腐れ縁の公爵令息に契約結婚を迫られていますが、離婚してくれなさそうだから嫌です

トウ子

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神殿送りになった転生ヒロイン、隣国の皇太子のMっ気を開花させてしまったので責任を取ります

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 思いがけない方向からの純真な感動の眼差しに、私は多少たじろいだ。そんなピュアな目で見てこられても困る。こっちはサディスティックに虐めているつもりだったのだぞ。罪悪感が湧くじゃないか。

「初めてなんだ、悪いことを悪いと、叱ってもらえたのが」
「……あら。それはまた、不幸なご身分ねぇ。可哀想に」
「優しいな、……ありがとう」

 なんでありがとうなんだ?別に気を遣って言った訳じゃないぞ。ただの感想だ。急に私に対してポジティブな色眼鏡をかけるのやめて欲しい。内心の焦燥を隠して平静を装いながらも、私は顔が引き攣りそうだ。

「ユリアは本当にいつも優しい……間違えたら正してくれるし、悪いことをしたら叱ってくれるし、危ないことをしたら心配してくれる。そんな女……どころか、そんな人間、俺の周りにはこれまでいなかったんだ」

 え、まさかこいつマザコンとかシスコン?心配して叱ってくれる年上女にキュンとくるの?いやまぁ男はみんなマザコンて言うけど。

「これまで誰も俺を叱ってくれる者はいなかった。そして皇帝になった今、コレから先もいないだろう」
「それはそうでしょうね」

 なにせ今や、体に幾千幾万の矢を受けながら聖女を守り抜き、暴虐帝を弑した英雄帝……などと崇め奉られているアルベルトだ。この男に一言言ってやれるのは、最初に一緒に国外逃亡を企てていた騎士君たちしかいないだろう。だがあの男性陣はアルベルトに酔心しているからなぁ。命懸けの諫言とかはしに来ても、アルベルトを叱責したりはしないだろう。

「君に嘲笑われて、その度に俺は身体中に痺れが……神のお告げのように、電撃が走ったんだ。そして気づいたんだ!これが愛の女神の矢に打たれた時に感じる、一目惚れの衝撃というやつなのだと」
「電撃かぁ」

 それはどちらかと言えば、キューピッドの矢というより、神の裁きっぽいけどな。まぁいいや、あまり突っ込むと、必死にかき口説いてくれているアルベルトに悪い。

「ユリア、もう一度頼む。どうか……俺の女神になってくれ」
「おぅふ」

 俺様プロポーズから、ドMの素質ありまくりな下僕系プロポーズに進化した。恥じらいに頬を赤らめ、真摯にこちらを見つめてくる瞳は、私の中の意地の悪い魔獣を刺激してやまない。まぁ有体に言えば、大変そそられた。この可愛い大型獣を、今私は、可愛がってやりたくて仕方ない。

「うーん、なるほどねぇ、……まぁ一考の余地はあるけど」
「一考の余地くらいしかないのか!?」

 私が熟考の果てに出した返答に、アルベルトが目を見開いて衝撃を受ける。そして私の足元に膝をつくと、まるで縋り付くように私の手を取った。

「だ、だめか?俺にはお前が、お前のような女が必要なんだ」
「へー」

 ふわっとやる気のない返事を放り投げる私に、アルベルトが泣かんばかりの切実さで希った。私が欲しいと。

「どうしたら俺と結婚してくれるんだ……!?結婚してくれるのならば、俺は何でもする!」
「……へえ?」

 その言葉、忘れないでね?

「妃ねぇ。それはもちろん、唯一無二の正妃よね?」
「え?」

 一夫多妻どころかハレムを形成するのが当たり前のこの国で生まれ育ったアルベルトには、私の要求が理解できないらしい。私はニンマリと笑うと、噛み砕いて説明してやった。

「私、平民出身だから、他にも女がいる男と番う気にはなれないのよ。側室や愛妾なんて置いたら許さないわ」
「ほ、法改正をしよう!」
「時間かかりそう~」
「じゃあ俺の代では後宮を潰すと神殿に誓約書を出す!それでどうだ!」
「うーん、まぁそれならいいかな」
「本当か!?」

 私が婚姻に乗り気になってきたと見て、アルベルトが嬉々として提案をする。私も尻尾をブンブン振り回していそうな可愛らしい姿に頬が緩んだ。可愛い雄のワンコを飼い慣らすのは、きっと楽しいだろう。

「良いわよ、あなたと結婚してあげるわ」
「ユリア!!」

 感極まって私に抱きついてきたアルベルトに、私はにっこり笑って襟元を両手で掴み、ぐっと引き寄せた。

「さぁ、アルベルト。今日からアナタは、私のモノよ」
「へ?……んっ」

 ぐっと引っ張り、目の前の顔にぶつけるように顔を寄せる。食らいついた唇は分厚くて、食べ応えがありそうだった。



 
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