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番外編
今年の首席入学者はいろいろすごい3侯爵令嬢
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私はおそらく、悪役令嬢になるはずだった。
けれど、どんなバグなのか、その気配はない。
代わりに世界は、頓珍漢な方向にまっしぐらである。
「……え?なんで続編の主人公が?」
入学式の日。婚約者である王太子殿下といつも通り形式的な挨拶を交わし、重い気持ちで席に着いていた私は、入学生代表の挨拶を見て、思わず呟きを漏らした。
「え……!?私って、続編にも出てたっけ!?そもそも続編は舞台は王都の学園じゃないはずなのに……」
絶句して壇上を見上げていた私だが、嫌な会話が耳に入ってくる。
「男爵なんて、ほとんど平民じゃない!」
「私たち、碌な教育も受けていない男爵家の娘に負けたの?」
「信じられない!顔がいいからって贔屓なんじゃないの?」
「口が過ぎるわ、学園でそういう小細工が出来ないのは有名な話でしょう?王家すら不可能なのに、男爵家に出来るはずないわ」
「そうよ!それより殿下よ!つまり殿下は三席ってことでしょう?」
少女たちの興奮した小声の囀りに、隣の男子生徒二人がポツリと呟いた。
「殿下、優秀な方だと評判だったのに」
「男爵家の、しかも女に負けたのか……」
じわじわと背中に嫌な汗が滲み出る。
チラリと斜め前に座る殿下を見ると、変わらずにこやかな笑みを浮かべている。けれど、その目は暗い光を浮かべ、瞳の中で黒々とした魔力が渦を巻いていた。
「……え、まさかの闇堕ちルート?」
確かに隠しルートで、王家に相応しくないとされ秘されていたが実は闇属性持ちの王太子が闇堕ちしてヒロインを攫う、という厨二病オタク大歓喜のバッドエンドもあった。
基本的にコーリーに敵わない王太子だが、闇属性を解放すると無敵に近い強さになるのだ。ほぼラスボスである。ただ王都も闇に包まれるので、王都民にとっては最悪のバッドエンドだ。
まぁそれはそれとして。
「ヒロインが現れるのは卒業の前年のはずなのに、もう片鱗が現れてるのは何かのバグ?それとも私が見落としていただけで、伏線があったの?コーリーの主席入学者挨拶を見ている時の殿下と同じだった……?」
考えれば考えるほど寒気が止まらない。
なんだかとんでもないことになりそうな気がする。続編のヒロインは、もしかして転生者で、王太子を狙いにきたのかしら?
「あぁ、わからないわ。だとしたらコーリーに声をかけたこと自体が謎だし」
あのコーリーと普通に会話していた時点で全く理解できない。
コーリーとは今世では幼馴染と言っても差し支えないが、前世の知識があっても彼の言動は全然意味がわからないので、私は最低限のお付き合いしかせず、距離を置いている。コーリールートには私は出てこないはずだったし。
「わからないことだらけだわ。予想もつかない学園生活になりそう」
前世の知識があっても、使えるとは思えない。私に出来るのは、無駄に断罪されないよう身を謹んで暮らすことだけである。可もなく不可もない王太子の婚約者として、今後も穏やかに暮らしていきたい。
そう思っていたのだが。
「殿下!殿下はご立派ですわ!」
「そうだろうか……」
なぜか私は、ヒロインの真似事をして、殿下を励まし慰める日々だ。
「今日も私は何もしていない。何も出来ていないよ」
「そんなことはありません!」
今日はカミラとの実戦実習でテンションが上がりすぎたコーリーが、練習場を吹き飛ばしてしまったのだ。一気に地面が抉り取られ、空に吹き飛んだ。まるで天変地異のような有様だった。
