【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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95章

元魔王様と戦闘指導 4

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 ジルから予想外の事を言われてヒュルクは驚いている。

「収納スキルが戦闘に役立つのですか?」

「使い方によってはな。」

 収納スキルは希少でとても便利なスキルではあるが戦闘に使うと言うのは想像が出来無い。

「だが我の教える戦闘方法は魔力消費が多くなる。故にヒュルクに訓練を施すとすれば魔力量を増やす訓練になるな。」

 収納スキルは使用する度にそれなりの魔力を消費する。
ジルの教える戦闘方法は収納スキルを多用する事になるので、魔力量が多くないと試す事が出来無い。

「魔力量を増やす訓練ですか。」

「方法は知っているか?」

「いえ、不勉強で申し訳ありません。」

 昔であればそれなりに知れ渡っていた事なのだが、今となっては魔力量を増やす訓練を知っている者は少ない。
短期間で急激に増える訳では無いので、あまり効果を実感出来無いのが忘れられていった原因だろう。

「まあ、簡単な事だ。魔力切れの限界まで魔法を使用する。それを毎日繰り返せばいい。」

「それだけで魔力量が増えるのですか?」

「微々たるものだがな。だが継続していれば確実に増えていくぞ。」

 トレンフルでルルネットを鍛える事になった時も同じ事をさせた。
魔力量の増加は気にしていないと気付けないくらいの上昇幅だが、ルルネットで試して増える事は分かっている。

「まさかそんな簡単な事で魔力を増やせるとは。それはやらない手はありませんね。」

「魔力切れの辛さに毎日耐えられるのであればな。」

 昔もこれを嫌って魔力量を増やす訓練をしない者が多かった。
魔力を使い過ぎて魔力切れの症状が現れれば辛い思いをするし、訓練での魔力を早急に回復しないといけない時には味覚を犠牲にしてポーションを飲まなければいけなかった。

「成る程、魔力量を増やす代償と言ったところですか。」

「そんなところだ。」

 魔力の量は分かりやすく力に差が出る。
例えば同じ魔法を打ち合って勝負した時、魔力量の多い方が回数も多く打てるし一回一回の威力を高める事が可能だ。
魔力が多くて損をする事は滅多に無い。

「私は必要な事なのであればどんな苦にも耐えてみせます。」

 ヒュルクは皆を守れる力を手に入れる為であれば魔力切れの症状にも立ち向かうと宣言した。

「そうか、その覚悟があれば問題は無いだろう。魔力量を増やすのは我らが帰ってからでも出来る。戦い方を教えてやろう。」

「宜しくお願いします。」

 基本的な戦い方さえ教えておけば、訓練で魔力量を増やしてからヒュルクは勝手に物にするだろう。

「ちなみに魔装は使えるのか?」

「足だけであれば使えます。逃げ足を早くする為に習得しました。」

「ふむ、後衛であれば最低限の魔装だな。」

 後衛を務める者達は相手との距離を一定に保つ為に足だけの魔装を習得する者が多い。
ヒュルクも同じであり、他の魔装は使えない様だ。

「だが近接戦闘を考えるのであれば全身で出来る様にしておけ。攻撃力と防御力を同時に高められるのだからな。」

「承知しました。」

 後衛の者でも魔装は全身で出来る様にしておいて損は無い。
攻撃力にはならなくても相手の攻撃を受けた時に致命傷を避ける為の防御力にはなるのだ。

「それで戦い方に関してだが、この木を仮想敵とする。そして我がヒュルクだ。」

 そう言って一本の丸太を無限倉庫から取り出して立てる。

「戦い方は単純だ。相手に接近して武器を持っているかの様に腕を振るう。」

 ジルは丸太の正面に移動してから剣を持っているかの様に腕を振り下ろす。

「そして直撃の瞬間に武器を収納から出して持つ。」

 丸太に当たる瞬間にジルの手には無限倉庫から取り出した剣が握られる。
そして剣が丸太を真っ二つに斬り裂く。

「これで相手に攻撃が与えられると言う訳だ。」

「な、成る程。」

「ヒュルクは手に力が入らない様だから武器を取り落とす可能性もあるだろう。だが直撃させれば無傷ではいられん。」

 この戦闘方法で重要なのは剣が相手に当たるかどうかだ。
相手に当たった衝撃で剣を落としてしまったり、振り切った後に支えられず手を離してしまっても問題無い。

「ですが武器を落としてしまった場合はどうすれば?その可能性が非常に高いのですが。」

「構わず放っておけ。また別の武器を出せばいい。」

「た、確かに。」

 わざわざ落とした剣を拾う必要も無い。
予め収納スキルに剣の予備を用意しておけば済む話しだ。

「収納スキル持ちの強みは物資を潤沢に使える事だ。それは武器も同じ。前もって多めに持っておけば、戦闘中に失っても全く問題無い。」

 相手に剣を当てる事だけを考えていればいい。
しかしこの戦い方をするのであれば大量の魔力が必要になるので、魔力量を増やす訓練は継続していく必要がある。

「ヒュルクの収納容量は大体分かっている。暫く戦闘を行えるくらいの武器は収納しておける筈だ。」

「そうですね、そしてこの戦い方であれば私も戦えます。咄嗟に武器を構える必要が無いのであれば奇襲にもなりますし。」

 ヒュルクもジルから教えられた戦い方に可能性を見出したのか、とてもワクワクした表情をしている。
諦めていた近接戦闘がこんな形で出来る様になるとは思わなかった。

「ちなみにこんな事も出来るぞ。」

 ジルは目の前の斬られた丸太の少し上に大岩を取り出した。
重力に従って大岩は地面へと落下していき、丸太を押し潰す。

「収納スキルは付近に物の出し入れが出来る。斬り合った瞬間に相手の頭上に落とせば無事では済まないだろう。」

「素晴らしいです。収納スキルの可能性を見た気がします。」

 自分では思い付きもしなかった戦い方にヒュルクはただただ感心していた。
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