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番外編
今年の首席入学者はいろいろすごい1王太子
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「……ははっ、すごいな」
堂々と壇上で挨拶する少女を見上げながら呟いた声は、私も意図せず嫉妬まじりの醜いものだった。
「今年の首席入学者は、公爵家のコーリー殿で決まりかな?」
「おや、王太子殿下もいらっしゃるぞ」
「殿下も優秀なお方だが、公爵家のご令息はなにせ天才だからなぁ」
「変態と紙一重の本物でいらっしゃるから、ご両親の公爵ご夫妻は大変そうだがね」
「そりゃ癇癪のたびに城や庭を吹き飛ばされちゃかなわんよ!あっはっはっはっ」
幼い頃からの鍛錬により過度に耳が良い私には、来賓の者たちの会話は耳を澄まさずとも十分に聞こえてくる。王族として積み重ねてきた教育の成果で、顔色を変えたりする無様は晒さないが、気は滅入った。
「ふぅ、コーリーと同学年というのは、なかなか大変なものだな」
「あはは、殿下にも苦手な相手がいらっしゃるんですね」
小声でぼやけば、現宰相の息子で私の幼馴染でもあるアーロンが、笑いながら私の肩を叩く。
「苦手というか……いや、まぁ、苦手……なのかな?」
苦笑しながら否定しようとして、しかし結局横に振ろうとした首をコテンと傾ける。王族としては他者への好悪を気軽に表すのは褒められたことではないが、そんな私をアーロンは肩をすくめて肯定する。
「分かりますよ。あんなに好き勝手やりながら市民権を得ているアイツ見てると、なんだか真面目に生きてるのが馬鹿らしくなりますもんねぇ」
「うーん、……コーリーはホンモノだからなぁ」
「注目を掻っ攫ってしまいますよねぇ、あの奇天烈少年は」
「……ははは」
その通りだ。
今日だって、王太子の入学式だからと言って、例年の何倍も参列者達がいるが、彼らの興味を引くのは滅多に公の場に姿を現さない天才にして奇人の少年、コーリーだ。
「……コーリーは、昔から変わらないなぁ」
今でもコーリーに初めて会った日のことは、鮮明に覚えている。
七歳になったばかりのことだ。
その朝、私は何とも言えない複雑そうな顔をした両親、つまり両陛下から、こんこんと言い聞かせられた。
「今日お前に、同じ歳の少年を会わせる」
「え、新しい友人ですか?」
プライベートでは数人の幼馴染としか交流がなかった私は、新しい友人の予感に顔を輝かせた。しかし両親は「うーん」と困ったように唸って顔を見合わせた。
「友人……になれると、それはもちろん良いのですけれどね」
「変わり者だから難しいかもしれんなぁ」
眉を下げて頬に手を当てている母と、落ち着かない素振りで髭を触る父。普段あまり見ない二人の姿に、私は困惑を隠せなかった。そんな私に、二人は言い聞かせたのだ。
「ちょっとズレた価値観を持っているようですが、悪い子ではないのです。何か言われてもあまり気を悪くしないように」
「変わっているが、天賦の才を持つ少年だ。味方につければ力強いが、……常人とは違う価値観を持っているから難しいかもしれない。少なくとも、敵にまわして何の得もない相手だ。気をつけて接しなさい」
「は、い」
王族として、国王の嫡出の長男として生まれ、誰からも傅かれて生きてきた私には、両親の言う意味が分からなかった。
権力に従順な者たちしか知らなかったからだ。
けれど、コーリーに会ってわかった。
アレは、私とは異相の世界で生きている男だ。
「おや、君が王太子殿下?わりと良い魔力を持っているね!」
会った直後に、彼は言ったのだ。
「……え?」
「それ、なんで隠してるの?」
唐突な言葉に、私の本能が危険だ、と叫んだ。たらり、と冷や汗が出る。慌てて人払いをして、私は必死に平常の作り笑いを浮かべ、にこやかにコーリーに声をかけた。
「コーリー。君は何を言っているんだい?」
「え?だから、君が隠してるソレだよ」
「な、にを」
