愛人

鈴江直央

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歌詞のようなもの

わたし

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何も知らなかったら
生きていたくもない
つまらない世界だ

何も知らなかったら
苦しむだけの
最悪な世界だ

人との繋がりも
人から与えられる愛も
私が私であるために
必要なものは
私には冷たくて辛いもの

そう感じてしまう心が
自分は人ではないのだと
自分は底辺の人間になりきれない
何かなのだと叫ぶ

つまらないテレビも
行き交う人の会話も
すべてがノイズ混じりで
はっきり聞こえない

心の中に小さく
薄っすらと差す光を
なんとか消えないように
大事にするので精一杯で
自分を認めてやるのが大変で

どれほど生きて
どれほど泣いて
どれほど経験しても
気づくのが遅い私は
周りの人の苦しみや悲しみに
寄り添うフリしか出来ず

泣くことを忘れて
心を殺して
あらゆる人を傷つけて
生きてきた

せめて

人のために泣けて
人のために行動できて
人のために生きていけたら

この笑顔は本物になる気がする

自分がこの世界に存在して
大切な人と笑い合って
大好きな人と何気ない日を送るのが
それだけで幸せと言えるなら
生きているだけで素晴らしいと
思えるようになったら

その時初めて
わたしは私になる
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