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うちのとは違う馬車が停まった事に慌てて飛び出してきた執事のセバスはまずディル様の──マグノリア家子息の姿に驚き、次いでパーティーで当分戻らないはずの私の姿に驚き。
そして大事な話があるからと両親を呼ぶよう頼むと、ディル様と私をちらりと見て、何かを心得たように一つ頷くとディル様を応接室に通してくれた。
すぐにやって来た両親に、パーティー会場で殿下から婚約破棄を言い渡された事を報告すると、お父様はふむ、と顎髭を撫で、お母様はあらまぁ、と超絶素敵な微笑みを見せた。
「それで? ソレル殿下の筆頭護衛騎士であるディル・マグノリア殿は、なぜうちの娘と共に在るのかな」
お父様の問いに、ディル様はやっぱり見惚れるくらい綺麗な座礼をした。
「護衛の任は、下りる旨を先ほど殿下に伝えました。正式な手続きは明日になりますが……護衛に戻る事はありません」
そこでディル様は一度頭を上げる。
「私は一人の男として、ローズマリー嬢を一番近くで護りたい。どうか、その許可を頂きたい」
「護るだけ、ですか?」
お母様のいじわるな視線に、ディル様は一瞬私に視線を寄こすと、いえ、と首を振った。
「ローズマリー嬢を愛しています」
きっぱりと放たれた言葉に、私は自分の顔にかーっと熱が集まるのを感じた。
恥ずかしい。
何これすっごく恥ずかしい。
さっきも言われたけど。その時も真っ赤になってた自覚はあるけど!
両親の前で堂々と言われるのって、何だかすっごく居たたまれない気分になるんだ……!!
うわぁぁぁぁ! と脳内マラソンを繰り広げていると、お父様とお母様がやれやれとばかりに視線を投げてくる。
多分私の脳内が大騒ぎな事などお見通しなのだろう。
「この子は子供の頃から殿下の婚約者として生きてきました。故に女性としての経験値は少々不足しているだろうが、構わないかな」
「そんなところもかわ……魅力の一つです」
しれっと"かわいい"って言おうとした、この人。
絶対キャラ違う!
「まぁ私たちとしても愛のないアホ……あら、失礼。あんな殿下よりは、愛し愛される相手に嫁がせてあげたいのだけれど……。ローズマリー」
「は、はいっ!!」
お母様の視線に、私はしゃきっと背筋を伸ばす。
「あなたは、ディル・マグノリア殿で、良いのですね?」
その問いかけに、私はお母様と、お父様と、最後にディル様を見て、そしてお母様に視線を戻す。
「はい。ディル様が、良いです……ディル様でなければ、嫌です」
少し声が震えたのは、仕方がない事だと思う。
でもはっきりと伝えられた。はず。
ドキドキしながらお母様の反応を窺っていると、膝の上に置いていた手がそっと暖かいもので包まれた。
視線を落とすと、大きな手が私の手を包み込んでくれている。
ディル様の手だ。
そこで私は手の平に爪が食い込む程に強く、自分の手を握りこんでいた事に気付いた。
ぎこちなく指を緩めると、ディル様がぽん、と手を叩いてくれて、ちらりと笑みまで見せてくれた。
何か今日はディル様の笑った顔いっぱい見てる。
願望が鬼のように叶ってる。
どうしよう、幸せすぎて溶けてしまいそう。
えへへと微笑みあっていたら、うぉっほんとお父様が咳ばらいをした。
慌てて顔を引き締めて、背筋を伸ばし直す。
ディル様も手を引っ込めて……はくれなかった。
え、そこは離すところではないでしょうか。
お願いだから離しましょうよ、とチラチラとディル様に視線を送るけれど、どこ吹く風のようで、ん? とばかりに小首を傾げられた。
ちくしょう、可愛いって思っちゃったじゃないっ!
あとでもっかいやって貰お!
お母様がそんな私たちを見て目を細める。
「良いでしょう、私は認めます」
「お母様……!」
ぱっと顔を輝かせてしまった私に、お父様が苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ほら、あなた」
お母様にぺしんっと膝を叩かれて、お父様はうむ、とかいやだが、とか呟いた後に一度天を仰ぐと、ふーっと大きく息を吐いた。
「ローズマリーと、ディル・マグノリア殿の結婚を、認めよ……」
「ありがとうございます」
お父様の言葉に被せ気味にディル様がきれいなきれいな座礼をかます。
お母様はあらまぁと微笑んで、お父様はむぎぎぎっと変な唸り声をあげていた。
こうして私とディル様は、光芒一閃、婚約者と相成った。
うん、その後ディル様がマグノリア家の権力を存分にふるいまくったおかげで電光石火の早さで結婚まで至ってしまったのだけど。
多分そこまでディル様が無茶をしたのは、お父様とフェンネルからの『清く正しいお付き合い』の厳命があった為と思われる。
清く正しいお付き合い……をしてましたよ?
キスは、清く正しいお付き合いの範囲内だそうです。ディル様比だそうですけど。
唇だけじゃなくて、なんかあちこちされましたけど。
これもキスだよ、と微笑まれれば、私に抵抗なんて出来るはずもなく……。
とにかくキスだけで我慢しまくってくれたらしいディル様は、結婚式の誓いのキスで先走って超ロングべろちゅーをかまして下さって、
むぎゃーっとなった私の心中を察した司祭様が、多分進行にも障りがあったのだろうけど、さりげなく手にしていた聖杖でディル様を突っついてくれた。
あれでディル様が浄化されてくれれば良かったのにな~と、今私はディル様との新居の、夫婦の寝室の、キングサイズのベッドの上で、悪霊退散お色気霧散! と脳内で全力祈祷を行っている。
「あ、あの、ディル様……」
「ディルで良い」
「ディル……さま。やっぱり無理ですすみません」
「いきなりは無理か」
「そーですね、いきなりは……あの、追々……」
出来ますれば、ディル様のそのやる気満々なそちらも、追々が……
とはこわくて言えないけどっ!
「ローズマリー」
名を呼ばれて、ぴくりと身体が震える。
はい、と返事をしたつもりだったけど、掠れて音にはならなかった。
「やっと、抱ける」
もう数えきれないほど落とされた口付けを、そっと受け取る。
──大丈夫。
ディル様の唇が、口から、頬へ、
──大丈夫
耳たぶへ、
──だいじょう……ぶっ
首筋へ、
──だ、だいじょ……
首筋をつっと滑って、鎖骨の辺り、
──だ、だ、だいj……
ちりっと痛みが走って、直後にちゅっと、吸われた。
「ひゃんっ!」
ぞくりと背筋を這いあがった不思議な感覚に、変な声が飛び出して思わず口を押える。
──だいじょうぶ じゃないっ!! 無理、もう無理!!
恥ずかしくて涙目になった私の手を、ディル様が意地悪そうな顔で口元から引き離す。
「手は、こっち」
自分の肩に私の手を持っていくと、ディル様はもう一度私の鎖骨の辺りに唇を這わせた。
「んっ……」
鎖骨から、更に下へと唇が下りていく。
用意されていた夜着は、これもうベビードールですよね!? みたいな、丈こそ膝くらいまであってくれたけれど、胸元のリボン一つ解いてしまえばふわーっと全てが露になってしまう物で……
だから、つまり、露出度が半端ない。
ディル様が躊躇いもなくその胸元のリボンを解いてしまえば、唇は何にも阻まれる事なくあっさりと胸へと辿り着いてしまった。
先端をチュッと軽く吸われる。
「っぁ……」
ぴくんっと震えた私の反応に気を良くしたのか、ディル様はそのまま先端を強く吸った。
