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くったりと弛緩した私の中から、ゆっくりとディル様の指が離れた。
「達ったな」
ディル様が何だか満足げに笑う。
「次は三本」
「ぇ……?」
ぼんやりとその言葉の意味を考える。
「ぁ、まって……」
「待たない」
「痛っ……!」
ぐっと挿ってきた、さっきよりも質量を増したそれに、咄嗟に逃げようとした腰を押さえられる。
「や、やだ……いた、い……」
「大丈夫だ、すぐ慣れる」
無情な宣告に、私はぎゅっと目を瞑って、枕を握る手に力を込めた。
「あ……ぅんっ………」
暫くゆっくりと、さっきと同じように出し入れだけを繰り返していたディル様は、私の声に苦痛以外の色が混ざったのを聞き逃さず、私の中で指をほどいた。
さっき見つけたポイントを責めて、それ以外の所も暴いて。
増している水音も、とろとろと溢れて止まらない蜜も、我慢なんてできない声も──全部全部、恥ずかしいなんて思う間もないくらい責め立てられて、乱される。
「あ……でぃる、さ……きもち、い………」
痺れるようなこの感覚がそうなのだと、私はやっと理解して、素直に言葉に乗せる。
そうしたらディル様は口端を上げて、私の中から指を引き抜いた。
「ディルさま……?」
唐突に、放り出されたように終わったそれに、私はぼんやりとディル様を見上げると、ディル様が、羽織っていたガウンを脱ぎ捨てるところだった。
この時とった行動を、私は後悔する事になる。
だって、見たいなと思ってしまったのだ。
ぼんやりした頭で何か考えられるはずもなくて、ただ欲望に忠実に、見たいと思ってしまった。
ディル様は騎士だ。
鍛えられた身体は、服の上から触れただけでも、しっかり筋肉がついていると分かる身体で。
だからやっぱり、自分の目で確かめてみたかった。
腹筋は、シックスパックになっているのかを。
一応断っておくと、私は筋肉フェチではありません。
だけどきれいに割れた腹筋を拝んでみたいという好奇心は、仕方がない事だと思うのです。
そして、期待を裏切る事なく……さすが乙女ゲームの世界。
隆々ではなく、きれいなきれいな筋肉質の身体が、そこにあった。
見事なシックスパックだった。
──そこまでは良かった。
あぁ、きれいな身体だなぁ で済んだ。
だけどシックスパックの前、そそり立つ何かが、目に入って……
そう、ナニかが……
ひぇっ! と悲鳴を上げなかった私を、誰か褒めて欲しい。
声は出なかったものの、私が息を飲んだ事に気づいたディル様が不思議そうに私をみて、私の視線に気づいて──そうしてニッと笑って、脱いだガウンを、ばさりと床に落とした。
「ローズマリーも、脱がないとな」
そう。私もまだベビードールもどきを着たままなのです。
「ぅ……あの……っ」
慌ててベビードールもどきの薄布を手繰り寄せる。
心許なさ半端ない!!
ぎしっと軋んだベッドの音がいやに大きく聞こえて、私は思わず逃げそうになる。
「あ……あの……あの……、私……」
「ローズマリー」
名前を呼ばれて、耳たぶを食まれる。
そこから首筋へ、鎖骨へと、最初と同じルートで降りていく唇に気を取られている間に、両手首がシーツに縫い留められていた。
しまったと思った時には、胸を吸われてカリッと歯を立てられて、あんっ! とか言ってる間にするりと両肩から薄布が下ろされて、
あれ? と思った時には背中に回された腕に身体を持ち上げられて、あっさりと私の身体の下から薄布が取り去られた。
あまりの早業に呆然とディル様を見上げると、ディル様は見せつけるように薄布にキスをして、そしてゆっくりと、床に落とした。
「ディル様……あの、わたし……」
「うん」
ちゅっと口付けられる。
「わたし……」
ふるふると首を振る。きっと私の顔は青褪めているだろうと思う。
それでも言わなくちゃ……!
