異世界で趣味(ハンドメイド)のお店を開きます!

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異世界




「あぁ、三人ともお帰り」

 高々と上がっていた太陽が傾いて、普段なら住民達が大きな欠伸を漏らし始める午後。
 朝と変わらず、優しい声で出迎えてくれたのはフランさん。

「お腹すいたんじゃないかい?」

 昼頃には戻ると意気揚々と出発した私達だったが、結局宿屋に帰ってきたのは何処の店もも片付けを始める時間だった。

 私達は優しいフランさんに甘えて遅めの昼食を取ることになった。

 美味しそうに頬張るマリーちゃんの口の周りを優しく拭いてやるマーサちゃん。二人は相変わらず、歳の離れた可愛らしい姉妹のよう。

「あぁ。そうだ、リザ。忘れるところだった。ジンクスがギルドに寄って欲しいってさ」

「ジンクスさんが?」

「お昼前の忙しい時間に来てね…ってそういや、珍しく少し慌ててたね…?用事がないならご飯食べたら行っておいで」

「はい、そうします」

 なんの用事だろう…?
 相変わらずお祭り騒ぎの外とは違い、ゆったりとした昼下がりの楽しい食事の時間が過ぎて行く。
 たった半日だったけど森では中々に濃い時間を過ごした。疲れてしまったのかコクリコクリと船を漕ぎ出したマリーちゃんをマーサちゃんに預けて、私は商業ギルドに向かった。






ーー
ーーー
ーーーー
ーーーーー




 


「やっと帰ってきたか…」

 見たことの無いほどにすっかり目の下に隈を住まわせて、掠れ切った声を出しながら腕を伸ばしてきたジンクスさんに思わず駆け寄る。
 普段なら落ち着いているはずの時間帯だと言うのに、今日は異様に出入りしている人の数が多い。
 中には少し商人には見えない荒っぽい人まで見える。

 リンリンさんも挨拶する暇もないほど手一杯のようで、一瞬目が合ったものの直ぐに逸されてしまった。

「お祭り騒ぎと何か関係が…?」

「関係も何も…いや、上に行ってから話そう」

 ジンクスさんの後をついて歩き、いつものように彼の部屋へと通された。

「リザさんも知っての通り、【金色の獅子】が32年ぶりにダンジョン攻略を達成して、その余波でうちもこの有様だ」

 ジンクスは両手を広げて、部屋の中の様子を見せびらかすように冗談ぽく言うがしているが、部屋の中は書類の山をひっくり返したような状態で相当忙しかったのだと容易に想像出来る。

 32年ぶりのダンジョン攻略はフローネの冒険者達の悲願だ。しかも、森林ダンジョンに至っては50年ぶりの快挙だった。
 上級ダンジョンは10階層ずつしか転移が出来ない。要は50階層まで行くのには40階からスタートしなければならない。
 当然、体力や精神的な消耗に加えて武器や防具もボロボロ、体は泥だらけ、傷だらけ、食事も残りわずか。

 でも、50階層を突破した今。【金色の獅子】達は50階層の転移魔法陣から行動できる。
 しっかり準備を整えた状態で誰よりも早くロマン溢れる未知な世界に足を踏み入れることが出来る。
 当然、他の冒険者は50階層を突破しなければ50階層の転移魔法陣は使用できない。
 50階層以降の新たな魔物もそこから取れる素材も全て【金色の獅子】達だけのものになる。

「まぁ、当然そんなの周りも黙ってないよな。なんて言ったってアイツらはつい先日 Aランクに上がったばかりなんだからな」

「それが商業ギルドに何か関係があるのですか?」

「関係も何も…リザさんが作った鞄のお陰で攻略出来たとアイツらは触れ回ったんだぞ?当然の結果だろう?」

 確かに計画ではダンジョン内で鞄を使って宣伝する手筈にはなっていたが、攻略という大名誉が鞄のお陰になっているなんて思いもしなかった。
 そもそもあの鞄は金貨200枚もする日本円の価値にして2000万。私からすれば当然誰が買うんだ、と疑問すら感じていた。

「安心してくれ。偽物の方も予定通りうまく進んでる。午前中のうちにこの町にいる術師全員が販売登録していった」

「それは良かったです」

「だから予想通り申し込みはAランクパーティーの3組だった。まぁ、金貨200枚だもんな。当然の結果といえばそうなんだが」

「何の申し込みですか…?」

「例の革鞄のだ。今、その3組が依頼任務に出発したところだ」

「3…?」

「本当、何もかもフィオデナルドの言った通りになってムカつくな…」

 大袈裟にため息ついたジンクスは大きく身体をソファーに預けて言った。








 




 



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