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side さくら
01.
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ずっとずっと好きな人がいるの。
産まれた時から隣に住んでる、はーちゃん──市来 春風クン。
小さい頃は私が困ってたり泣いてたりするとすぐに助けに来てくれた、ヒーローみたいな男の子だった。
はーちゃんのお嫁さんになるって思ってたし、ずっと一緒にいられると思ってた。
だけどずっと一緒にはいられないんだって、私は年長さんの年に知った。
私は3月31日産まれ。はーちゃんは4月3日産まれ。
たったの3日。
だけどその3日が、私達にはとっても大きくて高い壁になっちゃった。
どうしてはーちゃんと一緒に1年生になれないのって、泣いて泣いて、パパもママも、多分はーちゃんも困らせた。
1年生になっても最初は学校に行くのが嫌で幼稚園に戻るって泣いて、また困らせて。
はーちゃんが1年生になって一緒に登下校できるようになって喜んだのも束の間、
段々はーちゃんは男の子とばっかりいるようになって、あんまり遊んだり話したり出来なくなって──
中学生になったら、学校の廊下ですれ違った時に会釈とかされるようになって。
"幼馴染"でも"友達"でもなくて、"先輩と後輩"になっちゃった。
中学生になったはーちゃんは勉強が出来て、スポーツもずば抜けてるってわけじゃないけど何でも器用にこなしてるみたいだった。
2年生くらいから背も伸び始めて、何だかどんどんカッコよくなって、同級生や一つ下の女の子からも人気があるみたいだった。
だけど女の子同士でするコイバナは、みんな同級生か先輩か若い先生の話ばっかり。
一度1個下に気になる人がいるって言ってみたら、皆に「年下なんて無い!」って言われて……
だから私は何となくみんなに話を合わせるようになった。
適当に人気のある先輩の名前を上げて、憧れているフリをして。
それが何だか辛くて、だから高校は、女子高なら校内に先生以外の男の人がいないから具体的な名前を出すような事もないかなって思って、女子高を選んだ。
はーちゃんは家から自転車で行ける男子校に進んで──
男子校だから高校の間に彼女は出来ないだろう、なんてどこかで安心してた。
はーちゃんが高校生になった年の秋頃、電車を降りた私は駅前ではーちゃんを見かけた。
はーちゃんは通学で駅前は通らないはずなのにどうしたんだろう、お友達と遊びに来たのかな?なんて思いながら、また背が伸びたみたいでもっとカッコよくなってるはーちゃんに見惚れてた私の目に飛び込んできたのは、はーちゃんの隣で笑ってる女の子の姿。
足元ががらがらーって崩れたみたいな気がして……
気が付いたら部屋のベッドに潜り込んで泣いてた。
はーちゃんに彼女が出来たのなら諦めないとって思って、だけど時々会えるはーちゃんに、やっぱりドキドキして、好きって気持ちしかなくって──
だから大学生になってすぐに、たくさんお化粧の練習をした。
時々会えるその時に、少しでも可愛いって思って貰いたくて。
少しでも「女の子」として見て貰えるようになりたくて。
だけど会えてもはーちゃんは「よぉ」とか「久しぶり」とか「元気か」とか、挨拶だけですぐに家に入っちゃう。
あぁ、やっぱりちっとも女の子として見て貰えてないんだって落ち込んでる私に、健ちゃんは「そんなに気になるなら告れば良いじゃん」って言うけど……
「ハルにぃ今彼女いないらしいよ」とも言ってたけど……
挨拶しかしてないような"ただのお隣さん"に突然告白なんてされても、きっとはーちゃんは困るだろうなって思ったら、やっぱり告白なんて出来るはずもなかった。
ある日たまたま早く家を出た日に前を歩くはーちゃんを見つけて、でも声をかけようか迷っている間にはーちゃんはどんどん先にいっちゃって──
その後も何度かはーちゃんの背中を見送って、結局、やっぱり私は諦めちゃった。
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
「早織さんと、旅行?」
「そう、3泊4日で九州旅行!冷蔵庫の中のものは好きに使って良いしお金も置いてくから、悪いけど健吾のご飯よろしくね」
あの子放っておくとロクな物食べないでしょ?というママに分かったって頷いて、そしてはーちゃんはご飯どうするのかな、とか「作りすぎちゃって」とか言って持って行ってみるのはどうだろう、なんて考えちゃって、慌てて頭を振る。