今ちゃんと言って、せめて心の準備をする時間を……!
私はぎゅっと目を瞑ると、叫ぶように訴えた。
「わたし、そのサイズは……! 無理だと思います……っ!」
「三本いけたから、大丈夫」
「────っえ!?」
必死の訴えが、秒で叩き落とされた!
「いや、だって……全然ちが………んんっ!?」
言葉を重ねようとしたのに、黙れとばかりに口を塞がれてしまった。
「ここまで来たら、止まれない」
諦めてくれ、と額に張り付いていた髪を払われて、口付けられる。
「ゆっくり、するから」
ちゅっと瞼に、目尻に、唇が落ちる。
──うん、いや、私だってディル様の事が好きで、大好きで、
一つになりたい、と思わないわけがない。
だけど、ちょっと予想外というか……
前世でも未経験なので、男性のサイズなんて知らないけど、みんなそうなの? こんななの??
問いかけたところで誰からも答えなんて来るはずもなく、ちらりとディル様を見上げてみたら、
欲情の色を宿した瞳と、ぶつかった。
こくりと、喉が鳴る。
「……や………やさしく、して ください……」
私の嘆願は、蕩けるような微笑みと、深い深い口付けによって、許諾された。
ディル様の指が私の秘裂をなぞる。驚愕で止まったかと思っていた蜜は、変わらずとろとろと溢れていた。
私の濡れそぼっている蜜口にディル様のそれがあてがわれて、そして次の瞬間ぐっと私の中に押し入ってくる。
「ぅ、あっ………」
いたい、という言葉をかろうじて飲み込んで、私はぎゅうっと目を瞑る。
小刻みに腰を揺らして、少しずつ少しずつ挿ってくるそれは、痛いなんてものではなくて。
めりめりと幻聴が聞こえそうな質量と、息が止まりそうな圧迫感に、きつく瞑っている目からぼろぼろと涙が零れる。
痛みに耐えて、必死に息を継ぐ。
長い長い時間が経った気がして。
まだかな、なんて頭の片隅で思ったその時、ふと、ディル様の動きが止まった。
「……おわっ、た……?」
「いや……まだ、半分」
絶 望 し た。
「は……んぶん……??」
呆然と呟く私に、ディル様はきゅっと眉を寄せる。
「すまない、やめてやりたいが……俺も、戻れない」
ディル様の指が私の目尻にたまった涙を掬う。
そのまま大きな手の平で頬を包み込まれて、もう一度すまない、と謝られる。
謝るディル様もなんだか苦しそうで。
はっと短く息を吐いて、きゅっと眉根を寄せて一瞬何かを耐えるような表情を見せた。
その表情を見て、ディル様も、辛いのかなって。
私のために、我慢、してくれてるのかなって、気付いて。
──だから私は、覚悟を決めた。
「ディル様……も、一思いに、やっちゃってください……」
「言い方」
苦笑を零して、ディル様が私の頬に口づける。
「やめなくて、良いですから……」
「すまない」
ディル様は私の両足を抱え上げて、自分の肩に乗せる。
その動きで、中がずくりと痛んだ。
「いくぞ」
短く告げて一度腰を引いたディル様は、小さくすまないって呟いてから、一気に私を貫いた。
「あぁぁ――――っ!!」
引き裂かれるような痛みに、悲鳴に近い声が出て、背中が反り返る。
「あ……ぁ………」
痛みにがくがくと身体が震えて、涙が後から後から零れる。
「ローズマリー、息をして」
ディル様にぎゅうっと抱きしめられる。
息……?
