435 / 1,122
51章
元魔王様とエトワールの生誕祭 4
しおりを挟む
トゥーリから許しが出たので早速料理が乗ったテーブルに向かう。
見た事の無い豪勢な料理ばかりが並んでおり、非常にお腹が空く匂いを漂わせている。
「何から食べるか迷うな。」
「ではお勧めをお取りしましょうか?」
そう声を掛けてきたのは後ろから付いてきていたキュールネだ。
その手には大きな取り皿とトングを持って準備万端である。
「キュールネ、主人の近くにいなくていいのか?」
一応キュールネはトゥーリの世話係として付いてきた筈だ。
しかし主人を放っておいてジルの世話をしようとしている。
「あちらにはラブリート様がいらっしゃいますから護衛は不要です。」
「護衛と言うか世話係として付いてきたんじゃないのか?」
「トゥーリ様はそう言った事をあまり他人に任せず自分で何でもやられてしまうのでお世話のしがいが無いのです。」
何でも自分で出来るお嬢様は料理も自分で勝手に取って食べるらしい。
そう言う貴族は珍しいが周りにも一定数はいるのでトゥーリも同じなのだろうと思ったが、これは建前であり監視が目的である。
「そうか、ならばお勧めを貰おうか。大盛りでな。」
「お任せ下さい。」
キュールネが用意されている料理を見栄え良く次々に大皿へと盛り付けていく。
「どうぞ。」
「悪いな。どれも美味そうだ。」
大皿を受け取って早速料理を楽しむ。
かなり美味しかったので主に食べる事に集中していたが、途中で側で黙って控えていたキュールネが目に入る。
「キュールネは食べないのか?」
「私は世話係ですからお気になさらないで下さい。」
会場にいる者は護衛や世話係であっても主人から許可を得て食事を行なっている。
それなのにキュールネは豪勢で美味しい食事を前に遠慮する。
「トゥーリの事が心配なんだろう?」
「…何の事でしょう?」
「誤魔化すな。視線が何度もトゥーリの方を向いているのは気付いている。」
「良く観察なさっているのですね。」
誤魔化しても無駄だと思って素直に答える。
ジルは食事だけを楽しんでいる様に見えて周りにも目を配っていたのだ。
「我も一応護衛だからな。周りの状況把握くらいはしている。だからお前も少しは食べておけ。万が一の時に空腹で力が出せないかもしれないぞ?」
「ですがそうしている間に何かあっては。」
ジルの言っている事も理解出来るが目を離した瞬間に何か起こってトゥーリに危険が及んでは元も子もない。
「やれやれ真面目な奴だな。ならば見る場所を少し狭めてやるか。」
「どう言う事でしょうか?」
「我から少し離れて正面にいる給仕のメイド、右後方に固まっている護衛の騎士三名、真後ろで食事をしている偉そうな貴族の男、取り敢えず怪しいのはこの五人だ。」
ジルが食事をしながらそれぞれに少し視線を向けてキュールネに教える。
これは軽く会場を見渡して気になった者達だ。
ちなみに万能鑑定のスキルも使っている。
「随分と具体的ですね。理由を伺っても宜しいですか?」
「メイドは正気では無く、何者かに魅了されている状態だ。そして騎士の三名は武器の類いを所持してはいないが、指に嵌めている指輪が魔法道具だな。おそらく中級魔法が瞬時に使えるタイプの物だ。そして貴族の男から先程一瞬だけ殺意を感じた。誰に向けていたかまでは分からないけどな。」
「なっ!?」
キュールネはそれを聞いて思わず大きな声が出てしまったが自分で自分の口を両手で塞ぐ。
幸い会場は人が多くて会話で賑わっているので特に注目される事は無かった。
「一大事ではないですか?」
「まだ何も起こってはいない。」
小声でキュールネが尋ねてくるが、ジルは静観しつつ食事をしている。
「ですが全員危険過ぎます。」
「騎士は護衛の力として武器の代わりに魔法道具を身に付けているだけかもしれないぞ?」
「それでもメイドと貴族は危険です。死者が出てからでは遅いのですよ?」
この場で正気を失っていたり殺意を持っていたりしているのは明らかに厄介事の気配がする。
放置していては百害あって一利無しだ。
「メイドはともかく貴族の方はラブリートも分かっている筈だ。我もラブリートも瞬時に気絶させるくらいは出来るから、適度に気にしておくくらいでいい。これで見る範囲が縮まって食事に集中出来るだろう?」
「明確な脅威が分かっているのに食事なんてしていられませんよ。より一層注意深く観察する必要があります。」
「やれやれ真面目な奴だな。」
今度はキュールネに教えてあげたメイドや貴族の事を気にし始めたので、ジルは諦めて豪勢な料理を楽しむ事にした。
見た事の無い豪勢な料理ばかりが並んでおり、非常にお腹が空く匂いを漂わせている。
「何から食べるか迷うな。」
「ではお勧めをお取りしましょうか?」
そう声を掛けてきたのは後ろから付いてきていたキュールネだ。
その手には大きな取り皿とトングを持って準備万端である。
「キュールネ、主人の近くにいなくていいのか?」
一応キュールネはトゥーリの世話係として付いてきた筈だ。
しかし主人を放っておいてジルの世話をしようとしている。
「あちらにはラブリート様がいらっしゃいますから護衛は不要です。」
「護衛と言うか世話係として付いてきたんじゃないのか?」
「トゥーリ様はそう言った事をあまり他人に任せず自分で何でもやられてしまうのでお世話のしがいが無いのです。」