そしてママ達が旅行に出かける日、少し早いけど一緒に出ちゃおうって思って家を出たら──はーちゃんが居た。
ママ達は皆でうちの車で空港まで行くらしくて、寝起きなのか時々欠伸をしながら早織さんの荷物を積み込んでるはーちゃんは、寝癖がついてて眠そうで、普段はカッコイイはーちゃんが何だかすごく可愛く見えたりして。
賑やかに出発して行った4人に手を振って見送って、はーちゃんが家に入るのも見送ろうかな、なんて思ってたら「さくらはこのまま出るのか?」って話しかけられた。
ビックリしながらも、一限からだからって答えて……ドキドキしながらはーちゃんは?って聞いてみる。
「俺は昼から……だけどまぁ、多分家で寝てるかな」
「えぇ??」
「一コマ休講になったから、たった一コマだけのために行きたくねー。金曜は元々二コマの日でさ。親もいないし今日はとことんだらけるつもり」
そう言えば早織さんが少し前に「大学生になって春風の面倒くさがりに拍車がかかった」とかボヤいてたっけと思いながら、それでも早織さんに怒られたらちゃんと行くんだって思ったら、何だかまた可愛く思えて──思わず笑いながら「はーちゃんは仕方ないなぁ」って言ったら、はーちゃんは少しだけ拗ねたみたいな顔をした。
「姉ちゃん、鍵閉めちゃって良いの?俺ももう出るけど」
健ちゃんから声をかけられて、そう言えば健ちゃんも出るんだったって、良いよって答えて、
途切れちゃった会話をもう少し続けられないかなって悩んで、でもあんまり話し込んだら迷惑かもって思って……。
「あの……じゃあ、私そろそろ行くね」
「おう」
またな、なんて手を挙げて見送ってくれた事が嬉しくて、思わず緩むほっぺたを頑張って引き締めながら学校へ行った。
「あ、忘れてた」
家を出る時に聞こうと思ってた夕飯のリクエスト、健ちゃんに聞き忘れたなって気づいて電車の中からメッセージを送ると『すき焼き煮!』って返ってきて、首を傾げる。
健ちゃんはお肉は焼いて食べるのが好きなのに……。
珍しいねって返したら『たまにはそういう気分の事だってあるよ』だって。
そうだっけ?いつでもどんな時でも焼いてるのが好きだった気がするけど……って思いながらも、『じゃあすき焼き煮・玉子入りね』って返したらOKってスタンプで返事が来た。
産まれた時から隣に住んでる、はーちゃん──市来 春風クン。
小さい頃は私が困ってたり泣いてたりするとすぐに助けに来てくれた、ヒーローみたいな男の子だった。
はーちゃんのお嫁さんになるって思ってたし、ずっと一緒にいられると思ってた。
だけどずっと一緒にはいられないんだって、私は年長さんの年に知った。
私は3月31日産まれ。はーちゃんは4月3日産まれ。
たったの3日。
だけどその3日が、私達にはとっても大きくて高い壁になっちゃった。
どうしてはーちゃんと一緒に1年生になれないのって、泣いて泣いて、パパもママも、多分はーちゃんも困らせた。
1年生になっても最初は学校に行くのが嫌で幼稚園に戻るって泣いて、また困らせて。
はーちゃんが1年生になって一緒に登下校できるようになって喜んだのも束の間、
段々はーちゃんは男の子とばっかりいるようになって、あんまり遊んだり話したり出来なくなって──
中学生になったら、学校の廊下ですれ違った時に会釈とかされるようになって。
"幼馴染"でも"友達"でもなくて、"先輩と後輩"になっちゃった。
中学生になったはーちゃんは勉強が出来て、スポーツもずば抜けてるってわけじゃないけど何でも器用にこなしてるみたいだった。
2年生くらいから背も伸び始めて、何だかどんどんカッコよくなって、同級生や一つ下の女の子からも人気があるみたいだった。
だけど女の子同士でするコイバナは、みんな同級生か先輩か若い先生の話ばっかり。
一度1個下に気になる人がいるって言ってみたら、皆に「年下なんて無い!」って言われて……
だから私は何となくみんなに話を合わせるようになった。
適当に人気のある先輩の名前を上げて、憧れているフリをして。
それが何だか辛くて、だから高校は、女子高なら校内に先生以外の男の人がいないから具体的な名前を出すような事もないかなって思って、女子高を選んだ。
はーちゃんは家から自転車で行ける男子校に進んで──
男子校だから高校の間に彼女は出来ないだろう、なんてどこかで安心してた。
