大魔法使いの愛娘~もう生まれ変わるのは遠慮します!~

佐間瀬 友

文字の大きさ
28 / 52

明かされた真相

しおりを挟む
「リリアナ。」
元マティが私の方を向いて呼びかける。
ソファの前のカーペットに座り込んだままの私にも、ハルとこの人の話から何となく想像はついた。
たぶんこの人は...。

「あなたは、精霊王マティウス様?」

「まあ、そう呼ばれている。でも、リリアナにはマティと呼ばれたいね。」そう言って、私に手を差し出した。

優しい涼やかな、ただし有無を言わせぬ声で言われれば、「はい。」と頷くしかない。躊躇しつつもその手を取ると、軽々と引っ張り立ち上がらせてくれる。
不思議、精霊の王様に触れるなんて!
今まで、精霊を見ることも出来なかったのに。

「色々と聞きたいこともあるだろうから、その二人を起こすのは後にしようか。」

アデリーナ様とパトリックはまだぐっすりと眠っていた。
確かに、色々と聞きたいことだらけだ。

マティに手を引かれて、二人が寝ているのとは反対側のソファに並んで腰掛ける。

「でも屋敷の人たちがこの部屋に来て貴方を見たら、驚くのではないでしょうか?」

腰まである長い銀髪に人間離れした中世的な美貌、着ている服は薄いドレープがたっぷり入った布を幅広のベルト状の布で腰のあたりを縛っただけの古風な恰好。確かに神殿の天井画に描かれた精霊たちはこんな服を着ていたから、あの絵の描写は正しかったのね。

「大丈夫。今は、この家中の人間が眠りについている。」

なるほど、だから誰も来なかったのか。
とりあえず、後できちんと起こしてもらえるなら先に色々と話を聞かせえもらうことにしよう。

「私には精霊が見えないはずなのになぜマティウス様、じゃなくて…マティが見えるのですか?」

この神々しい精霊王をマティと呼び捨てにするのはかなり勇気がいる。

「それは、私の力が強いからだね。姿を視えなくすることもできるよ。」

そう言って眩い笑顔でにっこりと笑うと、一瞬姿が透けて消えてしまいそうになって、またはっきりとした姿で私の隣に座っていた。

なるほど、精霊王ともなればこんな風に自由自在に消えたりもできるのね。

「では先程のハルも力の強い精霊なのですか?」
果たして精霊なのかどうか、シエルと同じような魔法使いという可能性もあるけれど。

「ああ、南方の精霊だ。私よりだいぶ若いがあの地方では一番力がある精霊だろう。特に彼の場合は人間の姿をとっていたから誰にでも見えた。猫のマティも皆に見えるだろう?」

確かに猫のマティは私だけではなく皆にも見えた。




「まあ、潮時だろう。最初から説明しよう。」

そう言ってマティが私の隣に腰かけて語った事実は驚きの連続だった。

「まず、リリアナ、君がシエルの奥方の生まれ変わりだということはシエルも分かっている。なぜなら、君を生まれ変わらせたのは他でもないシエルだからね。」


なんと、私が前世で死ぬだいぶ前からシエルは私を生まれ変わらせようと計画を練っていたらしい。
普通、人間が同じ人間を生まれ変わらせるなんてできるはずはない。だけど、大魔法使いシエルはそれをやり遂げてしまった。

計画には膨大な魔力と精霊王の力が必要だった。
前世でも精霊たちに好かれていたらしい私がこの世から居なくなることを良しとしない精霊達を使って、精霊王であるマティに懇願させた。

「まあ、私もリリアナにもう一度会いたかったしね。」

私が死んだ時、既に生まれ変わらせる準備は整っていたらしい。

「ちなみに今のリリアナの髪の色が違うのは、前世でリリアナが金髪に憧れていたからだよ。それ以外はそっくりに出来たと思うんだ。」

マティはまるで工作が上手くできたと満足する子供のようにちょっと誇らしげに言った。なるほど、確かに黒髪だった私は金髪に憧れていたかも。思わず自分の髪の毛をひと房掴むとまじまじと見てしまう。

とにかく、大魔法使いと精霊王、この二人によって人をひとり赤ん坊に生まれ変わらせることに成功したけど、これによって魔力を使いきってしまったマティには休息が必要になった。私の側やシエルの近くに居るのが良いだろうと言うことで、力が戻るまで猫の姿で我が家の一員として居ることなったらしい。

「ほら、リリアナの側は精霊にとって居心地が良くて力が戻るのも早かったからね。」
居心地が良い。リカルドにも言われたけど、それは精霊王でも一緒なのね…。

「でも、ご自分の神殿があるのですからそちらの方が寛げるのではないのでしょうか?」

直ぐそこに自分を奉っている神殿があるのだから。

「まあ、神殿と言っても私たちが暮らす森の入口になっているだけだがね。」

「森?神殿の奥は森になっているのですか?」
普通の人間は神殿の奥には入ることができない。
中がどうなっているのかは分からない。

「ああ、そうだよ。だから時々、森へ帰ってもいたよ。」
なるほど、だから神殿の辺りに出没していたわけだ。

「それで、リリアナはいつから前世の記憶があったんだい?私が気付いたのはつい最近なのだがね。」

確かに、猫のマティの前ではまさか誰かに聞かれているとは思わなかったので、独り言を言っていたかも。きっとそれを聞かれたのだろう。

まあ、今さら隠してもしょうがない。

「朧気ではありますが、恐らく3歳ぐらいからだと思います。」

「そんなに幼いころから?それは、全く気が付かなかった。」
よく、隠し通したものだと感心した声でマティがつぶやいた。

「最初は夢の中の出来事だと思っていました。」
「なるほど、でも夢の話を誰にも話さなかったのかい?シエルは夢の話を聞きたがっていただろう?」
「乳母には話したかもしれませんけど、そのうち前世の記憶だと分かったので。さすがに誰にも話しませんでした。」

頭がおかしい子だと思われてこの家を追い出されても困る。まあ、前世を思い出すにつれてシエルにはばれない方が良いと思うようになったから、気を付けるようにしていたけど。

それにしても、シエルがこの生まれ変わりの張本人だったとは。
「でも、なぜシエルは私に教えてくれなかったのでしょうか?」
私に隠す理由は何だったのだろう?

「一番の理由は、君が記憶を取り戻しているか確信が持てなかったからだ。いきなり記憶がない君にそんなことを言っても混乱させるだけだろうし、信じてもらえないからね。」

まあ確かに、記憶がなかったら、いきなり「君は生まれ変わりなんだ。」と言われても、普通はこの人頭がおかしいんじゃない?と思われるのがおちだろう。


「シエルは君が記憶を取り戻すのを待っていたんだ。よく夢の話を聞きたがっていただろう?」

なるほど、前世の記憶を夢で見ていないか知りたかったのね。
でも私は隠し通した。つもりだったのに。

「私が記憶を取り戻していることをシエルに話すのですか?」
たぶん、まだ彼はシエルに話していないような気がする。

「そうだね。黙っている理由は特にないような気がするけど?」

「黙っていていただけませんか?」

「なぜ?シエルは君が記憶を取り戻すのをずっと待っていたのに?」

「...。私は生まれ変わりたくなんかなかったと言ったら?」
私はそんなことは頼んでいない。寿命を全うして満足していた。
それはシエルだって分かっていると思っていたけど。

「リリアナ?」

だいたい、私に一言の相談もせずに私を生まれ変わらせる計画を立て実行した時点で私に反対されるであろうと予想していたのは明らかだ。
本人に断りもなく、無理やり生まれ変わらせるなんて!

なんか沸々と怒りが湧きあがってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

弁えすぎた令嬢

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
 元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。  彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。  彼女は思った。 (今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。  今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。  小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...