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リリアナの思い
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「なぜ、記憶があることを黙っていた?」
「……。」
なぜ、と聞く前になぜ生まれ変わらせたのかの説明はないのだろうか。たぶん私は今、侯爵令嬢らしからぬ不貞腐れた顔をしているに違いない。
「やはり、私がかなり年が離れているのが嫌なのか?」
「え?いいえ?それについてはあまり気にしたことはありませんでしたが?」
何を突然言い出すのか。
「そうなのか?」
「はい。」
シエルが思いがけないことを聞くのでつい素直に答えてしまったけど、本当にそれについては気にしたことがなかった。だいたい年が離れていると言ってもシエルの実年齢が全く分からないので、逆に気にならなかったし、何というか、ちょっと浮世離れしたところはむしろ幼く見えて可愛いと...。
「じゃあ、何がいけないんだ?!...まさか!他に好きな男が居るのか?!」
いやいやいや、そういう話ではなくて。
「いえ、そういうことではなくて...。」
「なくて?」
う~ん、これは最初から言った方が良いのだろうか?
そうね、もうここまで来たらはっきりと言った方が良いのかもしれない。少し逡巡してから思い切って話し出した。
「……私たちが、初めて出会ってから結婚するまでどれくらいだったか覚えていますか?」
「...?」
「10日間です。普通、貴族の娘は結婚するのに婚約期間も含めて数年かけるのが普通です。それなのに、初めて会って既成事実を作って、次の日には両親に挨拶して周囲を丸め込んで、両親や友達との別れを惜しむ暇もなく、10日後には新居に連れていかれて、しかもそこからはほとんど人里離れた屋敷内に監禁状態でした!」
ああ、今思い出しても腹が立つ!思わず声が大きくなってしまった。
「リリアナ?」
今までシエルにはもちろん、誰にもこんなふうに不満を言ったことはなかった。前世でも侯爵令嬢としてきちんと躾けられたため、高名な大魔法使いであり自分の夫となったシエルに不満を言うことはいけないことだと思っていた。
しかも、愚痴を言い合うような友人もいなかったのだから。
シエルが唖然としているのは分かっていたけど、一度話し出したら止まらなかった。きっと、自分で思っていた以上に鬱憤が溜まっていたのかもしれない。
「確かにあなたはとても優しく接してくださいましたし、生活に不自由があったわけでもありません。社交界には出られませんでしたが、それはあなたがそういった場をあまり好まれないから仕方がないと思っていましたし、私の為にお庭を作ってくださったり、珍しい本を手に入れてくださったりと私が田舎でも飽きないように気を配ってくださっていたのは感謝しています。」
ここまで一気に話して、一呼吸つく。
「でも、あれはやっぱり今思っても監禁でしたし、生まれ変わってまで二度と同じ生活をしたいとは思いません!!」
私が高らかに言い放つと、シエルは何も言えずに黙り込んだ。
それにしても、ああ、すっきりしたわ!言ってやった!
シエルは唖然としていつもの自信満々の態度は見る影もない。
ちょっと、気の毒に思ったがここで丸め込まれては元の木阿弥だ。ここは心を鬼にして見ない振りをする。
「...だから、止めとけと言ったのに。」
木の根元に腰掛けたマティがボソッと呟いた。
「でも、でも...。そうでもしないとリリアナを誰かに取られてしまうかもしれないじゃないか...。」
まだ言うか!私は子供の玩具じゃない!
「だからと言ってやりようがあるだろうに...。」
呆れたように言うマティの言葉に思わずうんうんと頷いてしまう。生まれ変わらせるのはやりすぎですよね。
「だから!今回は王都に屋敷を構えてきちんと社交デビューもさせたし、出かけるのも制限していないじゃないか!」
なるほど、だから今は住まいが王都にあってお城できちんと働いていたのね。
一応、その辺りは反省したらしい。
「だからって、無理やり転生させるなんて!私は生涯を全うして大往生したんです!それなのに!」
そういうところが結局分かっていないんじゃない!