はーちゃんが高校生になった年の秋頃、電車を降りた私は駅前ではーちゃんを見かけた。
はーちゃんは通学で駅前は通らないはずなのにどうしたんだろう、お友達と遊びに来たのかな?なんて思いながら、また背が伸びたみたいでもっとカッコよくなってるはーちゃんに見惚れてた私の目に飛び込んできたのは、はーちゃんの隣で笑ってる女の子の姿。
足元ががらがらーって崩れたみたいな気がして……
気が付いたら部屋のベッドに潜り込んで泣いてた。
はーちゃんに彼女が出来たのなら諦めないとって思って、だけど時々会えるはーちゃんに、やっぱりドキドキして、好きって気持ちしかなくって──
だから大学生になってすぐに、たくさんお化粧の練習をした。
時々会えるその時に、少しでも可愛いって思って貰いたくて。
少しでも「女の子」として見て貰えるようになりたくて。
だけど会えてもはーちゃんは「よぉ」とか「久しぶり」とか「元気か」とか、挨拶だけですぐに家に入っちゃう。
あぁ、やっぱりちっとも女の子として見て貰えてないんだって落ち込んでる私に、健ちゃんは「そんなに気になるなら告れば良いじゃん」って言うけど……
「ハルにぃ今彼女いないらしいよ」とも言ってたけど……
挨拶しかしてないような"ただのお隣さん"に突然告白なんてされても、きっとはーちゃんは困るだろうなって思ったら、やっぱり告白なんて出来るはずもなかった。
ある日たまたま早く家を出た日に前を歩くはーちゃんを見つけて、でも声をかけようか迷っている間にはーちゃんはどんどん先にいっちゃって──
その後も何度かはーちゃんの背中を見送って、結局、やっぱり私は諦めちゃった。
❊❊❊❊❊ ✽ ❊❊❊❊❊
「早織さんと、旅行?」
「そう、3泊4日で九州旅行!冷蔵庫の中のものは好きに使って良いしお金も置いてくから、悪いけど健吾のご飯よろしくね」
あの子放っておくとロクな物食べないでしょ?というママに分かったって頷いて、そしてはーちゃんはご飯どうするのかな、とか「作りすぎちゃって」とか言って持って行ってみるのはどうだろう、なんて考えちゃって、慌てて頭を振る。
そしてママ達が旅行に出かける日、少し早いけど一緒に出ちゃおうって思って家を出たら──はーちゃんが居た。
ママ達は皆でうちの車で空港まで行くらしくて、寝起きなのか時々欠伸をしながら早織さんの荷物を積み込んでるはーちゃんは、寝癖がついてて眠そうで、普段はカッコイイはーちゃんが何だかすごく可愛く見えたりして。
賑やかに出発して行った4人に手を振って見送って、はーちゃんが家に入るのも見送ろうかな、なんて思ってたら「さくらはこのまま出るのか?」って話しかけられた。
ビックリしながらも、一限からだからって答えて……ドキドキしながらはーちゃんは?って聞いてみる。
「俺は昼から……だけどまぁ、多分家で寝てるかな」
「えぇ??」
「一コマ休講になったから、たった一コマだけのために行きたくねー。金曜は元々二コマの日でさ。親もいないし今日はとことんだらけるつもり」
そう言えば早織さんが少し前に「大学生になって春風の面倒くさがりに拍車がかかった」とかボヤいてたっけと思いながら、それでも早織さんに怒られたらちゃんと行くんだって思ったら、何だかまた可愛く思えて──思わず笑いながら「はーちゃんは仕方ないなぁ」って言ったら、はーちゃんは少しだけ拗ねたみたいな顔をした。
「姉ちゃん、鍵閉めちゃって良いの?俺ももう出るけど」
健ちゃんから声をかけられて、そう言えば健ちゃんも出るんだったって、良いよって答えて、
途切れちゃった会話をもう少し続けられないかなって悩んで、でもあんまり話し込んだら迷惑かもって思って……。
「あの……じゃあ、私そろそろ行くね」
「おう」
またな、なんて手を挙げて見送ってくれた事が嬉しくて、思わず緩むほっぺたを頑張って引き締めながら学校へ行った。
「あ、忘れてた」
家を出る時に聞こうと思ってた夕飯のリクエスト、健ちゃんに聞き忘れたなって気づいて電車の中からメッセージを送ると『すき焼き煮!』って返ってきて、首を傾げる。
健ちゃんはお肉は焼いて食べるのが好きなのに……。
珍しいねって返したら『たまにはそういう気分の事だってあるよ』だって。
そうだっけ?いつでもどんな時でも焼いてるのが好きだった気がするけど……って思いながらも、『じゃあすき焼き煮・玉子入りね』って返したらOKってスタンプで返事が来た。
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