【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
558 / 1,122
65章

元魔王様とシャルルメルトの街 5

しおりを挟む
 大量の料理を注文して食事を楽しんでいるとダナンが戻ってきた。

「こんなに注文しているとは。相変わらず大食らいだな。」

 テーブルの上に積み上げられた皿や料理を見ながら呆れている。
シキはお腹をぽっこりと膨らませて満足そうにしているが、ジルとライムはまだまだ食べている途中だ。

「ダナンの分もあるぞ。酒はエールでいいか?」

「貰おう。」

 席に着いてダナンも食事に加わる。
ドワーフは酒好きで有名なので予め大きなジョッキで頼んでおいたエールを渡すと、ジョッキを傾けてぐびぐびと呑み始めた。

「ぷはー。久しぶりのエールが身体に染みる。」

 大きなジョッキであったが一息で飲み干してしまった。
ドワーフや酒豪で無ければ直ぐに酔ってしまいそうな飲み方だ。

「エールの感想では無く情報収集の方はどうだったんだ?」

「ばっちりだ。やはり冒険者の大半は鉱山に出向いているらしい。ギルドからの依頼も多かった。」

 受付嬢だけで無く冒険者にも話しを聞いて回ったらしい。
かなりの人数が護衛として雇われたり、自分達で採掘に向かったりと結晶石が取れる鉱山に通っているらしい。

「今のシャルルメルトは鉱山関係の依頼が多いのです?」

「ああ、結晶石を採掘する間の護衛、鉱山内の危険な魔物の討伐、荷運びに採掘の手伝いなんてのもあったな。」

「まるで便利屋だな。」

 冒険者の依頼は多岐にわたるがシャルルメルトだと結晶石に全力で取り組んでいるのがよく分かる。
それだけ結晶石は領地の財源となり得るのだろう。

「シャルルメルトの周辺は冒険者の依頼が少ないからな。冒険者からすると今は仕事があるから有り難いらしいぞ。」

 結晶石はそれ自体がかなり希少であり高値で取り引きされている。
採掘関係によって発生する報酬も相当な額となるらしい。

「シキ達はこれからどうするのです?」

「早速鉱山へ、と言いたいところだが長旅だったから今日はゆっくり休むとしよう。その前にシャルルメルト公爵家にだけは行っておきたいが構わないか?」

 鉱山を利用するにあたって先に挨拶を済ませておきたい。
そうすれば明日から心置き無く採掘に向かえる。

「我は問題無いぞ。」

「シキも大丈夫なのです。」

「基本的にわしが対応するからお前達は屋敷まで付いてくるだけでいい。公爵家の場所も聞いてきたから、食べ終えたら向かうとしよう。」

 酒場で頼んだシャルルメルトの料理を充分に楽しんだ後、ジル達は公爵家の屋敷へと向かった。

「もう直ぐ見えてくるぞ。」

「あれがそうかもなのです。」

「トゥーリの屋敷よりも随分と大きいな。」

 一目で貴族の屋敷だと分かる巨大な建物が見えてくる。
これがシャルルメルト公爵領の領主が住む屋敷だ。

「伯爵家と公爵家だからな。自らの爵位に相応しい屋敷を構える必要があるのだ。」

「貴族とは面倒なものだ。」

 与えられた爵位を貶めない格が世間的には求められる。
ジルにとっては面倒だと感じるが貴族にとっては普通の事なのだ。

「失礼、少しいいだろうか?」

 領主の屋敷の門の前に立つ門番にダナンが話し掛ける。

「シャルルメルト公爵家に何用だ?」

「本日は面会の予定は無いぞ。」

 事前に予約の無いジル達に対して厳しい視線を門番達が送ってくる。
貴族の屋敷には面倒な客も多いので、そう言った者達を追い返すのも門番の役目なのだ。

「失礼、今日この街に到着したばかりなのでな。預かり物を届けにきた。」

 そう言ってダナンが手紙を差し出す。

「手紙か。差出人は?」

「トゥーリ・セダン伯爵だ。わし達はセダンの街からやってきた。」

「セダン伯爵か。分かった、少し待っていろ。」

 貴族からの手紙と聞いては門前払いする訳にもいかず、手紙を受け取った門番の一人が屋敷の中に走っていく。
少し待っていると門番が戻ってきて、門を開けてくれた。

「待たせたな。シャルルメルト公爵様が面会を希望されている。全員中に入ってくれ。」

「我達もか?」

「そうだ。」

 ジル達は屋敷の外で待機しておいて公爵の挨拶はダナンがする予定だったのだが、全員中に通ってほしいと門番は言う。

「うーむ、わしだけにはならないか?この連れは貴族への礼儀を知らないぞ?」

「公爵様は心の広いお方だ。平民への理解もあるので多少は聞き流してくれるだろう。さあ、中へ。」

 残念ながら外で待っている事は出来ず、ジル達も中に入るしかなさそうだ。

「仕方無い。ジル、極力口を開くなよ?」

「やれやれ、面倒な事だ。」

 ダナンの心配も我ながら理解しているので素直に頷いておく。

「ジル様、暴れるのも駄目なのですよ?」

「シキよ、お前は我をなんだと思っている?」

 契約精霊の言葉にジト目を向けるがシキはキョトンとした表情で首を傾げている。
自分は何かおかしい事を言っただろうかとでも言いたげな表情だ。

「公爵様、お連れしました。」

「ああ、通してくれ。」

 シキになんと返そうか考えていると目的の部屋まで来てしまった。
部屋の中から言葉が聞こえると同時に扉が中から開かれる。
中に入ると威厳のある白髪の男性がジル達を待っていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...