「や、んっ……あっ……」
吸われて、舐められて、それだけでぞくぞくと背中を電気が走る。
もう片方の胸を、大きな手の平で包まれて、やわやわと感触を楽しむように揉まれていたかと思えば、指で先端を撫でられた。
舌と指とで両胸の先端をいじられて、揉まれたかと思ったら時折カリッと歯を立てられて、背中が跳ねる。
「やぁっ……でぃる、さま……」
「ローズマリー、かわいい」
満足そうに嗤うディル様の表情に、ぞわりと肌が粟立つ。
ディル様の口は、今度は反対側の胸の先端を攻め始めて、既に濡れている胸の先端を指で弾かれる。
「ひっ……ん……」
敏感になってしまった身体は、少しの刺激だけでふるりと震えてしまう。
ひとしきり両胸を味わったらしいディル様の唇はお腹へと下りていく。
おへその周りをくるりと舐められて、くすぐったくてディル様の髪をくしゃりと握ってしまった。
「あっ……ごめ………やぁっ!」
おへそと、胸もいじられて、
くすぐったいのか、これが気持ち良いって事なのか、よく分からない感覚に、次から次へと零れる自分の声が恥ずかしくて、ディル様の頭に置いたのと反対の手の甲で自分の口を塞ぐ。
「ぅんっ……」
「塞ぐな。ちゃんとローズマリーの声、聞かせて」
ディル様にまた手をはがされて、唇が重ねられる。
「次塞いだら、おしおきかな」
「おしおきって……」
──いや、聞かないでおこう。SM的な何かだったら困る。だけど正直、手のやり場にも困るのですが……
なんて、頭のどこか冷静な部分で思っている間に、ディル様の手が私の太ももを持ち上げた。
「ふぇっ!?」
慌てて手をばたつかせてみたけれど、ディル様の身体には届かない。
じたばたしている間に、持ち上げた内腿に唇を這わされた。
「やっ……!!」
びくんっと足が跳ねる。
膝の方から足の付け根の方へ、舐め上げるようにディル様の舌が太腿を走る。
「あぁっ、やっ……!」
付け根の、下着のぎりぎりのところで、ちゅっと吸われて喉がひくりと引き攣った。
「でぃる、さま……や……」
「じゃあこっちは?」
「きゃっ……!?」
下着の上から、舐められた。
布越しに、それでも伝わってくる熱と形容しがたい感触に、びくびくと腰が跳ねる。
「やっ、やだ、それ、だめ……」
ディル様は私の足の間から顔を上げると、下着の脇から、中へと指を指しいれた。
「濡れてる」
くちゅ、と指が秘裂をなぞる。
「あっ! だ、だって……」
「気持ち良い?」
くちゅくちゅと、下着の中で指が上下する。
「あ、あ……わか……わかりませっ……」
この感覚が気持ち良いって事なのか、分からない。
ただ、何だかムズムズして、ぞわぞわして、抑えきれない声が、零れる。
「邪魔だな」
とるぞ、と下着が下ろされる。
「足、上げて」
「は い……」
両足をおずおずと持ち上げると、するっと下着が抜き取られた。
うわぁぁぁんっ!! 漫画とかだとさぁ、何かいつの間にか脱げてたりするけど、嘘じゃん!
やっぱ自分で少しは脱ぐ意思ないとダメじゃん!!
顔を押さえて悶絶したい私の胸中など気付いていないかのように、ディル様を私の下着を床へと落とす。
ぱさって、小さな音がして、それがまた妙に恥ずかしい。
「でぃ……ディルさま……あの……」
「うん」
何が「うん」なのですか!私の言いたい事分かってるの?夫になったから?
やだっ夫、夫だって、夫!!
脳内でローリングしている私の、恥ずかしすぎてぎゅっと閉じていた足を、ディル様の手でやんわりと開かされる。
「や、あの、待って……」
恥ずかしすぎて死にそうだから、この辺りで一度ブレイクタイムなんて取らせて頂けないかなぁ……なんて!!
思う次第でございますれば……!!