言われて、浅く息を吸う。
「大丈夫……ではないな。暫く、こうしてるから」
ディル様はそのまま私を抱きしめて、背中をトントンと叩いてくれる。
その手に合わせるように、息を吸って吐いて……
そうしているうちに、落ち着いてきて、痛みも、少しずつ和らいだような気がして。
「ディル様、ぜんぶ、挿りました、か?」
「あぁ、一番奥まで」
トン、と背中を叩く手に合わせてふっと息をつく。
「これで、一つになれましたね」
へにゃっと笑う。
きっと涙でぐしゃぐしゃでひどい顔だろうけど。
そんな私に、ディル様は困ったような顔をしておでこをくっつけてくる。
「あんまり煽るな」
「そんなつもりは……」
ディル様が少しだけ腰を引いて、トンとノックするみたいに私の最奥を叩く。
「ぁっ……」
びくんと跳ねた腰に、背中を叩いていた手が下りる。
「良いか?」
問われて、私は頷く代わりに、ディル様の背中に腕を伸ばす。
きゅっと腕に力を込めると、耳元で名前を囁かれた。
はい、と返せたかどうかは、よく分からない。
最初は小さく、トン、トンと
蜜と、吐息を、どれだけ溢れさせるつもりなんだろうと思うくらい、最奥を何度も何度も刺激されて、
「ディル……」
さま、と続けようとすると、口付けに音を奪われる。
吐息に自分でも分かるくらい甘さが含まれるようになってからやっと、ディル様は少し大きく腰を引いて、確かめるようにゆっくりと最奥へと進む。
「んっ……も、だい、じょ……ぶ………です、から……」
優しくして下さい、とお願いはしたけど……良いのに。
もっと、好きにしちゃえば良いのに。
「ディル……」
さっきしてくれた様に、両手で頬を包んで、そうして私から口付ける。
きて、と言葉には出来なかったけど、両手を伸ばして、笑う。
上手く笑えた自信はないけど、ディル様は……ディルは、ありがとう、と呟いて、口付けを返してくれた。
そのあとは、もう嵐みたいで。
ゆるやかに抽挿を繰り返したかと思ったら、一気に突き上げられて、ガンガンと最奥を揺さぶられて。
どこかに飛ばされてしまいそうな錯覚に、必死で背中にしがみつくと、苦しいくらいの力で抱きしめ返される。
「あっ……ディ……ルっ……! あぁ、んっ……あっ……」
「ローズマリー、愛してる」
「わた……しも……ディル……っあい……あぁっ、や、ぁんっ……あぁぁ――っ!」
愛してるって、言わせてもらえずに、激しく突き上げられて
私の一番奥で、ディルの熱が弾けた──。
「ローズマリー……」
どうやら少しだけ意識が飛んでいたようで、気が付いたらディルが心配そうに私の髪を梳いていた。
荒い息を繰り返して、ぐったりとシーツの海に沈んでいる私は、瞼を持ち上げるのも億劫で──
「ローズマリー?」
だけどあまりに心配そうな声音に、これはきっと返事をしてあげないと可哀想なやつだなとぼんやり思って、頑張って重たい瞼を持ち上げてみた。
そうしたら想像通り──ううん、それ以上に心配そうに覗き込んでいた焦茶色に、思わず小さく笑う。
「ディル」
ほっとした様に、呼びかけに応えて口付けてくれたディルは、遠慮がちに私の身体を抱きしめる。
「出たくないな」
未だ私の中に挿ったままの彼に嫌な予感がして、だめですよ、と先手を打つ。
「今日は、もう無理です」
「今日は……?」
「……明日も、かも……」
「今日は、だな」
返事をする前に、ずるりと引き抜かれて、そしてそれに続いてこぽりとディルの熱が溢れてくる。
「んんっ……」
溢れて太腿を伝っていくその感触に、小さく漏れてしまった声を誤魔化すように顔を背ける。
ディルは私が顔を向けた側に横になると、その腕に私を抱き込んだ。
暖かい腕に包まれて、急激に瞼が重くなる。
殿下との婚約破棄を願ってはいたけれど、その後自分が誰かとこうして添い遂げられる未来なんて全く想像もしていなくて。
きっと家族から少し厄介者扱いされながら、どこか遠い地でひっそりと生きていくのだと思っていた。