「でも、リリアナの存在を知ってしまったら、もうこの先の時間リリアナ無しでなんて生きていけない。」
そう言うとシエルは近くの切り株の椅子のひとつに力尽きたようにドサッと腰かけて頭を抱えた。
「そんな大袈裟な...。」
どんな夫婦だって、どちらかが先に死ぬものだし。
「まあ、こいつは人の何倍も生きなくてはならないんだ。私は人間ではないからそういった感情はよく分からないが、普通の人間よりは色々と背負うものも多いのではないかな。特にこういった人間にはお前みたいな存在は稀有で貴重なんだよ。」
むうっ、シエルと共犯のマティに諭されるのも何か納得いかないけど言っていることは何となく分かる。それにしても、マティってば精霊なのに意外と常識的なことを言うのね。と変に感心してしまった。
確かにリカルドも同じようなことを言っていたけど。
魔法使いは人間より精霊に近いところがある。ちょっと信じがたいところもあるけど私のような空気を持つ人間には無条件に惹かれてしまうと。
「私もそうなんだが、精霊やこいつのような存在はリリアナの様な稀有な人間には否応なしに惹かれてしまう。まして、お前達は前世で夫婦だったわけだし、こいつが執着するのも仕方がないことなんだろうな。」
「だから私を転生させる手伝いをされたのですか?」
マティに聞いてみる。だって、いくらシエルに頼まれた(脅された?)からって自分の姿を保てないほどの力を使って?
「う...。まあ、私も精霊達にも泣きつかれてな。」
マティは気まずそうに言葉に詰まりつつも、シエルだけではなく周りの精霊たちにもせっつかれたらしいことを暴露する。
なるほど、まあ恐らく転生させるという案を出してきたのはシエルかもしれないけど、それにノリノリで力を貸したのはマティと精霊達なのだろう。
「リリアナに会うまで私は既に長く生きてきていた…。」
椅子に腰かけて項垂れたままのシエルがいきなりとつとつと話し出した。
「この力と魔力のお陰で生きていくことに困りはしなかったよ。」
不思議なことに椅子に腰かけたシエルの姿が少しずつ小さくなっていく。
「…。」
「……。」
なぜ、と聞く前になぜ生まれ変わらせたのかの説明はないのだろうか。たぶん私は今、侯爵令嬢らしからぬ不貞腐れた顔をしているに違いない。
「やはり、私がかなり年が離れているのが嫌なのか?」
「え?いいえ?それについてはあまり気にしたことはありませんでしたが?」
何を突然言い出すのか。
「そうなのか?」
「はい。」
シエルが思いがけないことを聞くのでつい素直に答えてしまったけど、本当にそれについては気にしたことがなかった。だいたい年が離れていると言ってもシエルの実年齢が全く分からないので、逆に気にならなかったし、何というか、ちょっと浮世離れしたところはむしろ幼く見えて可愛いと...。
「じゃあ、何がいけないんだ?!...まさか!他に好きな男が居るのか?!」
いやいやいや、そういう話ではなくて。
「いえ、そういうことではなくて...。」
「なくて?」
う~ん、これは最初から言った方が良いのだろうか?
そうね、もうここまで来たらはっきりと言った方が良いのかもしれない。少し逡巡してから思い切って話し出した。
「……私たちが、初めて出会ってから結婚するまでどれくらいだったか覚えていますか?」
「...?」
「10日間です。普通、貴族の娘は結婚するのに婚約期間も含めて数年かけるのが普通です。それなのに、初めて会って既成事実を作って、次の日には両親に挨拶して周囲を丸め込んで、両親や友達との別れを惜しむ暇もなく、10日後には新居に連れていかれて、しかもそこからはほとんど人里離れた屋敷内に監禁状態でした!」
ああ、今思い出しても腹が立つ!思わず声が大きくなってしまった。
「リリアナ?」
今までシエルにはもちろん、誰にもこんなふうに不満を言ったことはなかった。前世でも侯爵令嬢としてきちんと躾けられたため、高名な大魔法使いであり自分の夫となったシエルに不満を言うことはいけないことだと思っていた。
しかも、愚痴を言い合うような友人もいなかったのだから。
シエルが唖然としているのは分かっていたけど、一度話し出したら止まらなかった。きっと、自分で思っていた以上に鬱憤が溜まっていたのかもしれない。
「確かにあなたはとても優しく接してくださいましたし、生活に不自由があったわけでもありません。社交界には出られませんでしたが、それはあなたがそういった場をあまり好まれないから仕方がないと思っていましたし、私の為にお庭を作ってくださったり、珍しい本を手に入れてくださったりと私が田舎でも飽きないように気を配ってくださっていたのは感謝しています。」
ここまで一気に話して、一呼吸つく。
「でも、あれはやっぱり今思っても監禁でしたし、生まれ変わってまで二度と同じ生活をしたいとは思いません!!」
私が高らかに言い放つと、シエルは何も言えずに黙り込んだ。
それにしても、ああ、すっきりしたわ!言ってやった!
