【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

ゆーとちん

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103章

元魔王様と王子と王女 2

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 ジルの話しを聞き終えたエトワールとステファニア。
エトワールの方は難しそうな表情で腕を組んでいる。

「ジルがSランクになるのは当然だと私も思う。むしろ遅過ぎたくらいだ。」

「ええ、ジル様なら既にSランクやAランクになっていると思っていました。」

 ジルの実力であれば既に高ランク冒険者になっていると思っていた。
故に現在のランクを聞いて驚いていた。

「Cランク以上には強制力の働く指名依頼が出されるのは知っているか?」

「成る程、そう言う事か。」

「どう言う事ですか?」

 ジルの言葉で納得するエトワールと首を傾げるステファニア。
ギルドを利用する機会が無いステファニアは詳しく無い様子だ。

「Cランク以上の指名依頼は半ば強制だ。ジルはそんな指名依頼を断れない立場になりたくないからDランクからランクを上げずにいたのだろう。」

「そう言う事だ。」

 自由を求めて冒険者になったのに自由を奪われては意味が無い。
なので今日までDランクとして冒険者を続けてきた。

「そこで特殊Sランクか。」

「ユメノから提案されてな。エトが許可をくれるなら直ぐにでも立場が手に入る。」

「はぁ、こちらとしては正規のSランクになってもらえると有り難いのだが。」

 困った様に溜め息を吐きながらジルを見る。
ジルの実力を知っているからこそ国家戦力として抱え込みたいと思うのがエトワールの心情だ。
ジルが国家戦力となってくれればジャミール王国は更に安泰である。

「それは我が困るな。国家戦力なんて面倒なものになりたいとは思わん。自由な暮らしが奪われるのであればこの話しも無しでいいしな。」

「いいのか?貴族と同等の権限が手に入る機会なのだぞ?」

 平民の立場からすれば一気に成り上がれる絶好の機会だ。
逃したくないと思うのが普通である。
しかしその普通に当て嵌まらないのがジルである。

「持っていたら便利だとは思うが固執する程の物では無いな。Dランクでも身分証となる冒険者カードはあるし、目障りな貴族連中がいれば権力など無くてもどうとでもなる。」

「貴族より上の立場である私達を前にして堂々と危険な宣言をしないでほしいのだがな。」

 手で両目を覆いながらエトワールが言う。
ジルが過去に貴族の一部と問題を起こした事も知っている。
故にその気になれば本当に実力行使も辞さないのだと思わせられる。

「それではジル様、こちらが許可証になります。私の名前を書いておきましたのでギルドマスターへ渡して下さい。」

 綺麗に折り畳んでジルの前に差し出してくる。
ジルとエトワールが話している間に急にステファニアが黙って何かを書いていたかと思えば、エトワールに頼んだ許可証を代わりに書いてくれていたらしい。

「っておいステフ、何を勝手に渡しているのだ。」

「エト兄様が中々渡さないからです。勿体ぶっていますが渡すつもりではあるのでしょう?」

「…まあな。ジルには世話になっているし、その実力もSランクに値すると理解している。」

 国家戦力の話しも本音ではあるがジルに頼まれた段階で断るつもりは無かった。

「ならば何故悩む?」

「せっかくならば自国のSランクとして国家戦力となってもらいたい。国を代表する王族ならば当然の考えだ。」

 自国の未来を平和なものとする為、強者は幾らでも抱え込みたい。
今は国王で無くても王子であるエトワールの仕事の一つなのだ。

「まあ、エトの立場なら分からなくも無い。だが王族と言えど我を縛る事は許さん。」

 誰にも自分を従えさせるつもりは無い。
今世は自由の身なのだ。

「分かっている、駄目で元々の話しだ。ステフに先を越されたが私も認めるつもりだったしな。」

 そう言って許可証を開き自分の名前も書いていくエトワール。
王族二人から許可を得られたので目的は達成した。

「有り難く貰っていこう。」

 ジルが許可証を受け取って無限倉庫に収納する。
それを見たエトワールは再び溜め息を吐く。

「残念そうですねエト兄様。」

「当たり前だろう?有能な人材は幾らでもほしい。」

 許可証を渡してしまったと言う事はジルが特殊Sランクに付くのは殆ど確定してしまったと言う事なのだ。

「大丈夫ですよ。ジル様はそんな物で縛らなくても、いざと言う時には力となってくれます。そんな気がするのです。」

「考え過ぎだぞステファニア王女。」

 ジルであっても手の届かない範囲の事は難しい。
その手の範囲が広い事は事実だが万能では無いのだ。

「あ、そのステファニア王女と言う呼び方は変えてもらえませんか?どうかステフと呼んで下さい。」

「おいステフ、ジルとは身分が違うのだぞ。恩人とは言えあまり親し気にするのは見過ごせん。」

「お兄様だけ愛称で呼ばれるのはずるいです。」

「やれやれ、喧しい兄妹だ。」

 言い合う二人を前にジルはメイドの淹れてくれた紅茶を飲んで呟くのだった。
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