好きな人とこうして一緒にいられる奇跡のような幸せな時間を噛みしめて、私はディルの胸に甘えるように額をくっつけると、そっと目を閉じた──
-Fin.-
「達ったな」
ディル様が何だか満足げに笑う。
「次は三本」
「ぇ……?」
ぼんやりとその言葉の意味を考える。
「ぁ、まって……」
「待たない」
「痛っ……!」
ぐっと挿ってきた、さっきよりも質量を増したそれに、咄嗟に逃げようとした腰を押さえられる。
「や、やだ……いた、い……」
「大丈夫だ、すぐ慣れる」
無情な宣告に、私はぎゅっと目を瞑って、枕を握る手に力を込めた。
「あ……ぅんっ………」
暫くゆっくりと、さっきと同じように出し入れだけを繰り返していたディル様は、私の声に苦痛以外の色が混ざったのを聞き逃さず、私の中で指をほどいた。
さっき見つけたポイントを責めて、それ以外の所も暴いて。
増している水音も、とろとろと溢れて止まらない蜜も、我慢なんてできない声も──全部全部、恥ずかしいなんて思う間もないくらい責め立てられて、乱される。
「あ……でぃる、さ……きもち、い………」
痺れるようなこの感覚がそうなのだと、私はやっと理解して、素直に言葉に乗せる。
そうしたらディル様は口端を上げて、私の中から指を引き抜いた。
「ディルさま……?」
唐突に、放り出されたように終わったそれに、私はぼんやりとディル様を見上げると、ディル様が、羽織っていたガウンを脱ぎ捨てるところだった。
この時とった行動を、私は後悔する事になる。
だって、見たいなと思ってしまったのだ。
ぼんやりした頭で何か考えられるはずもなくて、ただ欲望に忠実に、見たいと思ってしまった。
ディル様は騎士だ。
鍛えられた身体は、服の上から触れただけでも、しっかり筋肉がついていると分かる身体で。
だからやっぱり、自分の目で確かめてみたかった。
腹筋は、シックスパックになっているのかを。
一応断っておくと、私は筋肉フェチではありません。
だけどきれいに割れた腹筋を拝んでみたいという好奇心は、仕方がない事だと思うのです。
そして、期待を裏切る事なく……さすが乙女ゲームの世界。
隆々ではなく、きれいなきれいな筋肉質の身体が、そこにあった。
見事なシックスパックだった。
──そこまでは良かった。
あぁ、きれいな身体だなぁ で済んだ。
だけどシックスパックの前、そそり立つ何かが、目に入って……
そう、ナニかが……
ひぇっ! と悲鳴を上げなかった私を、誰か褒めて欲しい。
声は出なかったものの、私が息を飲んだ事に気づいたディル様が不思議そうに私をみて、私の視線に気づいて──そうしてニッと笑って、脱いだガウンを、ばさりと床に落とした。
「ローズマリーも、脱がないとな」
そう。私もまだベビードールもどきを着たままなのです。
「ぅ……あの……っ」
慌ててベビードールもどきの薄布を手繰り寄せる。
心許なさ半端ない!!
ぎしっと軋んだベッドの音がいやに大きく聞こえて、私は思わず逃げそうになる。
「あ……あの……あの……、私……」
「ローズマリー」
名前を呼ばれて、耳たぶを食まれる。
そこから首筋へ、鎖骨へと、最初と同じルートで降りていく唇に気を取られている間に、両手首がシーツに縫い留められていた。
しまったと思った時には、胸を吸われてカリッと歯を立てられて、あんっ! とか言ってる間にするりと両肩から薄布が下ろされて、
あれ? と思った時には背中に回された腕に身体を持ち上げられて、あっさりと私の身体の下から薄布が取り去られた。
あまりの早業に呆然とディル様を見上げると、ディル様は見せつけるように薄布にキスをして、そしてゆっくりと、床に落とした。
「ディル様……あの、わたし……」
「うん」
ちゅっと口付けられる。
「わたし……」
ふるふると首を振る。きっと私の顔は青褪めているだろうと思う。
それでも言わなくちゃ……!
今ちゃんと言って、せめて心の準備をする時間を……!
