俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。

ゆきゆめ

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だから、あたしは————。

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 あたしは何をしているんだろう。
 あたしは何がしたいんだろう。

 ああ……やっぱりあたしは矛盾だらけだ。

 あたしは告白することの難しさを知っているのに。

 人の想いを受け取らないことが、どんな悲しみを生むのか、どんな雨を降らせるのかも、知っているはずなのに。

 あたしは、あのとき、あの告白で。何かの答えを得たような気になって。

 それで、それで――――――――。


 あの子の横顔を見つめる。

 その顔は愛おしいようで、それでいてこんなにも、あたしの心を惑わせる。 



◇ ◇ ◇



 海水浴の帰り。駅であたしたちは解散することになった。

 帰ろうとすると、雪ちゃんに少し話さないかと誘われた。

 雪ちゃんがこんなふうにあたしを誘ってくれるのは珍しい。

 だから彼女が誘ってくれたのが嬉しくて、あたしは意気揚々と彼女について行った。


 そうしてやってきたのは、あの公園。お花見をした、告白をした、あの公園だ。あの告白以来何となく足が遠のいていたから、あたしがここに来るのは久しぶり。

 なんで雪ちゃんはあたしをここに連れてきたんだろう?

 少し思うことはあるけれど、あたしは努めて明るく彼女に話しかけようとする。が、雪ちゃんはそれを遮るように頭を下げた。

「夏帆かほさん、あのときは本当にありがとうございました」

「え……? あのときって……」

「あの、梅雨の日のことです。まだちゃんとお礼が言えていなかったので」

「い、いいよそんなの! あたしなんて何にもしてないし!」

 あたしは慌てて両手を振る。

 しかし雪ちゃんはもう一度、改めて頭を下げる。

「いえ、今の私とヒロさんがいるのは夏帆さんと、磯貝さんのおかげです。本当に感謝してもしきれません」

「そんな……本当にいいのに……」

 あのとき、あたしは本当に何もしていない。大事なことは全部、磯貝くんがやってくれた。あたしはほんの少し、浅間くんの背中を押せたらって。それだけだった。

「だから、夏帆さん」

「……なあに?」

「今度は私に、あなたのチカラにならせてくれませんか?」

「あたしの力に……? そ、そんなのやっぱり悪いよ! ていうか、この前の相談だけでも十分チカラになってくれてるし!」

「それなら、夏帆さんの悩みはもう晴れたのでしょうか。もう、答えはでたのでしょうか」

「うっ……そ、それは……」

「ふふっ。あなたとヒロさんはやっぱり似ていますね」

「ええ!? そんなことないよ! 絶対ない!」

「二人とも、私を頼ってくれるふりをして。その実、一人で悩んでばかりです。結局、すべてを一人で抱え込もうとします。私はいつも、蚊帳の外」

 雪ちゃんは一度言葉を切ってから、頬をぷうっと膨らませて「私、少し怒ってるんですよ?」と拗ねたように付け足した。

 ああ……可愛いなあ。なんでこの子はこんなに、可愛いんだろうか。

「だから、今度こそ。私があなたの助けになります。あの時、あなたと磯貝さんがヒロさんにそうしたように。今度は私が、夏帆さんの知らないことを教えてあげましょう」

「あたしの、……知らないこと?」

「はい、そうですよ」

「あたしの悩みの答えを、雪ちゃんは知ってるっていうの?」

「はい、おそらくは」

「そ、それなら……!」

 教えてほしい。今すぐに。あたしは、雪ちゃんの言葉なら信じられるから。あたしがあこがれたふたりの言葉なら、信じられるから。

「夏帆さんは、恋って、恋愛ってどういうものだと思いますか?」

「へ? それはどういう……」

「いいから、答えてください」

 雪ちゃんの優しい笑顔につられて、私は少し考える。私にとって恋愛ってなんだろう。それは………

「とってもキラキラしてて、幸せなものだよ。恋してるとね、世界が色づいて見えるんだ。その人さえいれば、もう他に何もいらないって。その人のためなら何でもするって。そう思えるくらいに、夢中になっちゃう。それが、私の思う恋で、恋愛」

