1,095 / 1,122
117章
元魔王様とテイマーの島 10
しおりを挟む
あまり歓迎されていない雰囲気を感じつつもジル達は村長の家へとやってきた。
「何もないところだが泊まる事くらいは出来るだろう。」
「ありがとうございます村長さん。」
村の中では一番の大きさだ。
宿が無い事を考えれば村長の家が最も寛げそうである。
「フルクだ。この沿岸村の村長をしている。」
「沿岸村?」
「私達の村が海に近いからそう呼ばれているだけだ。」
砂浜から沿岸村までそれなりに山道を歩いたが、村からも海が見える。
村長の家に着くまで歩いた村の中で絶景を楽しませてもらった。
「他にも村があるのですか?」
「ああ、他にもテイムーランドには幾つかの村がある。だがお前達の求める酒はこの村のものだ。」
「おー!それを求めて来たのじゃ!」
目的の物を早速見つけられてナキナが嬉しそうな声を出す。
「本当に酒だけが目当てなのだな?」
フルクが確認する様に尋ねてくる。
「逆に聞くがそれ以外の何を疑っているんだ?」
「村人達も随分と殺気立っていたのです。」
「どうやら本当に何も知らない様子だな。」
ジル達を疑っていたフルクの肩の力がようやく抜けた。
「近々テイムーランドでは年に一回の大村長を決める従魔競争が行われようとしている。」
「従魔競争?」
「従魔同士を競わせるのかのう?」
「テイマーも参加するがその様なものだ。殺気立っていた理由としては、お前達が従魔競争の直前に現れたからだ。沿岸村の者達は他村の諜報員ではないかと疑った訳だな。」
重要な催し事がもう少しで開かれる事もあって、他の村に手の内を明かす訳にもいかず、沿岸村を訪れてきたジル達を怪しんでいたと言う訳だ。
「成る程、本当に時期が悪かったのだな。」
ガザリオが時期が悪いと言っていた意味が理解出来た。
「それは申し訳無い事をしたのじゃ。そんな催し物が開かれているとは知らず。」
「外の者ならば仕方無い事だろう。疑いも晴れた事だし構わない。」
「ならば酒を手に入れたら直ぐにでも島を発った方が良さそうじゃな。」
「そうした方がいいかもなのです。」
沿岸村に滞在していれば村人達にいらぬ不安を抱かせる事になる。
従魔競争の邪魔にならない様にテイムーランドを出るのがいいだろう。
「フルク村長、お酒を譲って頂きたいのだけど、何か欲する物はあるかしら?」
ここは周りを海に囲まれた島なので貨幣を使う文化は無いだろうとレーテルが物々交換を提案する。
しかしフルクは首を横に振った。
「ん?欲しい物が無いのか?」
「そう言う訳では無いのだが、酒を譲る事が出来無いのだ。」
「む?まだ諜報員の疑いが晴れないかのう?」
「いや、それは疑っていない。近くで見聞きして従魔達も心穏やかな者達に従っているのだと分かった。」
フルクが従魔達を見ながら穏やかな笑顔を浮かべて言う。
テイムーランドで暮らしている事からフルクもテイマーなのだろう。
従魔を見て何かしら感じる事があったのかもしれない。
「ならば何故じゃ?」
「先程従魔競争にて大村長を決めると説明したな?その大村長とは島にある全ての村の村長の上に立つ存在だ。実質島の1年間を掌握する者と考えてもらっていい。」
従魔競争に勝利した村の村長は島一番の権力を1年間有する事となる。
それだけ重要な催し事ならば他村の諜報員と疑ったのも納得である。
「その大村長に相応しく無い者がいてな。それが現大村長なのだが、再び従魔競争を制して大村長となってしまえば沿岸村の酒はもう1年間作れなくなってしまう。」
フルクが悲し気な表情で呟く。
「酒を作れなくなる?大村長とやらに作るなと命令されているのか?」
「秘伝の酒を作るには欠かせない材料があってな。それを独占されてしまっているのだ。他にも使い道があるからと理由を付けられて沿岸村には卸してもらえない。」
「酷い事をするわね。」
大村長の発言を覆すのは難しいらしく、説得を試みるも良い結果は得られなかったらしい。
材料が無ければ得意の酒作りも行う事が出来無い。
「それが1年前から続いていてな。沿岸村に蓄えてあった酒も寄越せと言われて殆ど持っていかれ、在庫は尽きてしまった。お前達がどれだけ求めていようと無い物を差し出す事は出来無い。」
沿岸村にある酒は既に無くなってしまった。
新しく作ろうにも材料が無い。
だからこそ今年の従魔競争に勝って再び酒作りが出来る様にしたいのだ。
「わざわざ訪ねて来たのじゃが、まさかテイムーランドがそんな事になっているとはのう。」
「どうする?」
「決まっているのです。ジル様、シキ達の出番なのです。」
「そうだな、ここまで来て手ぶらで帰れん。」
ジルとシキが互いを見ながらしっかりと頷き合うのだった。