ドクンドクンと心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
コーリーは無邪気に、まるで天使のように笑いながら、私の一番の秘密を暴いた。
「だってそれ、闇の魔力じゃない!」
「っ、なんで」
「見れば分かるよ。魔力の色が違うもの」
魔力の色?そんな話、聞いたこともない。
私の魔力が闇属性を持つことは、王家でも父母しか知らない最大の秘密だ。光の勇者の末裔たる王族が闇属性を持っているだなんて、とんだ醜聞だから。
生まれてすぐに神殿の大神官が封じてくれた。大神官は去年老衰で亡くなったから、もう父母以外、誰も知るはずはないのに。
「王太子様が持ってるなんて、話題になりそうなのに。隠してるんだねぇ、もったいない」
「だ、誰にも」
「言わないよー、興味ないもん」
見ただけで私の最大の秘密を看破してしまった少年は、天使のように無邪気な顔で言ったのだ。
「でもいつか、殿下の魔力を研究させてね!とっても興味深いからさ!」
と。
コーリーにとっては、王太子たる私すらも単なる研究対象に過ぎないのだ。
その後も私はコーリーとは付かず離れずの付き合いを続けた。過度に好かれることも嫌われることもなく、さして興味も持たれず。
まだ闇の魔力が必要ではないというだけかもしれないが、私は安堵した。その後もなるべく思い出して欲しくなくて、積極的にコーリーに声をかけることはしなかった。
だが、これからは距離を空けて過ごすわけにもいくまい。なにせ同じ学園の同級生なのだから。
衆目の面前で「闇の魔力ちょっと貸して」とでも言われたらどうしようかと思うと、それも気が重い。
「…………」
そんなことを考えていたら、ざわっと入り口付近が騒ついた。振り向くと、案の定そこにいるのはコーリーだ。しかし意外なことに、彼は一人ではなかった。
「……あれ?女の子?」
「ファー、美少女じゃん」
「あの他人に興味がないコーリーが?」
私の周りでも、驚きの声がいくつも上がる。コーリーと実際に親交のある者たちほど、その驚きは大きかった。
会場中の人々の注目を集めながら、にこやかに入り口の受付で別れようとするように見えた二人だが、案内の者が何か言うと、驚いたように顔を見合わせた。
「そうか!君か!」
コーリーが弾けるような笑顔を見せ、浮かれ切った声で叫ぶ。
「僕を負かした首席入学者とは一体どこの誰だと思っていたら、君だったのか!」
「…………え?」
思わず声が漏れる。
首席入学者が、コーリーじゃない?
そして、そこの小さな少女が今年の首席だと?
ざわわ、と、先程の比ではないくらいに会場全体に動揺が走る。
「あ、あなたが次席の方なのですね。私より代表挨拶向いてそうですね。代わってもらえます?」
「あはは、君面白いね!無理に決まってるじゃないか。代表挨拶は首席!これは王家でも変更出来ないって有名な話じゃないか」
「そうなんですか?」
「昔馬鹿な王子様を賢く見せたい馬鹿な王様がいてねー、大騒動になっちゃって、それ以来は裏口裏金が一切効かなくなったんだよー」
「へぇー、物知りですね」
「王都に住んでたら誰でもしってるよ」
「へぇー、生憎と私は王都民じゃないもので。私、地方の学校からの推薦なんですよね」
「そうなんだ!地方にも賢い子っているんだねぇ!親御さんが賢者だったりする?」
「へ?賢者とか神話世界だけでは?」
「ジョークだよジョーク!」
「ジョーク分かりにくいですねぇ」
「あはは、ごめんごめん」
「親は普通に領地をそこそこおさめてる男爵ですよ。得意なことやるのが幸せだよねって王都での学費出してもらえました」
「へぇー!素敵な親御さんだね」
「ありがとうございます。代わりにお前の持参金はないって言われましたけど」
「あはははは!ジョークも分かるんだ、すごい!」
「冗談じゃないんですけどねー」
聞こえてきたのは、とんでもない会話だった。
「……男爵令嬢?」
「今年の首席が男爵家の娘だと?」
「どこの男爵家だ」
「聞いたことあるか?」
