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第一部
15. 忘れろなんて言わないで
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「すまない、そろそろ戻らなくては」
そう言って逃げる様に立ち上がったクードに、セヴィも慌てて立ち上がる。
「待ってください……お休みって……」
「セヴィ」
ぴしゃりと叩きつける様に名前を呼ばれて、セヴィはびくんと身体を竦ませる。
「あと五日だけ、我慢してくれ。 その後は帰って……そして全部、忘れて良い」
「……わすれて……?」
──忘れて、良い?
突然このお屋敷に連れて来たのはクードさまなのに
ドキドキしたりソワソワしたりする気持ちも、
キラキラふわふわした甘い雰囲気も、
何も知らない私を全部全部、奪ってしまったのはクードさまなのに
ドレスやアクセサリーは困ったけど、毎日届く花束は嬉しかった
一生懸命摘んで、選んでくれる姿も、
まだペースが掴み切れてないのか、時々早歩きになってしまう"エスコート"も、
お野菜を食べた時にきゅって寄る眉も、
その後のお肉を食べた時にふわってほどけるお顔も、
──嫌いじゃないって、思えるようになってきたのに
そのうちお野菜を「美味い」って食べる様になってくれたら良いな、なんて
色んな季節のお花を、毎日一緒に見られたら良いな、なんて
未来を、想像するようにだってなっていたのに
全部忘れて良い なんて、クードさまが、言うの?
「忘れられるわけ……ないじゃないですか……ぜんぶ……クードさまが私のこと全部、食べちゃったくせに。どうして忘れて良いなんて、言うの?」
「セヴィ……?」
「忘れて良いなら、どうしてお花をくれたり、お野菜を食べてくれたり、歩く速さを合わせてくれたり……一緒に、お庭に来てくれたり……するの……?」
ぽろぽろとセヴィの瞳から溢れ出した涙に、クードが慌てた様にセヴィの名を呼ぶ。
「忘れて良いなんて言うなら、放っておいてくれれば良かったのに!そうしたら……そうしたら、私……っ!ずっと、ずっとクードさまの事、恐くて嫌いなままで、いられたのに……っ!」
「セヴィ……」
クードがセヴィへと手を伸ばして──直前で躊躇うように止める。
「セヴィ……触れても、良いか?」
「いやです……っ きらい、クードさまなんて、きらい。だいきら……ぁっ!」
ぐっと引き寄せられて、セヴィはクードの腕の中に抱き込まれていた。
「いやって、言ったのに……クードさまなんか、きらい……!離して……!」
もがいてクードの腕から逃げようとしたけれど、更に強く抱き締められる。
「すまない……忘れて欲しくなんて、ない。 だが、セヴィが辛いだけなら……帰すのが一番だと……その方がきっとセヴィも幸せだと、思った」
「私のこと……もう、いらない?」
「違う!!ここに、俺の隣に、いて欲しい。だが俺は、セヴィに酷いことをした──セヴィは、俺の側になんか、居たくないだろうと……」
迷うような言葉に合わせて、セヴィを抱きしめている腕の力も緩む。
セヴィはクードから少しだけ身体を離して、そして今まで見た中で一番情けない顔をしているクードを見上げる。
「ずるいです。クードさまはそうやって勝手に私の気持ちを決めて、逃げちゃうんですか?私……私は、たくさん泣いて、たくさん考えて、たくさんたくさん……クードさまを、好きになれたら良いなって……クードさまの側に、いたいって……思い、はじめてるのに………っ」
クードさまのばか、とまたぽろぽろと零れ落ちていくセヴィの涙を、クードは躊躇いがちに指で拭う。
「俺の側にいたいと、思ってくれているのか……?」
大きな掌で頬を包まれて、ぎこちなく親指で頬を撫でてくるクードに、セヴィは小さく首を振る。
「しりません……クードさまなんて、もう知らない……」
「セヴィ、すまなかった──だが、聞かせて欲しい。俺は、これから先ずっと、セヴィに俺の隣を歩んで欲しい。セヴィと歩んでいきたい……俺と、番って欲しい」
「っ……」
口を開いたらひくっとしゃくりあげてしまって言葉が出なくて、セヴィはまたぽろぽろ涙を零しながら首を振る。
「か……っ帰れ、なんて……言わないで……。忘れろなんて……言わないで………っ」
頬を包んでいる大きな手に、セヴィは自分の手を重ねる。
「クードさまのこと、もっとたくさん、知りたいって……好き、になって……それで、ちゃんと、クードさまの番に、なりたいって……思って……」
「セヴィ……」
頬からクードの手が離れて、ぎゅうっと抱き締められる。
苦しくて、だけど、何だか嬉しいような気がして、
セヴィもクードの背中に手を回して、きゅうっとシャツを握りしめた。
そう言って逃げる様に立ち上がったクードに、セヴィも慌てて立ち上がる。
「待ってください……お休みって……」
「セヴィ」
ぴしゃりと叩きつける様に名前を呼ばれて、セヴィはびくんと身体を竦ませる。
「あと五日だけ、我慢してくれ。 その後は帰って……そして全部、忘れて良い」
「……わすれて……?」
──忘れて、良い?
