【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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113章

元魔王様と危うい男爵領 9

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 魔族の巨大な脚がジルに向かって下りてくる。
ジルはそれを片手で難無く受け止めた。

「止めただと!?」

 下等種族と侮っていたジルに自分の攻撃が止められるとは思わず驚愕の表情を浮かべている魔族。

「自慢の攻撃が止められて残念だったな。」

「こんなものが攻撃なものか!魔装すればお前の様な人族如き簡単に!」

 魔族の脚が魔装される。
ジルの手に加わる重さが一気に増したが、対するジルも魔装する事で対抗する。

「な、何故潰れんのだ!?」

「我も魔装しているからな。お前くらいの攻撃で潰されてたまるか。」

 まだまだ余裕たっぷりと言った様子でジルが呟く。
戯れに魔装しただけであり、魔装無しでも押し負ける事は無かったりする。

「あ、あり得ない!?魔族の俺が人族なんかに!?」

「よっと!」

 ジルが巨大な脚を押し返す。

「ぬお!?」

 急に脚が大きく持ち上がり、魔族は尻餅を付いて地面を揺らす。

「さて、もう一度尋ねよう。魔族が人族の真似事をして何をしている?」

「うおおおお!」

 魔族はジルの質問には答えず、今度は魔装した拳を振おうとしてきた。

「答えないか。」

 ジルは拳を回避しつつ銀月を抜刀して魔族の巨体を斬る。

「ぐはっ!?」

 一刀で斬り伏せられた魔族が地面に倒れる。
情報が得られなかったのは残念だが、あのまま会話を続けても答えるとは思えなかったので仕方無い。

「こ、殺したの?」

「先に殺そうとしてきたのはこいつだからな。それに殺意を向けてきた相手に容赦する必要は無い。」

 他者に殺意を向ける行為は自分が殺されても文句は言えない。
敵意には敵意を、殺意には殺意を返すのがジルのやり方だ。

「それもそうね。でも目的は聞けなかったわね。」

「この先に進めば何かしら分かるだろう。」

 偽装結界の方を見ながら呟く。
魔族が絡んでいるとはいよいよ怪しくなってきた。

「行くわよ。」

 ジル達は偽装結界の方に向かって進んでいく。
そろそろ到着すると言ったところで二人の足が止まる。

「ん?どうした?」

「何だかこれ以上進みたくない感じがするわ。」

「そうですね。何故か引き返したいと感じています。」

 二人にそう言われたジルは通り過ぎた方向を見て納得した。
偽装結界の前に別の結界を既に通過していたのだ。

「ふむ、偽装結界だけで無く帰還結界も張られていたか。そこまでして近付けたく無いらしい。」

 ジルには高い結界魔法の適性がある。
故に帰還結界なんて全く気にならなかったのだが、適性が低かったりそもそも無い二人からすると厄介だ。
ジルがいなければ帰還結界にも気付けずに、気持ちを優先して引き返していただろう。

「帰還結界って強制的に帰りたくなる気持ちにさせられる結界だったわよね?」

「そうだ、そう思わせられるだけで害は特に無いぞ。」

 しかしその思い込みが厄介ではある。
突然感じる不気味な程の帰還願望は、この先に何か恐ろしいものがあるのではないかと言う予感と誤認させる。
結界魔法の適性が無い強者程、自身の予感に頼って引き返してしまう事が多いのだ。

「害が無いなら進みましょうか。サリー、大丈夫?」

「はい、問題ありません。」

 ジルに結界の効果だと知らされて意識してしまえば、それ程気になる事でも無くなる。
帰還結界を突破した

「ここから偽装結界だな。何があるか分からないから注意しておけよ。」

 ジルが注意するとルルネットは短剣、サリーは杖をそれぞれ構える。
先程の様に突然戦闘に入ってもおかしくない。
三人は武器を構えつつ偽装結界を通過する。

「なっ!?」

「こ、これは。」

「ほう、アイフは随分と厄介な事になっているな。」

 偽装結界を通過すると景色は一変する。
木々が並び立つ森の中に見えていた光景が大量のテントが置かれた魔族の仮拠点へと変わったのだ。
そして魔族の何人かがジル達に気付く。

「おい、人族だ!人族が迷い込んで来ているぞ!」

「何?結界は仕事していないのか?」

「それを乗り越えてきたみたいだな。」

「見張りは何をしている!」

「血の匂いがする!こいつら殺して入ってきたんだ!」

「人族に殺されるとはギガントの恥晒しが!」

 多種多様な魔族達が敵意を剥き出しにしてくる。
鼻が効く魔族には先程のギガント種を倒した事もバレてしまった様だ。

「ど、どうする?」

「どうするも何も向こうは戦う気だぞ。」

 ジル達を逃さない様に展開してくる魔族達。
テントの中からは続々と魔族達が出て来ている。

「で、ですが数が多過ぎませんか?」

 こちらは三人なのに対して魔族側は数十人と言う規模なのだ。

「我は撤退でも構わないが、魔族と出会った時の対処法はどうしているんだ?」

「そんなの知らないわよ。魔族と会った事なんて無いんだから。」

「人族の国に魔族が現れると言うのは大事ですからね。」

 人族と魔族は敵対関係にある。
人族の領土に魔族がいたり、魔族の領土に人族がいたりすれば即戦いに発展してもおかしくない。
だからこそ浮島にいる魔族達には人化のスキルや魔法道具で対策してもらっているのだ。

「その大事が今起きている訳だが?」

「多分だけどその領地を統括する領主に連絡して騎士団や冒険者を募って討伐、王家にも連絡を入れたりって感じになる筈よ。」

 魔族が好き勝手に暴れ始めて市民が大量に虐殺なんてされては手遅れだ。
目的が分からなくても早急に対処する必要がある。

「しかし現状のアイフにはそんな余裕は無さそうですね。」

「ならば我らが相手をするしか無いだろう。逃してくれる気も無さそうだしな。アイフ男爵やエトには事後報告でも入れておけば問題無いだろう。」

 ジルが銀月を構えながらそう呟くのだった。
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