「いやさっぱりだ」
「なんとまぁ、じゃあ首席は男爵家の娘、次席がコーリー殿ということか」
「ほぉ、なんという番狂せだ」
「じゃあ王太子殿下は、三席ということか?」
「王族が前から三番目に座るのか!」
「そんなことここ数代では聞いたことがないぞ!」
「殿下もお可哀想に」
「例年なら実力で主席になれるような優秀な方だが、時代が悪いとしか言えんな」
「コーリー殿は空気を読むタイプではないから仕方ないと思っていたが」
「あの田舎娘も何も考えず本気で解いたんだろうなぁ」
「王族の威信が台無しだな」
「他の代も忖度があったのではと疑われてしまうなぁ」
「おや、無いと思ってるのか?」
「おそろしゅうてよう言わんよ」
「あっはっはっはっは」
王族らしく、にこやかな表情を保ちながらも、心中は決して穏やかではなかった。ぐっと静かに拳を握り、爪を掌に立てて怒りを堪える。
どいつもこいつも、勝手なことばかり。
どれほど私が優れた成績を残しても、きっと周りは下駄を履かせられたのだと、周りの忖度だと想像する。実力相応の結果ではないのだと、そう思われる。そんなことは分かっていた。そういうものだと思っていた。
だが今年は、ありがたいことに、忖度なしに私を叩きのめしてくれる存在が二人もいるらしい。みんな、さぞ小気味よく思っていることだろう。
「こうなれば、三席とは言えあの二人に食らいついていた王太子は凄いと、そう言ってもらえるくらい頑張って貰わねばなるまいな」
嫉妬と八つ当たり混じりに呟いたそれが、まさか。
「やめろ、待て!落ち着け!やめろ、やめろと言うのに!!!あーーー!!!」
「遅かった……か……」
「コーリーもカミラも……そこまでやらかしてくれとは言っていないのだが……」
まさか、現実のものとなるとは。
その時の私には思いもよらないのだった。
堂々と壇上で挨拶する少女を見上げながら呟いた声は、私も意図せず嫉妬まじりの醜いものだった。
「今年の首席入学者は、公爵家のコーリー殿で決まりかな?」
「おや、王太子殿下もいらっしゃるぞ」
「殿下も優秀なお方だが、公爵家のご令息はなにせ天才だからなぁ」
「変態と紙一重の本物でいらっしゃるから、ご両親の公爵ご夫妻は大変そうだがね」
「そりゃ癇癪のたびに城や庭を吹き飛ばされちゃかなわんよ!あっはっはっはっ」
幼い頃からの鍛錬により過度に耳が良い私には、来賓の者たちの会話は耳を澄まさずとも十分に聞こえてくる。王族として積み重ねてきた教育の成果で、顔色を変えたりする無様は晒さないが、気は滅入った。
「ふぅ、コーリーと同学年というのは、なかなか大変なものだな」
「あはは、殿下にも苦手な相手がいらっしゃるんですね」
小声でぼやけば、現宰相の息子で私の幼馴染でもあるアーロンが、笑いながら私の肩を叩く。
「苦手というか……いや、まぁ、苦手……なのかな?」
苦笑しながら否定しようとして、しかし結局横に振ろうとした首をコテンと傾ける。王族としては他者への好悪を気軽に表すのは褒められたことではないが、そんな私をアーロンは肩をすくめて肯定する。
「分かりますよ。あんなに好き勝手やりながら市民権を得ているアイツ見てると、なんだか真面目に生きてるのが馬鹿らしくなりますもんねぇ」
「うーん、……コーリーはホンモノだからなぁ」
「注目を掻っ攫ってしまいますよねぇ、あの奇天烈少年は」
「……ははは」
その通りだ。
今日だって、王太子の入学式だからと言って、例年の何倍も参列者達がいるが、彼らの興味を引くのは滅多に公の場に姿を現さない天才にして奇人の少年、コーリーだ。
「……コーリーは、昔から変わらないなぁ」
今でもコーリーに初めて会った日のことは、鮮明に覚えている。
七歳になったばかりのことだ。
その朝、私は何とも言えない複雑そうな顔をした両親、つまり両陛下から、こんこんと言い聞かせられた。
「今日お前に、同じ歳の少年を会わせる」
「え、新しい友人ですか?」
プライベートでは数人の幼馴染としか交流がなかった私は、新しい友人の予感に顔を輝かせた。しかし両親は「うーん」と困ったように唸って顔を見合わせた。