突然このお屋敷に連れて来たのはクードさまなのに
ドキドキしたりソワソワしたりする気持ちも、
キラキラふわふわした甘い雰囲気も、
何も知らない私を全部全部、奪ってしまったのはクードさまなのに
ドレスやアクセサリーは困ったけど、毎日届く花束は嬉しかった
一生懸命摘んで、選んでくれる姿も、
まだペースが掴み切れてないのか、時々早歩きになってしまう"エスコート"も、
お野菜を食べた時にきゅって寄る眉も、
その後のお肉を食べた時にふわってほどけるお顔も、
──嫌いじゃないって、思えるようになってきたのに
そのうちお野菜を「美味い」って食べる様になってくれたら良いな、なんて
色んな季節のお花を、毎日一緒に見られたら良いな、なんて
未来を、想像するようにだってなっていたのに
全部忘れて良い なんて、クードさまが、言うの?
「忘れられるわけ……ないじゃないですか……ぜんぶ……クードさまが私のこと全部、食べちゃったくせに。どうして忘れて良いなんて、言うの?」
「セヴィ……?」
「忘れて良いなら、どうしてお花をくれたり、お野菜を食べてくれたり、歩く速さを合わせてくれたり……一緒に、お庭に来てくれたり……するの……?」
ぽろぽろとセヴィの瞳から溢れ出した涙に、クードが慌てた様にセヴィの名を呼ぶ。
「忘れて良いなんて言うなら、放っておいてくれれば良かったのに!そうしたら……そうしたら、私……っ!ずっと、ずっとクードさまの事、恐くて嫌いなままで、いられたのに……っ!」
「セヴィ……」
クードがセヴィへと手を伸ばして──直前で躊躇うように止める。
「セヴィ……触れても、良いか?」
「いやです……っ きらい、クードさまなんて、きらい。だいきら……ぁっ!」
ぐっと引き寄せられて、セヴィはクードの腕の中に抱き込まれていた。
「いやって、言ったのに……クードさまなんか、きらい……!離して……!」
もがいてクードの腕から逃げようとしたけれど、更に強く抱き締められる。
「すまない……忘れて欲しくなんて、ない。 だが、セヴィが辛いだけなら……帰すのが一番だと……その方がきっとセヴィも幸せだと、思った」
「私のこと……もう、いらない?」
「違う!!ここに、俺の隣に、いて欲しい。だが俺は、セヴィに酷いことをした──セヴィは、俺の側になんか、居たくないだろうと……」
迷うような言葉に合わせて、セヴィを抱きしめている腕の力も緩む。
セヴィはクードから少しだけ身体を離して、そして今まで見た中で一番情けない顔をしているクードを見上げる。
「ずるいです。クードさまはそうやって勝手に私の気持ちを決めて、逃げちゃうんですか?私……私は、たくさん泣いて、たくさん考えて、たくさんたくさん……クードさまを、好きになれたら良いなって……クードさまの側に、いたいって……思い、はじめてるのに………っ」
クードさまのばか、とまたぽろぽろと零れ落ちていくセヴィの涙を、クードは躊躇いがちに指で拭う。
「俺の側にいたいと、思ってくれているのか……?」
大きな掌で頬を包まれて、ぎこちなく親指で頬を撫でてくるクードに、セヴィは小さく首を振る。
「しりません……クードさまなんて、もう知らない……」
「セヴィ、すまなかった──だが、聞かせて欲しい。俺は、これから先ずっと、セヴィに俺の隣を歩んで欲しい。セヴィと歩んでいきたい……俺と、番って欲しい」
「っ……」
口を開いたらひくっとしゃくりあげてしまって言葉が出なくて、セヴィはまたぽろぽろ涙を零しながら首を振る。
「か……っ帰れ、なんて……言わないで……。忘れろなんて……言わないで………っ」
頬を包んでいる大きな手に、セヴィは自分の手を重ねる。
「クードさまのこと、もっとたくさん、知りたいって……好き、になって……それで、ちゃんと、クードさまの番に、なりたいって……思って……」
「セヴィ……」
頬からクードの手が離れて、ぎゅうっと抱き締められる。
苦しくて、だけど、何だか嬉しいような気がして、
セヴィもクードの背中に手を回して、きゅうっとシャツを握りしめた。
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