「もう二か月も待った」
「も、もうって程では………ひゃぁっ!」
ディル様の舌が、今度は直接私の秘裂を這う。
「だ、だめっ……そんなとこ……――っ」
「婚約して、二か月。だけど、その前に五年、待ってる」
「ぃや、そこで しゃべらないで……」
じゅっと、わざと音を立てて吸われる。
「ひっん……」
びくりと震えた腰を押さえられて、ディル様の舌が執拗に秘裂を濡らしていく。
「や……や、だ………あぁっ!?」
突然舌が、身体の中に挿ってきた。
あまりの刺激に、びくんっと背中が反り返る。
「ディルさ、ま……やっ……おねがい、やめ……っ」
ぐちゅっと音をさせて舌が動くたび、背中を何かが這い上がっていく。
下腹部がむずむずして、自分の中から何かがとろりとあふれ出すのが分かった。
これが愛液とか蜜とか言われるやつかぁ……と、頭の片隅でどこか呑気に思っていると、ディル様が足の間から頭を上げた。
けれどほっとしたのも束の間、つぷりと、ディル様の指が私の中に侵入した。
「あっ……!?」
驚いて、引こうとした腰を押さえられる。
「あっ……ん……」
ディル様の長い指が、中でゆるゆると動いて、それに合わせてくちゅくちゅと響く水音に、恥ずかしさが爆発しそうになる。
「ディル様、や、やだ……」
「何が?」
「はずかしい……です……」
「随分、余裕そうだな」
「ふぇっ?」
どこが? と思ったら、ディル様の指が速度を速めた。
「ひゃっ……!? あ、あぁ……や……っ!」
指の動きと、水音が速度を増して私を責め立てる。
「あ、あんっ……! でぃ……さ……」
「痛くないか?」
少し速度を緩めての問いに、私が必死でこくこくと頷くと、ディル様はゆっくり私の中から指を引き抜いて指を濡らしている蜜を舐めとった。
その仕草にに、私の下腹部がきゅっと反応して、また中からとろりと蜜が溢れる──。
「増やすぞ」
何を、と問う前に、ディル様の指が再び侵入してくる。
「んんっ……!」
二本に増えた指に、入り口がぴりっと痛みが走ったけれど、中は、思ったよりも平気だった。
私の反応を窺うように暫く出し入れだけを繰り返していた指が、次第に中でばらばらに動き始める。
広げられて、壁をこすられて、時々ぐっと刺激される。
「あっ……そ、こ……! あっ……」
びくんっと背が反ると、ディル様は少し嬉しそうに唇に笑みを乗せた。
そうして反応したところを執拗に責められて、私は抑えきれない声を上げ続ける。
「あ……あぁ……んっ……」
徐々に早くなる指の動きに、痺れるような感覚が這い上がってくる。
身体が反応するポイントを、何度も何度も刺激されるうちに痺れよりも強い何かに襲われて、
頭の中で光が明滅しているような錯覚を覚えて──
「だ……だめ……! や……なんか、へん……だめっ、だっ……あ、あぁ――っ!」
頭が真っ白になって──雫が溢れた。
そして大事な話があるからと両親を呼ぶよう頼むと、ディル様と私をちらりと見て、何かを心得たように一つ頷くとディル様を応接室に通してくれた。
すぐにやって来た両親に、パーティー会場で殿下から婚約破棄を言い渡された事を報告すると、お父様はふむ、と顎髭を撫で、お母様はあらまぁ、と超絶素敵な微笑みを見せた。
「それで? ソレル殿下の筆頭護衛騎士であるディル・マグノリア殿は、なぜうちの娘と共に在るのかな」
お父様の問いに、ディル様はやっぱり見惚れるくらい綺麗な座礼をした。
「護衛の任は、下りる旨を先ほど殿下に伝えました。正式な手続きは明日になりますが……護衛に戻る事はありません」
そこでディル様は一度頭を上げる。
「私は一人の男として、ローズマリー嬢を一番近くで護りたい。どうか、その許可を頂きたい」
「護るだけ、ですか?」
お母様のいじわるな視線に、ディル様は一瞬私に視線を寄こすと、いえ、と首を振った。
「ローズマリー嬢を愛しています」
きっぱりと放たれた言葉に、私は自分の顔にかーっと熱が集まるのを感じた。
恥ずかしい。
何これすっごく恥ずかしい。
さっきも言われたけど。その時も真っ赤になってた自覚はあるけど!
両親の前で堂々と言われるのって、何だかすっごく居たたまれない気分になるんだ……!!
うわぁぁぁぁ! と脳内マラソンを繰り広げていると、お父様とお母様がやれやれとばかりに視線を投げてくる。
多分私の脳内が大騒ぎな事などお見通しなのだろう。
「この子は子供の頃から殿下の婚約者として生きてきました。故に女性としての経験値は少々不足しているだろうが、構わないかな」
「そんなところもかわ……魅力の一つです」
しれっと"かわいい"って言おうとした、この人。
絶対キャラ違う!