「友人……になれると、それはもちろん良いのですけれどね」
「変わり者だから難しいかもしれんなぁ」
眉を下げて頬に手を当てている母と、落ち着かない素振りで髭を触る父。普段あまり見ない二人の姿に、私は困惑を隠せなかった。そんな私に、二人は言い聞かせたのだ。
「ちょっとズレた価値観を持っているようですが、悪い子ではないのです。何か言われてもあまり気を悪くしないように」
「変わっているが、天賦の才を持つ少年だ。味方につければ力強いが、……常人とは違う価値観を持っているから難しいかもしれない。少なくとも、敵にまわして何の得もない相手だ。気をつけて接しなさい」
「は、い」
王族として、国王の嫡出の長男として生まれ、誰からも傅かれて生きてきた私には、両親の言う意味が分からなかった。
権力に従順な者たちしか知らなかったからだ。
けれど、コーリーに会ってわかった。
アレは、私とは異相の世界で生きている男だ。
「おや、君が王太子殿下?わりと良い魔力を持っているね!」
会った直後に、彼は言ったのだ。
「……え?」
「それ、なんで隠してるの?」
唐突な言葉に、私の本能が危険だ、と叫んだ。たらり、と冷や汗が出る。慌てて人払いをして、私は必死に平常の作り笑いを浮かべ、にこやかにコーリーに声をかけた。
「コーリー。君は何を言っているんだい?」
「え?だから、君が隠してるソレだよ」
「な、にを」
ドクンドクンと心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
コーリーは無邪気に、まるで天使のように笑いながら、私の一番の秘密を暴いた。
「だってそれ、闇の魔力じゃない!」
「っ、なんで」
「見れば分かるよ。魔力の色が違うもの」
魔力の色?そんな話、聞いたこともない。
私の魔力が闇属性を持つことは、王家でも父母しか知らない最大の秘密だ。光の勇者の末裔たる王族が闇属性を持っているだなんて、とんだ醜聞だから。
生まれてすぐに神殿の大神官が封じてくれた。大神官は去年老衰で亡くなったから、もう父母以外、誰も知るはずはないのに。
「王太子様が持ってるなんて、話題になりそうなのに。隠してるんだねぇ、もったいない」
「だ、誰にも」
「言わないよー、興味ないもん」
見ただけで私の最大の秘密を看破してしまった少年は、天使のように無邪気な顔で言ったのだ。
「でもいつか、殿下の魔力を研究させてね!とっても興味深いからさ!」
と。
コーリーにとっては、王太子たる私すらも単なる研究対象に過ぎないのだ。
その後も私はコーリーとは付かず離れずの付き合いを続けた。過度に好かれることも嫌われることもなく、さして興味も持たれず。
まだ闇の魔力が必要ではないというだけかもしれないが、私は安堵した。その後もなるべく思い出して欲しくなくて、積極的にコーリーに声をかけることはしなかった。
だが、これからは距離を空けて過ごすわけにもいくまい。なにせ同じ学園の同級生なのだから。
衆目の面前で「闇の魔力ちょっと貸して」とでも言われたらどうしようかと思うと、それも気が重い。
「…………」
そんなことを考えていたら、ざわっと入り口付近が騒ついた。振り向くと、案の定そこにいるのはコーリーだ。しかし意外なことに、彼は一人ではなかった。
「……あれ?女の子?」
「ファー、美少女じゃん」
「あの他人に興味がないコーリーが?」
私の周りでも、驚きの声がいくつも上がる。コーリーと実際に親交のある者たちほど、その驚きは大きかった。
会場中の人々の注目を集めながら、にこやかに入り口の受付で別れようとするように見えた二人だが、案内の者が何か言うと、驚いたように顔を見合わせた。
「そうか!君か!」
コーリーが弾けるような笑顔を見せ、浮かれ切った声で叫ぶ。
「僕を負かした首席入学者とは一体どこの誰だと思っていたら、君だったのか!」
「…………え?」
思わず声が漏れる。
首席入学者が、コーリーじゃない?
