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はじまり
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私の大事なあの人が泣きそうな顔をしている。
白い髭に深いシワがよった顔は普段なら威厳に溢れているのに…。
深いブルーグレーのマントから伸ばされたシワだらけの手が、同じようにシワだらけの私の手を握りしめている。
そんなに泣きそうな顔をしないで、素敵なお顔が台無しよ。
私はあなたと生きて来られて幸せでした。
ちょっとした喧嘩もしたけど、すぐに仲直りして、上手くやって来たと思うの私達。
貴方はとても私のことを愛してくれて、ちょっと束縛が強いところもあったけど、とってももてる貴方にやきもちを焼いたこともあるからお互い様よね。
貴方はまだまだ長生きするかもしれないから、私が死んだらちゃんと新しい奥さんを貰って頂戴ね。
「生まれ変わっても一緒になろう。」
あら、でも私はもう充分に人生を楽しんだからもう一度生まれ変わろうとは思ってないし、あんまり転生とか信じてないのよね。
それより、出会った頃の貴方の姿がもう一度だけ見たいわ。
そう言うと、少し困った顔をして貴方は私の願いを叶えてくれる。あなたが私に合わせて少しずつ歳を取っているように姿を変えてくれていたのは分かっていた。
私だけお婆ちゃんになるのは、私が嫌がると思って。
それは、もちろん嬉しかった。だって、さすがに出会った頃のままの貴方の隣に今のしわくちゃな姿で立つのは気がひけるもの。
でも、出会った頃の貴方の姿も大好きだったの。
だから、最後に一度だけ...。
ありがとう。
にっこり微笑むとそのまま深い眠りに引っ張られどんどん落ちていった、はずだった。
私は夫に手を取られ、安らかに大往生をしたはず、だった。
それなのに!誰かに引っ張られ眠りから無理矢理起こされた。
お願いだから起こさないで。
せっかく、気持ち良く眠りにつきそうだったのに。
戻ってきて欲しい?
嫌よ!世間から隔離された生活はもう十分!
本当は、もっとお父様やお母様やお友達とももっと会いたかったの。
もちろん、夫に愛されて幸せだったけど、できれば私はもっと普通の生活がしたかったの!
叫んだところで
はっ!と夢から覚めた。
全身にじっとりと汗をかいているのが気持ち悪い。
また、前世の夢を見てしまった…。
のろのろと真っ白い肌触りの良いリネンのシーツが敷かれたベッドの上に起き上がる。
ベッドから見える周りの家具はアイボリーに金の縁取り、淡いミントグリーンの腰壁に、壁の上部は小花柄で、10代の女の子の部屋らしく可愛らしい作りだ。
そう、私は生まれ変わってしまったのだ。
しかも、前世の記憶を持って。
夢を見て寝汗をかいたので寝室に備え付けのバスルームに向かう。
バスルームも白いキャビネットに、白い浴槽。
ただしこちらは寝室と違って壁は濃淡織り混ぜたブルーのタイル張りになっていて、やはり美しい内装だ。
鏡の前に立つとちょっと疲れた顔をした16歳の女の子がうつる。
生まれ変わったはずなのになぜか以前とそっくりな顔立ち、目の色も以前と同じ深めのグリーン、唯一髪の色が以前はブルネットだったのに明るい金髪になっている。それだけで、他人から見たら別人に見えるのかもしれないけど、流石に自分には分かる。
私が、10代の頃の顔が鏡に映っている。
もっとも、私の10代の頃の姿を知っている人はもうこの世にはいないとは思う。たった一人を除いて。
私は鏡の前で、大きな溜め息をついた。
思えば、前世でも出会った瞬間、何故か私に一目惚れをしたあの人は強い酒で私を酩酊させて、その日の内に結婚の承諾をさせると、私の両親に挨拶に来たのだ。
この世で知らない人はいない大魔法使い様、しかも、絶世の美貌を持ち、王族からの信頼も厚い。そんなお方が娘を嫁に下さいと言われて断れる親はいない。父も母も大喜びで了承した。
当人である、社交界デビューしたばかりの小娘である私も、舞踏会で酔わされて美貌の大魔法使い様に結婚を申し込まれ、ヘロヘロになっているところに眩い笑顔で両親に挨拶に来た大魔法使い様に逆らえるはずもなく...。
でも、いまなら言える。
あれは完璧に犯罪だった!