私はぎゅっと目を瞑ると、叫ぶように訴えた。
「わたし、そのサイズは……! 無理だと思います……っ!」
「三本いけたから、大丈夫」
「────っえ!?」
必死の訴えが、秒で叩き落とされた!
「いや、だって……全然ちが………んんっ!?」
言葉を重ねようとしたのに、黙れとばかりに口を塞がれてしまった。
「ここまで来たら、止まれない」
諦めてくれ、と額に張り付いていた髪を払われて、口付けられる。
「ゆっくり、するから」
ちゅっと瞼に、目尻に、唇が落ちる。
──うん、いや、私だってディル様の事が好きで、大好きで、
一つになりたい、と思わないわけがない。
だけど、ちょっと予想外というか……
前世でも未経験なので、男性のサイズなんて知らないけど、みんなそうなの? こんななの??
問いかけたところで誰からも答えなんて来るはずもなく、ちらりとディル様を見上げてみたら、
欲情の色を宿した瞳と、ぶつかった。
こくりと、喉が鳴る。
「……や………やさしく、して ください……」
私の嘆願は、蕩けるような微笑みと、深い深い口付けによって、許諾された。
ディル様の指が私の秘裂をなぞる。驚愕で止まったかと思っていた蜜は、変わらずとろとろと溢れていた。
私の濡れそぼっている蜜口にディル様のそれがあてがわれて、そして次の瞬間ぐっと私の中に押し入ってくる。
「ぅ、あっ………」
いたい、という言葉をかろうじて飲み込んで、私はぎゅうっと目を瞑る。
小刻みに腰を揺らして、少しずつ少しずつ挿ってくるそれは、痛いなんてものではなくて。
めりめりと幻聴が聞こえそうな質量と、息が止まりそうな圧迫感に、きつく瞑っている目からぼろぼろと涙が零れる。
痛みに耐えて、必死に息を継ぐ。
長い長い時間が経った気がして。
まだかな、なんて頭の片隅で思ったその時、ふと、ディル様の動きが止まった。
「……おわっ、た……?」
「いや……まだ、半分」
絶 望 し た。
「は……んぶん……??」
呆然と呟く私に、ディル様はきゅっと眉を寄せる。
「すまない、やめてやりたいが……俺も、戻れない」
ディル様の指が私の目尻にたまった涙を掬う。
そのまま大きな手の平で頬を包み込まれて、もう一度すまない、と謝られる。
謝るディル様もなんだか苦しそうで。
はっと短く息を吐いて、きゅっと眉根を寄せて一瞬何かを耐えるような表情を見せた。
その表情を見て、ディル様も、辛いのかなって。
私のために、我慢、してくれてるのかなって、気付いて。
──だから私は、覚悟を決めた。
「ディル様……も、一思いに、やっちゃってください……」
「言い方」
苦笑を零して、ディル様が私の頬に口づける。
「やめなくて、良いですから……」
「すまない」
ディル様は私の両足を抱え上げて、自分の肩に乗せる。
その動きで、中がずくりと痛んだ。
「いくぞ」
短く告げて一度腰を引いたディル様は、小さくすまないって呟いてから、一気に私を貫いた。
「あぁぁ――――っ!!」
引き裂かれるような痛みに、悲鳴に近い声が出て、背中が反り返る。
「あ……ぁ………」
痛みにがくがくと身体が震えて、涙が後から後から零れる。
「ローズマリー、息をして」
ディル様にぎゅうっと抱きしめられる。
息……?