何でも自分で出来るお嬢様は料理も自分で勝手に取って食べるらしい。
そう言う貴族は珍しいが周りにも一定数はいるのでトゥーリも同じなのだろうと思ったが、これは建前であり監視が目的である。
「そうか、ならばお勧めを貰おうか。大盛りでな。」
「お任せ下さい。」
キュールネが用意されている料理を見栄え良く次々に大皿へと盛り付けていく。
「どうぞ。」
「悪いな。どれも美味そうだ。」
大皿を受け取って早速料理を楽しむ。
かなり美味しかったので主に食べる事に集中していたが、途中で側で黙って控えていたキュールネが目に入る。
「キュールネは食べないのか?」
「私は世話係ですからお気になさらないで下さい。」
会場にいる者は護衛や世話係であっても主人から許可を得て食事を行なっている。
それなのにキュールネは豪勢で美味しい食事を前に遠慮する。
「トゥーリの事が心配なんだろう?」
「…何の事でしょう?」
「誤魔化すな。視線が何度もトゥーリの方を向いているのは気付いている。」
「良く観察なさっているのですね。」
誤魔化しても無駄だと思って素直に答える。
ジルは食事だけを楽しんでいる様に見えて周りにも目を配っていたのだ。
「我も一応護衛だからな。周りの状況把握くらいはしている。だからお前も少しは食べておけ。万が一の時に空腹で力が出せないかもしれないぞ?」
「ですがそうしている間に何かあっては。」
ジルの言っている事も理解出来るが目を離した瞬間に何か起こってトゥーリに危険が及んでは元も子もない。
「やれやれ真面目な奴だな。ならば見る場所を少し狭めてやるか。」
「どう言う事でしょうか?」
「我から少し離れて正面にいる給仕のメイド、右後方に固まっている護衛の騎士三名、真後ろで食事をしている偉そうな貴族の男、取り敢えず怪しいのはこの五人だ。」
ジルが食事をしながらそれぞれに少し視線を向けてキュールネに教える。
これは軽く会場を見渡して気になった者達だ。
ちなみに万能鑑定のスキルも使っている。
「随分と具体的ですね。理由を伺っても宜しいですか?」
「メイドは正気では無く、何者かに魅了されている状態だ。そして騎士の三名は武器の類いを所持してはいないが、指に嵌めている指輪が魔法道具だな。おそらく中級魔法が瞬時に使えるタイプの物だ。そして貴族の男から先程一瞬だけ殺意を感じた。誰に向けていたかまでは分からないけどな。」
「なっ!?」
キュールネはそれを聞いて思わず大きな声が出てしまったが自分で自分の口を両手で塞ぐ。
幸い会場は人が多くて会話で賑わっているので特に注目される事は無かった。
「一大事ではないですか?」
「まだ何も起こってはいない。」
小声でキュールネが尋ねてくるが、ジルは静観しつつ食事をしている。
「ですが全員危険過ぎます。」
「騎士は護衛の力として武器の代わりに魔法道具を身に付けているだけかもしれないぞ?」
「それでもメイドと貴族は危険です。死者が出てからでは遅いのですよ?」
この場で正気を失っていたり殺意を持っていたりしているのは明らかに厄介事の気配がする。
放置していては百害あって一利無しだ。
「メイドはともかく貴族の方はラブリートも分かっている筈だ。我もラブリートも瞬時に気絶させるくらいは出来るから、適度に気にしておくくらいでいい。これで見る範囲が縮まって食事に集中出来るだろう?」
「明確な脅威が分かっているのに食事なんてしていられませんよ。より一層注意深く観察する必要があります。」
「やれやれ真面目な奴だな。」
今度はキュールネに教えてあげたメイドや貴族の事を気にし始めたので、ジルは諦めて豪勢な料理を楽しむ事にした。
6
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。
白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。
王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。
物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。
そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。
原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。
彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。
マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが―
「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」
なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。
こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。
※他小説投稿サイトにも投稿中
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる