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69章
元魔王様と記憶喪失の天使族 8
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召喚魔法によって呼び出された水の精霊は再びベリッシ湖で暮らしてくれるらしい。
これでまたシャルルメルトの観光地として復活するだろう。
「ベリッシ湖の問題はこれで解決ですね。そして次は貴方です。」
「私?」
自分を指差して首を傾げる天使族の少女。
「お父様は屋敷で暫く過ごす事は許可してくれました。しかしそれはジル達がいる間だけなのです。」
「つまり我らがシャルルメルトを離れる時には、この天使にも屋敷を出てもらわなければいけないと言う事か。」
「申し訳無いのですがそうなります。」
言葉だけでは無くその表情からも申し訳無さが伝わってくる。
本心では記憶喪失のこの少女を追い出したくは無いのだろう。
「ふむ、理由を聞こう。」
「単純に天使族の力が強過ぎるからです。万が一にも暴走した場合に手に負えないからと言われまして。」
魔族を敵視する天使族と人族は同盟の様な関係にある。
だからと言って天使族が人族に友好的かと言われればそんな事も無い。
なので天使族の事をまるで神の様に崇める人族もいれば、なるべく関わりたく無いと思う人族もいるのだ。
「記憶を取り戻した瞬間に暴れないと言う保証は無いのです。正しい判断だと思うのです。」
「この屋敷にナンバーズを抑えられる様な者はいません。これ以上シャルルメルトを危機に陥れる様な事は出来無いのです。屋敷に連れて来ておきながら申し訳ありません。」
「気にしなくていい。今こうして保護してもらってるのでも助かってる。」
「そう言っていただけると幸いです。」
少女の言葉にリュシエルが笑顔になる。
その言葉で多少なりとも罪悪感は消えた。
「それで我らが帰るタイミングでお前もここを出る事になるが何処へ向かう?天使族の国へと戻るか?」
天使族が拠点としている国ならば記憶喪失の手掛かりも見つかるかもしれない。
しかしこうなった問題もある。
「ジルの予想が当たってるなら帰りたく無い。」
「身内の天使族に裏切られた可能性があるんだもんな。」
「そんな状況で帰りたい筈無いのです。」
もし予想が当たっていて少女が記憶を失う原因となった天使族に出会えば今度はどうなるか分からない。
「ではどうする?」
「お世話になります。」
そう言って少女がジルに頭を下げてきた。
同じタイミングでシャルルメルトを出るので、そのままジルの世話になろうとしている。
「我に保護しろと?」
「私強いよ。役に立つ。」
強そうなポーズを取ってアピールしている。
身体が子供なので愛らしいだけだが、種族故にその実力の高さは本物だ。
「天使族と問題を抱えていると聞いていなかったのか?」
二度天使族と戦っているジルが天使族を保護していても良い事があるとは思えない。
「天使族を無力化出来るよ。私は殺さなくても相手を大人しくさせられる睡眠の聖痕持ちだから。」
そう言って聖痕を見せてくる。
確かに少女の睡眠の聖痕の力は強い。
受け入れる体制だったとは言えジルを眠らせた事を考えるとかなり強力な力を秘めているだろう。
「シキ、どう思う?」
「むむむ、中々難しいのです。強い天使族を味方に引き込んで戦力強化と言う利点に対して、敵対種族を内部に潜り込ませて情報を取られてしまう可能性もあるのです。」
シキが悩ましそうな表情で考え込む。
リターンも大きいがリスクもある。
「そうだな。だが我は保護してもいいと考えている。来るもの拒まずは昔からだったからな。」
「敵対種族にも優しいのは昔から変わらないのです。シキはジル様がいいと言うなら問題無いと思うのです。」
最終的にジルの意見を尊重する。
それは魔王時代から配下の者達全員の共通認識だ。
「いいの?」
「ああ、シャルルメルトに帰る時には付いて来るといい。」
「ありがとう。」
少女がぺこりと頭を下げてお礼を言う。
放り出される事にはならなくなったので取り敢えず安心だ。
「お嬢様、少し宜しいでしょうか?」
「どうしました?」
話しが一段落したところで一人の執事が入室してくる。
「ジル様にお客様なのですが。」
「我に?」
ジルの事を尋ねて屋敷に客人がやってきたと言う。
「シャルルメルトに知り合いでもいるのですか?」
「我は今回初めて訪れた。知り合いなんていないぞ。」
誰が尋ねてきたのか見当も付かない。
そもそもシャルルメルト公爵家で世話になっている事自体知っている者は殆どいない。
「ではどなたなのでしょうか?公爵家で客人として過ごしている事も知っているみたいですし。取り敢えず会ってみては?」
「そうだな。」
一先ずジルを名指ししているので会ってみる事にした。
屋敷の外で待たせているらしくその場へと向かう。
そして向かう途中で少し警戒してしまった。
明らかに人族とは思えない魔力量を感じる。
「お前が我への客人か?」
顔を布で覆っていて目元しか見えず、その肌は少し黒い。
人型ではあるが人種では無い。
目の前にいるのは人型の魔物の様だ。
「はい、冒険者のジル様。主人からの伝言をお預かりしています。」
そう言って丁寧な仕草で頭を下げる。
どうやら友好的な相手らしい。
「聞かせてもらおう。」
「ではこちらに。」
少し屋敷から離れた場所へと連れていかれる。
一応屋敷の者達に聞かれない為の配慮だろう。
「一応遮音結界を張らせていただきます。」
「用心深いな。」
「内容が内容ですからね。それでは先ずご挨拶を。私は人化のスキルを使用しているレギオンハート様の従魔でございます。」
