【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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117章

元魔王様とテイマーの島 10

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 あまり歓迎されていない雰囲気を感じつつもジル達は村長の家へとやってきた。

「何もないところだが泊まる事くらいは出来るだろう。」

「ありがとうございます村長さん。」

 村の中では一番の大きさだ。
宿が無い事を考えれば村長の家が最も寛げそうである。

「フルクだ。この沿岸村の村長をしている。」

「沿岸村?」

「私達の村が海に近いからそう呼ばれているだけだ。」

 砂浜から沿岸村までそれなりに山道を歩いたが、村からも海が見える。
村長の家に着くまで歩いた村の中で絶景を楽しませてもらった。

「他にも村があるのですか?」

「ああ、他にもテイムーランドには幾つかの村がある。だがお前達の求める酒はこの村のものだ。」

「おー!それを求めて来たのじゃ!」

 目的の物を早速見つけられてナキナが嬉しそうな声を出す。

「本当に酒だけが目当てなのだな?」

 フルクが確認する様に尋ねてくる。

「逆に聞くがそれ以外の何を疑っているんだ?」

「村人達も随分と殺気立っていたのです。」

「どうやら本当に何も知らない様子だな。」

 ジル達を疑っていたフルクの肩の力がようやく抜けた。

「近々テイムーランドでは年に一回の大村長を決める従魔競争が行われようとしている。」

「従魔競争?」

「従魔同士を競わせるのかのう?」

「テイマーも参加するがその様なものだ。殺気立っていた理由としては、お前達が従魔競争の直前に現れたからだ。沿岸村の者達は他村の諜報員ではないかと疑った訳だな。」

 重要な催し事がもう少しで開かれる事もあって、他の村に手の内を明かす訳にもいかず、沿岸村を訪れてきたジル達を怪しんでいたと言う訳だ。

「成る程、本当に時期が悪かったのだな。」

 ガザリオが時期が悪いと言っていた意味が理解出来た。

「それは申し訳無い事をしたのじゃ。そんな催し物が開かれているとは知らず。」

「外の者ならば仕方無い事だろう。疑いも晴れた事だし構わない。」

「ならば酒を手に入れたら直ぐにでも島を発った方が良さそうじゃな。」

「そうした方がいいかもなのです。」

 沿岸村に滞在していれば村人達にいらぬ不安を抱かせる事になる。
従魔競争の邪魔にならない様にテイムーランドを出るのがいいだろう。

「フルク村長、お酒を譲って頂きたいのだけど、何か欲する物はあるかしら?」

 ここは周りを海に囲まれた島なので貨幣を使う文化は無いだろうとレーテルが物々交換を提案する。
しかしフルクは首を横に振った。

「ん?欲しい物が無いのか?」

「そう言う訳では無いのだが、酒を譲る事が出来無いのだ。」

「む?まだ諜報員の疑いが晴れないかのう?」

「いや、それは疑っていない。近くで見聞きして従魔達も心穏やかな者達に従っているのだと分かった。」

 フルクが従魔達を見ながら穏やかな笑顔を浮かべて言う。
テイムーランドで暮らしている事からフルクもテイマーなのだろう。
従魔を見て何かしら感じる事があったのかもしれない。

「ならば何故じゃ?」

「先程従魔競争にて大村長を決めると説明したな?その大村長とは島にある全ての村の村長の上に立つ存在だ。実質島の1年間を掌握する者と考えてもらっていい。」

 従魔競争に勝利した村の村長は島一番の権力を1年間有する事となる。
それだけ重要な催し事ならば他村の諜報員と疑ったのも納得である。

「その大村長に相応しく無い者がいてな。それが現大村長なのだが、再び従魔競争を制して大村長となってしまえば沿岸村の酒はもう1年間作れなくなってしまう。」

 フルクが悲し気な表情で呟く。

「酒を作れなくなる?大村長とやらに作るなと命令されているのか?」

「秘伝の酒を作るには欠かせない材料があってな。それを独占されてしまっているのだ。他にも使い道があるからと理由を付けられて沿岸村には卸してもらえない。」

「酷い事をするわね。」

 大村長の発言を覆すのは難しいらしく、説得を試みるも良い結果は得られなかったらしい。
材料が無ければ得意の酒作りも行う事が出来無い。

「それが1年前から続いていてな。沿岸村に蓄えてあった酒も寄越せと言われて殆ど持っていかれ、在庫は尽きてしまった。お前達がどれだけ求めていようと無い物を差し出す事は出来無い。」

 沿岸村にある酒は既に無くなってしまった。
新しく作ろうにも材料が無い。
だからこそ今年の従魔競争に勝って再び酒作りが出来る様にしたいのだ。

「わざわざ訪ねて来たのじゃが、まさかテイムーランドがそんな事になっているとはのう。」

「どうする?」

「決まっているのです。ジル様、シキ達の出番なのです。」

「そうだな、ここまで来て手ぶらで帰れん。」

 ジルとシキが互いを見ながらしっかりと頷き合うのだった。
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