触れるだけで強くなる ~最強スキル《無限複製》で始めるクラフト生活~

六升六郎太

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第009話 魔核人形をクラフト

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魔核人形マナ・オートマタの書〉は、ちょうどハードカバーの本と同じくらいの大きさで、赤く染色された皮が用いられていた。

 その表紙には、無機質な人形の人体図が描かれている。

「これを読めば魔法が使えるようになるのか?」

『正確に言えば、書かれている内容を全て理解すると、魔法を身に着けることが可能となります。ただし幸太郎様の場合は、私が瞬時に理解しますので、一度目を通せばすぐに魔法が使用できるようになります』

「すげぇ……。さすがメーティス。頼りになるな」

 パラパラと魔導書のページをめくり、最期のページまでいくのに一分もかからなかった。

『〈魔核人形マナ・オートマタの書〉、解析完了。よって新たな魔法、《魔核人形師》を獲得しました』

「こんなあっさり……。でも、俺自身に直接知識が増えるわけじゃないんだな」

『一度に大量の知識を詰め込むと、幸太郎様の人格を歪ませる可能性があります。なので、私の方で記憶の保持を担当します』

「な、何から何まで、ほんとありがとうございます……」

『魔核人形(マナ・オートマタ)の作成は、通常手作業で行われますが、《空間製図》を用いることで大幅に製作時間を短縮することが可能です。そして人形本体を作成したのち、おおまかな人格を設定します』

「よぉし。じゃあさっそく始めるか。《空間製図》、転写!」

 目の前に、成人女性の体つきをした半透明の図案が浮かび上がる。

「あ、あれ……? 俺、屈強な男の図案を考えたのに、なんで女になってるんだ……?」

『先ほど入手した〈魔核人形マナ・オートマタの書〉には、女性型の魔核人形マナ・オートマタのものしか存在していなかったので、こちらで修正を施しました』

「そうなのか……。まぁいい。この魔核人形マナ・オートマタを作成した場合のステータスを表示できるか?」



◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇

魔核人形マナ・オートマタステータス]
〈ランク〉B級
〈名前〉なし
〈所有者〉倉野幸太郎
〈称号〉魔核人形マナ・オートマタ

体力:28900
筋力:8090
耐久:1200
俊敏:43020
魔力:0

〈魔法〉:使用不可
〈スキル〉:《猛毒耐性》・《強麻痺耐性》・《不老》・《消滅弾》

◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇



「おい、ちょっと待て。こいつ俺より強いじゃねぇか」

『ですが、魔核人形マナ・オートマタは魔力がないと動けません。動力源として使用する〈死毒蛇の魔核〉に魔力を生成する機能はありませんので、幸太郎様からの魔力供給か、あるいは食事などによるエネルギー補給を必要とします』

「……けど、自分より強い従者ってどうなんだ」

『お言葉ですが、この魔核人形マナ・オートマタはB級に分類されています。規格外の強さというほどではありません。単に、現在の幸太郎様のステータス値が低いだけだと思われます』

「ぐっ……。ま、まぁ、たしかに、俺はまだこの世界に来たばかりだし……。あっ! そうだ! 魔核人形マナ・オートマタを作ってから触れれば、このステータス値も複製できるんじゃないか!?」

『いえ、魔核人形マナ・オートマタは生物ではなく、アイテムとして認識されるため、ステータス値を獲得することはできません。逆に、魔核人形マナ・オートマタの作成に使用される〈死毒蛇の宝玉〉ならび、〈死毒蛇の魔核〉には、〈死を告げる猛毒蛇グリム・リーパー・サーペント〉の魂魄片こんぱくへんが癒着しているため、生物とみなされ、複製することができません』

「魂魄片……?」

『強靭なモンスターから採集できる素材、特に希少部位には、そのモンスターの魂の欠片、魂魄片が癒着します。今回の戦闘で入手した素材の中では、〈死毒蛇の宝玉〉、〈死毒蛇の魔核〉に魂魄片の癒着が確認できたため、複製することはできません』

「マジかぁ……」

『他にも、魔術的な効果を付与されたアイテムや、精霊の加護を持つアイテムなども、同様に複製することができません』

 う~ん……。

 意外と制約が多いんだな。

 ……でも、それくらいは許容範囲か。

 なんでもかんでも複製できたらつまらないしな。

『それと、この魔核人形マナ・オートマタはまだ外殻を身に着けておりませんので、耐久に少々問題が生じています』

「服を着せろってことだな……。いや、まぁ、俺だってわかってたよ? わかってたけど、とりあえず基礎となるステータス値がどのくらいかを見ておきたかっただけで、決して裸体のまま魔核人形マナ・オートマタを作ろうとしていたわけではないぞ。……けど、外殻を作って耐久を上げるのはいいとして、筋力ももう少し上げておきたいな」

『ならば、魔核人形マナ・オートマタの体格を小型化し、その分〈死毒蛇の肉繊維〉を凝縮させることで、筋力の向上が望めます』

「その場合のデメリットは?」

『特にありません』

「なら、それでいくか」

《空間製図》で浮かび上がっていた成人女性の図案を、少女に変更し、さらに〈死毒蛇の硬質棘鱗〉を加工して作った防具兼服の図案を追加した。



◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇

魔核人形マナ・オートマタステータス]
〈ランク〉A級
〈名前〉なし
〈所有者〉倉野幸太郎
〈称号〉魔核人形マナ・オートマタ

体力:28900
筋力:13230
耐久:30430
俊敏:43020
魔力:0

〈魔法〉:使用不可
〈スキル〉:《猛毒耐性》・《強麻痺耐性》・《不老》・《消滅弾》・《物理ダメージ大幅減少》

◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇



「おぉ! スキルも増えてかなり強くなってる――って! A級に上がってるし! 俺との差がどんどん開く! なんかすごい焦る! 大丈夫? これ、主導権奪われたりしない?」

