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悦子 二
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「実は私、相馬と駆け落ちをするつもりでした。
たったひとりの身内である姉が、どうしても相馬との結婚を認めてくれず、身重だと分かった途端、勤めておりましたカフェーを追い出されてしまいまして……。
姉を捨てるから、何処かへ二人で逃げようと私が申しましたら、その時は躊躇しておりましたけれど、二日後、つまりは今から四日前、決心したから。と。
約束では昨日、姉が仕事に出ましたら、相馬が迎えに来てくれることになっていました。
が、待てど暮らせど、一向に姿を見せません。
それで今日、いつも会っている家に行ってみたのですが、貸家の張り紙が……」
「いつも会っている?
つまりその部屋は、相馬さんの住まいではないのですね?」
「はい。二人だけで会うのに借りてくれた一軒家です。
私は鍵を持ってはおりませんで、その部屋の郵便受けに、何日の何時に。と、書いた紙を相馬が入れて、私がそれを確認して会っていたのです」
まさに密会である。
「相馬さんのお仕事は?」
「自分で会社を興しているとは聞きましたが、詳しくは……。
あまり女が仕事に口を出すものではないと言われましたので……」
この様子では、金を貢がされてはいないらしい。
酒井が騙した婦人の中に、職業婦人はいなかった。皆、月本銀行にそれなりの財産を持っている婦人ばかりであったのだ。
悦子はどう見てもお下がりの着物を身に着けており、金銭の余裕があるようには見えない。
馴れ初めなどを聞くと、悦子が勤めていたカフェーに客として現れた酒井に、簡単に言えば口説かれたらしい。
まずはそれが、悦子の姉、勝子にとって気に入らないようだ。
「姉は、自分よりも先に妹の私が結婚しようとするのが何より、気に入らないのです。
父母を亡くしてから、十一年の離れた姉が私を育ててくれました。それは感謝しておりますけれど……」
「姉様と相馬さんは面識ありますか?」
「一度、会って貰いましたけど、けんもほろろでした。兎に角別れろ。の一点張りで」
「どうやって会わせたのでしょう?」
「私と姉が出かけた先に、酒井が待っておりまして、偶然会った風を装って……」
「それは、貴女の希望で? それとも」
「相馬が、姉を説得したいから。と申しましたので……」
念の為に特徴を聞いたが、やはり、酒井進であるらしかった。
たったひとりの身内である姉が、どうしても相馬との結婚を認めてくれず、身重だと分かった途端、勤めておりましたカフェーを追い出されてしまいまして……。
姉を捨てるから、何処かへ二人で逃げようと私が申しましたら、その時は躊躇しておりましたけれど、二日後、つまりは今から四日前、決心したから。と。
約束では昨日、姉が仕事に出ましたら、相馬が迎えに来てくれることになっていました。
が、待てど暮らせど、一向に姿を見せません。
それで今日、いつも会っている家に行ってみたのですが、貸家の張り紙が……」
「いつも会っている?
つまりその部屋は、相馬さんの住まいではないのですね?」
「はい。二人だけで会うのに借りてくれた一軒家です。
私は鍵を持ってはおりませんで、その部屋の郵便受けに、何日の何時に。と、書いた紙を相馬が入れて、私がそれを確認して会っていたのです」
まさに密会である。
「相馬さんのお仕事は?」
「自分で会社を興しているとは聞きましたが、詳しくは……。
あまり女が仕事に口を出すものではないと言われましたので……」
この様子では、金を貢がされてはいないらしい。
酒井が騙した婦人の中に、職業婦人はいなかった。皆、月本銀行にそれなりの財産を持っている婦人ばかりであったのだ。
悦子はどう見てもお下がりの着物を身に着けており、金銭の余裕があるようには見えない。
馴れ初めなどを聞くと、悦子が勤めていたカフェーに客として現れた酒井に、簡単に言えば口説かれたらしい。
まずはそれが、悦子の姉、勝子にとって気に入らないようだ。
「姉は、自分よりも先に妹の私が結婚しようとするのが何より、気に入らないのです。
父母を亡くしてから、十一年の離れた姉が私を育ててくれました。それは感謝しておりますけれど……」
「姉様と相馬さんは面識ありますか?」
「一度、会って貰いましたけど、けんもほろろでした。兎に角別れろ。の一点張りで」
「どうやって会わせたのでしょう?」
「私と姉が出かけた先に、酒井が待っておりまして、偶然会った風を装って……」
「それは、貴女の希望で? それとも」
「相馬が、姉を説得したいから。と申しましたので……」
念の為に特徴を聞いたが、やはり、酒井進であるらしかった。
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