今よりは少し大人だったけど、それでもまだ10代だった私は、どんどん話を進めていく周りの大人たちに抵抗もできず、あっという間に結婚式をあげて大魔法使い様の奥方になった。
もちろん、彼は私にとても優しくこれでもかと甘やかしてくれた。しかも、地位も名誉も美貌も兼ね備えた完璧といった旦那様と一緒に暮らしていて好きにならないわけはない。
婚姻後、落ち着いた頃には旦那様となった彼を私も愛するようになっていた。
そして歳を重ね、無事生涯を全うしたはずなのに。
そう、生まれ変わった私が今いるこの部屋、一見可愛らしく素朴に作られているように見えるが実は細部まで贅を尽くした作りになっているこの部屋があるのは大魔法使いのお屋敷の中にある。
つまり、大魔法使いの娘として、私は生まれ変わっていた。まあ、正確には養女だけれども...。
白い髭に深いシワがよった顔は普段なら威厳に溢れているのに…。
深いブルーグレーのマントから伸ばされたシワだらけの手が、同じようにシワだらけの私の手を握りしめている。
そんなに泣きそうな顔をしないで、素敵なお顔が台無しよ。
私はあなたと生きて来られて幸せでした。
ちょっとした喧嘩もしたけど、すぐに仲直りして、上手くやって来たと思うの私達。
貴方はとても私のことを愛してくれて、ちょっと束縛が強いところもあったけど、とってももてる貴方にやきもちを焼いたこともあるからお互い様よね。
貴方はまだまだ長生きするかもしれないから、私が死んだらちゃんと新しい奥さんを貰って頂戴ね。
「生まれ変わっても一緒になろう。」
あら、でも私はもう充分に人生を楽しんだからもう一度生まれ変わろうとは思ってないし、あんまり転生とか信じてないのよね。
それより、出会った頃の貴方の姿がもう一度だけ見たいわ。
そう言うと、少し困った顔をして貴方は私の願いを叶えてくれる。あなたが私に合わせて少しずつ歳を取っているように姿を変えてくれていたのは分かっていた。
私だけお婆ちゃんになるのは、私が嫌がると思って。
それは、もちろん嬉しかった。だって、さすがに出会った頃のままの貴方の隣に今のしわくちゃな姿で立つのは気がひけるもの。
でも、出会った頃の貴方の姿も大好きだったの。
だから、最後に一度だけ...。
ありがとう。
にっこり微笑むとそのまま深い眠りに引っ張られどんどん落ちていった、はずだった。
私は夫に手を取られ、安らかに大往生をしたはず、だった。
それなのに!誰かに引っ張られ眠りから無理矢理起こされた。
お願いだから起こさないで。
せっかく、気持ち良く眠りにつきそうだったのに。
戻ってきて欲しい?
嫌よ!世間から隔離された生活はもう十分!
本当は、もっとお父様やお母様やお友達とももっと会いたかったの。
もちろん、夫に愛されて幸せだったけど、できれば私はもっと普通の生活がしたかったの!
叫んだところで
はっ!と夢から覚めた。
全身にじっとりと汗をかいているのが気持ち悪い。
また、前世の夢を見てしまった…。
のろのろと真っ白い肌触りの良いリネンのシーツが敷かれたベッドの上に起き上がる。
ベッドから見える周りの家具はアイボリーに金の縁取り、淡いミントグリーンの腰壁に、壁の上部は小花柄で、10代の女の子の部屋らしく可愛らしい作りだ。
そう、私は生まれ変わってしまったのだ。
しかも、前世の記憶を持って。
夢を見て寝汗をかいたので寝室に備え付けのバスルームに向かう。
バスルームも白いキャビネットに、白い浴槽。
ただしこちらは寝室と違って壁は濃淡織り混ぜたブルーのタイル張りになっていて、やはり美しい内装だ。
鏡の前に立つとちょっと疲れた顔をした16歳の女の子がうつる。
生まれ変わったはずなのになぜか以前とそっくりな顔立ち、目の色も以前と同じ深めのグリーン、唯一髪の色が以前はブルネットだったのに明るい金髪になっている。それだけで、他人から見たら別人に見えるのかもしれないけど、流石に自分には分かる。
私が、10代の頃の顔が鏡に映っている。
もっとも、私の10代の頃の姿を知っている人はもうこの世にはいないとは思う。たった一人を除いて。
私は鏡の前で、大きな溜め息をついた。
思えば、前世でも出会った瞬間、何故か私に一目惚れをしたあの人は強い酒で私を酩酊させて、その日の内に結婚の承諾をさせると、私の両親に挨拶に来たのだ。
この世で知らない人はいない大魔法使い様、しかも、絶世の美貌を持ち、王族からの信頼も厚い。そんなお方が娘を嫁に下さいと言われて断れる親はいない。父も母も大喜びで了承した。
当人である、社交界デビューしたばかりの小娘である私も、舞踏会で酔わされて美貌の大魔法使い様に結婚を申し込まれ、ヘロヘロになっているところに眩い笑顔で両親に挨拶に来た大魔法使い様に逆らえるはずもなく...。
でも、いまなら言える。
あれは完璧に犯罪だった!
今よりは少し大人だったけど、それでもまだ10代だった私は、どんどん話を進めていく周りの大人たちに抵抗もできず、あっという間に結婚式をあげて大魔法使い様の奥方になった。
もちろん、彼は私にとても優しくこれでもかと甘やかしてくれた。しかも、地位も名誉も美貌も兼ね備えた完璧といった旦那様と一緒に暮らしていて好きにならないわけはない。
婚姻後、落ち着いた頃には旦那様となった彼を私も愛するようになっていた。
そして歳を重ね、無事生涯を全うしたはずなのに。
そう、生まれ変わった私が今いるこの部屋、一見可愛らしく素朴に作られているように見えるが実は細部まで贅を尽くした作りになっているこの部屋があるのは大魔法使いのお屋敷の中にある。
つまり、大魔法使いの娘として、私は生まれ変わっていた。まあ、正確には養女だけれども...。
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