ファミリア・ラプソディア

Tsubaki aquo

文字の大きさ
18 / 211
chapter2

step.8-3 5つのグラスとおやすみのキス

しおりを挟む
* * *

「……やっぱ、男3人は無理があるんじゃねぇか」

 類さんの呆れたような声が部屋に落ちる。

「全然平気だよー。こうやって、くっついてれば」

 明るい応えと共に、ニャン太さんがグイグイと身体を寄せてくる。

 ダブルベッドはすし詰め状態だ。
 しかも並びは、何故か僕が真ん中。

「平気じゃねぇ。狭い……俺、身体半分ベッドから落ちてんだけど」

「なんかさ、なんかさ、こういうのって修学旅行っぽくてワクワクするねっ!?」

「……聞いてねぇし」

 溜息が落ちる。
 類さんは身体を横に倒すと頬杖をついた。

「ってか、修学旅行でこんなくっつくかよ。どうでもいいヤローと密着するとか、考えるだけでゾッとする」

「あー……それもそうだね」

 スンッと声のトーンを落として、ニャン太さんは真っ直ぐ仰向けになった。
 が、それも短い間だけで、またすぐコチラを向いた。

「でもさ、たまにはいいじゃん。今度、5人でゴロゴロしよーよ」

「このスペースの何処に後ふたり入れるんだよ」

「そうじゃなくて。リビングのテーブルどかして布団敷くの!」

「もう布団は捨てた」

「そうだっけ? じゃあ買おう! そして並べてみんなで寝よう!」

「なんでそんなに寝たいんだ……」

「そんなの親交を深めるために決まってるじゃん。同じ布団で寝た仲って言うし」

「同じ釜の飯を食べた仲のノリで言われてもな」

「似たようなもんでしょ?」

「全然。いかがわしいだけ」

 ニャン太さんがむぅ、と唸る。
 次いで唇を一文字に引き結ぶ僕の方を不思議そうに見た。

「……ってか、デンデン。さっきから黙ってるけど、どうしたの?」

「ど、どうもしていませんが……?」

 変にどもる僕に、彼はますます不審げにする。

『アイツ激しいぞ?』

 類さんの冗談が、まだ頭の中でこだましている。

 ニャン太さんに「その気」はないし、今の雰囲気だって健全そのものだというのに、僕はもしもを心配している。
 いや、正確にはもしもを考えた自分のふしだらさが恥ずかしいというか、何というか。

「もしかして緊張してる? でも、なんで?」

 鋭い指摘に口の端がヒクつく。
 右隣で類さんが忍び笑いをこぼした。

「……類ちゃん。何したの?」

 僕に乗っかって、彼は反対側の類さんに訊いた。

「何もしてねぇよ」

「気になるんだけど」

 改めて僕を見下ろしてきたニャン太さんから逃げるように、目線を泳がす。

 すると彼は突然ベッドのライトをつけた。

「……っ」

「デンデン、顔真っ赤だよ? どうして……」

 更に問を重ねようとしたニャン太さんが、きょとんとする。それから声を上げた。

「あーっ! そういうこと!?」

「そ、そういうこととは、どうーー」

「3人でエッチなことすると思ってたんだ!?」

 食い気味でズバリと言い当てられた。
 そんなに僕の心情は読み取りやすいんですか。そうですか。……もうやだ。

 僕は顔を両手で覆った。
 ニャン太さんがブハッと噴き出した。

「あはっ、あははっ……そんなにボク、節操なしに見える?」

「…………すみません」

 そんなことを本気で考えてごめんなさい。

「そりゃ、ボクはデンデンのこと気に入ってるし、もっと仲良くなりたいとは思うけど、エッチするのはまた別でしょー」

 ひとしきり笑ってから、ニャン太さんは言った。

「そ、そうですよね……」

「うんうん。今はね」

……今は?

「でも、そっかー。意識してくれてたんだー。嬉しいなあ」

 顔を覆っていた手を退かされる。
 かと思うと、ニャン太さんが覆いかぶさるようにして、顔を覗き込んできた。

「あ、の……ニャン太さ……?」

 彼は柔らかな髪をかき上げて、目を細めた。
 まとう雰囲気が一変して、ギクリとしてしまう。

「試しにチューしてみよっか?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

BL短編まとめ(現) ①

よしゆき
BL
BL短編まとめ。 冒頭にあらすじがあります。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

処理中です...