「コーリーが吹き飛ばした練習場の土を戻したのはカミラだ。私は見ていただけだ」
「カミラさんも激怒して一気に修復したから、周りの生徒たちは怯えておりましたもの。私たちを落ち着かせてくださったのは殿下ですわ」
ブチ切れたカミラは、空の彼方に飛んで行った土を一気に引き戻した。それはまるで空から地面が降ってくるかと思うような勢いで、多くの生徒たちは恐慌状態に陥りかけた。
それを救ったのが殿下だ。
「はっはっは!さすがだなカミラ!」
悲鳴があがりかけた空気を破るように、弾けるような陽気な笑い声を響かせた殿下は、落ち着いた様子で生徒たちを見渡してにっこりと笑った。
「みんな落ち着け、飛んで行ったものが戻ってくるだけだ。元通りになるから慌てることはない。すぐにまた実習が続けられるさ」
パチリとウインクすらして見せながら、殿下はどっしりと構え、泰然とした姿勢を崩さなかった。おかげで、うっかり真っ青になっていた私も、すっと落ち着くことが出来たのだ。
「そりゃ、まぁ、カミラの魔法制御の巧緻さを知っているからな」
「でも普通、あんな状況では、誰しも動揺してしまいますわ。私たちはまだ子供で、経験のない未熟な学生なのですもの」
けれど、殿下は違った。
「殿下はちっとも動じず、笑い飛ばして下さった。だから、みんな落ち着くことができたのですわ」
普通ならパニックになるような場面でも、殿下はきちんと上に立つ者として振る舞った。怯えるばかりで逃げ惑おうとする愚かな私たちの心を守り、導いてくれたのだ。
「上に立つ方が泰然として慌てることなく居てくださる。それが下の者にとってどれほどありがたいことか。……私もあの時実感したのです。私たちの王は、とても頼りになるお方だと。この方について行けばきっと、私たちは助かると、そう思ったのですわ」
「……ありがとう」
「いえ、本当のことですわ」
いや本当に割と本気であの時は死ぬかと思ったのだ。殿下のおかげで私の今世での淑女としての評価も保たれた。助かりました。
そう思って、私は笑っていたのだが、殿下はどうやら様子がおかしい。
どこかうっとりとした眼差しで私を見つめ、きゅっと手を握ってきた。
「私は君を誤解していたようだ。こんなに私のことを思いやり、真摯に向き合ってくれているのに……これまではそっけない態度を取って悪かったよ。許してくれるかい?」
「……え?」
いや、私も断罪ルートが怖くて付かず離れず可もなく不可もなしな婚約者の立ち位置をキープしようとしていたので、お互い様というか、そういう感じでして、はい。
つい慰めてしまったのは、このままだとヒロインが現れる前に闇堕ちして王都が闇に沈むのでは?とか思ったからというのもあり、百パーセントの善意ではないもので、そんな純然たる感謝と好意を向けられてしまうと居た堪れなくてですね?
などと脳内では言い訳に大忙しだが、口からは何も適切な言葉は出てこず、現実は待ってくれない。
「愛するエイダ。我が婚約者にして未来の伴侶よ。どうか愚かな私を許し、私に君を愛する許可を。そして叶うならば、君からも私に愛を与えておくれ」
突然の衝撃展開に私は固まってしまった。最高に好みな顔面を持つ、何を隠そう前世の最推し様からの熱烈な求愛である。どんどんと顔に血が昇るのがわかる。
「あ、の……わたしたちは、婚約者ですし、そんな、いまさら」
モゴモゴと照れ隠しを呟けば、殿下はふふっとカッコよく笑って私の手を引き寄せた。
「それは了承と取っていいのかい?」
「え、あの、あっと……あの、はい」
「嬉しいよ、エイダ。我が愛するひと。君が居てくれればどんな悲惨な未来にも立ち向かえそうだ。どうか私とともに、この国の未来を歩んでおくれ」
これ、ヒロインが言われるプロポーズの台詞じゃない?何がどうしちゃったの?