「そうですね。でも、それと同時に――――――――」

「とっても辛いもの。それが、恋愛」

「はい、その通りです。私たちはきっとそれを知っています」

 だから、あたしは早く答えを出したいのに。あの子を、泣かせたくはないはずなのに。

 あたしは未だに、迷っている。

 でも、同じ想いを知っている雪ちゃんなら。その上で、ハッピーエンドを手に入れた彼女なら。答えを、知っているのかな。

「ねえ、雪ちゃん。聞いてくれる?」

「はい、何でも言ってください。そのすべてに、私が答えて見せます」

 そう言った雪ちゃんの顔はとっても優しくて、とっても頼もしかった。

「あたし、好きな人がいたんだ」

「はい」

「だけどね、振られたの。それでその時、あたしはね、その人を諦めたつもりなんだ。そうして、その人の幸せを願ったつもりなんだ」

 雪ちゃんなら、この結末を否定するだろうか? 同じ想いを知っていると言っても、あたしと彼女は違うから。雪ちゃんなら、この結末をハッピーエンドに変えられるのではないかと、そう思う。

 もしくは、今のあたしみたいな状況でも迷わないのではないかと、そう思う。

 雪ちゃんなら、きっと、あの子の気持ちを――――――――。

「それでも、ね。あの子に告白された今でもね。まだ、あの人を好きだった気持ちが残ってるんだ。あの子を好きなっちゃいけないって、そう思うあたしがいるの」

「それは、なぜですか?」

「それは……それはぁ………………ぁ……」

 これは言ってはいけない。言ってはいけないと、そう思うのに。

 雪ちゃんが「なぜ」何て言うから。その言葉が、まるで人ごとのように聞こえて。

 なぜなんて聞かないでよ。あなたなら、わかっているはずでしょう? あなたになら、この気持ちがわかっているはずでしょう?

 あたしの中の何かに触れてしまった。何か、抑えきれない衝動があたしを襲った。

 だから、あたしは………!

「……雪ちゃんたちのせいだよ!」

 叫んだ。

「二人が、あたしに夢を見せたから! あたしも二人みたいにって、そう思ったから! 二人が、ずっとお互いだけを好きでいられることが綺麗だと思ったから! そんな二人に憧れたから! 雪ちゃんなら、浅間くんなら、…………絶対にあの人を諦めないって、そう思っちゃったからぁ…………!」

 そうだ、そうなんだ。

 あたしは二人に憧れて、ずっと抱えていた恋心を形にしようと踏み切った。

 でも、その結末はあたしに求めていたものではなくて。あたしは、誰かのためにあろうとするあたしに戻った。あの人の、幸せを願って。あたしはあたしの幸せを探そうって。そう思った。

 だけど、あの梅雨の日。二人のすれ違いを見た。

 一瞬、あたしの中の悪魔が囁いた。

 『ふたりも、離れ離れになっちゃえばいいのに』って。
 
 だけど、結局あたしはほんの微力ながら二人に協力する道を選んだ。

 そうして、晴れて、二人は結ばれた。

 なんで。なんでなんだろう。

 そりゃあ状況も、場面も、二人の気持ちの方向も、何もかもが違うけれど。

 なんで二人は結ばれて。あたしはダメだったんだろう。

 それはやっぱり、あたしが諦めたから?

 あたしが、本当の意味で、戦おうとしなかったから?

 もしかしたら、本当は、あたしが諦めなかったら、その先にはハッピーエンドが用意されていたんだろうか?

