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異世界
名前
マーサちゃんの言いたい事が分かる上に周りに迷惑をかけたり、危険及ぶ可能性がある以上、この話しを通すのは我儘すぎる。
私はマリーちゃんの腕の中に収まっているキャスパリーグに視線を合わせる。
ーーーグルルルルルッ
「えっ…でも…」
「…なんと仰っているのですか?」
「…名前をつけて欲しいって…貴方はそれでいいの?」
キャスパリーグから伝わってくるとても強い決意と思い。
ーーー頼みがある…どうか助けて欲しい…
「リザさん…どうしたのですか…?」
「リザおねえちゃん…どうしたの?どこかいたいの?」
「えっ…?」
強く、強く送られてきたキャスパリーグの思い。知らないうちにそれに当てられていたようで私は頬に伝うそれに触れて始めて気付く。
私…泣いてる…の?
強い苦しみ、深い悲しみ…。
自分のものではない感情が次々との流れ込んで来る。
「何が…そんなに貴方を苦しませているの…?」
「リザさん…?」
辛い…辛い…苦しい…。
途切れる事なく繰り返される苦痛。そして、それに耐える日々の中で全てを諦め全てに絶望した。それでも終わることの無い苦しみ。
「…ダンジョン…そう…」
「ダンジョンが…どうしたのですか?」
「…どう説明したら良いのか…その…」
言い淀む。
この世界を知らない私が適当に発言してはいけない内容なのだと言うことだけはわかる。
「彼ら魔物はダンジョンがある限り人間を襲い続けないといけない…みたいで…」
「…襲わないといけないって…まるで魔物達が襲いたく無いかのような……。魔物は…人を襲います。意味もなくただ…だから…私の故郷は……ハッ!」
「マーサちゃんの故郷…?」
「…すみません。今のは忘れて下さい」
そう言って顔を背けたマーサが今どんな顔をしているのかは分からない。ただ、やはり無闇に話してはならない事だったのだという事だけはその後ろ姿を見るだけでるよく分かる。
「この世界はダンジョンのお陰で快適な生活が成り立っている」
「…そうですね。今では料理をする為の火も、喉を潤す為の水も、本を読むための明かりも…何もかもダンジョンから出た恵みに頼っています。ダンジョンからの恵みが無くなるなんて誰も考えられないでしょうね」
「この世界に存在するあるありとあらゆるものは等しく魔素を吸収して生きている、と言っています」
「その通りです。人や魔物はもちろんのこと、その辺の道端に生えている雑草でさえも魔素を取り込み、成長し、体内で魔力変換して我々の恵みとなります。でも…それが…?」
「ダンジョンも同じなんです」
「同じ…?」
ここフローネ以外にもダンジョンは世界中に無数に存在している。認知されているだけでも優に100を超えていて、今もどこかで新たなダンジョンが生まれている。
大小に関わらず、それら全てのダンジョンは道端の雑草と同じく魔素を取り込み、成長し、体内で魔力変換して我々に恵みを与えている。
そう、ダンジョンは常に成長し続けているのだ。
「…成長し続けているダンジョンが取り込む魔素量は日をおうごとに増え続けています」
「攻略が進まないと、ダンジョンは成長し続けて、空気中の魔素が足りなくなる…?」
「すると、魔物達は足りない魔素を求めて…」
「人を襲う…」
「ダンジョンが攻略されれば、その分魔素を取り込む量が減るそうです」
この先は言葉にしなくても頭の良いマーサなら理解できるだろう。そして、この問題は多分、彼女自身がその問題と向き合わない限り解決する事はない。
「ねぇ、リザおねえちゃん。猫さんに名前を付けれたらいっしょにいられる?」
「マリーちゃん…」
私とマーサちゃんの話しはまだマリーちゃんには早かったらしい。服の裾を引っ張り縋るマリーちゃんからマーサちゃんの背中に私は視線を向ける。マーサちゃんとは目は合わないもののそっと頷いてくれた。
「……キャスパリーグ。貴方の願いを叶えることが出来るかは分からないけど良いの?」
「マリーもてつだうよ!お願いごと、マリーもいっしょにかなえるから!」
「…」
「…うん、じゃあ…貴方の名前は…黒を意味するノアール。よろしくね。ノア」
「わぁ!ノア!危ない!」
ーーーグルルルルル
マリーちゃんの腕から飛び出したノアは私達に飛び移り、腕の中で気持ち良さそうにのどを鳴らした。
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