249 / 1,122
28章
元魔王様と解呪の秘薬 5
しおりを挟む
何故かルルネットは冷や汗を流しており、身体を小刻みに震えさせながらこちらを向いた顔が小さく横に振られている。
何か恐ろしい物でも見た様な反応だ。
「ルルネット、どうかしたのか?」
「で、ででででっ…。」
「おお、ルルネットと言えばトレンフルの令嬢か!」
ルルネットの様子がおかしくなっており、何かを言い掛けたところでエトがルルネットが貴族である事に気付く。
そして名前を呼ばれたルルネットはビクリと身体を震わせる。
「トレンフルのダンジョンなのだからいてもおかしくは無いか。だがその歳でこの階層まで潜れるとは、優秀な護衛を付けているとは言え大したものだ。」
エトはジルにも視線を向けながら何度か頷いている。
二人の実力の高さを誉めてくれている。
「あわわわ、そそそそんなお言葉、とても恐れ多い事でございますですわ。」
「ルルネット、先程から様子がおかしいぞ?」
エトの賛辞の言葉にルルネットの様子は益々おかしくなり、口調もよく分からない事になっている。
「おおおおかしいってそんなの…。」
「まあ待てルルネット嬢、ここでは身分なんて堅苦しい物は無しだ。ダンジョンを探索するただのエトと言う事で頼む。」
エトがルルネットの言葉を遮って意味深な台詞を告げる。
その言い回しから身分があるのは確定したが、ルルネットの様子がこれ程おかしくなるとは相当身分が高いのかもしれない。
「…分かりまし…、コホン、分かったわエトさん。」
ルルネットが覚悟を決めた様に言い掛けた言葉を改めて名前を呼ぶとエトは満足そうに頷いている。
だがその後エトに見えない様にジルに振り向いたルルネットの表情は、困った様な祈る様な怒っている様な複雑な表情をしていた。
ルルネットの心情としては余計な事や失礼な事を言うなと思っているのだが、そんな願いは残念ながらジルには届かない。
「護衛の君も気軽にエトと呼んでくれ。」
「ああ、我はジルだ。」
頷きながらこちらも名を名乗る。
ジルは相手が貴族であっても下手に出る様な事は無い。
どんな相手であっても対等に接しようとするのは魔王時代から変わっていない。
「ジルか、改めて仲間を救ってくれた事に感謝を。」
「気にするな、成り行きだ。」
エトが手を差し出してきたので握手に応じながらそう答える。
ジルには見えていないが後ろではルルネットが頭を抱えていた。
そんなやり取りの間にソートがジルの渡したポーションを使用して二人の傷と麻痺毒を癒した。
流した血までは戻らないので少し武闘家を休ませてから出発する様だ。
「パーティーは復活したがダンジョンから帰れるのか?」
それなりに戦闘は出来そうなパーティーに見えるが先程の様な事が帰り道にも起こる可能性はある。
そうなった時に今度こそ全滅の危険がある。
「魔物の群れに囲まれたのは不運だったが、あんな事は滅多に起こらないから運頼みだな。それにまだ帰る訳にもいかないのだ。」
怪我をした仲間達を痛々しそうに見ながらもエトが言う。
引き返す訳にはいかない確固たる意志を持っている様子だ。
「ポーションが尽きたと聞いたが?」
予備の回復手段が無くなり、ヒーラーに頼り切りになるのは危険だ。
もしヒーラーが先に行動不能にさせられたら、待っているのはパーティーの壊滅だろう。
そうならない為に急いで出口を目指すべきである。
「ああ、尽きている。だがダンジョンに来た目的をまだ果たしていないのだ。」
「仲間を危険に晒してるんだぞ?引き返すのが賢明だと思うが?」
目的は知らないが自分達の命を危険に晒してまで果たそうとするとは相当な事なのだろう。
だがそれは自殺行為でもあり、ダンジョンに潜る者達から言えば無謀な行いだ。
「ジルの言う事も分かってはいるのだ。私自身も悩んだうえで出した答えだからな。だが仲間達も目的の為に危険を顧みず付いてきてくれた。そして最後までやり遂げようと今も尚付いてきてくれているのだ。」
エトの言葉に騎士のソートとヒーラーの女性が頷いている。
武闘家の男性は床に寝かせられているので、片腕をあげてグッドサインをして答える。
「ふむ、それだけ重要な目的と言う事か。」
「うむ、私の最愛の妹の命に関わる事だからな。時間も無いし戻っている時間が惜しいのだ。」
エトが真剣な表示で呟く。
ジルの後方ではその言葉を聞いて密かにルルネットが息を呑んでいた。
「命に関わる?ポーションの類では駄目なのか?」
傷や毒であればジルが先程渡した様なポーションで回復させられる。
更に高位のポーションであれば、その効果も比例して大きくなる。
「原因は呪いだから通常のポーションは効かん。どこぞで手に入れたアクセサリーが呪いを与える効果を持っていてな。解呪の手段を求めて八方手を尽くしていて、私はダンジョンに来ていると言う訳だ。」
エトがダンジョンを選んだ理由は、宝箱から出る魔法道具や魔物の珍しい素材等から解呪に関する物が出るかもしれないからだ。
ピンポイントで狙った物を出すのは難しいが、可能性が無いとも言えないのがダンジョンである。
「神聖魔法の使い手は近くにいなかったのか?」
呪いと聞いて一番最初にジルが気になった事を尋ねた。
何か恐ろしい物でも見た様な反応だ。
「ルルネット、どうかしたのか?」
「で、ででででっ…。」
「おお、ルルネットと言えばトレンフルの令嬢か!」
ルルネットの様子がおかしくなっており、何かを言い掛けたところでエトがルルネットが貴族である事に気付く。
そして名前を呼ばれたルルネットはビクリと身体を震わせる。
「トレンフルのダンジョンなのだからいてもおかしくは無いか。だがその歳でこの階層まで潜れるとは、優秀な護衛を付けているとは言え大したものだ。」
エトはジルにも視線を向けながら何度か頷いている。
二人の実力の高さを誉めてくれている。
「あわわわ、そそそそんなお言葉、とても恐れ多い事でございますですわ。」
「ルルネット、先程から様子がおかしいぞ?」
エトの賛辞の言葉にルルネットの様子は益々おかしくなり、口調もよく分からない事になっている。
「おおおおかしいってそんなの…。」
「まあ待てルルネット嬢、ここでは身分なんて堅苦しい物は無しだ。ダンジョンを探索するただのエトと言う事で頼む。」
エトがルルネットの言葉を遮って意味深な台詞を告げる。
その言い回しから身分があるのは確定したが、ルルネットの様子がこれ程おかしくなるとは相当身分が高いのかもしれない。
「…分かりまし…、コホン、分かったわエトさん。」
ルルネットが覚悟を決めた様に言い掛けた言葉を改めて名前を呼ぶとエトは満足そうに頷いている。
だがその後エトに見えない様にジルに振り向いたルルネットの表情は、困った様な祈る様な怒っている様な複雑な表情をしていた。
ルルネットの心情としては余計な事や失礼な事を言うなと思っているのだが、そんな願いは残念ながらジルには届かない。
「護衛の君も気軽にエトと呼んでくれ。」
「ああ、我はジルだ。」
頷きながらこちらも名を名乗る。
ジルは相手が貴族であっても下手に出る様な事は無い。
どんな相手であっても対等に接しようとするのは魔王時代から変わっていない。
「ジルか、改めて仲間を救ってくれた事に感謝を。」
「気にするな、成り行きだ。」
エトが手を差し出してきたので握手に応じながらそう答える。
ジルには見えていないが後ろではルルネットが頭を抱えていた。
そんなやり取りの間にソートがジルの渡したポーションを使用して二人の傷と麻痺毒を癒した。
流した血までは戻らないので少し武闘家を休ませてから出発する様だ。
「パーティーは復活したがダンジョンから帰れるのか?」
それなりに戦闘は出来そうなパーティーに見えるが先程の様な事が帰り道にも起こる可能性はある。
そうなった時に今度こそ全滅の危険がある。
「魔物の群れに囲まれたのは不運だったが、あんな事は滅多に起こらないから運頼みだな。それにまだ帰る訳にもいかないのだ。」
怪我をした仲間達を痛々しそうに見ながらもエトが言う。
引き返す訳にはいかない確固たる意志を持っている様子だ。
「ポーションが尽きたと聞いたが?」
予備の回復手段が無くなり、ヒーラーに頼り切りになるのは危険だ。
もしヒーラーが先に行動不能にさせられたら、待っているのはパーティーの壊滅だろう。
そうならない為に急いで出口を目指すべきである。
「ああ、尽きている。だがダンジョンに来た目的をまだ果たしていないのだ。」
「仲間を危険に晒してるんだぞ?引き返すのが賢明だと思うが?」
目的は知らないが自分達の命を危険に晒してまで果たそうとするとは相当な事なのだろう。
だがそれは自殺行為でもあり、ダンジョンに潜る者達から言えば無謀な行いだ。
「ジルの言う事も分かってはいるのだ。私自身も悩んだうえで出した答えだからな。だが仲間達も目的の為に危険を顧みず付いてきてくれた。そして最後までやり遂げようと今も尚付いてきてくれているのだ。」
エトの言葉に騎士のソートとヒーラーの女性が頷いている。
武闘家の男性は床に寝かせられているので、片腕をあげてグッドサインをして答える。
「ふむ、それだけ重要な目的と言う事か。」
「うむ、私の最愛の妹の命に関わる事だからな。時間も無いし戻っている時間が惜しいのだ。」
エトが真剣な表示で呟く。
ジルの後方ではその言葉を聞いて密かにルルネットが息を呑んでいた。
「命に関わる?ポーションの類では駄目なのか?」
傷や毒であればジルが先程渡した様なポーションで回復させられる。
更に高位のポーションであれば、その効果も比例して大きくなる。
「原因は呪いだから通常のポーションは効かん。どこぞで手に入れたアクセサリーが呪いを与える効果を持っていてな。解呪の手段を求めて八方手を尽くしていて、私はダンジョンに来ていると言う訳だ。」
エトがダンジョンを選んだ理由は、宝箱から出る魔法道具や魔物の珍しい素材等から解呪に関する物が出るかもしれないからだ。
ピンポイントで狙った物を出すのは難しいが、可能性が無いとも言えないのがダンジョンである。
「神聖魔法の使い手は近くにいなかったのか?」
呪いと聞いて一番最初にジルが気になった事を尋ねた。
5
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる