大魔法使いの愛娘~もう生まれ変わるのは遠慮します!~

佐間瀬 友

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お茶会に向けて

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「リリアナ?随分疲れていないか?」
シエルが夕食の席で心配そうに聞いてくる。

はい、確かに私は疲れています。
お茶会の招待状を数十通書き終えたばかりなので。
でも、何でも人並み以上にできるシエルにそれを言っても理解されなさそうなので止めておきます。

「大丈夫です。それよりご自分宛にも相当数の招待状が届いたのでは?」
私にあれだけ届いたのだからシエルにはもっとたくさんの手紙が来たはず。

「ああ、私宛のものは全て処分させたから問題ない。」

「え?全て?」

「茶会など行く暇も興味もないからな。ただ、もしリリアナが行きたい夜会があればエスコートするが?」

いいえ、当分お茶会の事でいっぱいいっぱいです。

「今のところ大丈夫です。それより、来週から数回、自宅でお茶会を開きたいのですが。」

「ああ、パトリックから聞いている。」

「まあ、そうですか。パトリックにいてもらって本当に助かりました。」
本当に何から何まで仕事ができて助かってしまう。

「そうか、それは良かった。ところで、ドルトン侯爵の令嬢は呼ぶことになっているのか?」

へ?ドルトン侯爵?
確か、最終日のお茶会にお呼びすることになっていたと思うけど。侯爵家のご令嬢は数が少なかったし、最後に書き上げた招待状だったから覚えていた。

「はい、最終日のお茶会にお呼びすることになっていますが?」

「そうか。」

「何か問題でもありましたか?」

「いや、特に問題はない。」
それ以上何も言わず夕食を終えると、さっさと自室に行ってしまった。

何でしょう?
シエルが余所の令嬢の事を気にするなんて初めてで、驚きすぎて何も聞けなかった。




翌日、私が苦労して書いた招待状の返事が、午後から届き始めた。

「早すぎない?!今朝、送ったばかりよね?!」
どれだけ、直ぐに返事を書いて使用人に届けさせたのかしら?

「それだけ、皆さま楽しみにしていらっしゃったのですよ!」
マリーがウキウキしながら、お茶会で使用するテーブルクロスに、食器、お茶菓子の内容などと説明してくれる。

反対側ではサンドラが私が着る服を吟味している。
「旦那様に言ったら直ぐに新しいドレスを作ってくださるのに。」
彼女としては今あるものから選ぶのが不本意らしい。

「そうよね。旦那様のお嬢様に対する溺愛ぶりは、見ているこちらが照れてしまいます。」
マリーが何故か顔を赤らめて言う。

「それは、娘だからでしょう?」

「それはそうですけど!だいたい、旦那様が笑顔を向けるのって明確にお嬢様限定ですよね。私達には礼儀正しく接してくださいますけど、ほとんど表情変わりませんし。」

「そこも素敵ですけど…」
サンドラがボソッと呟く。

「確かに~!」

サンドラ?!マリー?!

「本当に旦那様がお若いから、お二人でいると美男美女の恋人同士にしかみえないですよね。」

何か話が怪しい方向に進みそうなので、無理やり元に戻す。


「で、でも、お茶会は数日続くのよ。サンドラは毎日私の衣装を変えるつもりなの?」

「当たり前です!ぜったい、お嬢様が着ていた衣装についてとか、どんなお茶菓子が出たとか、噂になるに決まっています。同じ衣装を着るなんあり得ません!」
う、サンドラが怖い。

「そんなに何枚も新調してももったいないわよ。だいたい今からでは間に合わないでしょ?」

「でも、今後出掛けることが増えることも考えて、やはり昼間に着るドレスを何着か新調するべきです。」
サンドラも引かない。

まあ、確かにお茶会が成功したら新しくお友達もできて、出掛けることが増えるかもしれない。
ぜひ、そうなって欲しい。

「先日ドレスをお願いしたマダムローズモンドは、いかがでした?」
マリーが聞いてくる。

「とても、素敵だったわよ?」なかなか個性的なマダムだったけど。
それを聞いて、マリーとサンドラが目と目をかわす。
何かしら?

「実は、私とサンドラ、マダムとすごく話が合ってしまって、最近もマダムのお店に行ってきたんです!」

え?そんなに仲良くなっていたの?
いつの間に?!

「それで、マダムがお嬢様の姿に創作意欲を刺激されて、既に色々デザインされているんです!」
マリーが続ける。

「そうなんです!私も見せて頂いたんですが、どれも素敵でした!」
いつも冷静なサンドラまで興奮ぎみに迫ってくる。

「…。そ、そうなの?」

ウンウンと二人同時に頷く。

「え~と、それってつまり?」

「これから、マダムのお店に行ってちょっと補正さえしていただければ、直ぐに必要なドレスが何着かご用意してもらえると思います。」
マリーがにっこり笑いながらもはっきり言い切った。

「え、でもマダムはとっても人気のある方だと聞いているし、迷惑ではなくて?」

「大丈夫です!むしろ大喜びで仕上げてもらえると思います!」
はい、わかりました。
家にいても私のやることは無さそうですし、大人しく行ってきます。
別に私だって女の子なのだし可愛いドレスや小物は大好きだけど。
ただ、熱量がマリー達に敵わないだけで。

「分かったわ。じゃあ、ハインツに馬で街に出掛けるからと声を掛けてもらえる?」

シエルから出掛ける時は護衛にハインツを連れていくように言われていて、買い物や先日のように乳母の家に行く時など着いてきてもらう。
そうそう。どうせ、出掛けるなら招待状でかなり使った、封筒と便箋も補充したいので文具店も寄ってこよう。

「馬で行かれるんですか?」

「ええ、今日はドレスの手直しだけでしょ?もし時間があったら文具店も寄りたいけど、たいした荷物にはならないでしょうし。」

かしこまりましたと告げて、ハインツに声を掛けにマリーが部屋を出ていくと、サンドラが私の身支度を整えてくれる。
街に行くのにあまり華美にする必要はないから、今着ている簡素なドレスに、スカートまですっぽり被ってくれる長い丈の乗馬用コートを羽織って、ブーツを履けば準備は完了だ。

ちなみに、この国の淑女達は嗜みとしてダンスと同じように乗馬も子供の頃から習う。ただし、そこは普段あまり活動的ではない貴族の子女だから、乗馬に関してはある程度ゆっくりした速度で乗れるようになれば良いという人も多い。

むしろ、私のように馬で屋敷の裏庭を疾走する女子の方が少ないかもしれない。
実際、前世の私は今の私ほどは乗馬は上手くなかったと思う。


屋敷を出るとポーチの階段下でハインツが自分の馬と私の馬を二頭連れて待っていた。
「ありがとう、ハインツ。」

横に置かれた台を使って自分の馬に跨がる。
これが、なかなか難しい。男性は台など必要もなく鐙に足を掛けて上がれるけど、ドレス姿の女性は裾が捲り上がらないように上手く跨がらなくてはいけない。
風でドレスの裾が捲り上がらないように、ドレスの上から乗馬用の少し厚みのあるコートも羽織っている。

「行き先は、マダムローズモントのお店で良いですか?」

「ええ、その後時間があったら文具店も寄りたいわ。」

「了解です。」
そう答えるとハインツが自分の馬に跨って少し先を歩きだす。
私もそのすぐ後ろに続いた。


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