シエルは唖然としていつもの自信満々の態度は見る影もない。
ちょっと、気の毒に思ったがここで丸め込まれては元の木阿弥だ。ここは心を鬼にして見ない振りをする。
「...だから、止めとけと言ったのに。」
木の根元に腰掛けたマティがボソッと呟いた。
「でも、でも...。そうでもしないとリリアナを誰かに取られてしまうかもしれないじゃないか...。」
まだ言うか!私は子供の玩具じゃない!
「だからと言ってやりようがあるだろうに...。」
呆れたように言うマティの言葉に思わずうんうんと頷いてしまう。生まれ変わらせるのはやりすぎですよね。
「だから!今回は王都に屋敷を構えてきちんと社交デビューもさせたし、出かけるのも制限していないじゃないか!」
なるほど、だから今は住まいが王都にあってお城できちんと働いていたのね。
一応、その辺りは反省したらしい。
「だからって、無理やり転生させるなんて!私は生涯を全うして大往生したんです!それなのに!」
そういうところが結局分かっていないんじゃない!
「でも、リリアナの存在を知ってしまったら、もうこの先の時間リリアナ無しでなんて生きていけない。」
そう言うとシエルは近くの切り株の椅子のひとつに力尽きたようにドサッと腰かけて頭を抱えた。
「そんな大袈裟な...。」
どんな夫婦だって、どちらかが先に死ぬものだし。
「まあ、こいつは人の何倍も生きなくてはならないんだ。私は人間ではないからそういった感情はよく分からないが、普通の人間よりは色々と背負うものも多いのではないかな。特にこういった人間にはお前みたいな存在は稀有で貴重なんだよ。」
むうっ、シエルと共犯のマティに諭されるのも何か納得いかないけど言っていることは何となく分かる。それにしても、マティってば精霊なのに意外と常識的なことを言うのね。と変に感心してしまった。
確かにリカルドも同じようなことを言っていたけど。
魔法使いは人間より精霊に近いところがある。ちょっと信じがたいところもあるけど私のような空気を持つ人間には無条件に惹かれてしまうと。
「私もそうなんだが、精霊やこいつのような存在はリリアナの様な稀有な人間には否応なしに惹かれてしまう。まして、お前達は前世で夫婦だったわけだし、こいつが執着するのも仕方がないことなんだろうな。」
「だから私を転生させる手伝いをされたのですか?」
マティに聞いてみる。だって、いくらシエルに頼まれた(脅された?)からって自分の姿を保てないほどの力を使って?
「う...。まあ、私も精霊達にも泣きつかれてな。」
マティは気まずそうに言葉に詰まりつつも、シエルだけではなく周りの精霊たちにもせっつかれたらしいことを暴露する。
なるほど、まあ恐らく転生させるという案を出してきたのはシエルかもしれないけど、それにノリノリで力を貸したのはマティと精霊達なのだろう。
「リリアナに会うまで私は既に長く生きてきていた…。」
椅子に腰かけて項垂れたままのシエルがいきなりとつとつと話し出した。
「この力と魔力のお陰で生きていくことに困りはしなかったよ。」
不思議なことに椅子に腰かけたシエルの姿が少しずつ小さくなっていく。
「…。」
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