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リクエスト03

助手とクッション(1)

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◆◆◆前書き◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

お待たせしました。リクエスト頂いたラブジェンガネタです!
実際の商品とはちょっと変えて架空のゲームになってます。

* * *

とあるきっかけで、カンナギの本職(緊縛講師)の助手を決めるべく、
家族みんなでラブジェンガ勝負!

ワチャワチャ、だらっとしたお話です。
エッチはありませんが、エッチなお題は出ます。

お話雰囲気タグ

#ワチャワチャ
#みんなでイチャイチャ
#ソウ×伝
#日常
#だら~

たぶん10話更新くらいでしょうか…いつもよりも長いかもです。
お楽しみ頂けますと幸いです┏○ペコッ

リクエスト頂き、ありがとうございました!

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 シャワーを浴び、後は寝るだけという頃。
 僕はおずおずとリビングに足を踏み入れた。
 というのも、今夜はとある件で家族会議を行うからだ。
 予定の時間よりも少し早めに待機していると、続々とみんなが集まってくる。

 それぞれが定位置に付いたのを見計らい、僕は頭を下げた。

「すみません、今日は……僕のミスでご迷惑を……」

「伝のせいじゃねぇよ。みんな気付かなかったんだ」

 類さんが濡れた髪をタオルで乾かしながら言う。

「そーそー。ってか、ボクが電話出てれば回避できたことだし」

「まあ、その時にはもうほとんど飲んじゃってたけどね……」と、帝人さんが肩を竦める。

 今日の昼間のこと。
 僕は、類さんが予約していたお酒を、カンナギさんの下まで受け取りに行った。

 それは驚くほど美味しい日本酒だった。
 鼻に抜けるほのかなフルーティの香り、口溶けは優しく、のど越しは爽やかで……僕らは上機嫌でそのお酒を褒め称え、味噌漬けのチーズをつまみに他愛もない話に花を咲かせた。
 一升瓶はあっという間に空になった。

 しばらくして、僕とニャン太さんは携帯にカンナギさんから留守電が入っているのに気が付いた。聞けば、僕が持ち帰ったお酒は名前が似た別のお酒だったと言うではないか。
 ……痛恨の確認ミスだ。