『問題ありません』

 ほんとかなぁ……。

『〈死毒蛇の猛毒袋〉と〈死毒蛇の強麻痺袋〉を体内に組み込むことで、魔核人形マナ・オートマタの全ての体液に《猛毒》と《強麻痺》の効果を持たせることができますが、どうしますか?』

「そんなヤバい奴がとなりにいたら心休まらないだろ……」

『幸太郎様は《全状態異常耐性》を持っているので安全です』

「いや、そういうことじゃないから……。もういい、さっそく始めよう。《精密創造》で、魔核人形マナ・オートマタをクラフト!」

 置いてあった素材が次々と魔核人形マナ・オートマタの図案に吸収されていき、次第に実体となっていく。

 そして数秒ののち、一人の少女が出来上がった。

〈死毒蛇の肉繊維〉を凝縮して作った褐色の肌。

〈死毒蛇の赤眼球〉を埋め込んだ両目は、蛇独特のどこか棘のある瞳をしている。

 ところどころ棘のように跳ねている長い黒髪と、ドレスのような黒服は、〈死毒蛇の硬質棘鱗〉で作っているため、かなりの強度が期待できる。

『この魔核人形マナ・オートマタは外部からエネルギーを取り込まなければ稼働することができません。所有者である幸太郎様が触れることで、自動的に魔力を流し込むことが可能です』

 言われた通り、魔核人形マナ・オートマタの頭を撫でると、ぼんやりと魔力を吸われている感覚があった。

 それから数分が経つと、魔核人形マナ・オートマタはぱちぱちと瞬きをし始めた。

「おぉ、動いた。初めてにしては上出来だな。……よし。じゃあ次は人格の書き込みを――」

「……ここ、どこ……?」

「わっ! 喋った! あ、あれ……? 魔核人形マナ・オートマタって、完成したあとに人格を書き込むとか言ってなかったっけ? その作業をしなくても話したりできるのか?」

『いえ、人格の書き込みを行わないまま、魔核人形マナ・オートマタが自発的に言葉を発することはあり得ません』

 あり得ないって言われても……。

 実際に喋ったんだけど……。

 少女の姿をした魔核人形マナ・オートマタは、不思議そうに自分の体を眺めている。

「と、とりあえずステータスの確認を……」



◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇

魔核人形マナ・オートマタステータス]
〈ランク〉S級
〈名前〉ロロ・ウラル・ヴァルシュタイン
〈所有者〉倉野幸太郎
〈称号〉魔核人形マナ・オートマタ

体力:28900
筋力:13230
耐久:30430
俊敏:43020
魔力:20000

〈魔法〉:使用不可
〈スキル〉:《猛毒耐性》・《強麻痺耐性》・《不老》・《消滅弾》・《物理ダメージ大幅減少》・《精霊王の加護》

◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇



「ロロ・ウラル・ヴァルシュタイン……? それに、スキルのところに、《精霊王の加護》なんてものが……って、あっ! しかもS級に上がってる!? なんだこれ、どうなってるんだ!?」

『推測ですが、〈死を告げる猛毒蛇グリム・リーパー・サーペント〉の体内に、魔核人形マナ・オートマタの人格を構成するもとになった精霊王が取り込まれていた可能性があります。そのため、〈死を告げる猛毒蛇グリム・リーパー・サーペント〉から採集した素材を繋ぎ合わせたことで、精霊王の人格が混入してしまったのだと考えます』

「精霊王? なんだそれ?」

『自然発生した魔力が集結し、自我を持ったものを精霊と呼び、精霊王はその最上位希少種にあたります』

「最上位希少種ねぇ……。てことは、強いのか?」

『精霊王の能力は様々です。一概に述べることはできません』

「強い奴もいれば、弱い奴もいるってことか?」

「その通りです」

 ぐいぐいと服の裾が引っ張られ、見ると、精霊王が宿った魔核人形マナ・オートマタが上目遣いでこちらを見つめていた。

「……もしかして、ロロを助けてくれたの?」

「助けた?」

「……ロロ、昔、蛇に食べられたの……。それからずっと、蛇のお腹の中でひとりぼっちだった……。暗くて……。怖くて……。寂しくて……。ロロ、ずっと泣いてた……」

 え、えぇー……。なんかすっごいかわいそうなんですけど、この子……。

 つーか、見たまんまの幼さだな、精霊王……。

「あなたが、ロロを助けてくれたの?」

「助けたと言うか……まぁ、あの蛇を倒したのは俺だけど……」

 ロロはぱぁっと笑顔を作って、

「すごいっ! すごいっ! あの蛇を倒してロロを助けてくれたんだね!」

「いや、まぁ……。結果的にそうなっただけだって……」

「わーいっ! わーいっ! ロロ、自由だぁ! わーいっ!」

 ほんとに子どもみたいだな……。

 ロロはがしっと俺の腰に両手を回すと、

「あなた、名前はなんて言うの?」

「……俺は幸太郎。倉野幸太郎だ」

「幸太郎……幸太郎……えへへ。幸太郎」

 あれ? ……なんか、かわいいぞこの子……。

 ロロはニタニタと笑いながら、俺に抱きついて頬をこすりつけた。

「幸太郎。幸太郎。もうロロ、ひとりじゃない。幸太郎とずっと一緒にいる。えへへ~」

 間違いない。

 かわいい。

 精霊王、すごくかわいい。

 どうしよう、これ。俺もぎゅっとしていい? ぎゅっとしちゃっていい?

『幸太郎様、お気をたしかに』


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