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接吻 二
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対して園子の声は弱々しい。
「貴方も他に気に入った方がいらしたら……」
「私は、私は百合子様だけが」
怯えた声に、満足そうな笑い声が重なり、やがて静寂が訪れた。微かに、衣擦れの音だけが聞こえる。
何をしているのだろうかと、覗く為、足を一歩踏み出すと、緊張していたせいだろうか、音をたててしまった。
振り向いた園子の、怯えた目。
「ごめんなさい、お待たせしてしまったわね」
何事もなかったかのように、百合子は園子に顔を向けた。
「貴方、教室に戻ってらっしゃい」
落ち着いた態度で園子に命令すると、圭に笑いかけた。
「来て下さって嬉しいわ」
園子は圭を気にしい気にしい、逃げる様に去って行った。初めて見る、気弱な表情だった。
園子が怯えているのは、圭の行動だろう。今、Sはどこの女学校でも問題になっている。
良妻賢母を育てるのが目的の女学校で恋愛ごっこは当然、教師、身内共に歓迎するべきことではない。との情報は隼人からのものであるが、中学でも勿論、Bが問題になっていたので、理解はできる。
もしも圭が、今、ここで見た事を教師に告げたなら、どうなるか。
華族令嬢であり、特に目立つ二人が、人気のない場所で唇を交わしていたと知られれば、黙ってはおるまい。まず、互いの両親に注意が行くだろう。
気の強そうな園子が怯えるのは、退学だろう。そして、百合子と二度と会えなくなるであろう未来。
「お顔が赤いわ」
からかうような声に、更に、自らの顔に熱が加わるのを感じた。
「お可愛らしいのね、華子様。
さっきご覧になられた事、内緒にしていて下さるでしょう? ね」
ゆっくりと顔を近づけて来る。
圭は咄嗟に百合子の肩を突くと、一歩後退った。
「ふざけないで下さい」
「あら、内緒のお礼にと思いましたのに」
「私、お姉様ごっこに興味などありませんわ」
じっと、百合子の視線が圭に注がれる。
「そうでしたわね。あんなに素敵な許婚者がおいでですものね。
長瀬様となさったことはお有り?」
自らの唇を人差し指で突く。
「ありません。お花を頂いたばかりですわ」
父親が、母親によく、花束を送っていたのを思い出して思わず口にした言葉は、百合子の表情を和らげた。
「やはりあの方は紳士だわ」
やけに嬉しそうで、可愛らしい笑顔だった。
「貴方も他に気に入った方がいらしたら……」
「私は、私は百合子様だけが」
怯えた声に、満足そうな笑い声が重なり、やがて静寂が訪れた。微かに、衣擦れの音だけが聞こえる。
何をしているのだろうかと、覗く為、足を一歩踏み出すと、緊張していたせいだろうか、音をたててしまった。
振り向いた園子の、怯えた目。
「ごめんなさい、お待たせしてしまったわね」
何事もなかったかのように、百合子は園子に顔を向けた。
「貴方、教室に戻ってらっしゃい」
落ち着いた態度で園子に命令すると、圭に笑いかけた。
「来て下さって嬉しいわ」
園子は圭を気にしい気にしい、逃げる様に去って行った。初めて見る、気弱な表情だった。
園子が怯えているのは、圭の行動だろう。今、Sはどこの女学校でも問題になっている。
良妻賢母を育てるのが目的の女学校で恋愛ごっこは当然、教師、身内共に歓迎するべきことではない。との情報は隼人からのものであるが、中学でも勿論、Bが問題になっていたので、理解はできる。
もしも圭が、今、ここで見た事を教師に告げたなら、どうなるか。
華族令嬢であり、特に目立つ二人が、人気のない場所で唇を交わしていたと知られれば、黙ってはおるまい。まず、互いの両親に注意が行くだろう。
気の強そうな園子が怯えるのは、退学だろう。そして、百合子と二度と会えなくなるであろう未来。
「お顔が赤いわ」
からかうような声に、更に、自らの顔に熱が加わるのを感じた。
「お可愛らしいのね、華子様。
さっきご覧になられた事、内緒にしていて下さるでしょう? ね」
ゆっくりと顔を近づけて来る。
圭は咄嗟に百合子の肩を突くと、一歩後退った。
「ふざけないで下さい」
「あら、内緒のお礼にと思いましたのに」
「私、お姉様ごっこに興味などありませんわ」
じっと、百合子の視線が圭に注がれる。
「そうでしたわね。あんなに素敵な許婚者がおいでですものね。
長瀬様となさったことはお有り?」
自らの唇を人差し指で突く。
「ありません。お花を頂いたばかりですわ」
父親が、母親によく、花束を送っていたのを思い出して思わず口にした言葉は、百合子の表情を和らげた。
「やはりあの方は紳士だわ」
やけに嬉しそうで、可愛らしい笑顔だった。
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