なんとジルを訪ねて公爵家にやってきたのは元四天王レギオンハートの従魔の一体であった。
これでまたシャルルメルトの観光地として復活するだろう。
「ベリッシ湖の問題はこれで解決ですね。そして次は貴方です。」
「私?」
自分を指差して首を傾げる天使族の少女。
「お父様は屋敷で暫く過ごす事は許可してくれました。しかしそれはジル達がいる間だけなのです。」
「つまり我らがシャルルメルトを離れる時には、この天使にも屋敷を出てもらわなければいけないと言う事か。」
「申し訳無いのですがそうなります。」
言葉だけでは無くその表情からも申し訳無さが伝わってくる。
本心では記憶喪失のこの少女を追い出したくは無いのだろう。
「ふむ、理由を聞こう。」
「単純に天使族の力が強過ぎるからです。万が一にも暴走した場合に手に負えないからと言われまして。」
魔族を敵視する天使族と人族は同盟の様な関係にある。
だからと言って天使族が人族に友好的かと言われればそんな事も無い。
なので天使族の事をまるで神の様に崇める人族もいれば、なるべく関わりたく無いと思う人族もいるのだ。
「記憶を取り戻した瞬間に暴れないと言う保証は無いのです。正しい判断だと思うのです。」
「この屋敷にナンバーズを抑えられる様な者はいません。これ以上シャルルメルトを危機に陥れる様な事は出来無いのです。屋敷に連れて来ておきながら申し訳ありません。」
「気にしなくていい。今こうして保護してもらってるのでも助かってる。」
「そう言っていただけると幸いです。」
少女の言葉にリュシエルが笑顔になる。
その言葉で多少なりとも罪悪感は消えた。
「それで我らが帰るタイミングでお前もここを出る事になるが何処へ向かう?天使族の国へと戻るか?」
天使族が拠点としている国ならば記憶喪失の手掛かりも見つかるかもしれない。
しかしこうなった問題もある。
「ジルの予想が当たってるなら帰りたく無い。」
「身内の天使族に裏切られた可能性があるんだもんな。」
「そんな状況で帰りたい筈無いのです。」
もし予想が当たっていて少女が記憶を失う原因となった天使族に出会えば今度はどうなるか分からない。
「ではどうする?」
「お世話になります。」
そう言って少女がジルに頭を下げてきた。
同じタイミングでシャルルメルトを出るので、そのままジルの世話になろうとしている。
「我に保護しろと?」
「私強いよ。役に立つ。」
強そうなポーズを取ってアピールしている。
身体が子供なので愛らしいだけだが、種族故にその実力の高さは本物だ。
「天使族と問題を抱えていると聞いていなかったのか?」
二度天使族と戦っているジルが天使族を保護していても良い事があるとは思えない。
「天使族を無力化出来るよ。私は殺さなくても相手を大人しくさせられる睡眠の聖痕持ちだから。」
そう言って聖痕を見せてくる。
確かに少女の睡眠の聖痕の力は強い。
受け入れる体制だったとは言えジルを眠らせた事を考えるとかなり強力な力を秘めているだろう。
「シキ、どう思う?」
「むむむ、中々難しいのです。強い天使族を味方に引き込んで戦力強化と言う利点に対して、敵対種族を内部に潜り込ませて情報を取られてしまう可能性もあるのです。」
シキが悩ましそうな表情で考え込む。
リターンも大きいがリスクもある。
「そうだな。だが我は保護してもいいと考えている。来るもの拒まずは昔からだったからな。」
「敵対種族にも優しいのは昔から変わらないのです。シキはジル様がいいと言うなら問題無いと思うのです。」
最終的にジルの意見を尊重する。
それは魔王時代から配下の者達全員の共通認識だ。
「いいの?」
「ああ、シャルルメルトに帰る時には付いて来るといい。」
「ありがとう。」
少女がぺこりと頭を下げてお礼を言う。
放り出される事にはならなくなったので取り敢えず安心だ。
「お嬢様、少し宜しいでしょうか?」
「どうしました?」
話しが一段落したところで一人の執事が入室してくる。
「ジル様にお客様なのですが。」
「我に?」
ジルの事を尋ねて屋敷に客人がやってきたと言う。
「シャルルメルトに知り合いでもいるのですか?」
「我は今回初めて訪れた。知り合いなんていないぞ。」
誰が尋ねてきたのか見当も付かない。
そもそもシャルルメルト公爵家で世話になっている事自体知っている者は殆どいない。
「ではどなたなのでしょうか?公爵家で客人として過ごしている事も知っているみたいですし。取り敢えず会ってみては?」
「そうだな。」
一先ずジルを名指ししているので会ってみる事にした。
屋敷の外で待たせているらしくその場へと向かう。
そして向かう途中で少し警戒してしまった。
明らかに人族とは思えない魔力量を感じる。
「お前が我への客人か?」
顔を布で覆っていて目元しか見えず、その肌は少し黒い。
人型ではあるが人種では無い。
目の前にいるのは人型の魔物の様だ。
「はい、冒険者のジル様。主人からの伝言をお預かりしています。」
そう言って丁寧な仕草で頭を下げる。
どうやら友好的な相手らしい。
「聞かせてもらおう。」
「ではこちらに。」
少し屋敷から離れた場所へと連れていかれる。
一応屋敷の者達に聞かれない為の配慮だろう。
「一応遮音結界を張らせていただきます。」
「用心深いな。」
「内容が内容ですからね。それでは先ずご挨拶を。私は人化のスキルを使用しているレギオンハート様の従魔でございます。」
なんとジルを訪ねて公爵家にやってきたのは元四天王レギオンハートの従魔の一体であった。
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