 でも、あのときのあたしにはその道は選べなくて。あの人と彼女の仲を引き裂くなんて、あり得なくて。

 だけど、雪ちゃんたちを見て、また何かが変わってしまった。

 
 あたしの物分かりの良さみたいのものが、ハッピーエンドを遠ざけてしまったんじゃないかって、そう思った。

 雪ちゃんみたいに、彼をずっとずっと求めて。浅間君みたいにずっとずっと考えて、苦しみ続ければ、何かが変わるんじゃないかって。

 そうでなくとも、あの人を想い続けることこそが、あたしにとっての幸せだったんじゃないかって。たとえそれが報われないものだとしても、あの人を想い続ける。

 そんな人生にこそ、あたしは胸を張れるんじゃないかって。最後に、笑えるんじゃないかって。

 そんなふうにたった一人を想い続けてこそ、あたしはやっと雪ちゃんと同じ場所にいけるんじゃないかって。そう思ってしまったんだ。



 そうしてあたしは、吐き出した。

 大切な友達に向けて。

 言葉を吐き出した。それはとても、汚い言葉。あたしがもっとも嫌いな言葉たち。だれも幸せにしない、そんな言葉たち。

「二人のせいで、あたしは、……あたし、は……」

 すべてを吐き出したあたしはもう、言葉を失ってしまった。

 嫌われたかな。それでも、もう仕方ないよね。

 だけど、雪ちゃんは笑っていた。

 微笑んで、あたしの言葉を全て受け止めていた。

「やっと、夏帆さんの言葉を聞けた気がします」

「え……?」

「あなたは取り繕ってばかりですから。それがあなたの良いところで、悪いところです。そしてその上で、言わせてもらいます」

 そう言って、雪ちゃんはあたしに向き直った。

 さっきまでとは違う、まじめな顔。あまり見たことのない顔だった。

「あなたは、夏帆さんは、私のようにはなれません。あなたは決して、私ではありません」

「――――――――っ」

「あなたが私たちに憧れてくれたこと、それはとてもうれしく思います。でもあなたの憧れた物語は私と、ヒロさんの物語なんです。あなたの物語とは違います」

「でも……それでもあたしは、……二人が好きで、二人の物語が綺麗だったから……それで……!」

「夏帆さん、私たちの物語というのはですね、閉じているのですよ」

 雪ちゃんの言葉に抗うように、まるでワガママを言う子どものように呻くあたしに、雪ちゃんはなだめるように優しく少しおどけた様子で、続ける。

「私とヒロさんは二人して全然友達がいませんからね。ずっと、ふたりぼっちなんです。そこに夏帆さんと、磯貝さんとが加わってこの物語は紡げたのです。たったそれだけですよ? たったそれだけしか、登場人物がいないんです。だから、私たちは二人でいられたんです。でも、夏帆さんは違います、そうでしょう?」

「な、なにが違うっていうの? なんで、あたしじゃダメなの……?」

「ダメなのではありません、あなたには違う生き方があると、そう言っているのです」

「だから、それはなんなの……?」

「あなたは優しい人です。勝手にすれ違って、取り返しのつかないことになろうとしていた私たちに手を差し伸べてくれるくらい、優しい人です。率先して応援団までやるようなあなたには、たくさんの友人がいるはずです。たくさんの人から慕われているはずです。そんなあなただからこそ、紡げるものがあるのだと思います」

 そう、なんだろうか?
 あたしだけの物語なんて言うものが、本当に存在するんだろうか? こんな、迷ってばかりのあたしに?

「夏帆さん。恋心っていうのはですね、移ろうもの、であるらしいです」

「え……?」

「私はそれを否定します。ずっとずっと、ヒロさんを愛する自信があるからです。彼と想いが、繋がっているからです」

 言葉通り、自信満々に、雪ちゃんはそんな傲慢とも取れるようなことを言う。でも、それがあたしの憧れた女の子の姿だった。

「でも、一般的には恋心は移ろうのだそうです。なぜか。そうしないと、人は壊れてしまうからです」

「壊れる……?」

「はい。報われない想いを抱えるその辛さ、夏帆さんは知っていますよね? その恋心をずっと抱え続けて、人は正気を保っていられると思いますか? そんな風に生きられると思いますか?」

