【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

文字の大きさ
575 / 1,122
67章

元魔王様とリュシエルに迫る魔の手 2

しおりを挟む
 数分程待っているとリュシエルが戻ってきたが、その表情は一変していた。
明らかに疲労を感じているのが分かる。

「では休憩をしてから再会としよう。」

「ジル様、それは無いでしょう。」

「我は面倒事に首を突っ込みたく無い。」

 ジルの発言にアンレローゼがジト目を向けてくるが明らかに何かあると分かっているので聞けば後戻り出来無い。
可能なら聞かないでおきたい。

「ジル、御免なさい。今日の午後はお休みでもいいでしょうか?」

「…はぁ、何があったのだ?」

 リュシエルが無理矢理笑ってそう言ってくれば、さすがに聞かない訳にはいかない。

「聞いてくれるのですか?」

「我の訓練に支障が出る様な内容みたいだからな。」

 このままでは訓練に影響が出そうだ。
一応ギルドを通した公爵からの指名依頼なので蔑ろには出来無い。

「隣国の名前は知っていますか?ベイルと言うのですが。」

「ベイルと言うと侵略国家ベイルの事か?」

 ジルが魔王だった頃にもベイルと言う国はあった。
他国へ戦争を仕掛け続ける厄介な国として認識されていた。

「昔はそう呼ばれていましたが、今は国力の低下でその様な行いはしていません。」

 戦争ばかりしていて自国が衰退していったらしい。
国のトップが戦闘狂だと国民は苦労する。

「そのベイルがどうした?」

「昔とある貴族のパーティーに出席した時です。私の事を好いて下さった方がいまして。」

「それがベイルの者と言う事か?」

「はい、ベイルの子爵家の当主であるブリオル様です。」

「子爵?当主とは言え随分と爵位に差があるんだな。」

 シャルルメルト公爵家とブリオル子爵家、爵位が少し離れている者同士の婚約は珍しい。
それにシャルルメルト公爵家は子供がリュシエルしかいないらしく、婿養子に来てもらう必要がある。
本来であれば公爵家に並ぶ家格が求められる。

「ちなみにですがブリオル様は現在四十を過ぎておられます。そして側室を含め十以上も妻を持つ好色として知られています。」

 付け加える様にアンレローゼが教えてくれる。
露骨に表情に出ている訳では無いが心良くは思っていなさそうだ。

「お嬢はどう考えているのだ?」

「私としては何度もお断りしています。お父様も国も違えば爵位も違い、歳も親子程も離れていて、更に好色の男になんて嫁がせたくはないと。」

 一人娘を心配する親としてはそう思うのも納得だ。
そんな者に嫁がせても幸せにしてくれるかは分からない。

「ではそれで話しは終わりではないか?」

「ですが私を良く思わない方々はそれを受け入れさせたいのですよ。厄介なスキル持ちを隣国に引き渡せるのですから。」

「成る程な。」

 万が一の脅威を恐れて危険なスキルを持つリュシエルを他国に追いやりたい。
そう思う者達はこの婚約を成功させたいと思うだろう。

「忌々しい事です。お嬢様をその様に扱う者達が。」

「あの様な好色子爵に嫁いでも良い未来は絶対に訪れません。」

 騎士達が不愉快そうな表情を隠そうともせずに言う。
幼い頃から見守ってきたリュシエルにこれ以上不幸せな未来が訪れるのは納得出来無い。

「だが結局はお嬢と公爵家の判断だろう?公爵も否定的なら良かったではないか。」

 親が味方なのであれば問題無さそうだ。
成功させたい者達に唆されて勝手に話しを進められる心配も無い。

「それがそうとも言えないのです。今日来た使いの方がブリオル様が色良い返事を待っている。返事次第では実力行使も辞さないと。」

「脅しではないか。隣国の一子爵がそんな事を言って国同士の争いに発展でもしたらどうするのだ?」

「そうはならないのですよ。対象が私なのですからね。」

 そう自嘲気味にリュシエルが呟く。
誰も自分の為に力を貸してくれたりはしないと思っている様だ。

「王家に助けを求めればいいのではないか?我としては印象が良い方なのだが。」

 実際に会ってみて中々話せる王族だと感じた。
エトワールなんて二度会っただけなのに随分と気安い関係を築けている。

「ただでさえ私のスキルのせいでご迷惑をお掛けしているのです。結婚の相談なんてとても出来ません。」

 王家にもスキルの件で何度か迷惑を掛けているらしい。
この程度の事で王家を煩わせたくは無い。

「結局お嬢はどうしたいんだ?」

「私は…。」

「受ける必要なんてありません!私達が必ずお守りします!」

「そうです!国力の低下した今、子爵が保有する戦力なんてたかが知れています!」

 騎士達がリュシエルは自分達が守ると宣言する。
好色子爵になんて渡す気は無い。

「「ジル様…。」」

「シキ、お前の言いたい事は分かっているから安心しろ。そしてアンレローゼ、お前は我の部下か何かか?同じ様に頼る視線を向けてくるな。我を巻き込んでおいて。」

 シキの気持ちには応えるつもりだが同じ様な視線を向けてくるアンレローゼにはジト目をお返ししておく。
このメイドが巻き込んできたと言っても過言では無いのだ。

「一先ずお嬢がしたい様にしろ。一晩考えてみるといい。」

「そうします。失礼しますね。」

 騎士達を引き連れてリュシエルは屋敷へと戻っていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...