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敵対手で好敵手
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毎月の実力考査試験でも、二人はいつも主席争いをしていた。科目によって順位は入れ替わったが、だいたいいつも、瞬発力とパワーで勝負してくるアサよりも、緻密で繊細な制御が得意なヨルの方が少しだけ上だ。
「やっぱりヨルはすごいわね」
ヨルが水魔法で作り上げた氷の人魚像を羨ましそうに見たあとで、アサは自分の作品を見下ろした。
「私はこの短時間じゃあ、イルカひとつで限界。人魚に熱帯魚に波に岩?試験時間内にどれだけ作ったのよ!」
呆れたように言うアサに、ヨルはコロコロと笑いながら言う。
「水魔法は得意なの。アナタのイルカちゃん、可愛いから良いじゃない。水飛沫もリアルで素敵よ」
アサに向かってにっこり笑うと、周囲を見渡してヨルは肩をすくめてみせた。
「それに、どうせ私達が主席と次席よ。だってみんな、まだ水を氷に出来るかどうかだもの」
「そりゃそうでしょう。今回の試験内容は、水から氷を作ること、なのだもの」
アサは呆れたように言った。
「私たちと比べちゃダメよ」
「ふふ、それもそうね」
一方で、魔力をぶつけ合う対戦型勝負になると、ヨルはアサに押し負けることが多かった。もちろん、ヨルが卑怯な魔法を惜しみなく注ぎ込んで、引き分けに持ち込むことも多かったが。
「あーもー!焼け死ぬかと思ったわよ!影に手足を掴ませるなんて、本当に卑劣でゾクゾクするわね!?」
ヨルの策略に嵌り、アサは殺傷能力高めの魔法の炎で囲まれながら、影魔法により手足を拘束されたのだ。身動きを封じられたために、ろくな魔法が使えずうっかり死にかけたアサは、死に物狂いで脱出すると、髪の毛をチリチリにしながら興奮状態でただの土魔法を破裂させた。
「わっ、ちょ、地面ごと吹き飛ばすのは反則でしょ!?アナタ、力の加減ってものを分からないの!?」
見渡す限りの地面から土が弾け飛ぶ中で、ヨルが自分の周りに風魔法で必死に壁を作る。眉間を貫く勢いで飛んでくる石礫をなんとか吹き飛ばしていると、アサが笑いながら両手を上げた。
「加減してるわよ!?校舎を吹き飛ばしちゃったら、賠償額が大変だもの!建物が壊れない程度にやってるわよ!」
「それ、先生たちが必死の結界張ってるの分かって、わりと無茶してるってことでしょ!?」
前回の実技試験で校舎を半壊させてしまい、実家から大目玉を食らったアサが満面の笑みで宣言する。しかし、現在二人がいるのは校庭の端どころか校舎の裏の森にある闘技場だ。そこを二人だけの試験会場と指定されて、校舎含む周囲には全教官が全力で魔法結界を張り、生徒たちが災害時対応で避難しているのが現状である。この状況下で校舎を吹き飛ばすとしたら、それはもう伝説の竜と同レベルの災害生物だ。
「アナタ、相変わらず頭がおかしくて大好きだわっ!」
「殺す気で向かってきてくれるあなたが、私も大好きよっ!」
ヨルとアサは大笑いしながら、全力で魔法を弾けさせる。対戦型実技試験が二人は一番盛り上がった。ちなみにこの二人の場合、試験としては勝者が主席だ。だから大抵はアサが勝つ。
「やめなさい!!このままだと敷地が沈むから!!私の負けよ!!!」
「あははっ、常識を忘れられないヨルが大好きよ!」
冷静に賠償金額を計算してしまい、前回教室を半壊させた時に負わされた借金の恐ろしさを忘れられないヨルが、つい負けを認めてしまうので。
二人が入学してから、教師たちの緊張は大層なものだった。二人から他の生徒や動植物、建物などを守るために魔力消費も激しく、何人かは疲弊し憔悴して辞めていった。
「また先生が辞めてしまったわね」
「薬草学の?あら、堪え性がないのねぇ」
「アナタが先生の大事な薬草園に飛び火させて、派手に燃やし尽くしてしまったからじゃないの?」
「あら、あなたが薬草学の調剤実習で、先生の一生の夢だったはずの新薬を、一気に三つも作ってしまったからじゃないの?」
「ふふふ、いやだわぁ、そんなはずないじゃない。きっとご家庭のご都合よ」
「そうよそうよ、栄えある魔法学院の教官が、そんなことくらいでポッキリ折れてしまうわけないもの」
「そうよね、小枝じゃあるまいし」
うふふおほほと笑い合う、二人は尊大極まりないが、別に驕り高ぶっているわけではない。これはお互いの間でだけ交わされる、ちょっとしたブラックジョークだ。
それに二人は教官の指示の範囲内で、彼女達なりにただ普通に学園生活を精一杯に楽しみ、力一杯に過ごしているだけだ。
