長瀬萬請負 其の二 〜祈れる乙女達〜

岡倉弘毅

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疑問

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 「申し訳ありませんでした」

 勇一郎は畳に手をつくと、一子に向かって頭を下げた。隼人もそれに倣う。

 その場その場の状況の空気を読んで、態度を変えられるのが勇一郎である。ふざけた態度が主に見えるが、百合子のように、紳士の面しか見ていない人間もいる。

 相手次第で破落戸ごろつきにも紳士にも、おちゃらけた男にもなれた。

「いいえ。最初はどうなることかと思いましたが、あの子があれほど言葉を発したのも、感情を見せたのも初めてです。

 もしかしたら良い方向に動くかもしれません」

 一子は気持ちを切り替えるかのように、笑顔を見せた。

「ところで、そちらの方は長瀬様と仰いましたけれどもしかして、長瀬紀夫のりお様のご子息ではございませんか?」

 問われて戸惑った。

 新聞記者の勇一郎の助手の振りをして潜り込んでいたのだから、正体が知れているとは思わなかった。

「父をご存じで?」

「如月会にご寄付を。何人も雇って頂いておりますし。

 以前、長瀬様の会社でお見受け致しましたことを思い出しました。あちらでお勤めをなさっておいでだと思っておりましたのですが、探偵さんなのですね」

 勇一郎の記事の効果は大したもので、今や隼人の赤い髪は、名刺代わりであった。

「ここに、犯人の少女がいるのではないかとお考えなのではございませんの?」

 一子の目は穏やかであった。

 隼人の思惑が知れたなら、拒絶反応が起きると覚悟していただけに、拍子抜けとも思えたが、気を抜いてはいけない。

「申し訳ありません。正直に申し上げれば、その通りです。

 しかし、先ほどの少女の態度で、ここにはいないことがはっきりしました」

「そうですか。

 でも、あの子の態度から察するに、貴方方は見当外れの推理をなさっておいでなのではありませんの?」

 ここは引くべきだと考えた。

「そうではないかと、私も思い始めているところです。

 あの、他にも女性を護っている組織との関りはあるのでしょうか?」

 一子の目に、再び警戒の火が灯った。

「私の父が、最近破産した家の娘さんを探しています。十六歳の子で、とても心配しているのです」

「その子を見つけたら、貴方に連絡しろと?」

「父に伝えて頂ければと。

 もし、行き先が無いのなら、母が面倒を見ると申しておりますし、こちらのような所で頑張っているのなら、父も安心することでしょう」
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