「それは……頑張ればきっとできるよ。だって、雪ちゃんはきっと、もしそうなったらそうするんでしょう?」

「はい。私ならそうするでしょう。私はその時、数少ない友人を、大事な家族を悲しませることを、不幸にすることを決意するでしょう。夏帆さんは、そんな道を選ぶことができますか?」

「え……?」

 言われて、気づいた。そうだ、報われない想いを抱え続けること。それは決して自分だけの問題ではないんだ。それはきっと、孤独な道だ。

 ずっと一人のあたしを見て、家族はどう思うだろう。

 あの子のように告白してくれた人を、手を差し伸べてくれた人を、すべて拒むことにもなる。それはきっと、ひどく独善的だ。

 いろんな人に、そんな悲しみを、爛れた想いを、伝染させることになる。


 それに今、思い出した。それはついさっき、海で溺れたときに見たような気がした夢。

 あたしはずっとずっと、大切な何かを抱えて生きていて。それはひどく空虚で、色のない世界で。たったひとりの、孤独な道で。いつしかその何かはドロドロになって、あたしの心を蝕んでいく。
 そうしてあたしは、ううん、すべてから置き去られた孤独の少女は。永遠に叶うことのない、報われることのない夢を見続けるバケモノになっちゃうんだ。


 そんな道をあたしは選ぼうとしていた……?


 あたしは、本気であの人を取り戻せたら、なんて思っていないんだ。やっぱりあたしには彼と彼女の間を引き裂くことなんてできない。

 でも、想いはこの胸にある。初恋、だったんだ。10年以上、抱え続けた恋なんだ。あの人こそが、あたしの1番星だったんだ。捨てられるはずがない。
 
 それなら、どうするか。

 それなら、その想いを抱え続ければいいではないか。たとえ報われなくても。自分の気が済むまで抱えていればいい。

 そんな道を、あたしは……

「――――――――選べません、よね。私と違って、誰にでも優しくて、大切なモノがたくさんある夏帆さんには決して選べません」

「そんなの……そんなのぉ……」


 雪ちゃんの、言うとおりだった。あたしにはそんな道を選べない。

 あたしにはたくさんの友達がいて。大切な家族がいて。大切な、幼馴染がいて。幸せにしたい人がたくさん、たくさんいて。やっぱり、あの子を泣かせることなんてあたしにはできそうになくて。

 だけど、それならどうしろと言うのだろうか。

 あたしの好きな人には恋人がいて。あたしの闘いはすでに終わっていて。

 だけど手放せない想いはこの胸にある。

「夏帆さん、恋心は移ろいます。そういうものです。そうやって、世の中の人は次々と恋を語るのです。そうやって、幸せを探していくんです。でも、想いってたくさんあります。誰かを好きだった気持ちはなくなるわけではありません」

「好きだった気持ちは、なくならない……?」

「はい。その気持ちは胸の奥深くにしまって、人は次の恋をするのです。そのしまった想いはもう、恋心とは違うのかもしれません。でも、それが誰かを大切に想う気持ちであることに変わりはありません。好きだった気持ちに、決してウソはありません。それで、いいのではないかと思います。人は、そうやって生きていくのだと思います」

 誰かを好きだった気持ちはなくならない。
 誰かを好きだった気持ちにウソはない。
 でも、それを抱え続けていたら人は壊れてしまうから。
  
 その気持ちは心の奥深くにしまい込んで、次の恋をする。

 そうやって、人は生きていく。人は幸せを探していく。

 なんだか、雪ちゃんの言葉はあたしの胸にすっと入り込んでいくようだった。


 誰かを好きな気持ちはなくならない。

 誰かへの「好き」は決してなくならないんだ。

 この胸に、ずっと棲み続けているんだ。

 だけどあたしのその好きは、あの人への好きは、「恋」の好きだろうか。

 本当は、そう思い込もうとしてるだけなんじゃないだろうか。

 あの人は確かに大事な人だけど、でもあの時、あたしはあたしなりの決着を付けたはずで。

 その想いはもう……移り変わってるんじゃないだろうか?