言われて、浅く息を吸う。
「大丈夫……ではないな。暫く、こうしてるから」
ディル様はそのまま私を抱きしめて、背中をトントンと叩いてくれる。
その手に合わせるように、息を吸って吐いて……
そうしているうちに、落ち着いてきて、痛みも、少しずつ和らいだような気がして。
「ディル様、ぜんぶ、挿りました、か?」
「あぁ、一番奥まで」
トン、と背中を叩く手に合わせてふっと息をつく。
「これで、一つになれましたね」
へにゃっと笑う。
きっと涙でぐしゃぐしゃでひどい顔だろうけど。
そんな私に、ディル様は困ったような顔をしておでこをくっつけてくる。
「あんまり煽るな」
「そんなつもりは……」
ディル様が少しだけ腰を引いて、トンとノックするみたいに私の最奥を叩く。
「ぁっ……」
びくんと跳ねた腰に、背中を叩いていた手が下りる。
「良いか?」
問われて、私は頷く代わりに、ディル様の背中に腕を伸ばす。
きゅっと腕に力を込めると、耳元で名前を囁かれた。
はい、と返せたかどうかは、よく分からない。
最初は小さく、トン、トンと
蜜と、吐息を、どれだけ溢れさせるつもりなんだろうと思うくらい、最奥を何度も何度も刺激されて、
「ディル……」
さま、と続けようとすると、口付けに音を奪われる。
吐息に自分でも分かるくらい甘さが含まれるようになってからやっと、ディル様は少し大きく腰を引いて、確かめるようにゆっくりと最奥へと進む。
「んっ……も、だい、じょ……ぶ………です、から……」
優しくして下さい、とお願いはしたけど……良いのに。
もっと、好きにしちゃえば良いのに。
「ディル……」
さっきしてくれた様に、両手で頬を包んで、そうして私から口付ける。
きて、と言葉には出来なかったけど、両手を伸ばして、笑う。
上手く笑えた自信はないけど、ディル様は……ディルは、ありがとう、と呟いて、口付けを返してくれた。
そのあとは、もう嵐みたいで。
ゆるやかに抽挿を繰り返したかと思ったら、一気に突き上げられて、ガンガンと最奥を揺さぶられて。
どこかに飛ばされてしまいそうな錯覚に、必死で背中にしがみつくと、苦しいくらいの力で抱きしめ返される。
「あっ……ディ……ルっ……! あぁ、んっ……あっ……」
「ローズマリー、愛してる」
「わた……しも……ディル……っあい……あぁっ、や、ぁんっ……あぁぁ――っ!」
愛してるって、言わせてもらえずに、激しく突き上げられて
私の一番奥で、ディルの熱が弾けた──。
「ローズマリー……」
どうやら少しだけ意識が飛んでいたようで、気が付いたらディルが心配そうに私の髪を梳いていた。
荒い息を繰り返して、ぐったりとシーツの海に沈んでいる私は、瞼を持ち上げるのも億劫で──
「ローズマリー?」
だけどあまりに心配そうな声音に、これはきっと返事をしてあげないと可哀想なやつだなとぼんやり思って、頑張って重たい瞼を持ち上げてみた。
そうしたら想像通り──ううん、それ以上に心配そうに覗き込んでいた焦茶色に、思わず小さく笑う。
「ディル」
ほっとした様に、呼びかけに応えて口付けてくれたディルは、遠慮がちに私の身体を抱きしめる。
「出たくないな」
未だ私の中に挿ったままの彼に嫌な予感がして、だめですよ、と先手を打つ。
「今日は、もう無理です」
「今日は……?」
「……明日も、かも……」
「今日は、だな」
返事をする前に、ずるりと引き抜かれて、そしてそれに続いてこぽりとディルの熱が溢れてくる。
「んんっ……」
溢れて太腿を伝っていくその感触に、小さく漏れてしまった声を誤魔化すように顔を背ける。
ディルは私が顔を向けた側に横になると、その腕に私を抱き込んだ。
暖かい腕に包まれて、急激に瞼が重くなる。
殿下との婚約破棄を願ってはいたけれど、その後自分が誰かとこうして添い遂げられる未来なんて全く想像もしていなくて。
きっと家族から少し厄介者扱いされながら、どこか遠い地でひっそりと生きていくのだと思っていた。
好きな人とこうして一緒にいられる奇跡のような幸せな時間を噛みしめて、私はディルの胸に甘えるように額をくっつけると、そっと目を閉じた──
-Fin.-
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