悪役令息の俺はXXされるよりXXしたいタイプです。

トウ子

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イシャは、生後すぐの魔力測定で『魔力なし』の烙印を押されて、冷遇されてきた憐れな少年だ。魔力こそ高位貴族の証とされるこの国では、家庭内で彼の人権は無きに等しかっただろう。
しかし魔法学園入学年齢の際に行われた魔力調査で、聖魔法の才能があることが判明して、事態は一転。彼は特待生枠で入学が決まった。そこから彼の成功物語シンデレラストーリーが始まる。

入学後の初めての魔法実技では、たいていの生徒たちが体内を巡る己の魔力をうまく掴めず出力出来ない。けれど溢れるほどに聖なる魔力を身に蓄えている彼は、見事にあたり一面に聖なる魔力を放出した。そして生徒たちのちょっとした心身の不調から、主任教官のハゲや副教官の腰痛まで、スッキリ治してしまったのだ。

「奇跡だ!これぞ聖者のみわざよ!神よ、この時代に聖者を遣わせて下さりありがとうございます!」

ふさふさと髪を生やした主任教官が涙ながらにそう叫び、イシャの足元に跪いた愉快な姿は記憶に新しい。

彼は座学でも、めざましい成長を見せた。実家では家庭教師もつけられていなかったようだから、さぞ苦労しただろうに、勤勉で素直な彼は、入学後着々と成績を上げてきたのだ。前回の期末試験では、とうとう俺、王太子、に次ぐ三席に名前が掲げられていた。良い子すぎて、お兄さんは涙出そうだ。頭ナデナデしたい。

ちなみに、どうでもいい話だが、大抵の教科は王太子より俺の方がデキる。ハイスペな俺が、弛まぬ努力と鍛錬を重ねているのだから当然の結果だ。王太子の公務があるアイツより、俺の方が時間があるというのも否定しないが。
偉そうでムカつくから、絶対王太子に首席はやらねぇって心に決めているんだよね。この圧倒的雄である俺をメス扱いしようって言うだけでもムカつくのに、会うたびに俺をライバル視するような目で見やがって。こっちは基本無視してるのに、時々突っかかってくるしさ。クソうぜぇ。



まぁ、それはいいとして。
入学してすぐ、イシャの儚げで庇護欲をくすぐるいでたちにキュンときて、俺は彼に声をかけた。

「君、インセジュ伯爵家のイシャくんかい?」
「えっ、あ、はい!あ、あなたは……」

びくりと怯えた後でコクンと頷いたイシャは、伯爵家の人間が侯爵家令息たる俺に名前を聞き返してくるというマナー講師なら絶叫しそうなタブーをしでかした。俺もちょっとびっくりした。名前を聞かれるとか、初めての経験だ。

(この俺の顔と名前も知らないんだ。そっか、本当にこれまで社交の場に出たことが、一度もないんだなぁ。可哀想に)

「僕のことを知らないとは、面白い子だね」

一度は言ってみたかった言葉、「おもしれぇ女だな」を使いたかっただけだが、イシャは俺の背後に控えている侍従の姿と、彼の着る服につけられた侯爵家の家紋に気がついて、一気に顔色を青くした。

「あっ、ぁ、メチセタバ侯爵家の、っお方でしたか!?こ、これはとんだ失礼を……!」
「ははっ、気にしなくていいよ。特待生とはいえ、これまで社交の場に出たことがない君は平民のようなもの。常識がないからと言って、理不尽に怒ったりはしないさ」
「はっ、あ、ありがとうございます……」

真っ青を通り越して真っ白な顔色のイシャを労わるように、俺は彼の細い肩をトントンと叩いた。

「まぁ、これからしていこうね。今代の幸福の象徴、偉大なる聖者殿」
「は、ぁい……あ、りがと、うございます……」

気絶しそうなイシャに、「やっぱり噂通り儚げで可愛いなぁ。今にも倒れそうじゃん。病弱とか萌えるわぁ」とか思っていた。



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