触れるだけで強くなる ~最強スキル《無限複製》で始めるクラフト生活~

六升六郎太

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第010話 ロロたんマジ天使

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「よし! 完成だ!」

 ロロの服に使った〈死毒蛇の硬質棘鱗〉の余りを利用して、自分用のコート、ズボン、シャツも作った。

 これで耐久がかなり上がるはずだ。

「じゃあいよいよ、お待ちかねの転移魔法の習得に――」

 と、そこまで言いかけたところで、ロロのお腹がぐぅぅぅと唸り声を上げた。

 ロロは恥ずかしそうにお腹をさすっている。

「……ロロ……お腹減った……」

「よし。先にご飯にしよう」


     ◇  ◇  ◇


「《無限複製》、干し肉、水」

 民家の残骸で作った机の上に、干し肉と、皮袋に入った水が出現した。

「さぁ、ロロ。たぁんとお食べ」

「いいの?」

「どうぞどうぞ」

「わーいっ!」

 ロロは嬉しそうに両手を上げると、そのままパクリと干し肉にかぶりついた。

 あぁ、かわいいなぁ……。

 子供を育てるって、こういう感覚なんだなぁ……。

『もう少し手の込んだ食事を用意した方がよろしいのでは?』

 食べ物なんて腹が膨れればいいだろ。

 俺、前の世界ではずっとカップ麺しか食べてなかったけど、問題なかったし。
 
 それに、今複製できるのは干し肉と水の他には、最初に触ったキノコくらいだしな。

 ロロはいつの間にか干し肉を食べ終えていて、名残惜しそうにペロペロと指先を舐めまわしていた。

「おかわりいるか?」

「えっ!? おかわりあるの!?」

「あぁ。いくらでもあるぞ。《無限複製》、干し肉」

 ぽてんと干し肉が出てくると、ロロはまた目を輝かせてそれにかぶりついた。

「いただきまーす!」

「干し肉おいしいか?」

「うんっ! いくら噛んでもずっと口の中にいて、すっごく塩辛くて、ちょっと生臭いけど、幸太郎がくれたからとってもおいしいよっ!」

 メーティス、俺、今度からもっと手の込んだ料理を用意するよ……。

 二度とこんな悲しい笑顔を見ないで済むように頑張るよ……。

『懸命な判断です』


     ◇  ◇  ◇


 ロロが三つ目の干し肉を食べ始めた頃、改めて〈転移魔方陣の書〉を手に取った。

魔核人形マナ・オートマタの書〉と同じく、赤色の装丁で、こちらの表紙には円形の魔法陣が二つ描かれている。

「よし。じゃあ、念願の転移魔法を獲得するか。……といっても、俺はページをめくるだけなんだけどな」

 なんの感慨もなくあっさり魔導書をめくり終えると、メーティスの声が頭の中で響いた。

『〈転移魔法陣の書〉、解析完了。よって、新たな魔法、《転移魔法の陣》を獲得しました』



◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇

[ステータス]
〈名前〉倉野幸太郎
〈職業〉無職
〈称号〉なし

体力:1890
筋力:2035
耐久:2158
俊敏:1380
魔力:99999999999

〈魔法〉:《魔核人形師》・《転移魔法の陣》
〈スキル〉:《無限複製》・《完全覚醒》・《叡智》・《天啓》・《不老》・《全状態異常耐性》・《剣豪》・《超級鍛冶》・《空間製図》・《精密創造》・《超速再生》

〈新スキル・魔法詳細〉

  《超速再生》:いかなる損傷でも三回まで再生することができる。
         最初の発動から二十四時間経過すると、再び三回使用できるようになる。

  《魔核人形師》:魔核人形の作成、改造ができる。

《転移魔法の陣》:転移魔法陣を作成し、その間を行き来することができる。
          生物、及び、S級以上のアイテムは、転移に三十秒を要する。

◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇



「あれ? ステータス値がちょっと上がってるな」

『〈死を告げる猛毒蛇グリム・リーパー・サーペント〉との戦闘で得た経験値が反映されています』

「あぁ、そっか……。モンスターと戦闘しても経験値は手に入るんだよな。……つーか、それが普通か……」

 俺は《無限複製》で他人からステータス値をもらってばっかりだったからな……。

『それと、〈死毒蛇の硬質棘鱗〉で作成したコートの分、耐久が大幅に上昇していますが、ステータス値には幸太郎様の基礎値のみが表示されています』

「装備は別枠なのか……。それも一度確認するか」



◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇

〈装備一覧〉

  〈防具〉:〈[A級]死毒蛇の硬質棘鱗のコート〉
        耐久:20000
      特殊効果:《物理ダメージ大幅減少》

〈[A級]死毒蛇の硬質棘鱗のズボン〉
        耐久:5000
      特殊効果:《物理ダメージ大幅減少》

〈[A級]死毒蛇の硬質棘鱗のシャツ〉
        耐久:5000
      特殊効果:《物理ダメージ大幅減少》


◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇◆◆◇



『特別な能力を持っていない装備や、ステータス値にほとんど影響のない装備は表示していません。また、三つの防具に付与されている《物理ダメージ大幅減少》は一つのスキルとして統合されます』