その余波があまりに激烈すぎて、まともな教官ほど力尽きてしまうのだが。
だがしかし、それも仕方のないことだ。
魔女王候補者が入学してきた代の風物詩である。
「やっぱりヨルはすごいわね」
ヨルが水魔法で作り上げた氷の人魚像を羨ましそうに見たあとで、アサは自分の作品を見下ろした。
「私はこの短時間じゃあ、イルカひとつで限界。人魚に熱帯魚に波に岩?試験時間内にどれだけ作ったのよ!」
呆れたように言うアサに、ヨルはコロコロと笑いながら言う。
「水魔法は得意なの。アナタのイルカちゃん、可愛いから良いじゃない。水飛沫もリアルで素敵よ」
アサに向かってにっこり笑うと、周囲を見渡してヨルは肩をすくめてみせた。
「それに、どうせ私達が主席と次席よ。だってみんな、まだ水を氷に出来るかどうかだもの」
「そりゃそうでしょう。今回の試験内容は、水から氷を作ること、なのだもの」
アサは呆れたように言った。
「私たちと比べちゃダメよ」
「ふふ、それもそうね」
一方で、魔力をぶつけ合う対戦型勝負になると、ヨルはアサに押し負けることが多かった。もちろん、ヨルが卑怯な魔法を惜しみなく注ぎ込んで、引き分けに持ち込むことも多かったが。
「あーもー!焼け死ぬかと思ったわよ!影に手足を掴ませるなんて、本当に卑劣でゾクゾクするわね!?」
ヨルの策略に嵌り、アサは殺傷能力高めの魔法の炎で囲まれながら、影魔法により手足を拘束されたのだ。身動きを封じられたために、ろくな魔法が使えずうっかり死にかけたアサは、死に物狂いで脱出すると、髪の毛をチリチリにしながら興奮状態でただの土魔法を破裂させた。
「わっ、ちょ、地面ごと吹き飛ばすのは反則でしょ!?アナタ、力の加減ってものを分からないの!?」
見渡す限りの地面から土が弾け飛ぶ中で、ヨルが自分の周りに風魔法で必死に壁を作る。眉間を貫く勢いで飛んでくる石礫をなんとか吹き飛ばしていると、アサが笑いながら両手を上げた。
「加減してるわよ!?校舎を吹き飛ばしちゃったら、賠償額が大変だもの!建物が壊れない程度にやってるわよ!」
「それ、先生たちが必死の結界張ってるの分かって、わりと無茶してるってことでしょ!?」
前回の実技試験で校舎を半壊させてしまい、実家から大目玉を食らったアサが満面の笑みで宣言する。しかし、現在二人がいるのは校庭の端どころか校舎の裏の森にある闘技場だ。そこを二人だけの試験会場と指定されて、校舎含む周囲には全教官が全力で魔法結界を張り、生徒たちが災害時対応で避難しているのが現状である。この状況下で校舎を吹き飛ばすとしたら、それはもう伝説の竜と同レベルの災害生物だ。
「アナタ、相変わらず頭がおかしくて大好きだわっ!」
「殺す気で向かってきてくれるあなたが、私も大好きよっ!」
ヨルとアサは大笑いしながら、全力で魔法を弾けさせる。対戦型実技試験が二人は一番盛り上がった。ちなみにこの二人の場合、試験としては勝者が主席だ。だから大抵はアサが勝つ。
「やめなさい!!このままだと敷地が沈むから!!私の負けよ!!!」
「あははっ、常識を忘れられないヨルが大好きよ!」
冷静に賠償金額を計算してしまい、前回教室を半壊させた時に負わされた借金の恐ろしさを忘れられないヨルが、つい負けを認めてしまうので。
二人が入学してから、教師たちの緊張は大層なものだった。二人から他の生徒や動植物、建物などを守るために魔力消費も激しく、何人かは疲弊し憔悴して辞めていった。
「また先生が辞めてしまったわね」
「薬草学の?あら、堪え性がないのねぇ」
「アナタが先生の大事な薬草園に飛び火させて、派手に燃やし尽くしてしまったからじゃないの?」
「あら、あなたが薬草学の調剤実習で、先生の一生の夢だったはずの新薬を、一気に三つも作ってしまったからじゃないの?」
「ふふふ、いやだわぁ、そんなはずないじゃない。きっとご家庭のご都合よ」
「そうよそうよ、栄えある魔法学院の教官が、そんなことくらいでポッキリ折れてしまうわけないもの」
「そうよね、小枝じゃあるまいし」
うふふおほほと笑い合う、二人は尊大極まりないが、別に驕り高ぶっているわけではない。これはお互いの間でだけ交わされる、ちょっとしたブラックジョークだ。
それに二人は教官の指示の範囲内で、彼女達なりにただ普通に学園生活を精一杯に楽しみ、力一杯に過ごしているだけだ。
その余波があまりに激烈すぎて、まともな教官ほど力尽きてしまうのだが。
だがしかし、それも仕方のないことだ。
魔女王候補者が入学してきた代の風物詩である。
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