そして、そこの小さな少女が今年の首席だと?
ざわわ、と、先程の比ではないくらいに会場全体に動揺が走る。
「あ、あなたが次席の方なのですね。私より代表挨拶向いてそうですね。代わってもらえます?」
「あはは、君面白いね!無理に決まってるじゃないか。代表挨拶は首席!これは王家でも変更出来ないって有名な話じゃないか」
「そうなんですか?」
「昔馬鹿な王子様を賢く見せたい馬鹿な王様がいてねー、大騒動になっちゃって、それ以来は裏口裏金が一切効かなくなったんだよー」
「へぇー、物知りですね」
「王都に住んでたら誰でもしってるよ」
「へぇー、生憎と私は王都民じゃないもので。私、地方の学校からの推薦なんですよね」
「そうなんだ!地方にも賢い子っているんだねぇ!親御さんが賢者だったりする?」
「へ?賢者とか神話世界だけでは?」
「ジョークだよジョーク!」
「ジョーク分かりにくいですねぇ」
「あはは、ごめんごめん」
「親は普通に領地をそこそこおさめてる男爵ですよ。得意なことやるのが幸せだよねって王都での学費出してもらえました」
「へぇー!素敵な親御さんだね」
「ありがとうございます。代わりにお前の持参金はないって言われましたけど」
「あはははは!ジョークも分かるんだ、すごい!」
「冗談じゃないんですけどねー」
聞こえてきたのは、とんでもない会話だった。
「……男爵令嬢?」
「今年の首席が男爵家の娘だと?」
「どこの男爵家だ」
「聞いたことあるか?」
「いやさっぱりだ」
「なんとまぁ、じゃあ首席は男爵家の娘、次席がコーリー殿ということか」
「ほぉ、なんという番狂せだ」
「じゃあ王太子殿下は、三席ということか?」
「王族が前から三番目に座るのか!」
「そんなことここ数代では聞いたことがないぞ!」
「殿下もお可哀想に」
「例年なら実力で主席になれるような優秀な方だが、時代が悪いとしか言えんな」
「コーリー殿は空気を読むタイプではないから仕方ないと思っていたが」
「あの田舎娘も何も考えず本気で解いたんだろうなぁ」
「王族の威信が台無しだな」
「他の代も忖度があったのではと疑われてしまうなぁ」
「おや、無いと思ってるのか?」
「おそろしゅうてよう言わんよ」
「あっはっはっはっは」
王族らしく、にこやかな表情を保ちながらも、心中は決して穏やかではなかった。ぐっと静かに拳を握り、爪を掌に立てて怒りを堪える。
どいつもこいつも、勝手なことばかり。
どれほど私が優れた成績を残しても、きっと周りは下駄を履かせられたのだと、周りの忖度だと想像する。実力相応の結果ではないのだと、そう思われる。そんなことは分かっていた。そういうものだと思っていた。
だが今年は、ありがたいことに、忖度なしに私を叩きのめしてくれる存在が二人もいるらしい。みんな、さぞ小気味よく思っていることだろう。
「こうなれば、三席とは言えあの二人に食らいついていた王太子は凄いと、そう言ってもらえるくらい頑張って貰わねばなるまいな」
嫉妬と八つ当たり混じりに呟いたそれが、まさか。
「やめろ、待て!落ち着け!やめろ、やめろと言うのに!!!あーーー!!!」
「遅かった……か……」
「コーリーもカミラも……そこまでやらかしてくれとは言っていないのだが……」
まさか、現実のものとなるとは。
その時の私には思いもよらないのだった。
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