「やっとまともな装備が手に入ったな。防具だけだけど……。それはそうと、この《転移魔法の陣》ってやつ、結構制約が多いな。魔法陣を作成してその間を行き来するってことは、一度その場所に行って魔法陣を作らないといけないってことだよな?」

『はい。それと、作成できる魔法陣の大きさは最大で直径五メートルです。その魔法陣からはみ出す大きさのものは転移できません。高さは魔法陣の大きさに関係なく、常に五メートルまでが効果範囲です』

「五メートルか……。ま、それだけあれば十分だろう」

 転移魔法を移動手段に使うのは当然として、これを利用すればもう一つの問題も解決できるかもしれないな……。

 改めて、ぐるりと部屋の中を見渡してみた。

 この長方形をした部屋は、ちょっと大きめの体育館くらいの広さがある。

 床や壁は石で作られていて、俺が使った図書館へ続く階段以外の出入り口は存在しない。

 ただし、壁の上部には通風孔が設けられていて、人は通れないが風通しはいい。

 壁にはいくつもの松明があり、室内を明るく照らしている。

 ここには誰も来なさそうだし、ちょっとくらい使わせてもらってもいいよな。

「なぁ、メーティス。実は一つ、解決しなくちゃいけない問題があるんだ」

『問題ですか?』

「ほら、俺があの蛇と戦ってる時、案山子を作るのに、先に《無限複製》で材料を複製しただろ? 今回はたまたまうまくいったけど、正直かなり隙が大きいし、面倒だ。だからあらかじめ、この部屋いっぱいにいくつも魔法陣を作り、その上にクラフトで使えそうな材料を置いといて、クラフトする時に直接ここの材料を使いたいんだけど、できるか?」

『可能ですが、それにはもう一つ、取り出し口となる魔法陣が必要です』

「俺がいつも背負ってるリュックの中に魔法陣を描いておけばどうだ?」

『リュックの横幅三十センチメートルかける、魔法陣の効果範囲である高さ五メートル以内のものであれば、《精密創造》の材料を直接この部屋から使用することができます』

「よし。じゃあ、なんとかなりそうだな」


     ◇  ◇  ◇


「転移魔法陣作成!」

 目の前の床に、直径五メートルの魔法陣が浮かび上がる。その中央には、先が丸まった杖と、それに寄り添う猫の図柄が刻まれていた。

 なんかやけに可愛らしい魔法陣だな……。

『魔法陣の作成には五分程時間がかかります。そのままお待ちください』

 五分か……。結構かかるんだな……。

 それに、生物とかS級以上のアイテムは転移に三十秒を要するって書いてたし、戦闘中の緊急脱出装置として使うには少し不便だな。

 とりあえず、この部屋の床いっぱいに転移魔法陣を作ったあと、《無限複製》で大量の材料を片っ端から複製して保管しておこう。

 けど、その前に……。

 部屋の隅っこに置いてある三つの木箱に目を向けると、ロロが不思議そうにそれを指差した。

「ねぇ、幸太郎。あの中には何が入ってるの?」


 蛇の内臓一式だよ☆


「ただのゴミだ。ロロは気にしなくていい」

 先にあれをどうにかしたい……。

 このまま置いとくと腐る……。

 けど、転移させるにも、あんなものどこに転移させればいいのやら……。

 川か? 川に流せば問題ないか?

 A級以下のゴミを消滅させられる〈死毒蛇の宝玉〉が残っていれば、あっという間に綺麗になったんだけど、あれはロロをクラフトする時に使ったからな……。

「ゴミ? ゴミなら、ロロ消せるよっ」

「……え? マジで?」

 ロロはてとてとと木箱に近づくと、ピシッと人差し指を伸ばし、じっと木箱を見据えて言い放った。

「ゴミはゴミ箱へ!」

 すると、指差された木箱は、一瞬黒ずんだように形を崩すと、パッと瞬く間に消え去った。

「おぉ! すげぇ! ロロは《消滅弾》も撃てるしゴミも消せるのか!」

「《消滅弾》も撃つ? 口から出せるよ?」

「そ、それはいいや……。当たったら死んじゃうから……。つーか、一回あれで死んだから……。それより他の木箱も消してくれ。あと、民家の残骸とかも一緒に」

「はーいっ!」

 ロロはゴミを見つけると、そのたびに「ゴミはゴミ箱へ!」、「ゴミはゴミ箱へ!」と繰り返し、部屋中のゴミを一掃していった。

 それ、毎回言わなきゃだめなのか……。

「全部きれいになったよっ! 褒めて!」

「おぉ、よしよし。よくやったなー。ありがとうー」

「えへへ~。ロロ頑張ったよっ」

 あれ? 俺、いつの間に天使を作ったんだろう?

『幸太郎様、お気をたしかに』


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