 だからあたしはあの子に告白されたとき………………。

「雪ちゃん」

「なんですか、夏帆さん」

「あたし、……あたしさ、他の誰かを好きになることを罪みたいに感じてたのかもしれない。ずっと好きだったのに。告白までしたのに。それなのに他の誰かを好きになるなんて、それは好きだったあの人への裏切りでもあり、そして何より、あの人を好きだった自分への裏切りなんじゃないかって」

「そんなものはありませんよ。人を好きになることに罪なんてあるはずがありません。それはただ、自分で自分を縛り付けているだけ。そんなふうになってしまったものはもう、恋心でもなんでもない。呪いです。私たちを決して離さない亡霊です。それは、あなたを不幸にするものです。そんなものに、あなたの一生を捧げる意味はない。私はあなたにそんな道を進んでほしくはない」

 そうだね。そのとおりだ。
 
 そんなもの、恋でもなんでもなかった。
 あたしは、世界で一番大切だったあの人への気持ちを、不意にすることろだった。

 きっとこの気持ちは、想いは、すでに変質している。

 でもそれは、呪いなんて言うものではない。そうはさせない。

 させないために。

 この気持ちは大事に、大事に、心の奥底にしまっておこう。


「答えは見つかりましたか?」

「うん! 見つかったよ、あたしの答え」

「それなら、行ってください。あの子のことはヒロさんが駅前で引き留めてくれているはずです」

「……ありがとう。雪ちゃん」

「いいえ。私は、私なりの言葉を紡いだだけですよ。だから、あなたはあなたらしい物語を語ってください。あなただけの物語を、語ってください」

「うん!」

 言って、あたしは走り出す。

 でも、もう一つ、聞くことがあった。あたしは、彼女の方を振り向く。

「雪ちゃん!」

「なんですか?」

「恋は移ろうって、誰が言ってたの!? それは絶対、雪ちゃんの言葉じゃないよね!?」

「……バレてしまいましたか。そうですね。私の言葉ではありません。私はやっぱり、あんな言葉を認められませんから」

 少し遠くの雪ちゃんが笑っているのが見えた。とっても可愛い、世界一魅力的な微笑みだ。

「あれは、――――昔読んだ少女漫画の言葉です。私はそれが認められなくて、ずっと覚えていたんですね」

「そっか! 教えてくれてありがとう!」

 問いの答えを得たあたしはまた走り出す。

 そっか、少女漫画か。ああいうのって、変なところで現実的だ。

 でも、そんな言葉が、あたしにピッタリはまってしまった。
 
 それはまるで、失くしていたパズルのピースみたいに。

 でも、こんな想いを知ってしまったあたしは、雪ちゃんの生き方を知っているあたしは、決して一般論のようには生きられない。

 そこに、あたしらしい生き方があるはずだ。

 そう思って、走った。あの子の元へ、走った。



◇ ◇ ◇



 あの子の姿が見えた。

 浅間君はいないみたい。空気を読んでくれたのかな? 浅間君にそういうことができるのかはわからないけれど。あ、もしかしたら雪ちゃんが連絡したのかも。きっとそうだ。

 そんなことを考えながら、あの子の背中が近くなるまで、走る。

 もう息はとっくに切れていて。気を抜いたら倒れちゃいそうだ。

 もう呼吸をするのだって辛い。

 だけど、伝えなきゃいけない想いがあるから。

 あたしに告白してくれた君に。

 あたしにチカラをくれた君に。

 あたしを助けてくれた君に。

 伝えなきゃいけないんだ。

 だから、倒れそうでも、息がうまく吸えなくても。


 あたしは大声で叫ぶんだ!


「後輩くん! じゃなくて雨木あまぎくん! でもなくて、――――――――冬樹ふゆきくん!!」


「……え? 星乃先輩? え? どこから?」


 彼が、冬樹くんがこちらを振り向いた。

 驚かせちゃったかな。でも、


「あたし、あたしね――――――――!」


 あたしは叫んだ。

 あたしの物語を、叫んだ。
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