「ねぇ、返事は?」
「は、はいっ、喜んで!」
「喜んで?くっ、あはは!喜んでくれるのか。そりゃあいい」
つい元気よく居酒屋みたいな返事をしてしまい、殿下を爆笑させてしまった。
あーあ、断罪されないように、無難に日々を過ごしていたんだけどなぁ。
まぁ、殿下が笑ってくださるなら、いっか。
この優しくて真面目な人が幸せでいてくれることが、私の願いなのだから。
なぁんて。
そう思っていた私は、甘かった。
数年後、カミラを落としたいコーリーから「理想のデート」について聞かれ、めずらしく会話が弾んでいるのを殿下に見られた。
「ねぇエイダ、君の恋人は私だろう?なのになぜ、コーリーと楽しくそんな話をしているの?……君も、コーリーの方が良いのかい?」
「は!?コーリーなんて絶対嫌ですけど!?」
嫉妬した殿下が、バドエン手前くらいの勢いで闇魔力を解放して私に迫ってきたのだ。だが私も冗談じゃない。
「むしろコーリーだけは絶対嫌ですよ!?私は殿下だけが好きなんですから!……あ」
「エイダ……ッ!」
「んむぅ!?」
思わず勢いに任せて告白してしまったら、感極まった殿下に唇を塞がれた。婚姻前は口付けすら許さないはずの貴族文化を無視して、殿下は舌まで入れてきた。
「んっ、むっ、うぅー!」
「んはっ、はぁ、もっとキスを」
「ちょ、まっ!?っぁん!」
口の中で暴れ回るぬるぬるとした熱に気を取られていたら、いつの間にか殿下の手は私のスカートの中に入り込んでいた。
「我慢できない、エイダ。君を奪われたくないんだ。どうか私のものになってくれ」
「け、けっこんまえに!子ができたら大変ですわ!?」
「子供……子供か、いいねぇ、最高だ!」
「ええ!?」
どうにか止めなくてはと叫んだら、なぜか興奮を煽ってしまい、殿下は一気に私を押し倒した。
「もう決めた。卒業と同時に結婚しようね。そしてたくさんの子供達と一緒に暮らすんだ!」
「うそぉおおお!?んっ、あっそこだめぇ、んんっ、やめてぇッ!」
「っ、なんて色っぽい声なんだ!そんなに煽るなッ」
「煽ってないのにぃ~っ」
俺を煽ったお前が悪い的発言をしながら、完全に発情した王太子は私のドレスを脱がせ、犬のように全身を舐め、身体中にキスマークを刻み、最後には乳房を鷲掴みにしながら思い切り中に射精しまくった。
「あっ、中はやめてって言ったのにぃ~ッ」
「あははっ、んっ、搾り取ろうとしているくせにっ」
「ちがうっ、んんんっまた!?いやっ、おっきくしないでぇー!」
「だから煽るなって、言ってるじゃないかッ!」
「違うのにぃいいいー!んあーーーッ」
結局若さのままに貪られ、五回は中出しされた。気絶するほどに抱き潰された私は翌月まさかの、いや案の定の妊娠が発覚し、大慌てで挙式を行った。
両陛下に平謝りされながらなんとか残り数週間の学園生活を乗り切り、退学は回避されたのだ。
「これが十八禁乙女ゲームだってことを忘れていたわ……」
結婚二年目にして三人目の子を宿しながら、私は苦笑する。
「まぁ、溺愛エンドだから、良いんだけどね」
悪役令嬢のはずが今や溺愛される子沢山な王太子妃だ。
世界のバグ万歳、である。
けれど、どんなバグなのか、その気配はない。
代わりに世界は、頓珍漢な方向にまっしぐらである。
「……え?なんで続編の主人公が?」
入学式の日。婚約者である王太子殿下といつも通り形式的な挨拶を交わし、重い気持ちで席に着いていた私は、入学生代表の挨拶を見て、思わず呟きを漏らした。
「え……!?私って、続編にも出てたっけ!?そもそも続編は舞台は王都の学園じゃないはずなのに……」
絶句して壇上を見上げていた私だが、嫌な会話が耳に入ってくる。
「男爵なんて、ほとんど平民じゃない!」
「私たち、碌な教育も受けていない男爵家の娘に負けたの?」
「信じられない!顔がいいからって贔屓なんじゃないの?」
「口が過ぎるわ、学園でそういう小細工が出来ないのは有名な話でしょう?王家すら不可能なのに、男爵家に出来るはずないわ」
「そうよ!それより殿下よ!つまり殿下は三席ってことでしょう?」
少女たちの興奮した小声の囀りに、隣の男子生徒二人がポツリと呟いた。
「殿下、優秀な方だと評判だったのに」
「男爵家の、しかも女に負けたのか……」
じわじわと背中に嫌な汗が滲み出る。
チラリと斜め前に座る殿下を見ると、変わらずにこやかな笑みを浮かべている。けれど、その目は暗い光を浮かべ、瞳の中で黒々とした魔力が渦を巻いていた。
「……え、まさかの闇堕ちルート?」
確かに隠しルートで、王家に相応しくないとされ秘されていたが実は闇属性持ちの王太子が闇堕ちしてヒロインを攫う、という厨二病オタク大歓喜のバッドエンドもあった。
基本的にコーリーに敵わない王太子だが、闇属性を解放すると無敵に近い強さになるのだ。ほぼラスボスである。ただ王都も闇に包まれるので、王都民にとっては最悪のバッドエンドだ。
まぁそれはそれとして。
「ヒロインが現れるのは卒業の前年のはずなのに、もう片鱗が現れてるのは何かのバグ?それとも私が見落としていただけで、伏線があったの?コーリーの主席入学者挨拶を見ている時の殿下と同じだった……?」
考えれば考えるほど寒気が止まらない。
なんだかとんでもないことになりそうな気がする。続編のヒロインは、もしかして転生者で、王太子を狙いにきたのかしら?
