意執筆中!
◆ 【コミカライズ企画進行中】!
すでにキャラデザが完成し、3巻発売と同時に連載スタート予定です。絶対的な勢いで駆け上がる本作に、ぜひご期待ください!
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?