「まぁ私たちとしても愛のないアホ……あら、失礼。あんな殿下よりは、愛し愛される相手に嫁がせてあげたいのだけれど……。ローズマリー」
「は、はいっ!!」
お母様の視線に、私はしゃきっと背筋を伸ばす。
「あなたは、ディル・マグノリア殿で、良いのですね?」
その問いかけに、私はお母様と、お父様と、最後にディル様を見て、そしてお母様に視線を戻す。
「はい。ディル様が、良いです……ディル様でなければ、嫌です」
少し声が震えたのは、仕方がない事だと思う。
でもはっきりと伝えられた。はず。
ドキドキしながらお母様の反応を窺っていると、膝の上に置いていた手がそっと暖かいもので包まれた。
視線を落とすと、大きな手が私の手を包み込んでくれている。
ディル様の手だ。
そこで私は手の平に爪が食い込む程に強く、自分の手を握りこんでいた事に気付いた。
ぎこちなく指を緩めると、ディル様がぽん、と手を叩いてくれて、ちらりと笑みまで見せてくれた。
何か今日はディル様の笑った顔いっぱい見てる。
願望が鬼のように叶ってる。
どうしよう、幸せすぎて溶けてしまいそう。
えへへと微笑みあっていたら、うぉっほんとお父様が咳ばらいをした。
慌てて顔を引き締めて、背筋を伸ばし直す。
ディル様も手を引っ込めて……はくれなかった。
え、そこは離すところではないでしょうか。
お願いだから離しましょうよ、とチラチラとディル様に視線を送るけれど、どこ吹く風のようで、ん? とばかりに小首を傾げられた。
ちくしょう、可愛いって思っちゃったじゃないっ!
あとでもっかいやって貰お!
お母様がそんな私たちを見て目を細める。
「良いでしょう、私は認めます」
「お母様……!」
ぱっと顔を輝かせてしまった私に、お父様が苦虫を噛み潰したような顔をする。
「ほら、あなた」
お母様にぺしんっと膝を叩かれて、お父様はうむ、とかいやだが、とか呟いた後に一度天を仰ぐと、ふーっと大きく息を吐いた。
「ローズマリーと、ディル・マグノリア殿の結婚を、認めよ……」
「ありがとうございます」
お父様の言葉に被せ気味にディル様がきれいなきれいな座礼をかます。
お母様はあらまぁと微笑んで、お父様はむぎぎぎっと変な唸り声をあげていた。
こうして私とディル様は、光芒一閃、婚約者と相成った。
うん、その後ディル様がマグノリア家の権力を存分にふるいまくったおかげで電光石火の早さで結婚まで至ってしまったのだけど。
多分そこまでディル様が無茶をしたのは、お父様とフェンネルからの『清く正しいお付き合い』の厳命があった為と思われる。
清く正しいお付き合い……をしてましたよ?
キスは、清く正しいお付き合いの範囲内だそうです。ディル様比だそうですけど。
唇だけじゃなくて、なんかあちこちされましたけど。
これもキスだよ、と微笑まれれば、私に抵抗なんて出来るはずもなく……。
とにかくキスだけで我慢しまくってくれたらしいディル様は、結婚式の誓いのキスで先走って超ロングべろちゅーをかまして下さって、
むぎゃーっとなった私の心中を察した司祭様が、多分進行にも障りがあったのだろうけど、さりげなく手にしていた聖杖でディル様を突っついてくれた。
あれでディル様が浄化されてくれれば良かったのにな~と、今私はディル様との新居の、夫婦の寝室の、キングサイズのベッドの上で、悪霊退散お色気霧散! と脳内で全力祈祷を行っている。
「あ、あの、ディル様……」
「ディルで良い」
「ディル……さま。やっぱり無理ですすみません」
「いきなりは無理か」
「そーですね、いきなりは……あの、追々……」
出来ますれば、ディル様のそのやる気満々なそちらも、追々が……
とはこわくて言えないけどっ!