「あぁ、わからないわ。だとしたらコーリーに声をかけたこと自体が謎だし」
あのコーリーと普通に会話していた時点で全く理解できない。
コーリーとは今世では幼馴染と言っても差し支えないが、前世の知識があっても彼の言動は全然意味がわからないので、私は最低限のお付き合いしかせず、距離を置いている。コーリールートには私は出てこないはずだったし。
「わからないことだらけだわ。予想もつかない学園生活になりそう」
前世の知識があっても、使えるとは思えない。私に出来るのは、無駄に断罪されないよう身を謹んで暮らすことだけである。可もなく不可もない王太子の婚約者として、今後も穏やかに暮らしていきたい。
そう思っていたのだが。
「殿下!殿下はご立派ですわ!」
「そうだろうか……」
なぜか私は、ヒロインの真似事をして、殿下を励まし慰める日々だ。
「今日も私は何もしていない。何も出来ていないよ」
「そんなことはありません!」
今日はカミラとの実戦実習でテンションが上がりすぎたコーリーが、練習場を吹き飛ばしてしまったのだ。一気に地面が抉り取られ、空に吹き飛んだ。まるで天変地異のような有様だった。
「コーリーが吹き飛ばした練習場の土を戻したのはカミラだ。私は見ていただけだ」
「カミラさんも激怒して一気に修復したから、周りの生徒たちは怯えておりましたもの。私たちを落ち着かせてくださったのは殿下ですわ」
ブチ切れたカミラは、空の彼方に飛んで行った土を一気に引き戻した。それはまるで空から地面が降ってくるかと思うような勢いで、多くの生徒たちは恐慌状態に陥りかけた。
それを救ったのが殿下だ。
「はっはっは!さすがだなカミラ!」
悲鳴があがりかけた空気を破るように、弾けるような陽気な笑い声を響かせた殿下は、落ち着いた様子で生徒たちを見渡してにっこりと笑った。
「みんな落ち着け、飛んで行ったものが戻ってくるだけだ。元通りになるから慌てることはない。すぐにまた実習が続けられるさ」
パチリとウインクすらして見せながら、殿下はどっしりと構え、泰然とした姿勢を崩さなかった。おかげで、うっかり真っ青になっていた私も、すっと落ち着くことが出来たのだ。
「そりゃ、まぁ、カミラの魔法制御の巧緻さを知っているからな」
「でも普通、あんな状況では、誰しも動揺してしまいますわ。私たちはまだ子供で、経験のない未熟な学生なのですもの」
けれど、殿下は違った。
「殿下はちっとも動じず、笑い飛ばして下さった。だから、みんな落ち着くことができたのですわ」
普通ならパニックになるような場面でも、殿下はきちんと上に立つ者として振る舞った。怯えるばかりで逃げ惑おうとする愚かな私たちの心を守り、導いてくれたのだ。
「上に立つ方が泰然として慌てることなく居てくださる。それが下の者にとってどれほどありがたいことか。……私もあの時実感したのです。私たちの王は、とても頼りになるお方だと。この方について行けばきっと、私たちは助かると、そう思ったのですわ」
「……ありがとう」
「いえ、本当のことですわ」
いや本当に割と本気であの時は死ぬかと思ったのだ。殿下のおかげで私の今世での淑女としての評価も保たれた。助かりました。
そう思って、私は笑っていたのだが、殿下はどうやら様子がおかしい。
どこかうっとりとした眼差しで私を見つめ、きゅっと手を握ってきた。
「私は君を誤解していたようだ。こんなに私のことを思いやり、真摯に向き合ってくれているのに……これまではそっけない態度を取って悪かったよ。許してくれるかい?」
「……え?」
いや、私も断罪ルートが怖くて付かず離れず可もなく不可もなしな婚約者の立ち位置をキープしようとしていたので、お互い様というか、そういう感じでして、はい。
つい慰めてしまったのは、このままだとヒロインが現れる前に闇堕ちして王都が闇に沈むのでは?とか思ったからというのもあり、百パーセントの善意ではないもので、そんな純然たる感謝と好意を向けられてしまうと居た堪れなくてですね?
