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新聞
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しばらく訪れていなかった事務所は、少々埃っぽかった。掃き清め、拭き清め、二時頃、綺麗になった事務所で、遅くなった昼食を摂る。
近くの店で買って来たパンを片手に、一緒に買って来た新聞を読む。全て三流紙である。近くの荒物屋に毎日、取り置いて貰っているのだ。
「長瀬さん、ここに八田伯爵家の醜聞が」
今日付の朝刊だった。華族の醜聞を得意とする新聞である。
圭から渡された新聞には、育夫の写真が載っていた。
『厭な男でしたお前とは身分が違うんだと何度も何度も言われました帰り際金を要求したら蒲団の上に放り投げて寄越しましたあの男は女も少女も好きだと言いました少女だけを置いている売春宿によく行っていると言いました少年も好きで売春窟で漁るのだと言ってました僕は今まであんな下衆な客を見たことはありません』
最近の華族の素行の悪さを怒る文章の後に、少年の言葉が載せられていた。
「全く、これは色々な意味で酷いな。少年や少女を買うなんて、大人として最低だ。
しかも、まるで八田育夫を生粋の華族のように書いているが、奴は入り婿だ。華族にしてみれば濡れ衣を着せられた状態だな」
「こんなにはっきりと写真や名前まで」
「この手の新聞は強かだからね。うっかり文句を言おうものなら、それをまた、記事にされる。脛に傷持つ身なら、黙っている方が利口だ」
「でも、あの人なら言いに行きそうです」
「だろうね。奴は身に覚えがあればあるほど、否定する。
あ、れ?」
『昨日早朝に殺された遊女を買った学生は所持品の根付けを落としていった。持ち主を調べたところ元男爵の物だと分かった。この元男爵とんだ不良で上級生を誘惑してその気にさせると相手にしなくなると噂で……』
途中で読むのを止めた。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
振り向くと、圭の目は怒りを表していた。
圭は中性的な美貌の持ち主であるから、寧ろ、狙われない方が不思議である。記事の内容は、完全な噓では無いだろう。
上級生はその気になっただろうし、圭は相手にしなかっただろう。その事実に、誘惑の漢字二文字を組み合わせると、醜聞のできあがりだ。
「読ませて下さい」
新聞を食い入るように読んでいる。
隼人も横から続きを読んだが、ただ、呆れるばかりだった。
近くの店で買って来たパンを片手に、一緒に買って来た新聞を読む。全て三流紙である。近くの荒物屋に毎日、取り置いて貰っているのだ。
「長瀬さん、ここに八田伯爵家の醜聞が」
今日付の朝刊だった。華族の醜聞を得意とする新聞である。
圭から渡された新聞には、育夫の写真が載っていた。
『厭な男でしたお前とは身分が違うんだと何度も何度も言われました帰り際金を要求したら蒲団の上に放り投げて寄越しましたあの男は女も少女も好きだと言いました少女だけを置いている売春宿によく行っていると言いました少年も好きで売春窟で漁るのだと言ってました僕は今まであんな下衆な客を見たことはありません』
最近の華族の素行の悪さを怒る文章の後に、少年の言葉が載せられていた。
「全く、これは色々な意味で酷いな。少年や少女を買うなんて、大人として最低だ。
しかも、まるで八田育夫を生粋の華族のように書いているが、奴は入り婿だ。華族にしてみれば濡れ衣を着せられた状態だな」
「こんなにはっきりと写真や名前まで」
「この手の新聞は強かだからね。うっかり文句を言おうものなら、それをまた、記事にされる。脛に傷持つ身なら、黙っている方が利口だ」
「でも、あの人なら言いに行きそうです」
「だろうね。奴は身に覚えがあればあるほど、否定する。
あ、れ?」
『昨日早朝に殺された遊女を買った学生は所持品の根付けを落としていった。持ち主を調べたところ元男爵の物だと分かった。この元男爵とんだ不良で上級生を誘惑してその気にさせると相手にしなくなると噂で……』
途中で読むのを止めた。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。
振り向くと、圭の目は怒りを表していた。
圭は中性的な美貌の持ち主であるから、寧ろ、狙われない方が不思議である。記事の内容は、完全な噓では無いだろう。
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「読ませて下さい」
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