ファミリア・ラプソディア

Tsubaki aquo

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chapter3

step.22 秘密と嘘 side:帝人

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 高校2年の11月のある日。
 ソウが学校を休んだ。先生曰く、どうやら風邪らしい。

 俺たちはいつものようにクラスで机をくっつけると、3人でお弁当を広げる。

「珍しいね-。ソウちゃんが休むなんて」

「最近、急に寒くなってきたしね」

 俺は冷たくなった煮物を口に運びながら頷いた。

 先月の陸上大会で、ソウは新記録を打ち立てるなど大活躍だった。
 さすがに疲れが出たのだろう。それに来月には高校駅伝も控えている。無理はしないという判断なのかもしれない。

「……」

「類?」

 ふと、ニャン太の隣に座る類を見た俺は、首を傾げた。
 いつもよりも口数が少ないように思ったからだ。

「……え。なに」と顔を上げた類は、思い出したようにカツサンドにかぶりつく。

「ぼんやりしてるから。……どうかした?」

「なんも……」

「なになに、類ちゃんも風邪?」

「んなわけねーだろ。めちゃくちゃ元気だよ」

「だよね。なんちゃらは風邪ひかないもんね」

 ニャン太がクスクスと笑う。 

「あ? 俺より成績低いヤツが何言ってんだ?」

「勉強ができるのと地頭がいいのは別ですー」

「……お前、意味わかって言ってる?」

 いつものじゃれ合いを横目に、俺はソウにメッセージを送ってみた。
 返信はなし。いつものことなので気にすることでもない。

 ソウは次の日も休んだ。
 その翌日も登校して来なかった。

 しっかりキリ良く土日まで休むつもりなんだろうとニャン太と話した。
 しかし、週が明けて月曜になってもソウは学校に来なかった。

* * *

「さすがにおかしくない?」

 朝のホームルームが終わり、3人で理科室に移動しているとニャン太が口を開いた。

「うん。メールも全然返ってこないし。類、ソウにメールしてみた?」

 半歩後ろを歩く類を振り返る。

「したけど、返信来ねぇな」

「インフルエンザとかかなぁ?」

「そうかも」

 だとすれば、1週間休むのも頷ける。
 確かに巷では流行していたし……しかし、それなら先生が言うんじゃないだろうか?

 その次の日もソウは登校してこなくて、さすがにみんなで家に行ってみようという話になった。
 学校が終わると、何度か家に行ったことがあるという類に案内されて真っ直ぐソウの家に向かった。
 俺たちの中で唯一の学区内進学者だったソウの家は、高校から歩いて数十分の場所にあった。

 普通の二階建ての一軒家だ。
 駐車スペースだろうコンクリートの庭に車はなく、自転車が1台止まっていた。たぶんソウのだ。
 1階も2階もカーテンが閉まっていて、しんとしている。

「誰もいない……みたいだね」

 俺はなんだか胸騒ぎを覚えつつ、チャイムを押した。
 思った通りなんの反応もない。

「風邪なのにいないって、おかしくない?」

「そうだな……」

 ニャン太の問いに、類は眉根を寄せて2階を見上げる。

 俺は改めてネームプレートを確認した。類が間違った可能性もゼロじゃないと思ったのだが……そこにはちゃんと『汐崎』とある。

「電話してみるか」

 類がズボンのポケットから携帯を取り出した。

『おかけになった電話番号は電波の入らない場所におられるか……』

 しばらくの沈黙の後、漏れ聞こえてきたのは無機質なアナウンスだった。

 俺たちは不安げに顔を見合わせた。
 交換して電話をかけてみたが、もちろん結果は同じだ。

「え、なにこれ。どゆこと……?」

「いつもなら携帯放置の末に充電切れたんだろーな、って思うんだけど」

 薄闇の滲んだ夕空に佇む一軒家を見上げる。
 地面に落ちる影が一層濃く感じた。

「……明日、もう一回、先生に聞いてみようか」

 俺の言葉にふたりは頷いた。

 翌日、俺たちは登校するやいなや職員室で担任にソウのことを尋ねた。
 けれど先生は困ったような顔をして『風邪って聞いてるよ』としか言わない。
 不信感が募る。意味のわからない不安はますます胸の内で膨らんだ。

 何度メールをしても、ソウから返信はない。
 ずっと電源が入っていないようだ。
 あれから再び家にも足を運んだが、誰もいなくて……結局、連絡がつかないうちに2週間が経ってしまった。
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