愛人

歌詞のようなもの

ノータイトル

　何故人は無くなってしまうものを追い求め、存在し続けるものを見捨てるのか。
　目に見えるものしか信じないと言いながら、困った時の神頼み、なんて言葉があり、何かに縋ろうとする。
　何十年生きていたって見つからない答えをずっと探し続けるのだ。

　いつから、人は自分の側にいてくれる存在を当たり前と感じてしまうのだろう。まるで自分の周りに永遠に居てくれるような錯覚に落ちる。
　何故甘え、信じ、失望し、涙してもなお探して見つけて同じことを繰り返すのだろう。

　死にたいと願うのに死ぬ勇気は無く、生きたいと思うのに生きる意味が分からず、愛したいと願うのに愛されたいばかりが渦巻き、どこをどう取っても良いものなんてない世界に、人は放り出された。

　満たされるものを探して旅に出る者。諦めてうずくまる者。まずそもそもそういう事に気づかない者。気づいても気づかぬふりをする者。渇望し手に入れ大切にする者。人々はそうして世界を回す。自分がいつまで経っても同じ場所に居ることに気づかずに。

　何故生き、死に、愛し愛され、食べて飲み仕事をするのか。それを知らずして生きる人間の愚かたるや。

　気づいているのに気づかぬふりをするのだ。
　そうして罪を重ねるのだ。
　だから人々は乞い願う。

　　この世界の存続と、人々の繁栄を。