「ローズマリー」
名を呼ばれて、ぴくりと身体が震える。
はい、と返事をしたつもりだったけど、掠れて音にはならなかった。
「やっと、抱ける」
もう数えきれないほど落とされた口付けを、そっと受け取る。
──大丈夫。
ディル様の唇が、口から、頬へ、
──大丈夫
耳たぶへ、
──だいじょう……ぶっ
首筋へ、
──だ、だいじょ……
首筋をつっと滑って、鎖骨の辺り、
──だ、だ、だいj……
ちりっと痛みが走って、直後にちゅっと、吸われた。
「ひゃんっ!」
ぞくりと背筋を這いあがった不思議な感覚に、変な声が飛び出して思わず口を押える。
──だいじょうぶ じゃないっ!! 無理、もう無理!!
恥ずかしくて涙目になった私の手を、ディル様が意地悪そうな顔で口元から引き離す。
「手は、こっち」
自分の肩に私の手を持っていくと、ディル様はもう一度私の鎖骨の辺りに唇を這わせた。
「んっ……」
鎖骨から、更に下へと唇が下りていく。
用意されていた夜着は、これもうベビードールですよね!? みたいな、丈こそ膝くらいまであってくれたけれど、胸元のリボン一つ解いてしまえばふわーっと全てが露になってしまう物で……
だから、つまり、露出度が半端ない。
ディル様が躊躇いもなくその胸元のリボンを解いてしまえば、唇は何にも阻まれる事なくあっさりと胸へと辿り着いてしまった。
先端をチュッと軽く吸われる。
「っぁ……」
ぴくんっと震えた私の反応に気を良くしたのか、ディル様はそのまま先端を強く吸った。
「や、んっ……あっ……」
吸われて、舐められて、それだけでぞくぞくと背中を電気が走る。
もう片方の胸を、大きな手の平で包まれて、やわやわと感触を楽しむように揉まれていたかと思えば、指で先端を撫でられた。
舌と指とで両胸の先端をいじられて、揉まれたかと思ったら時折カリッと歯を立てられて、背中が跳ねる。
「やぁっ……でぃる、さま……」
「ローズマリー、かわいい」
満足そうに嗤うディル様の表情に、ぞわりと肌が粟立つ。
ディル様の口は、今度は反対側の胸の先端を攻め始めて、既に濡れている胸の先端を指で弾かれる。
「ひっ……ん……」
敏感になってしまった身体は、少しの刺激だけでふるりと震えてしまう。
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「あっ……ごめ………やぁっ!」
おへそと、胸もいじられて、
くすぐったいのか、これが気持ち良いって事なのか、よく分からない感覚に、次から次へと零れる自分の声が恥ずかしくて、ディル様の頭に置いたのと反対の手の甲で自分の口を塞ぐ。
「ぅんっ……」
「塞ぐな。ちゃんとローズマリーの声、聞かせて」
ディル様にまた手をはがされて、唇が重ねられる。
「次塞いだら、おしおきかな」
「おしおきって……」
──いや、聞かないでおこう。SM的な何かだったら困る。だけど正直、手のやり場にも困るのですが……
なんて、頭のどこか冷静な部分で思っている間に、ディル様の手が私の太ももを持ち上げた。
「ふぇっ!?」
慌てて手をばたつかせてみたけれど、ディル様の身体には届かない。
じたばたしている間に、持ち上げた内腿に唇を這わされた。
「やっ……!!」
びくんっと足が跳ねる。
膝の方から足の付け根の方へ、舐め上げるようにディル様の舌が太腿を走る。
「あぁっ、やっ……!」
付け根の、下着のぎりぎりのところで、ちゅっと吸われて喉がひくりと引き攣った。
「でぃる、さま……や……」
「じゃあこっちは?」
「きゃっ……!?」
下着の上から、舐められた。
布越しに、それでも伝わってくる熱と形容しがたい感触に、びくびくと腰が跳ねる。
「やっ、やだ、それ、だめ……」
ディル様は私の足の間から顔を上げると、下着の脇から、中へと指を指しいれた。
「濡れてる」
くちゅ、と指が秘裂をなぞる。
「あっ! だ、だって……」
「気持ち良い?」
くちゅくちゅと、下着の中で指が上下する。
「あ、あ……わか……わかりませっ……」
この感覚が気持ち良いって事なのか、分からない。
ただ、何だかムズムズして、ぞわぞわして、抑えきれない声が、零れる。
「邪魔だな」
とるぞ、と下着が下ろされる。
「足、上げて」
「は い……」
両足をおずおずと持ち上げると、するっと下着が抜き取られた。
うわぁぁぁんっ!! 漫画とかだとさぁ、何かいつの間にか脱げてたりするけど、嘘じゃん!
