【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
316 / 1,122
35章

元魔王様と帰還を待っていた者達 2

しおりを挟む
 アイアンゴーレムとはそれ程離れていないので、ジルは無造作に近付いていく。
するとアイアンゴーレムがジルに気付き、迎撃しようと同じく近付いてくる。

 ジルの背丈の数倍もある巨体なので動きはかなり遅いが、その巨体が向かってくるだけで凄まじい圧がある。
一歩進むたびに地面が揺れる感じがする。

「通行の邪魔だデカブツ、フレイムエンチャント!」

 銀月を抜き上級火魔法による武器の強化を行う。
火の粉を振り撒く程の熱を帯びた銀月を接近して一閃すると、アイアンゴーレムの身体が容易く焼き斬れて二つに別れる。
何も出来ずに物言わぬ鉄の塊となった。

「お見事ですジルさん。」

「さっすがジル先輩だね。」

 アイアンゴーレムを無限倉庫に収納して馬車まで戻るとレイアとテスラが賛辞の言葉と共に迎えてくれる。

「しかし変やな。こんなところにBランクの魔物が出るなんて聞いてへんで。」

 シュミットが首を傾げながら言う。
行商を頻繁に行うのでどの辺りにどの様な魔物がいるのかも大体把握している。
だがこんな場所でアイアンゴーレムを見たのは初めてだった。

「確かに少し妙ですね。ゴーレム系統の魔物は鉱山地帯や山岳地帯に多く生息しています。こんな街道に姿を現すとは。」

「そう?たまたまじゃないの?縄張り争いとか気まぐれとかさ。」

 レイアは考え込んでおりテスラは楽観的な意見を出す。
二人の性格の違いがよく分かる。

「ここで考えても結論は出ないだろう。街に戻れば何か分かるかもしれない。」

 順調な旅のおかげで明日にはセダンの街に到着しそうである。
馬車で街から1日くらいの距離であれば、何かしらの異常を確認して情報が入っているかもしれないので、ジル達はセダンの街を目指して馬車を進める。

 その後は魔物と特に出会う事も無く、無事にセダンの街まで戻ってこれた。
約2ヶ月ぶりのセダンの街である。

「久しぶりなのです。」

「帰ってきたと言う感じがするな。」

 転生後からずっとセダンの街で過ごしてきたジルにとっては、生まれ故郷の様な場所だ。
こんな長旅は転生後初めてなので帰郷を嬉しく思う。

「おや?シュミットさんじゃないか、久しぶりだな。」

 門で通行の手続きをしているとシュミットに気付いた門番が話し掛けてくる。

「今行商から帰ってきたところや。トレンフルから2ヶ月ぶりの帰還やで。」

「それは長旅だったな。セダンの優秀な商人が無事に帰ってきてくれて何よりだよ。」

 門番と言う職業をしていると帰還する予定の者が見送ったきり帰ってこない事も頻繁にある。
だからこそ知り合いが無事に帰ってきてくれるだけで嬉しい気持ちになるのだ。

「優秀な冒険者に護衛を頼んだおかげやな。ジルさんがいなかったらと思うとゾッとするわ。」

 行き帰りの魔物や盗賊からの護衛ではそれなりに仕事をした。
低ランク帯の冒険者であれば護衛の仕事を果たせなかったかもしれない。
それ程強い魔物や厄介な盗賊がいた。

「ジルさん?そうか、あんたがシュミットさんの護衛をした冒険者のジルさんか。伝言を預かっているんだ。」

「伝言?」

「ああ、ギルドの受付嬢のミラさんから、帰り次第一番最初にギルドを訪れてほしいそうだぞ。」

 ミラはジルの依頼関係の対応をしてくれる専属の様な受付嬢だ。
暫く会っていなかったが、どうやら忘れられてはいない様である。

「早速呼び出しとはな。長旅だから休ませようと言う気は無いのか?」

 ジルが呼び出しについて不満を口にするが、シュミットの馬車は貴族が使う様な豪華な馬車だったので長旅だったが疲れてはいない。
寧ろ高級宿並みの快適な生活を送れていたくらいだ。

「俺にそんな事を言われてもな、文句ならミラさんに言ってくれ。だが最近ギルドはバタバタしているから、優秀な冒険者が帰ってきてくれて嬉しいと思うぞ。」

「何かあったのか?」

「詳しい事は門番の俺には分からないが、高ランクの冒険者を集めているらしいぞ。」

 セダンの高ランクの冒険者と言うとSランク冒険者のラブリートやAランクパーティーの鋼鉄が思い浮かぶ。
そしてCランクではあるがジルの様にランク止めをしているだけで実力は充分にあるアレンもいる。
そんな面子が集められるとなると只事では無いだろう。

「それは不穏やな。」

 その話しを聞いたシュミットも難しそうな表情で言う。
十中八九何か起きると言っている様なものだ。

「詳しい話しはギルドで聞いてくれ。よし、手続きは済んだから入っていいぞ。ようこそセダンの街へ、そしておかえり。」

 門番がそう言って迎え入れてくれて、ジル達は久しぶりにセダンの門を潜った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...