などと脳内では言い訳に大忙しだが、口からは何も適切な言葉は出てこず、現実は待ってくれない。
「愛するエイダ。我が婚約者にして未来の伴侶よ。どうか愚かな私を許し、私に君を愛する許可を。そして叶うならば、君からも私に愛を与えておくれ」
突然の衝撃展開に私は固まってしまった。最高に好みな顔面を持つ、何を隠そう前世の最推し様からの熱烈な求愛である。どんどんと顔に血が昇るのがわかる。
「あ、の……わたしたちは、婚約者ですし、そんな、いまさら」
モゴモゴと照れ隠しを呟けば、殿下はふふっとカッコよく笑って私の手を引き寄せた。
「それは了承と取っていいのかい?」
「え、あの、あっと……あの、はい」
「嬉しいよ、エイダ。我が愛するひと。君が居てくれればどんな悲惨な未来にも立ち向かえそうだ。どうか私とともに、この国の未来を歩んでおくれ」
これ、ヒロインが言われるプロポーズの台詞じゃない?何がどうしちゃったの?
「ねぇ、返事は?」
「は、はいっ、喜んで!」
「喜んで?くっ、あはは!喜んでくれるのか。そりゃあいい」
つい元気よく居酒屋みたいな返事をしてしまい、殿下を爆笑させてしまった。
あーあ、断罪されないように、無難に日々を過ごしていたんだけどなぁ。
まぁ、殿下が笑ってくださるなら、いっか。
この優しくて真面目な人が幸せでいてくれることが、私の願いなのだから。
なぁんて。
そう思っていた私は、甘かった。
数年後、カミラを落としたいコーリーから「理想のデート」について聞かれ、めずらしく会話が弾んでいるのを殿下に見られた。
「ねぇエイダ、君の恋人は私だろう?なのになぜ、コーリーと楽しくそんな話をしているの?……君も、コーリーの方が良いのかい?」
「は!?コーリーなんて絶対嫌ですけど!?」
嫉妬した殿下が、バドエン手前くらいの勢いで闇魔力を解放して私に迫ってきたのだ。だが私も冗談じゃない。
「むしろコーリーだけは絶対嫌ですよ!?私は殿下だけが好きなんですから!……あ」
「エイダ……ッ!」
「んむぅ!?」
思わず勢いに任せて告白してしまったら、感極まった殿下に唇を塞がれた。婚姻前は口付けすら許さないはずの貴族文化を無視して、殿下は舌まで入れてきた。
「んっ、むっ、うぅー!」
「んはっ、はぁ、もっとキスを」
「ちょ、まっ!?っぁん!」
口の中で暴れ回るぬるぬるとした熱に気を取られていたら、いつの間にか殿下の手は私のスカートの中に入り込んでいた。
「我慢できない、エイダ。君を奪われたくないんだ。どうか私のものになってくれ」
「け、けっこんまえに!子ができたら大変ですわ!?」
「子供……子供か、いいねぇ、最高だ!」
「ええ!?」
どうにか止めなくてはと叫んだら、なぜか興奮を煽ってしまい、殿下は一気に私を押し倒した。
「もう決めた。卒業と同時に結婚しようね。そしてたくさんの子供達と一緒に暮らすんだ!」
「うそぉおおお!?んっ、あっそこだめぇ、んんっ、やめてぇッ!」
「っ、なんて色っぽい声なんだ!そんなに煽るなッ」
「煽ってないのにぃ~っ」
俺を煽ったお前が悪い的発言をしながら、完全に発情した王太子は私のドレスを脱がせ、犬のように全身を舐め、身体中にキスマークを刻み、最後には乳房を鷲掴みにしながら思い切り中に射精しまくった。
「あっ、中はやめてって言ったのにぃ~ッ」
「あははっ、んっ、搾り取ろうとしているくせにっ」
「ちがうっ、んんんっまた!?いやっ、おっきくしないでぇー!」
「だから煽るなって、言ってるじゃないかッ!」
「違うのにぃいいいー!んあーーーッ」
結局若さのままに貪られ、五回は中出しされた。気絶するほどに抱き潰された私は翌月まさかの、いや案の定の妊娠が発覚し、大慌てで挙式を行った。
両陛下に平謝りされながらなんとか残り数週間の学園生活を乗り切り、退学は回避されたのだ。
「これが十八禁乙女ゲームだってことを忘れていたわ……」
結婚二年目にして三人目の子を宿しながら、私は苦笑する。
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