やっぱ自分で少しは脱ぐ意思ないとダメじゃん!!
顔を押さえて悶絶したい私の胸中など気付いていないかのように、ディル様を私の下着を床へと落とす。
ぱさって、小さな音がして、それがまた妙に恥ずかしい。
「でぃ……ディルさま……あの……」
「うん」
何が「うん」なのですか!私の言いたい事分かってるの?夫になったから?
やだっ夫、夫だって、夫!!
脳内でローリングしている私の、恥ずかしすぎてぎゅっと閉じていた足を、ディル様の手でやんわりと開かされる。
「や、あの、待って……」
恥ずかしすぎて死にそうだから、この辺りで一度ブレイクタイムなんて取らせて頂けないかなぁ……なんて!!
思う次第でございますれば……!!
「もう二か月も待った」
「も、もうって程では………ひゃぁっ!」
ディル様の舌が、今度は直接私の秘裂を這う。
「だ、だめっ……そんなとこ……――っ」
「婚約して、二か月。だけど、その前に五年、待ってる」
「ぃや、そこで しゃべらないで……」
じゅっと、わざと音を立てて吸われる。
「ひっん……」
びくりと震えた腰を押さえられて、ディル様の舌が執拗に秘裂を濡らしていく。
「や……や、だ………あぁっ!?」
突然舌が、身体の中に挿ってきた。
あまりの刺激に、びくんっと背中が反り返る。
「ディルさ、ま……やっ……おねがい、やめ……っ」
ぐちゅっと音をさせて舌が動くたび、背中を何かが這い上がっていく。
下腹部がむずむずして、自分の中から何かがとろりとあふれ出すのが分かった。
これが愛液とか蜜とか言われるやつかぁ……と、頭の片隅でどこか呑気に思っていると、ディル様が足の間から頭を上げた。
けれどほっとしたのも束の間、つぷりと、ディル様の指が私の中に侵入した。
「あっ……!?」
驚いて、引こうとした腰を押さえられる。
「あっ……ん……」
ディル様の長い指が、中でゆるゆると動いて、それに合わせてくちゅくちゅと響く水音に、恥ずかしさが爆発しそうになる。
「ディル様、や、やだ……」
「何が?」
「はずかしい……です……」
「随分、余裕そうだな」
「ふぇっ?」
どこが? と思ったら、ディル様の指が速度を速めた。
「ひゃっ……!? あ、あぁ……や……っ!」
指の動きと、水音が速度を増して私を責め立てる。
「あ、あんっ……! でぃ……さ……」
「痛くないか?」
少し速度を緩めての問いに、私が必死でこくこくと頷くと、ディル様はゆっくり私の中から指を引き抜いて指を濡らしている蜜を舐めとった。
その仕草にに、私の下腹部がきゅっと反応して、また中からとろりと蜜が溢れる──。
「増やすぞ」
何を、と問う前に、ディル様の指が再び侵入してくる。
「んんっ……!」
二本に増えた指に、入り口がぴりっと痛みが走ったけれど、中は、思ったよりも平気だった。
私の反応を窺うように暫く出し入れだけを繰り返していた指が、次第に中でばらばらに動き始める。
広げられて、壁をこすられて、時々ぐっと刺激される。
「あっ……そ、こ……! あっ……」
びくんっと背が反ると、ディル様は少し嬉しそうに唇に笑みを乗せた。
そうして反応したところを執拗に責められて、私は抑えきれない声を上げ続ける。
「あ……あぁ……んっ……」
徐々に早くなる指の動きに、痺れるような感覚が這い上がってくる。
身体が反応するポイントを、何度も何度も刺激されるうちに痺れよりも強い何かに襲われて、
頭の中で光が明滅しているような錯覚を覚えて──
「だ……だめ……! や……なんか、へん……だめっ、だっ……あ、あぁ――っ!」
頭が真っ白になって──雫が溢れた。
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そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
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