【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
19 / 1,122
2章

元魔王様と人族の街 9

しおりを挟む
 試験官の下に向かうと、白目を剥いて気絶していた。
ジルの掌底による攻撃が変換されて魔力を減らし、魔力切れを引き起こしている。

「これでは結果が聞けないな。」

「何々?うわー、君なにしたの?」

 どうしようか戸惑っていると、激突音を聞いた近くの試験官の一人が話し掛けてきてくれた。

「普通に攻撃しただけだ。」

「本当に?怪しいな。特殊な魔法道具でも使用したんじゃない?」

 本来ランク選定試験は冒険者となる者の技量を正確に測る試験である。
それによって適正ランクに分けられ、冒険者の依頼による死亡者を減らす目的がある。

 なので本人の実力を出す為の武具であれば問題無いが、道具の性能に頼って最初から高ランクを得ようと、魔法道具を使う行為は禁止なのだ。

「ならば代わりに試験官をやってくれ。」

 何やら疑われている様なので、無実を晴らす為に相手を頼む。
認めてくれれば誰であろうと構わない。

「いいよ、魔法道具を見る目は中々にあるしね。おーい、皆んな集まってくれ。」

 試験官が周りに声を掛けて、演習場の全ての試験官達が集まってくる。
戦っている間、ジルに怪しい動きが無いか監視させる為らしい。

「魔法道具を使っていないなら、見てもらっても構わないだろ?」

「別にいいぞ。」

 ジルとしては特に問題は無い。
魔法道具に頼っておらず、純粋な自分自身の力なのだ。

「なら早速始めようか。どこからでも掛かってくるといい。」

 ジルは一応先程の試験官が弱かった事を想定して、全く同じ動作を行った。
結果試験官は吹き飛んでいき、石壁に激突して気絶するところまで先程と全く同じである。

「馬鹿な!?」

「あり得ない…。」

「そんななりで、魔法道具も使わずに…。」

 周りの試験官達はザワザワと騒いでいる。
ジルも思った事だが人族から見て相当弱そうな見た目をしている事は確かな様だ。

「まだ疑うならば全員で掛かってこい。まとめて相手をしてやろう。」

 もはやどちらが挑む側か分からなくなってきたが、試験官達が納得するまで相手をするしかない。
警戒する様にそれぞれが武器を構えたのを確認して、ジルはその場で大きくジャンプする。

「どうやら身体能力は相当高いらしい。ならば集団戦と言う事もあるし、魔法も試しておくとしよう。ファイアアロー!」

 せっかくの機会なので、人族となった身体での魔法の使用感も確かめてみる事にした。
ジルは初級火魔法の一つを使用してみた。
すると空中に矢の形をした火が複数現れる。

「無詠唱魔法だと!?」

「新人冒険者じゃ無いのかよ!」

「な、なんて数…。」

 またもや試験官達はザワザワと騒いでいたが、ジルによって放たれた無数の火の矢によって、その声は悲鳴へと変わっていった。

 微かに悲鳴に混じって、「なんだこの威力は…。」と声を発した者もいたが、悲鳴に掻き消されて誰の耳にも届かなかった。

「残ったのは一人だけか。」

 ジルが着地すると、女性の試験官一人を残して全滅であった。
ファイアアローの魔法を受けて、皆んな魔力切れを起こしている。

 残った試験官も今目の前で起こった事を理解出来ず、「ファイアアローって上級魔法だったんだ、あははは。」と遠い目で現実逃避をしている。

「な、なんですかこれ!?」

 どうしたらいいのか迷っていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。

「ミラか、丁度良い。ランクは誰に聞けばいいのだ?」

 ジルがそう言ってミラに尋ねるが、その前に気絶した試験官達を放置しておく訳にもいかず、一先ずギルドの職員を呼んで敷地内にある下宿に移動させた。

「それで何があったんですか?」

 受付に戻ってきたジルは、ミラに何をやらかしたのかと問い詰める様な目を向けられる。

「我は普通に戦っただけだ。思ったよりも試験官が弱くてな。」

 手を多少抜いて挑んだのだが、試験官はあっさりと倒れてしまった。
魔王時代とは比べ物にならない程に弱体化している筈なのだが、それでも余裕で勝ててしまった。

 魔王時代に挑んできた人族達はもう少し手応えがあったのだが、人族の中でも選りすぐりの猛者とギルド職員では比較するのは難しいだろう。

「弱いって…。試験官は全員Dランクくらいの強さはあるのですが。」

 ある程度の実力が無ければ試験官は務められない。
なので試験官には相応の実力が求められるので、冒険者の中でも中盤くらいの実力はあるのだ。

「そう言われてもな。」

「それよりも何故全員が倒れる様な事になったんですか?」

 本来ランク選定試験は一人の試験官に担当してもらうものだ。
全員相手取る事になった経緯を知りたいのだろう。

「魔法道具の使用を疑われてな。疑うなら掛かってこいと言った結果だ。」

「そう言う事ですか。本当に使ってないんですか?」

 ミラは納得しつつも少し疑いの目を向けてくる。
初日に絡まれた大男との一件で多少なりとも強い事は分かっているが、試験官を全員倒してしまうのは少し信じられないのだろう。

「別に調べてもらっても構わん。」

 ジルとしては本当に何も不正はしていないので、手を広げて調べられる構えを取る。

「ミラよ、安心せい。その者は魔法道具を身に付けてはおらん。」

 ミラが身体検査をしようと立ち上がったところで誰かが声を掛けてきた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...