「で、カンナギはなんて?」

「笑って許してはくれたのですが……代わりに助手をお願いしたいと……」

「助手……? 助手って、本職の?」

 類さんがその麗しい顔をしかめる。

「たぶん……?」

「……お酒買い直せないんだっけ?」

 帝人さんも神妙な顔をした。

「調べたら現在入手困難だとさ」

「助手かぁ……」

 ニャン太さんが額に手やり、ソファに深く座り直した。
 そんな落ち着かない様子の3人に、僕はなんだか不安になってくる。

「あの……カンナギさんって、何のお仕事されてるんですか?」

 問いに、ソウさん以外は複雑な表情を浮かべる。

「ええと……間違えたのは僕ですし、僕で良ければお手伝いしてこようかと思っているのですが」

「いや、それは」と、珍しく歯切れ悪く類さんが言う。
 僕の問いに答えてくれたのは、帝人さんだった。

「カンナギくんの本職ね、緊縛師なんだよ」

「きんばく……?」

 漢字変換が追いつかずポカンとする。それから、

「緊縛!?」

 やっと到達した理解に、裏返った声が漏れた。

「最近、講師もやってるって言ってたから、それ系の助手ってことだよねぇ。たぶん」

 ニャン太さんの補足に、僕は唇を引き結ぶ。
 緊縛講師の助手、ということは、たぶん縛られたりするんじゃなかろうか。
 軽々しく引き受けられるものではない。

「きんばく? なんだ、それは?」

 と、今まで静かに話を聞いていたソウさんが首を傾げた。

「縄で縛るんだよ」

 帝人さんの答えに、ソウさんは傾ける首の角度を大きくする。

「何のために」

「何のためって……気持ち良くなるため? かな??」

 ニャン太さんの言葉に、ソウさんは訝しげにした。

「気持ち良くはならないと思うが」

「うーん、色んな人がいるんだよ」

 腕を組むソウさんはますます混乱したようだ。

「まあ、ショーに出てくれって言われるよかはマシだけど……伝、お前マジでやる?」

「す、みません……ちょっと考えさせて貰っていいですか……」

「だよな」

 類さんが思案げに顎をさすった。

――緊縛なんて、未知の領域だ。
 つ、と背中を冷たい汗が流れる。

 嬉々としてコータくんさんのピアスを千切ろうとしていた姿を思い出すに、彼女に縛られ、更に吊されたりするのは怖すぎる。

 沈黙が落ちた。
 と、類さんが真剣な様子でニャン太さんを見つめた。

「俺さ、身体の大きさ的にニャン太が適任だと思うんだよ。吊るすとかあるじゃん、あれ?」

「いや-、ボクは小さいから助手としてはどうかな~」

 ニャン太さんが即座に答える。ニコニコしているが、絶対にイヤだと目が言っている。

「詳しくはわかんないけど、生徒さんに縛り方とか見せるわけでしょ? それにさ、縛るんなら類ちゃんみたいにイイ男がいいんじゃない??」

「いい男なら、俺よりソウだろ」

「断る。俺は縛られても気持ち良くない」

「俺もだよ。ってか、ここにいる全員同じなんだよ……」

 類さんが大仰に溜息を付く。

「もうジャンケンで決めたら? 話してたって決まらないよ」

 と、僕らのやり取りを眺めていた帝人さんが口を開いた。
 類さんが器用に片眉を持ち上げる。

「ほお? いいんだな、ジャンケンで決めても。お前、後悔しねぇ?」

「えっ!? 俺も候補に入ってるの!?」

「当たり前だろーが! お前も飲んでただろ!」

「や、飲んだけどさ、背丈的にほら、俺、大きい方だし……」

「縛り方教えるなら、デカい方がいいんじゃねぇ? 見やすいし」

 類さんの言葉に帝人さんが唇を引き結ぶ。
 それから眉間を揉みながら言った。

「……ジャンケンはやめようか。このメンバーだとちょっと読めない」

「だろ」

 沈鬱な空気を、「はいはーい!」とニャン太さんの明るい声が破いた。
 彼は勢いよくソファから立ち上がると、目をキラキラさせて続けた。

「じゃあさ、じゃあさ、何かゲームして決める!?」

「アナログゲームならアリ。ただし、麻雀はナシ」と類さん。

 麻雀を除外したのは、お正月の二の舞を防ぐためだろう。

「将棋とかは?」

「ボク、ルール知らない」

 帝人さんの提案に、ニャン太さんは胸の前で両手を交差させてバッテンを作った。

「出来るだけ簡単で、みんな同じ上手さで遊べるゲーム、か……うーん、そんな都合のいいもんあるか……?」

 僕も考えてみる。

 神経衰弱、ポーカー……この辺りは能力値に偏りがあり過ぎる気がする。
 類さんと帝人さんのことを考えると、頭脳戦と心理戦は避けたい。と言うことは、フィジカルなゲーム? いや、フィジカルなゲームなんて、このメンバーの中じゃますます僕に勝ち目はない……
 あれ? そもそも僕が彼らに勝てることなんてあるのか……?

 みんなで頭を悩ませていると、ニャン太さんが「閃いた!」と、手を打った。
 そして間髪入れずに自室へと走り、細長い箱を手に戻ってくる。

「じゃじゃ~ん! これとかどう!?」

 テーブルに置かれた箱を見て、「ジェンガ?」と、類さん。

 ジェンガ――直方体のブロックを3つずつ積み上げて作ったタワーから、ひとつずつブロックを抜き取り、上に重ねるパーティーゲームだ。

「半分正解!」

「半分? どういうことですか?」

 僕は首を傾げる。

「これはね、ジェンガはジェンガでも、合コンとかでやる用なんだよ!」

 ニャン太さんがポケットから取り出した携帯をジェンガの隣に置いた。
 とあるアプリのアイコンをタップすると、ディスプレイには、可愛らしいたくさんのハートが浮かんだ。

「アプリと連携できてね、ブロック引く度にお題が出るんだけど、このお題をクリアできないと引き直ししなくちゃいけないんだよ。
 これなら力量差はないでしょ? ボクもまだ開けてなかったから初見だし。公平じゃない?」

 ニャン太さんが僕らを見渡す。

「確かにな。俺はこれでいいよ」と類さん。

「僕もです」と同意する。ソウさんも小さく頷いた。

「俺も異論無し。それで、何回勝負にする?」

 帝人さんの問いに、

「一発でいーんじゃね?」

 類さんがパッケージを開けながら答える。

「合コン用っつっても、崩した人が負けなのは変わんねぇんだろ? 何度かやるとお題もわかっちまうし、一発勝負でいいと思う」

 類さんの提案は最もだった。
 そういうわけで、カンナギさんの助手を決めるべく、真剣一発勝負なジェンガゲームが始まったのである。
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