「何もないところだが泊まる事くらいは出来るだろう。」
「ありがとうございます村長さん。」
村の中では一番の大きさだ。
宿が無い事を考えれば村長の家が最も寛げそうである。
「フルクだ。この沿岸村の村長をしている。」
「沿岸村?」
「私達の村が海に近いからそう呼ばれているだけだ。」
砂浜から沿岸村までそれなりに山道を歩いたが、村からも海が見える。
村長の家に着くまで歩いた村の中で絶景を楽しませてもらった。
「他にも村があるのですか?」
「ああ、他にもテイムーランドには幾つかの村がある。だがお前達の求める酒はこの村のものだ。」
「おー!それを求めて来たのじゃ!」
目的の物を早速見つけられてナキナが嬉しそうな声を出す。
「本当に酒だけが目当てなのだな?」
フルクが確認する様に尋ねてくる。
「逆に聞くがそれ以外の何を疑っているんだ?」
「村人達も随分と殺気立っていたのです。」
「どうやら本当に何も知らない様子だな。」
ジル達を疑っていたフルクの肩の力がようやく抜けた。
「近々テイムーランドでは年に一回の大村長を決める従魔競争が行われようとしている。」
「従魔競争?」
「従魔同士を競わせるのかのう?」
「テイマーも参加するがその様なものだ。殺気立っていた理由としては、お前達が従魔競争の直前に現れたからだ。沿岸村の者達は他村の諜報員ではないかと疑った訳だな。」
重要な催し事がもう少しで開かれる事もあって、他の村に手の内を明かす訳にもいかず、沿岸村を訪れてきたジル達を怪しんでいたと言う訳だ。
「成る程、本当に時期が悪かったのだな。」
ガザリオが時期が悪いと言っていた意味が理解出来た。
「それは申し訳無い事をしたのじゃ。そんな催し物が開かれているとは知らず。」
「外の者ならば仕方無い事だろう。疑いも晴れた事だし構わない。」
「ならば酒を手に入れたら直ぐにでも島を発った方が良さそうじゃな。」
「そうした方がいいかもなのです。」
沿岸村に滞在していれば村人達にいらぬ不安を抱かせる事になる。
従魔競争の邪魔にならない様にテイムーランドを出るのがいいだろう。
「フルク村長、お酒を譲って頂きたいのだけど、何か欲する物はあるかしら?」
ここは周りを海に囲まれた島なので貨幣を使う文化は無いだろうとレーテルが物々交換を提案する。
しかしフルクは首を横に振った。
「ん?欲しい物が無いのか?」
「そう言う訳では無いのだが、酒を譲る事が出来無いのだ。」
「む?まだ諜報員の疑いが晴れないかのう?」
「いや、それは疑っていない。近くで見聞きして従魔達も心穏やかな者達に従っているのだと分かった。」
フルクが従魔達を見ながら穏やかな笑顔を浮かべて言う。
テイムーランドで暮らしている事からフルクもテイマーなのだろう。
従魔を見て何かしら感じる事があったのかもしれない。
「ならば何故じゃ?」
「先程従魔競争にて大村長を決めると説明したな?その大村長とは島にある全ての村の村長の上に立つ存在だ。実質島の1年間を掌握する者と考えてもらっていい。」
従魔競争に勝利した村の村長は島一番の権力を1年間有する事となる。
それだけ重要な催し事ならば他村の諜報員と疑ったのも納得である。
「その大村長に相応しく無い者がいてな。それが現大村長なのだが、再び従魔競争を制して大村長となってしまえば沿岸村の酒はもう1年間作れなくなってしまう。」
フルクが悲し気な表情で呟く。
「酒を作れなくなる?大村長とやらに作るなと命令されているのか?」
「秘伝の酒を作るには欠かせない材料があってな。それを独占されてしまっているのだ。他にも使い道があるからと理由を付けられて沿岸村には卸してもらえない。」
「酷い事をするわね。」
大村長の発言を覆すのは難しいらしく、説得を試みるも良い結果は得られなかったらしい。
材料が無ければ得意の酒作りも行う事が出来無い。
「それが1年前から続いていてな。沿岸村に蓄えてあった酒も寄越せと言われて殆ど持っていかれ、在庫は尽きてしまった。お前達がどれだけ求めていようと無い物を差し出す事は出来無い。」
沿岸村にある酒は既に無くなってしまった。
新しく作ろうにも材料が無い。
だからこそ今年の従魔競争に勝って再び酒作りが出来る様にしたいのだ。
「わざわざ訪ねて来たのじゃが、まさかテイムーランドがそんな事になっているとはのう。」
「どうする?」
「決まっているのです。ジル様、シキ達の出番なのです。」
「そうだな、ここまで来て手ぶらで帰れん。」
ジルとシキが互いを見ながらしっかりと頷き合うのだった。
5
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる