【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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32章

元魔王様と前世の配下 6

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 魔族の二人はフードで口元しか見えていないがそれでも充分驚いている事が伝わる。

「魅了魔法が効いていないさね。」

「これは予想外だねえ。」

 先程のは魅了魔法と言う特殊魔法の一つだ。
対象を魔法で魅了状態に出来れば言いなりとして従わせる事が出来る。
一部の魔族に多く適性を示す魔法である。

「突然で驚いたが魅了魔法か。確かに人族を信じられないのであれば良い手段だな。」

「クォン?」

「ああ、大丈夫だぞ。言い付けを守ってくれて有り難うな。」

 心配そうに見つめてくるホッコの頭を撫でてやる。
撫でられて嬉しいのかホッコはご機嫌である。

「何故効かんのかねえ?」

 自分の魅了魔法が効いていない事が信じられないと言った様子で老婆が尋ねる。

「他者に操られる程、腑抜けた意思はしていないと言う事だ。」

「意思の力だけで魅力魔法に抗う人族がいるとはねえ。」

 老婆はそれを効いて半信半疑でありながらも実際に打ち破ったジルに興味が湧いている。

「それでどうするのかねえ?」

「どうするとは?」

「いきなり魔法を使ってしまったからねえ。戦闘になってもおかしくないと思ってねえ。」

 魅了魔法で操ろうとしたのでジルが先程までと違って討伐しようとするのではないかと思った様だ。
しかし元魔王のジルとしては魔族がそう言う行動になる思考が理解出来るので特に咎めるつもりは無い。

 敵対関係にある人族とは生きてきた間に様々な事があっただろう。
その過程で信じられなくなるのも仕方が無い事だ。

「我は特に何か手を下すつもりは無い。」

「寛大だねえ。」

「本当にただ手伝うつもりでいるのかい?」

「そのつもりだな。信じてもらえないかもしれないがな。」

 突然訪ねてきた初対面の人族を信じろと言っても無理な話しだと言うのは理解している。
それでもシキのお願いと元魔王として、この二人の力になってやりたい。

「せっかく忠告にきてくれたんだ、信じてみようかねえ。」

「まあ、老い先短い命だしねえ。」

 どうやら老婆達はジル達を信じる気になってくれたらしい。

「そうか、ならば仲間達を出しても問題無さそうだな。」

 魅了魔法が失敗に終わり、これ以上こちらを害する行動をしたりしないだろう。
戦闘に発展しないのであれば、シキとライムを出しても問題無い。

「懐にいる子達かい?」

 どうやら懐に忍ばせていたのは老婆達にはバレていたらしい。
歳の割りには中々鋭い様だ。

「そうだ。他にも鬼人族の仲間とその従魔が結界の外で待機しているが、危害を加えるつもりは無いぞ。」

 ナキナと影丸の事も誤解があると後々面倒なので説明しておく。

「人族と鬼人族、珍しい組み合わせだねえ。」

「更に精霊もいるのです。」

 ジルの懐から飛び出したシキが空中でくるっと回って自身の存在をアピールする様に言う。
人族と精霊と言う組み合わせの方が世間的には珍しいだろう。

「「っ!?」」

 老婆達は余程驚いたのかシキを見て固まってしまった。
目深に被っていたフードも少しズレて目が見えている。
その視線は真っ直ぐにシキを捉えている。

「どうしたのです?」

 突然黙ってしまった二人の老婆を見てシキが首を傾げる。
人族と精霊の組み合わせは確かに稀であるが、そこまで驚く事なのかとジルも思った。

「シキ、シキなのかい?」

「へ?」

 老婆の一人がシキの名を口にする。
それを聞いてシキは戸惑っている。
まだこの場にシキが現れてからジルはシキの名前を呼んでいない。
つまり元々シキの名前を知っていた事になる。

「知識の精霊のシキなんだろう?」

 もう一人の老婆もシキの事を知っている様子だ。
それで益々シキは困惑してしまう。
一度見聞きした情報は絶対に忘れる事が無い、それが知識の精霊であるシキに備わっている魔法やスキルとも違う能力だ。

 その能力は当然対人関係においては最強の能力となる。
一度出会った者の名前や顔、会話の内容まで記憶しておけると言う事なのだ。

 だからこそ相手が一方的に名前を知っていて、自分が知らないと言う現象は起こり得ない。
ジルの前世の魔王時代に契約していた頃も魔王軍は勿論の事、国に住む住人ですら幅広く把握していたくらいだ。

「ご、御免なさいなのです。誰なのです?」

 知らない事を隠したりはせず正直にシキが尋ねている。

「ああ、この見た目じゃ分からないのも当然さねえ。」

「精霊眼で見てみるといいさね。」

 老婆達は特に怒ったり悲しんだりと言った様子を見せずにスキルの使用を促してくる。
精霊眼と言うスキルは幾つかの目に関するスキルの能力を合わせ持ったスキルの事である。

 精霊眼は中級精霊以上は必ず所持しているスキルであり、上級精霊のシキにも扱えるスキルだ。
その精霊眼のスキルの一つに他者の魔力を視ると言う効果がある。

 それにより魔力の色や形と言った微妙な違いを視る事が出来、全く同じ魔力と言った物が存在しない事から、魔力で個人を特定する事が出来るのである。
そしてシキは言われた通りに精霊眼を老婆達に使用する。

「え?えええええええ!?」

 シキが魔力を視て何を知ったのかは分からないが、滅多に見る事が無いくらいに驚いた表情と声を上げていて、ジルも思わず連られて驚いてしまった。
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