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第1章:7度目の人生は侍女でした!
2. この人生もなかなかハードです。
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私の名前はダイナ・グィネス・ベネット。
この国では珍しくもない栗色の髪と瞳の平凡な容姿のどこにでもいる人間です。
現在、7回目の人生を謳歌中!
今回は貧乏男爵家の次女として生まれました。
6回目が暗殺っていう洒落にもならない死に方だったため、正直なところ今回の出自が平凡すぎてちょっと物足りなさも感じましたが。
けれど、何事もほどほどなのが肝要と言いますしね。
(前回のお姫様は裕福だったけれど、死に様は褒められたものではなかったんですもの。十分だわ)
前世の最期、思い出すだけでゾッとします。
あんな死に方はもうごめんです。
ですから、7回目が穏やかな人生になりそうだと気づいた時は拳を握りしめたものです。
平穏が一番ですからね。
しかも身分差の激しい世界で、平民ではなく貴族の家柄。
それだけでも穏やかな日々が保障されたようなものです。
めっちゃ幸せです。
ただ我が家は男爵家といえども、経済的にはかなり切迫した状態にありました。
口に出したくはないのですが、俗に言う貧乏ってやつです。
それも貴族としての体裁を繕うことができない程度の微妙なレベルの貧乏……。
つまりは日々の生活……食事や使用人への給金など……は困ることはありませんでしたが、貴族として生きていくには到底足りない。
優雅な貴族階級でいることには相当なランニングコストがかかってしまうんです。
領地と館の管理に、社交界での交際費(ケチってしまうと大事になってしまいます。噂って怖いですね)。
馬鹿にならない金額が必要です。
だから、15歳の誕生日にお父様が私に近づいてきた時に、警戒すべきだったのです。
私は迂闊にも喜んでしまいました。
貴族の15歳はそろそろ社交界にデビュー(成人と認識されます)する年頃。
私も当然、そのことがお父様から知らされるのだと思ってしまったのです。
デビューには新しい白いドレスを着るものと決まっています。久しぶりにドレスを誂えてもらえると、心が沸き立ちました。
「ダイナ。お前に話があるのだ」
とお父様が申し訳なさそうに話を切り出しました。
暗く沈んだ口調でした。
胸騒ぎがしました。
「お父様、何か悪いことですか?」
「お前にとっては良く無い話だと思う。お前も今日から15歳。成人と同じ扱いとなる年だ。そこでだ。来月から、お前には侯爵家に奉公に出てもらうことになった」
「奉公?! 私はてっきりデビューのことかと……。デビューさせていただけないのですか?」
目の前が真っ白になりました。
華やかな世界は女子の憧れなのですから。
知らず知らずのうちに涙が浮かびます。
「デビューさせてやりたかったのはやまやまなのだ。でも我が家には金がない。ジェフリー(長兄です)とアン(姉です)の二人の維持で精一杯なのだ。わかってくれ、ダイナ」
「……仕方ありません。無いものはどうしようもないのですから」
下の子というものは割りを喰うものですもの。
でも、社交界デビューもなくなったということは、自動的に私の結婚も無くなるということでもあります。
女性が良縁に恵まれるためには『家柄・容姿・持参金』の3点セットが基本。
うちは全てが落第点です。
家柄はギリギリセーフだとしても、平凡な容姿とこの経済状態。しかも社交界デビューも無しとなると結婚なんて到底無理。
結婚は絶望的です。諦めざるを得なくなりました。
まぁ世の中には同じような境遇の貴族の女性も少なくありません。
となると結婚しない女子はどうするのか。
生きていくために働かなければなりません。
貴族の女子の就ける仕事といえば、家庭教師か侍女くらい。
我が家は厳しい経済状況でも最低限の教養をつけていただけたので、侯爵家の御令嬢の侍女としてお勤めに上がることになったのでした。
それから3年。
あっという間でした。
私は18になりました。
この国では珍しくもない栗色の髪と瞳の平凡な容姿のどこにでもいる人間です。
現在、7回目の人生を謳歌中!
今回は貧乏男爵家の次女として生まれました。
6回目が暗殺っていう洒落にもならない死に方だったため、正直なところ今回の出自が平凡すぎてちょっと物足りなさも感じましたが。
けれど、何事もほどほどなのが肝要と言いますしね。
(前回のお姫様は裕福だったけれど、死に様は褒められたものではなかったんですもの。十分だわ)
前世の最期、思い出すだけでゾッとします。
あんな死に方はもうごめんです。
ですから、7回目が穏やかな人生になりそうだと気づいた時は拳を握りしめたものです。
平穏が一番ですからね。
しかも身分差の激しい世界で、平民ではなく貴族の家柄。
それだけでも穏やかな日々が保障されたようなものです。
めっちゃ幸せです。
ただ我が家は男爵家といえども、経済的にはかなり切迫した状態にありました。
口に出したくはないのですが、俗に言う貧乏ってやつです。
それも貴族としての体裁を繕うことができない程度の微妙なレベルの貧乏……。
つまりは日々の生活……食事や使用人への給金など……は困ることはありませんでしたが、貴族として生きていくには到底足りない。
優雅な貴族階級でいることには相当なランニングコストがかかってしまうんです。
領地と館の管理に、社交界での交際費(ケチってしまうと大事になってしまいます。噂って怖いですね)。
馬鹿にならない金額が必要です。
だから、15歳の誕生日にお父様が私に近づいてきた時に、警戒すべきだったのです。
私は迂闊にも喜んでしまいました。
貴族の15歳はそろそろ社交界にデビュー(成人と認識されます)する年頃。
私も当然、そのことがお父様から知らされるのだと思ってしまったのです。
デビューには新しい白いドレスを着るものと決まっています。久しぶりにドレスを誂えてもらえると、心が沸き立ちました。
「ダイナ。お前に話があるのだ」
とお父様が申し訳なさそうに話を切り出しました。
暗く沈んだ口調でした。
胸騒ぎがしました。
「お父様、何か悪いことですか?」
「お前にとっては良く無い話だと思う。お前も今日から15歳。成人と同じ扱いとなる年だ。そこでだ。来月から、お前には侯爵家に奉公に出てもらうことになった」
「奉公?! 私はてっきりデビューのことかと……。デビューさせていただけないのですか?」
目の前が真っ白になりました。
華やかな世界は女子の憧れなのですから。
知らず知らずのうちに涙が浮かびます。
「デビューさせてやりたかったのはやまやまなのだ。でも我が家には金がない。ジェフリー(長兄です)とアン(姉です)の二人の維持で精一杯なのだ。わかってくれ、ダイナ」
「……仕方ありません。無いものはどうしようもないのですから」
下の子というものは割りを喰うものですもの。
でも、社交界デビューもなくなったということは、自動的に私の結婚も無くなるということでもあります。
女性が良縁に恵まれるためには『家柄・容姿・持参金』の3点セットが基本。
うちは全てが落第点です。
家柄はギリギリセーフだとしても、平凡な容姿とこの経済状態。しかも社交界デビューも無しとなると結婚なんて到底無理。
結婚は絶望的です。諦めざるを得なくなりました。
まぁ世の中には同じような境遇の貴族の女性も少なくありません。
となると結婚しない女子はどうするのか。
生きていくために働かなければなりません。
貴族の女子の就ける仕事といえば、家庭教師か侍女くらい。
我が家は厳しい経済状況でも最低限の教養をつけていただけたので、侯爵家の御令嬢の侍女としてお勤めに上がることになったのでした。
それから3年。
あっという間でした。
私は18になりました。
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